※バックアップページです。本体はこちらです。
花ざかりの理樹たちへ その16 ~学校・午前中編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。



朝のHRが終わって、みんな僕の席に集まってきた。



「真人君も謙吾君も、HRまでに戻ってこなかったね~」

――結局、二人とも走り去ってから戻ってこなかった……。



「今ごろあの馬鹿二人は、理樹のかわいさにぼーーーんっ!」

「…こっぱみじんだ」

「いやいや、それは困るから」

う…一人は鼻血が「ぼーんっ!」と爆発したけど……。

「うむ、いきなり二股とは…理樹君はかなりのやり手とお見受けする」

「理樹ちゃんはスミに置けないですネこりゃ」

「……二人の男性の心を弄ぶ直枝さん……」

「……ぽ」

「やらせたのは来ヶ谷さんと西園さんでしょっ!」

――この二人が組むと…僕たちリトルバスターズの身と心と貞操が危機にさらされるような気がする。

「…ああ、その怒った顔も萌える…」

「…………萌え」

すでに二人は結託していた!

「私もリキにあの様に迫られたらと思うと……どきどき」

クドが期待のこもった瞳でこちらを見ている。

「『クドのこのロリぷにボディは誰にも渡さねぇぜファッキン』と考えているな」

「迫らないし考えてないよっ!」

「ダメなのですか……」



「じゃあ、理樹ちゃんがせまるのがダメなら――」

「――私が理樹ちゃんにせまろうと思います」

小毬さんが人差し指をぴっと立て、とんでもない事を言い出した!

「な、なななっ!?」

――ダメだよっ、と言おうとしたら……。

「女の子どーし、なかよくしなきゃダメだよ~」

って、もう小毬さん僕のことを男だと思ってないし!

「そうだな理樹、女の子同士なかよくしなきゃな」

うわ、鈴まで影響を受けてる! しかもちょっと『あたしの方が先にみんなと仲良くなったんだ』的なお姉さん風を吹かしている!

「ぼ、僕は……っ」

必死に断ろうと焦る僕を余所に。

「とりゃぁーっ」

――ぽふんっ

小毬さんが僕の胸に飛び込んできたっ!

「わわわわわわーーーっ!?」

「理樹ちゃーんっ」

ひゃぁーーーっ!? キュッと小毬さんに抱きつかれてるよっ!?

さっきの謙吾の気持ちが痛いほど良くわかるっ!

「小毬さんだけ抜け駆けとは…ズルいのですーっ」

――ぱふーっ

「リキーっ」

「ななななななーーーっ!?」

せ、背中にはクドがっ!?

クドは顔をぐりぐりと押し付けているっ!

「お、おまえら、理樹にくっつきすぎだっ」

――ぐいっぐいっ

鈴が僕の手をとって、ぐいぐいと引っ張ってる!

「……私は手をつなぐだけで満足です」

――すっ

西園さんは優しく僕の手をとり、つないできた。

「……ぽ」

「……同じ女の子同士なのになぜか照れます」

この娘はワザとだった!

「ちょっとちょっとー、はるちんも理樹ちゃんイジるーっ」

葉留佳さんが突っ込んでくる!

「むぎゅうっ」

「うむ、これはおねーさんも正々堂々と女の子達にウヘヘやエヘヘとしていいという訳だな」

頬を朱に染めた来ヶ谷さんが、みんなに襲い掛かるっ!

「むぎゅぎゅぎゅうっ」

「うわうわうわうわうわうわあああぁぁぁーーーっ!?」



どうして女の子ってこんなにもスキンシップが好きなんだーーーっ!?



「むぎゅう~…」

「……あ」

胸元にいた小毬さんがみんなに押されて、目を回していた……。





――みんなでワイワイと騒いでいると、謙吾がようやく戻ってきた!

「あ、謙吾くんが戻ってきましたヨ」



「フンフ~フ、フッフッフフ~ン♪ フンフンフ~フフ~ン……♪」



「ふえぇ……謙吾君が鼻歌うたってる」

「とてもご機嫌がよさそうなのです」

――謙吾は遠目から見てもハイテンションだ。

「あれは『てん○う虫のサンバ』だな」

「選曲がオッサンっすネ……」

「謙吾のやつ、さらにネジがゆるんだな」

謙吾はこちらに全く気づかずに自分の席に着いた。

席に着いてからも意識は違うところに行っているようだ。

「……直枝さん、結婚式には呼んでくださいね」

「絶対しないよっ!」



程なくして、真人も戻ってきた。

「真人少年おはよう」

「やはー、真人くん」

「おー……」

真人はフラフラと自分の席に着いた。



……うわっ、真人がゲッソリしてるっ!?

「わわっ真人君、顔がまっさおだよ」

もちろん小毬さんのこの言葉は故意ではない。天然だ。

「オ…オレは一体どうすりゃいいんだ……」

真人はグッタリと頭を抱え込んでいる。

――ブツブツと「恋って心の病だ」「愛ってすばらしい」と、真人に似合わない言葉が口から漏れている。

「何に悩んでいるのかわかりませんが…私で良ければ力になります、井ノ原さん」

「ク、クー公……」

「私も手伝うよ~」

「なんかよくわからんが、がんばれ」

「……小毬……鈴……」

……クドも小毬さんも鈴も、きっと本気で言っている。

「まあ私もキミの友人として、全力でバックアップするぞ」

「これもユージョーのため…はるちんもひとはだ脱いじゃいますヨ」

「……友情って美しいですね」

今の3人の言葉には、これっぽちも友情がこもってなかった!

「み、みんな……ありがとよ」

純粋な気持ちを弄ばれていると露知らずにそう言うと、真人は伏せていた顔をこちらに向けた。

――僕と真人の目が合う。

「…………」

「…………」

「んっなあぁあぁーーーーーーーっ!?」

うわぁ、また顔がゆでダコみたいになってるよっ!

「ん、なんだ? 真人少年はこの少女ともう知り合いなのか?」

来ヶ谷さんの目がキラリと光り、真人にカマをかける!

「なっ何も…し、し、し、知らねぇな……」

……真人は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

僕だと気付いていない上に、さっきの出来事を隠したいらしい。

「彼女は転入生で、席の準備が出来なかったために…急遽ここに座ることになった」

「真人少年も仲良くしてやってくれ」

……メチャクチャなこじ付けだけど、今の真人には効いてそうだ!

「て、て、て、転入生だったのか」

「よっ、ヨロシクな」

真人のぎこちない笑顔にペコリと頭を下げた。



――キーンコーンカーンコーン……

1時限目のチャイムが鳴った。



「じゃあ井ノ原さん、相談があったらいつでも任せてくださいー」

「私もきょーりょくするからねー」

「お、おう!」



――みんな各々の席に戻った後

「……花占いか、いっちょ試してみるか……」

と、真人は本気で悩んでいた!