第3話

「ふぅ… 」
学校から家に帰ってきて、ため息ともなんとも言えない言葉を吐いてしまう…
玄関で雑にローファーを脱ぎ捨て、直ぐさま二階の自分の部屋に、たったったっと小走りで行く
ガチャッっと部屋のドアを開け、制服を着替えることも忘れ、そのまま机に座り、目の前のノートパソコンの電源をつける

(襲われた人が魚なんかに見えた凶器は錯覚で…、氷のように冷たかった腕なんて、きっと深夜だったからそう感じただけだよね…)
私は内心…そんなことを思っていた
パソコンの画面がつき、視界にデスクトップの画面が広がる

なにも…、身に危険があるわけでもないのに、友達が襲われたわけでもないのに、この代償が悪いものでもない…はずなのに、だけど黙ってパソコンで調べずにはいられなかっのは
うまくは表現できないけれど…、ただ知っておくことで自分の中で小さな安心みたいなものが欲しかったのかもしれなぃ…

カチッ…カチッ
まだ午前11時半過ぎの、至ってのどかな月曜日
私の部屋にはパソコンをクリックする小さな音が響く…

パソコンで調べ始めて30分程の時間が経った…

「…ふぁ〜 疲れた〜 」
ぅーんっ、とイスに座ったままの状態で、まるで猫のように目一杯伸びをする
今日のような穏やかな日中にこうやって伸びをするのは本当に気持ちいい

結局…30分もずらーっと出てくる検索ページをしらみつぶしに集中して調べてみても、あのホームルーム中に携帯で調べたこと以外には目新しい情報は見つからなかった…
灯が今日の朝教えてくれたように、事件が起きたのは昨日の夜、…まだ朝のニュースでやっと出たような事件ならパソコンで調べてもまだほとんど情報がないのもしょうがないけれど
2ちゃんねるの掲示板やニュース記事全般でも、特に代償のことや異質特別な情報にかするような書き込みは全くなかった

(やっぱり私の勘違いだったのかなー )
でも…、そう思うと、なんだか急にあんなに学校で焦って取り乱していた自分に少し笑えてきた
新学期早々、…朝からの緊張の糸がほどけたのか、私はそのまま制服のスカートのシワも気にすることなく、ホッと安心して、…いつの間にか気付けばベットでぐっすり眠ってしまっていた

……………
………
……

…何時間寝てしまっていたのだろう…

まだ半分寝ぼけた頭と目を擦りながら、もぞもぞ…ベットから起き上がる
顔を上げ、部屋の時計を確認すると、もう4時過ぎになっていた部屋の窓の外に広がるいつもの街が赤い夕焼け色に染まり始め
ビルに途切れた眩しいオレンジ色の光は、私の部屋に注ぎ込んでくる

「ふぁ〜 …トイレ 」
寝ぼけた身体とふらつく足で一階のトイレに行く
「はぁ〜 眠ぃ…」
(ぁ…そういえば、おにぃは帰ってこないんだけっけ)
「はぁ…夜ご飯…、私が作らなきゃいけなぃんだ… お肉とかお魚とか冷蔵庫にあったかなぁ」

…お魚とか…
…魚…?
(… ぁれ… ちょっと待って…)
…なんで、こんな簡単なことにもっと早く気がつかなかったんだろう…
私は大事なことを見落としていた
(もし通り魔が凶器に本当に魚を使っていたのだとしたら…)

私の部屋の押し入れにしまい込んでいるものも…、凶器として使えるものなのか…どうか
あれが逆に、もしただのまぐろだったなら、凶器に使うことなんて不可能だし、私はこの事件となんてはっきり無関係になる
私はどうしてこんなに一番わかりやすい方法を見落としていたのだろう…

だんっだんっだんっだんっ
思考する頭より、反射神経とも言える身体のほうが先に動いていた、私は二階の自分の部屋に向かっ
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まろやか投稿小説 Ver1.30