いつものように朝がやってくる。だが今日から始まるのは少し変わった1日だ。

そう、僕は今メイドの姿をしている。勿論シャレなんかじゃなくて、本当にメイドをしなければいけないんだけど。

「失礼します」

そして、今日のご主人様はというと……西園さんだ。

なので僕は今モーニングコールにやって来ている。トントン少しだけ肩を叩いてみる。

「う…うン」

起きない、さすりさすり背中をさすってみる。

「ン…フゥ」

起きない。

『困ったな、起きないや…』考えてみる。

「わふっ!? なにやってるのですか!?」

西園さんの目を覚ます前に同室のクドを先に起こしてしまったようだ。

「クド、僕、理樹だよ」

「わふ!? リキでしたか、ってリキがなぜここにいるのですかー!?」

「クド!! 叫ばないでっ」

「わふ! まさかリキがよばいに」

「違うよ!! ていうかどこでそんな言葉覚えたの!?」

「わふー、だったらなぜリキがここにいるのですか?」

「先週の罰ゲームだよ」

「罰ゲームですか?」

「覚えてないの?」

「わふー…」

「あのね…」

僕は、今ここにいるあらましを説明した。今の僕の姿のこと、先週の罰ゲームのことなどだ。

「わふーそういうことでしたか」

「わかってくれた?」

「もちろんなのです!」

「よかったー…」

「おはようございます」

こんなことをしているうちに西園さんが起きてきた。

「そちらの方は…?」

「僕だよ」

「僕…? …直枝さんですか!?」

「うん、そうだよ」

「まさか、よば…」

「今西園さんが考えてることとは全く別だから」

「そうでしたか…つまらないです」

「西園さん?」

「いえ、何でもないです…じゃないです何故直枝がここに?」

「ほら、罰ゲームだよ」

「罰ゲーム…」

西園さんは少し考えてる。

「もしかして先週の…」

「そうだよ」

「まさか、本当にやるとは思ってませんでした」

「うん、僕もやりたくはなかった」

「そうでしたか…」

「けど、西園さんの寝顔が見れたのはよかったかな」

「!?」

そういうと西園さんとクドの顔が一気に熟れたリンゴのように真っ赤になった。

「直枝さん!」

「はい、何でございますか?」

気をとりなおしてメイドモードに移行する。これも来々谷さんによるメイド授業でつけた力だ(つけたくはなかったけど…)

