甘い蜂蜜色のキスの日 <早朝編>





ピピピピッ、ピピピピッ



「……んぅ〜〜」



目覚ましの音が僕の耳に届いてきて、意識を夢の中から現(うつつ)へと引き上げてくる。

音を止めようと手探りで手を伸ばす。



―ピッ



「う〜〜〜ん」



寝ぼけた頭で寝起きの体を布団の中でのばす。

季節が冬に入って朝は、非常に寒くなって、窓は真っ白に曇っている。

布団の中から出るのがつらいが、学生である以上起きないといけない。

僕は布団から出ようと体を起こそうとするが



「うん?」



ふと違和感を、感じた。

僕の左腕が動かない。

何かが僕の左腕にしがみついている。



(なんだろう……)



まだ、眠気が抜けない頭を働かせながら、唯一動く手を動かす。



フニフニ、ムニュ



凄くやわらかい感触が掌に伝わってくる。

そして、微かにミントの香りが香る。

この感触と香りを僕は知っている。

いつも感じている愛おしい感覚。

それに触れるだけで心が温かくなる、僕の愛しの女性のモノ。

僕はゆっくりと布団を剥いだ。



「ん〜〜〜」



そこには幸せそうに寝息をたてている佳奈多がいた。



「ん……」



佳奈多が寝返りを打ち、幸せそうな寝顔を僕の方へ向けた。

それを見て、僕は頬を緩めて彼女の髪を優しく撫でた。



(可愛いな……)



少し前から佳奈多は、僕を起こすために、こうして朝早くから僕の部屋に来ている。

最初は驚いたけど、今ではもう当たり前になった日常。

それに目覚めたときに、最初に聞こえる声が、逢える人が、愛おしい佳奈多なのは、正直嬉しい。



(なんだか、すっかりベタ惚れだな……。)



仕方ないだろう。

こんなにも無防備でかわいい寝顔を見ただけで、胸がどきどきしてしまうのだから……。

本当に仕方ない。



「んぅ〜、理樹〜」



すると、飛びっきりの甘えた声の寝言が聞こえてきて、一瞬クラっときた。

やばい…………。

この寝顔でこんな寝言を聞いたら理性が崩れそうになる。

とにかく平静にならないと



「う〜〜ん」



と、一人で格闘していると、佳奈多が目を覚ました。寝起きで、ふにゃっとした表情だが。



「おはよう、佳奈多」

「……おはよう」



少し寝ぼけているのか、たどたどしい言葉使いだったが、徐々に覚醒して、少し苦笑した。



「変ね、私が最初に「おはよう」って言うのに、逆にあなたに言われるなんて……」

「たまには、良いんじゃない」

「それに佳奈多の可愛い寝顔が見れたし」



そう言って、優しく佳奈多の頬を撫でる。

その手を彼女は優しく手を添えている。



「……もう」



少し頬を赤らめながら、僕の胸に頭を埋めた。



「貴方だけだからね、そんな私を見ていいのは」

「だから、もっと私を見て……」



上目遣いではにかみながら微笑む佳奈多。

その表情と言葉で僕の理性は崩れていく。

恋人の贔屓目(ひいきめ)を抜いても、今の佳奈多はすごく可愛い。

このまま本能に身を任せてしまいそうになるくらい。

朝からそれはまずい。

でも佳奈多を感じたい。



「佳奈多」

「うん?何……っ!?」



僕は佳奈多の頭の後ろの手をまわして、グイっと引き寄せてキスをする。

相手を感じることのできる、僕たちの特権。



「んっ……ふぅ……」



甘い声と呼吸の音が漏れる。

佳奈多も僕の方に身を委ねて唇を押しつけてくる。



「ん・・・・・・んんっ・・・・・・」

次第に舌を絡めて深く交り合う。



「・・・・・・ちゅうっ・・・・・・れろ・・・・・・んふ」



佳奈多の足が僕の足に絡んでくる。

何だか雰囲気に呑まれそうになる。

でも、このままだと二人とも遅れてしまう。

名残しいが、最後に深く絡めて唇を離した。



「んちゅっ・・・・・・むちゅっ・・・・・・ぷはぁ・・・・・・」

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

「はふぁ・・・・・・」



佳奈多はキスの余韻ですっかりとろける様な表情だった。

事実、頬は真っ赤に染まって、目はトロンとしている。

何回もキスはしているが、朝のキスがこんなにも身を惚けるものだとは知らなかった。

やばい・・・・・・。

癖になりそう



「佳奈多・・・・・・」

「り、理樹・・・・・・」



どのくらいキスしたのか、分からない。

お互い夢中になっていて、何も考えられなかった。



「なんだか、いつもよりぼぉ〜っとするわ」

「うん、僕も・・・」



額を合わせての会話。

相手の熱が僕の額を通して伝わってくる。

目の前からは、熱い視線が潤んだ黄色の瞳から伝わってくる。

それだけでまた、キスしたくなるじゃないか

佳奈多もその気になってる。

もう一度顔を近づけて・・・・・・



ジリリリリリリリッ!!



真人の目覚ましが騒がしく響く。

その音にお互いハッとする。

真人は無意識にその音を止めたが、起きてこない。

何とも言えない沈黙が続く。



・・・・・・・・・

・・・



「ははっ」

「くすっ」



沈黙に耐えかねて苦笑する。



「ごめんね」

「いいわ、悪いのは寝ていても空気が読めない彼よ」



少し怒りながら、僕の胸で頬すりする佳奈多。

そろそろ時間がやばい。



「佳奈多、そろそろ」

「・・・えぇ」



寂しそう声を出す。

顔をあげてゆっくりと布団からでたが、じっと僕の顔を見る。



「・・・・・・」

「どうしたの?」

「最後に・・・・・・ね」

そう言って、顔を近づけて



ちゅっ



と、僕の方にキスをして、微笑んだ。

なんだか不思議と心地いい感触。



「早く支度してね」

「…うん」



そう言って、佳奈多は僕の部屋から出て行った。

キスされた部分が少し熱い。

さて、早く着替えて真人を起こさないと。

外は相変わらず寒そうだが、佳奈多のおかげで寒くない。

また、今日が始まる。

大好きな佳奈多との日々が。





←戻る