「……な…え」
「…ん」
「直枝!!」
「うわぁ!?」
突然鳴り響く声に僕は急激に意識を覚醒させる。
「直枝、最近居眠りが多すぎるが、何かあったのか?」
この言葉に思うところがかなりある。
魔力が足りなさすぎるのだ。
セイバー・リリィを召喚してから聖杯戦争の準備のため、ひたすら罠を設置して回った結果、魔力が足りなくなり体がだるく常に睡魔に襲われているのだ。
食事で補うこともできるが、食事で補おうと思ったら、それこそ今の数倍は食べないと追い付かないくらいだ。
まあ、そんな事したら太るからやらないけど。
だけどやっぱり居眠りの頻発は流石に困る。
主に僕の平常点に関わってくるし。
ピクン
「!!」
早速、罠に獲物がかかったようだ。
まだ3時間目で授業から抜けれそうにもない。
まあ、いいとしようかな、あの罠にかかったら特に問題はない。
ゆっくり仕留めに行こうか。
『セイバー』
僕はセイバーに念話で話しかける。
『何ですかマスター?』
『サーヴァントらしき反応がここから北に3キロ位、目印は…特にないけどマーキングしてあるから簡単に気づけると思うから、偵察してきてもらえる?』
『了解ですマスター』
その言葉にセイバーは不服そうだった
『アサシンかキャスターだったら状況によっては始末しておいてもいいよ』
仕方なしに僕が最後にこう付け加えると。
『了解ですマスター』
嬉しそうにこう答えた。
見えないセイバーの表情は獰猛な笑みを浮かべていたような気がした。
私がマスターに指示され向かった先は廃ビルという人のいない建物だった。
「敵はここを拠点とする気なのだろうか?だが、関係はないな」
ただ叩き潰すのみだ。
久々の闘いに私の心が熱く震える。
マスターはアサシンかキャスターなら倒しても良いといっていたが関係ない。
どんな敵も潰してしまおう。
「行くぞ…!!」
私はビルの中に突撃する。中は複雑そうに見えるが実際は単調、所々の要所にさえ気を付けてしまえば攻略は容易そうだ。
罠がある様子はない。
敵はだいたい一番上の階に反応がある。
私は目標を見定め一気に階段を駆け上る。
驚くほど簡単に進めた。
罠があるように思えなかったが、いくらなんでも罠の一つも仕掛けないというのはどういう事だろう?
よほど腕に自信があるのだろうか?
それとも罠を仕掛ける余裕がなかったのだろうか?
いずれにしても、罠が無いのはありがたい。
一気に攻め落としてしまおう。
こうして私は足音も気にせず階段を駆け上った。
セイバー大丈夫かな〜?
僕は授業を受けながらそう思う。
セイバーの事だから勝手に先走っちゃうんだろうけどな〜。
僕は今さら令呪を使わなかったことを後悔した。
最上階、私は扉の前で立ち止まる。
このままドアを突き破ってしまえばいいのだろう。
だが、私の勘は入るなと告げている。
さて、どうするか…
獲物は目の前、だが中は危険…
「多少のリスクは承知の上!!」
私はドアを蹴り破る。
その先にいたのは銀色の甲冑を着てランスと呼ばれる槍を持ったサーヴァントと紺のスーツという着物を着た女性がそこにいた。
「ランサーのサーヴァント…」
「御明察…といっても見たままなので簡単でしょうね」
「フン、何のサーヴァントだろうと関係は無い!!私の前に立つというのならただ斬り捨てるのみ!!」
「仕方ありませんね私としては事を荒立てる気は無いのですがあちら様はやる気満々のようですし…どうします?ランサー」
「私はマスターの槍、敵が殺るというのならそれを防ぐのみ」
こうして、私が現界して最初の戦闘が始まった。
キィン
刃を交える音が室内に響く。
ランサーの円錐のような槍、ランスがセイバーを突けば、セイバーはそれを弾き前に進む。
セイバーの剣がランサーを捕えれば、ランサーは槍でそれを阻止する。
何度刃を打ち合っただろうか。
急にランサーが動きを止めた。
「……」
おかしい。
セイバーは感じる。打ち合く度に体から力が抜けていくのだ。
「そろそろ決着をつけさせてもらう。」
ランサーが槍を構える。
流れ出す魔力にセイバーは咄嗟に剣を構えた。
「喰らえ…」
ランサーが槍を思い切り後ろに引き!!
『セント(聖撃の)』
突き出す!!
『ジョージ(竜殺槍)』
ヒュン!!
風を切る音と共にセイバーを襲うランス
「ガ…ァ!?」
かろうじて剣で受け流すが完全に受け流す事ができず肩に痛々しい穴を開ける。
「ハアハアハア…」
「あれを耐えるか…流石セイバーのサーヴァント」
ランサーはセイバーに称賛を送る。
確かにあれはランサーにしたら必殺の一撃だった。
それを防ぐということは確かに称賛に値するのだ。
「その竜殺しの槍、キリスト教の聖人ゲオルギス…」
「そういう君は騎士王のアーサー王だろう?」
こともなげにランサーは言い放つ。
「……」
「竜の因子を持ち、さらにそれほど強大な宝具を持つ英雄は限られてくるからな」
「………」
セイバーはランサーを睨む。もし、視線で人が殺せるならもう3回は殺しているだろう。
「さて、悪いがそろそろトドメを刺そう」
白銀の甲冑を鳴らしながらセイバーに向かい歩を進める。
チャキッ
ランサーの槍はピタリとセイバーの正面に突きつけられる。
「終わりだ」
だが、その槍がセイバーに刺さる事はなかった。
そう、霊体化して槍を避けたのだ。
「逃げたか…」
ランサーはそう呟いた。
セイバーは歯噛みする。
何と無様な!!
敵を過小し侮り。それが原因で手傷を負わされる。
「次こそは…次こそは!!」
セイバーは誓う。
それは天でもなく。
それは地でもなく。
それは神でもなく。
ただ自分の心に不滅を誓った。
理樹は机に突っ伏していた。
原因は言わずともセイバーの戦闘が響いたのだ。
「ZZZ」
それはもう見事な熟睡だ。そして
「直ぁ枝ぇぇぇぇえ!!」
4時間目に教師の怒声が教室に響き渡った。
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