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花ざかりの理樹たちへ その10 ~学校・午前中編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。



「よし! 早く恭介たちに会いに行こうっ」

「「「おーーーーっ!」」」



みんなが一致団結し、僕はみんなの後ろから前へと踏み出す――



――ドンッ!



と、前に出すぎて人にぶつかってしまった!



「わわっ!? ごめんなさいっ」

「――っつ! いきなり何なのですの!?」

ぶつかってのけ反った人がこちらに振り返った。

「――――!」

鈴が反応する。

「ささささささささっ!」

奇跡的に全部噛んだ!!

「笹瀬川佐々美ですわっ! 朝っぱらからケンカ売ってるんですのっ!?」

「そのつもりはない」

良かった……。さすがに朝からケンカに巻き込まれたら、堪ったものじゃない。

「ケンカを売ったのはこいつだ」

「えええっ!」

鈴は僕の手を掴んで、笹瀬川さんの前に突き出す。

「あ、あら……」

笹瀬川さんは、大きな目をさらに大きくしてこちらを見ている。

「僕の前方不注意で……ごめんなさい……」

このままバトルになってしまっても困る。

僕は素直に謝った。

「…………」

笹瀬川さんは何も言わない。

やっぱり……怒らせちゃったのかな。

「……」

「――っ」

「あ、あ、あら……す、す、素直な……その……いいコじゃない」

心なしか笹瀬川さんの顔が赤い。

目がキョロキョロと落ち着いていない。

「……そ、そ、その……あなたは……ど、ど、ど……」

「ど?」

――さっきから笹瀬川さんの様子が酷くおかしい気がする。

「ど、どどどちらのクラスの方ですのっ!?」

「わわっ!?」

突然語調を強めた笹瀬川さんにびっくりしてしまった。

「こいつは理――ふごっふごっ!」

鈴はしゃべろうとした矢先、来ヶ谷さんに押さえつけられた!

「彼女は私達のクラスに今日やってきた、転入生だ」

えええーっ!?

……来ヶ谷さんの顔は何かを企んでいる顔に間違いない。

「まだ慣れない学校生活だ、笹瀬川女史も仲良くしてやってくれ」

「…………」

なぜか笹瀬川さんの目が泳いでいる。

「わ、わ、わ、わかりましたわ」

笹瀬川さんが恐る恐る右手を差し出してくる。

「わっ、わたくしの名前は笹瀬川佐々美ですわ。以後お見知りおきを」

僕は差し出された右手をキュッと握った。

「――――っ!!」

「僕は……」

……名前を言おうとして笹瀬川さんの顔を見ると。

「…………………………」

傍目から見ても分かるほどに顔全体が真っ赤になっている!

特徴的なツインテールまで逆立っているような雰囲気だ!!

「…………………………」

「あ、あの」

「…………………………」

まるで笹瀬川さんの時だけが止まっているような見事な硬直だ。

「あ、あの~」

「…………………………」

息をしているのか、と心配になるような硬直だ。

「笹瀬川女史の頬を触ってみろ。そうすれば動き出すぞ」

来ヶ谷さんがなかなか無茶なことを言ってくる。

「けど……」

――確かにこのままじゃ埒(らち)が明かない。

「笹瀬川さん――」

左手で彼女の頬を触る……。



「――――――――――――――――ッ!?」

びくーーーーーっ!!



笹瀬川さんは跳ね上がるんじゃないかと思うほど、ビクリと反応し……

「――ああっ……」



――ドサッ



「さ、笹瀬川さん!?」

……笹瀬川さんが失神した……。



「さ、佐々美様ーーーっ」

遠くからソフトボール部員が駆けつけてきた!

「また棗ですかっ!?」

「私達の佐々美様をよくも……っ!」

「あ、あたしじゃないぞっ」

臨戦態勢に入っている部員を他の部員が抑える。

「今は争っている場合じゃありませんっ」

「早く佐々美様を保健室へ!」

「棗、覚えてなさいね!」

笹瀬川さんは3人のソフトボール部員に抱えられ運ばれていった……。



「…………」

僕は呆然とその姿を見送るしかなかった。

一体何だったのだろう……。

「ささみを一発で倒すなんて…強いな」

「いや、別に戦ってないから……」

「ささみちゃん、具合わるかったのかなぁ」

小毬さんは心配そうに見送っている。



「理樹君、今や君の一挙手一投足は殺戮兵器と化したことを気に留めておいたほうが良い」

来ヶ谷さんが妖しい目を僕に向けている。

「も、もしかして笹瀬川さん……」

ちょっと顔が火照る。

「……百合……百合も美しいのではないでしょうか」

西園さんも同じくらい顔を火照らせてモジモジしている。

「ぷりてぃーだいなまいとーっ」

クドも「わふー!」と飛び上がっている。

「理樹ちゃんぼーーんっ! 鼻血ブーーっ!」

こっちはもう意味がわからない。



「理樹君、この調子で次は真人少年にアタックするとしよう」

「あの馬鹿のおどろく顔が楽しみだ」



……う、さすがに真人達に会うとなると緊張してきた……。