「着替えるので、出ていってください」









私は着替えながら先ほどのことを思い出していました。

うかつでした…まさか直枝さんに寝顔を見られていたとは…

「この屈辱、晴らさずにはおけません…」

多分今の私はものすごい悪い顔をしているに違いありません…ですが、この屈辱直枝さんあなたで晴はらさしていただきますよ。

「ふふふふ」

こうして私の一日は始まるのでした。









その頃のある女子寮の一室にて。



「流石だな恭介氏」

「俺がこんなに面白いこと見逃すわけないだろ?」

「そうだったな」

「来々谷一つ聞きたいんだが…」

「何か?」

「一体この機材どこから持ってきたんだ?」

恭介が指差した先には、ディスプレイや様々な機材がそこに置いておかれている。画面には、もちろんメイドの理樹の姿が映っている。

「恭介氏、無用な詮索は無粋というものだよ」

「それもそうか」

「ではこういう時は…」

「むっ、そろそろ時間か俺も行かいとな」

「なんだ? もう行ってしまうのか恭介氏」

「ん? ああ、たまには真面目に学生しないとな」

「驚いた! 恭介氏にまだそんな健全な心が残っていたとは…」

「おいおい来々谷俺のことを何だと思ってんだ?」

「ロリのシスコンの上級生といったところか」

「俺はロリじゃねえ!! そしてシスコンでもねえ!!」

「だが能美女史を見る恭介氏の視線はなぜかこうネットリとした視線なのだが」

「ネットリなんてしてねえ!!」

「まあ、そこはおいておいてだ」

「おいておけるか!そこが1番重要だろ!!」

「本当にこのまま行ってしまって良いのかな?」

「無視か…だがそれはどういうことだ?」

「それはだな…」

ガタン!いきなりドアが開く。

「おっはよーございます!! 姉御〜はるちんは今日も朝からテンション最高潮ッスヨ〜」

「そうかそうか、私はサボるから教師には適当な理由をつけておいてくれ」

「へっ? なぜっスか!?」

「ハハハ、余計な詮索は不要だ」

「詮索した場合は?」

「決まっている、もちろん葉留佳君を断ざ…」

「お助け!!」

断罪のだの字を聞いた瞬間三枝は風のように去っていった。

「人払いも済んだ所で先ほどの話だが」

「ああ」

「本当にこのままメイドの理樹君の姿を見ないで行ってしまって良いのかな?」

「!!!!!!」

来々谷は話を続ける。

「今の少年は平静を装ってはいるがあまり乗り気ではなかった。そんな少年はメイドをやっているうちに恥ずかしさで平静の仮面が剥がれ落ちていく」

ゴクリ、恭介は唾を飲む

「恥ずかしさでだんだん頬が赤く染まってゆく少年だがそれでも罰は罰と割りきり恥じらいながらメイドをする少年を…恭介氏は見ないでここを行ってしまえるのかね!?」

ドーン恭介はショックをうける。その形相は凄かったなんと形容すればわからないほどだ。

「そんなこと…そんなこと」

「? どうした恭介氏」

「俺にはできるかーーーー!!」

恭介は覚醒したらしい、そのまま携帯電話を取り出す。

「………西山か!?」

『ん? 棗か?』

「そうだ」

『そうだってお前なあ…まあいいや、そろそろ先生来るからさっさと来た方がいいぞ』

「その事だが俺には用事ができた。先生には急に就活したくなったとでも言っておいてくれ」

『おいおい…お前何考えてんだ?つーかまだ案内すらきてねえのにどうやって就活するんだよ!?』

「いいからそう言っとけ、じゃあな切るぞ」

『おい棗!?…』

「話はつけたぞ来々谷」

来々谷は微笑する

「流石恭介氏だな」

「なんとでも言え! …だがこういうときはこのセリフを言わねばな」

「やはり、そのセリフか」

「ああ、じゃあ言うぞ」

「折角だ、私も言わせもらおう」

そして見事なまでに息を揃えて2人は高らかに宣言した。



「「ミッションスタート」」



こうして理樹のメイド初仕事が始まるのだった。











番外



「棗ー棗ー、おい棗はどうした?」

「先生」

「なんだね?」

「棗なら休みッスよ」

「何故だね!?」

「なんか急に就活したくなったとか」

「まあ棗だからな」

「棗ですしね」

「じゃあ授業始めるぞーじゃあ教科書54ページ開けー」

恭介のクラスでは恭介のいない間に恭介の立ち位置が随分と決まっているようだった。





■ 次回予告 ■



「というわけで次回予告だ」

「どういう繋がりでこう脈絡もなく次回予告なのだ恭介氏?」

フッ、恭介は薄く笑みを浮かべる。恭介のファンだったらイチコロクラスの微笑だった

「決まっている!ノリだ!」

「恭介氏に今の質問は愚問だったようだな」

「まあいいじゃないか折角だしな」

「だったらさっさとやっともらえないか、時間の無駄なんだが…」

「おっと悪かったな」

「まったくだ」

「じゃあ始めるぞ」

コホン、一つ咳払いをすると恭介は次回予告を開始した。

「さーて次回なタイトル:理樹君のワクドキ!?メイドDEご奉仕!?<西園美魚共にと流れる1日編>は美魚と理樹【一流メイド】の朝食から午後にかけての話をお送りする。次回もまた見てくれよな、じゃんけんぽん!」

まるっきりサ◯エさんのノリだった

「恭介氏」

「なんだ?来々谷」

「何故サ◯エさんなのだ」

「ノリだ」

「…そうか」

来々谷は恭介に一抹の不安を抱き、朝は過ぎてゆく。





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