この小説にはmさんのすばらしきキャラ「理姫」が登場します。
あらかじめご了承ください。
桜が咲く頃に
今日は僕たちの卒業式。
僕と何人かは大学に進学して、クドは故郷に戻って宇宙飛行士の勉強、真人は何か重量挙げのオリンピック選手としてどっかの企業に就職、謙吾も就職して近くにある剣道道場の非常勤講師をするらしい。
ちなみに、二年の後期に転入してきた僕の双子の妹の「理姫」は『お兄ちゃんと一緒がいい』なんて言い出して僕と同じ大学、学部を受けた。
それを聞いて鈴や葉留佳さんはおろか既に就職の決まっていた真人まで『俺も理樹と一緒がいい』とか言い出して宥めるのに時間が掛かったっけ。
思い出すと笑いがこみ上げてきた。
「というか卒業式もすごかったんだけどね」
卒業式のさなかみんなが涙を流して、まさに「卒業式」をしていたら突然体育館の電気が消されて真っ暗になった。
と思ったらある一点だけライトアップされたかと思えば其処には去年卒業した恭介が居て。
壇上に上がったかと思えば僕らを連れてきてそれぞれに楽器を渡して…ライブを始めました。
しかも僕がボーカルってどういうことだよ!…いやまあ、最後のほうは僕もノリノリで歌ってけどさ…。
とにかくそんなこんなでまったく「卒業式」らしくない卒業式を終えて、僕はいま校内の桜の下で思いにふけってる訳です。
「それにしても…まさか告白されるとは思わなかったな…」
恭介の『とりあえず後で呼び出すからそれまで解散』っていう一言でここまで来る途中に十数人の女子から告白されて…。
恭介が卒業した後は謙吾の独壇場かと思ってたんだけどなー。
「あー、居た居たお兄ちゃ〜ん」
「理姫…に恭介と来々谷さん?」
「うむ、物思いに耽る理樹君
なかなか絵になっていたぞ」
「ああ、物陰から何人か写メやら撮ってたぜ」
「ウソ!?」
理姫に『お兄ちゃんモテルね〜』って肩を突かれながらちょっと恥ずかしくなった。
「ところで理樹会わせたい人が居るんだ」
「え?会わせたい人って…誰さ恭介」
「私だよ理樹君」
恭介の合図で木の陰から出てきたのは
「オジサン!?」
「いや〜久しぶりだね理樹君
理姫ちゃんと会わせた時からだから…一年ぶり位かな?」
「でも、会わせたい人ってオジサン?」
「うむ、オジサンにはちょっと荷物を持ってきてもらったんだ」
来々谷さんが答えると同時に僕の肩を掴む。
ついでに理姫も僕の腕を引っ張る。
「に、荷物って?」
「服だよお兄ちゃん」
「私たちが着付けをしてあげよう」
もう嫌な予感しかしないし逃げられる気もしない。
僕は大人しく(させられて)二人に付いていった。
「お兄ちゃんすっごい似合ってるよ〜」
「うむ、ここまで来るともはや嫉妬すらも通り越すな」
「今更だが…お前性別間違ってないか?」
「いや〜、若いときのお母さんにそっくりだね〜」
「何で女物の着物なのさ!」
今の僕の格好
・ 高そうな着物(女物)
・ 高そうな髪飾り(金ぴか)
・ 草履
という成人式にいけそうな格好をさせられていた。
「実は理樹君のお母さんが
『子供が女の子だったら高校を卒業する時にこれをあげるの』
って言ってた話を以前たまたま出会った恭介君に話したら
『なら着せますか?大丈夫ですよ理樹なら着こなせます』
って言われて半信半疑だったけど確かに似合ってるね〜」
「恭介…?」
「い、いやこれはだな理樹最後に思い出を作ってやろうと…」
「こんな思い出いらないよ!」
「お兄ちゃん怒らないであげて
恭介さんに相談されたときに私もOKだしちゃったし…」
理姫にそう言われると強く言えなくなる自分が恨めしい。
とりあえず恭介をもう一睨みするだけで止めといた。
♪〜♪〜〜♪〜〜
来々谷さんの携帯がなった。
「はい、もしもし?」
『やはー、姉御〜言われたとおりのセッティング終了しませたぜ』
「うむ、よくやった葉留佳君、後でよしよししてやろう」
『やた』
会話は聞こえなかったけどとりあえず楽しそうな来々谷さんを見て嫌な予感しかしない事をここに記しておこう。
そんな軽い現実逃避をしていると来々谷さんがマイク(どこに持ってたの!?)を恭介に渡していた。
「では、始めてくれたまえ恭介氏」
「ああ」
マイクを受け取った恭介はとんでもない事を言い始めた。
『ああ〜テステス
お前ら聞こえているか?
今から《こんな可愛い子が女の子なわけないじゃないか!第一回理樹争奪鬼ごっこ》を開催する』
『『『おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』』』
『『『キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』』』
『ルールは簡単女物の着物を着た理樹を一時間以内に捕獲して校門のところにいる理樹のオジサンの所まで連れて行けばいい』
今、絶対「女物」を強調して言ったよね!
『勝者は…そうだな今日の24時まで理樹を好きにしていいぜ』
また一段と大きな歓声が辺りから聞こえる。
天国の父さん母さん今から僕もそっちに向かいます…。
『スタートは五分後だ
各々準備を済ませておけよ』
そこでマイクの電源を切った恭介がこっちに来る。
そして、少し寂しげな目で言った。
「ほら、俺らの最後のミッションだ
存分に逃げてこい…」
「…全力では逃げるよ
でも、最後じゃない…僕らはきっとミッションを続けるよ
またみんなで集まったり、別の人たちとやったり、時には1人で
それでもミッションは続くよ
だって僕たち…『リトルバスターズ』でしょ?」
「…ああそうだな!」
僕は軽くストレッチをして走り始めた。
そうだ、僕たちはリトルバスターズだ
僕らは1人じゃない
いつもどこかで繋がってるんだ
依存するわけでもなく
離れ離れになるわけでもなく
見えない糸で、絆で繋がってる
だから…僕は…こんなにも楽しいんだ…
結局、理樹は理姫に捕まって真夜中まで着せ替え人形にされたのを記しておく。
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