「ハアハアハア」
クソっ!!
もう少しなのに!!
僕は心の中で悪態をつく。虚構世界、恭介が僕と鈴を強くするために作られた世界、あの世界で僕は強くなれたのかはわからない…。
今僕と鈴がしている…皆を助けようとしていることはあきらかに恭介の思いを壊してるのかもしれない。
だけど、僕は皆を助けようと躍起になっている。
それでも火の気は強くなっていた。
「僕もこれまでなのかな…」
「なあハルヒ、お前一体なにやってんだ?」
俺がSOS団部室(まあ、奪い取ったに等しいんだが)に行くとハルヒの奴がPCで何かやっていた。
それも大音量でイヤホンもつけずにだ。
こいつには周りに対する配慮というものがないのだろうか…迷惑を被るこっちの身にもなってほしいもんだな。
「ゲームよ、ゲーム」
「そうかい」
ハルヒがゲームをやってるところなんて初めて見たが、家でやるって選択肢はなかったのかね。
「…CG全部回収完了、あー疲れた」
「疲れる位ならやるなよ…」
「何よ」
「別に」
「ふーん、ま、いいわ。ミクルちゃん、お茶」
「あ、はい!」
朝比奈さんがお茶を入れ始める。
「にしてもなんであそこで雨が降らなかったんだろ? 主人公がいいところ総取りなんて普通過ぎるわ!! こういうときは不思議な雨よね〜」
今日もSOS団はおおむね平和だ。
周りの熱さで僕の意識も朦朧としてきた。
「これまでなのかな…」
地面にへたり込みながら思う。
……走馬灯見れるかな?
やっぱり皆のことを思い出すんだろうな……。
ヤバいな…意識もそろそろ限界だ…それに今頬が冷たかったし感覚も麻痺したのかな……。
父さん、母さん今そちらに逝きます……。
本当にそう思った。
だけど奇跡が起こった。
冷たい雫石が僕の頬に降りかかる。
それは雨。
立ち上った火を次々と消火していく。
僕はこの一瞬だけ、神に感謝した。
「クシュン」
「どうしたハルヒ、風邪でもひいたか?」
「さあね、誰かが噂でもしてるんじゃない?」
ああ、お前は噂の種だよハルヒ…。
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