何も変わらない……

いつもと同じ……

そんな……

1日になるはずだった……







隠してた願い







いつものように教室でみんなと出会い話をしていた。

「転校生が来るらしい」という来々谷さんの言葉にみんなでどんな人が来るのか話していた。

やがて、先生が来て……

来々谷さんの言ったとおり……転校生が来て……

そして……

僕の目にはありえない光景が映っていた……







「おらー、HR始めるぞー」



いつもと同じやる気がなさそうな声でみんなを促す担任。

真人は「どんな筋肉が来るのか楽しみだぜ」とか言ってる。

少なくとも筋肉だけで来ることはありえないけど。

そもそも転校生が来る事だって確証はないわけだし……。



「あー、知ってるやつも居るだろうが今日転校生が来ることになってる
 てか、すぐそこに居る」

「女の子ですかー?」

「ん、まあな」

「先生、その女子は可愛いですか」



あれ? 恭介なんで居るの!?



「ん〜……まあな。
 お〜い、入っていいぞ」



今、先生が僕の方を見た気がしたけど……気のせいかな?

まあ、半信半疑だった僕も可愛い女の子と聞いて少し期待をした。

いや……そこは……ほら……男の本能というか……。

とりあえず、先生の言葉にカラカラと前の扉が開いていく。

ある程度開いたところで噂の転校生が教室へと入ってきた。

そのすらっとした足で男子がオオッと息を呑んだ。

そして顔が出てきた瞬間、男子の雄たけびが・・・出なかった。

全員、体を固めたまま首だけ動かして僕と転校生を交互に見ていた。

というか、僕自身も固まっていた。



「えと、直枝 理姫≠ナす。
 よろしく」



いつの間にか黒板に自分の名前を書いていた転校生は……髪と制服を除けば完全に僕だった。



「あ〜、席は直枝の前が空いてるな。

 あそこに座ってくれ」



担任も○○の横だの後ろだのじゃなくて『僕の前』と言ったのは少なからず僕と重ねているからだろう。

席の場所を言われた直枝 理姫≠ヘ席まで来ると座らずに僕の方を見ていた。

周りの視線など意に介さず僕だけをジッと見て……言った。



「よろしくね♪」



その言葉を……いや、音を聞いた瞬間視界が歪み吐き気をもよおした。



「大丈夫?」



床に倒れた僕に向かって直枝 理姫≠ェ言う。

その音を聞いただけで吐き気と頭痛が出る。



「なんなんだよ……いったい……」



僕は小さく呟いた……。







結局、僕は午前中を保健室で過ごした。

先生に大丈夫だといい保健室を出たのはつい先ほど僕の足は屋上に向かってる。

昼だけど手には何もない、というか何も食べたくない。

ただ、あそこなら気分を紛らわせてくれそうで……。



「・・・よっと」



すでに開いていた窓を通り屋上に出る。

出迎えるように吹く風に少しだけうれしくなる。



「来ると思ったよ」



そんな気持ちを握り潰すかのような声が聞こえた。

居ないでほしい……声が聞こえた時点で居ることは確定しているのに……僕はそんなことを願いながら声のした方を見る。



「具合はどお?」

「直枝 理姫=c…」

「探したんだよ〜きっと私に聞きたいことがあると思って」



また、グラッときた。

僕は倒れそうになるのを我慢して、意を決して聞いた。



「君は誰だ……いや、何だ?」

「何だ、はちょっと傷ついちゃうかな〜
 私はあなたなのに。
 あ、でも生まれたのはあなたより後だから正確には違うのかな? あれ?」



首を傾げながら僕の方へと向かってくる直枝 理姫=B

僕は逃げようと後ずさるが後ろは壁でもう下がれない。

まあ、壁がなかったらすでにぶっ倒れてるんだけどね。



「僕は……僕だ、お前じゃない。
 しかも、お前みたいな双子の姉や妹がいた覚えもない」

「う〜ん……でも、私はあなただよ
 そしてあなたは……そう、私の生みの親」



やっと納得のいく言葉が出てきたのか嬉しそうに手を合わせて笑っている。

生みの親だって……冗談じゃない。

僕はこんなそっくりさんを生んだ覚えどころか、何かを生み出した覚えすらない。



「私のこと……思い出さないの?」



その音でまた体が地面へと近づく。

もはや、目にもまともな物は映っていない。

そんな状態の僕に近づいた直枝 理姫≠ヘ僕の耳元に口を近づけて言ってきた。



「教えて……あげようか?」

「……いらない」

「理樹がもう少し、ほんの少し素直になれば分かるよ」

「……?」

「だって……理樹は私になることを望んでたんだもん」



僕がお前になることを望んでいただって?

そんなことあるわけない。



「きっかけはお泊り会。
 無理やりやらされた女装……あれがきっかけで私は生まれたんだよ」



もう、口も動かないただ聞くことしか出来ない。



「ほんの一瞬『可愛い』って鏡に映った自分の姿を見て思っちゃったもんね。
 でも、理樹は常識が強いから本能的に私を心の奥底に封印した。
……でも、無理だよ。
 私を押さえつける事なんて出来ないんだよ。
 だから、理樹にすごい負担をかけて出てきちゃった」



ああ、そうか……ぼくはいやだったんだあのひじょうしきくうかんにいてひじょうしきになることが……すこしでもふつうでいたかったんだ。



「分かった?」



ねむい・・・もう、むり・・・。



「オヤスミ理樹
 次に起きるときはもう少し素直になってね」



そこで僕の意識は完全に切れた。





















「来々谷さん」

「何だ?」

「それは……なに?」

「うむ、という夢を見た」

「ああ、今までの来々谷さんの夢だったんだ」



僕が呆れた目で来々谷さんを見てるとすごい目を光らせながら来々谷が僕を見てくる。

うん、すごくいやな予感がする。



「だが、正夢になっても困るから
 理樹君は今すぐこの女子制服に着替えたほうがいい」

「お断りするよ」

「遠慮しなくていい。
 君にならば制服、下着、パッド、エクステなどで五桁のお金がかかったこのパーフェクト女の子変身セットを渡すのを惜しまない」

「僕のために惜しんでほしいよ」

「ええい、うるさいとっとと着替えろこのヘタレ小僧
 ……いや待て、せっかくなら女の子理樹君が出てきた後に理樹君がこれを着て
 二人まとめて私がいただくというのはどうだ」

「もう、どうでもいいよ」



もうツッコミするのも疲れた。



「ほう、今『どうでもいい』といったな。
 という事はいますぐこれに着替えておねーさんに食べられてもいいという事だな」

「いや、違……「黙れ、男に二言はないはずだ二言があるなら殺す異論があっても殺す言う事を聞かなければ殺す」



ああ〜、僕のバカ〜逃げ場ないじゃん。



「というわけで早速ゴーだ!」



僕をお姫様抱っこした(どうやってやったんだろう?)来々谷さんが超速で移動したもんだから僕はしがみつかなきゃいけなくて、つまり逃げれなくて。

その後、僕がどんな目にあったかは皆さんの想像にお任せします・・・。





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