花ざかりの理樹たちへ その20 ~学校・午前中編~(リトルバスターズ)作者:m
紹介メッセージ:
恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。
――次の授業が終わり休み時間――
「授業ほど時間を浪費しているものはないな」
気だるそうに来ヶ谷さんがやってきた。
「お菓子を食べましょう~」
両手いっぱいにお菓子を持っている小毬さん。
……いつもかなりの量を食べているのに、どうして太らないのか不思議だ。
「どりゃっ! チュッパチャップスチョコバナナ味はいただいたーっ」
葉留佳さんは授業が終わって間もないのに、もうココにいるし。
「わ、わふーっ!? チョコバナナ味は私が先約をしていたのにっ!?」
「ほれーほれー欲しかったら取ってみなー」
……クドは葉留佳さんが上に掲げたチュッパチャップスを取ろうと、ピョンピョン飛び跳ねている。
「キャベツ太郎はいただきだ!」
「ほわぁっ!?」
窓から教室へと侵入するなり、恭介は小毬さんの腕からお菓子を略奪した。
「理樹、胸元のリボンが曲がってるぞ。どれ、直してやろう」
「え、あ…うん」
謙吾にリボンを直してもらおうとしたら……。
――ばきぃ!
「ぐはあっ!?」
「理樹によるなっ」
謙吾の後頭部に鈴のハイキックが炸裂。
「……鈴さんは直枝さんを守る王子様、と言ったところでしょうか」
「……そういうのもありだと思います……ぽ」
……もしかしたら西園さんは何でもありなのかもしれない。
「どれ、お菓子か…おねーさんもいただくとするか」
「理樹君、私の前に立ってみてくれ」
「いいけど?」
真人の席にドカッと腰を下ろしている来ヶ谷さんの前に立った。
お菓子と一体何の関係があるのだろう?
「よし、そのまま後ろを向いてくれ」
「?」
――カクっ!
「わっ!?」
ひ、膝カックン!?
そう思うと、腰の辺りをひっぱられた。
――ストンっ
「…………」
僕は今、ちょこんと来ヶ谷さんのヒザの上に座っている。
「うむ、ナイスフィットだ」
「え、ええええーっ!?」
――きゅっ
「やっぱりキミは後ろからが一番気持ちいい」
「わわっ!?」
後ろから来ヶ谷さんに優しく抱きかかえられた。
「さっき言ったお菓子って、僕っ!?」
「無論だ」
「なんだか理樹ちゃんとゆいちゃん、仲良し姉妹さんみたいだよー」
ほやや~んとしている小毬さん。
「リキは来ヶ谷さんのおヒザの上がとっても似合ってます~」
「いやいやいや!」
「なんだ、クドリャフカ君だったらこの程度普通だぞ?」
「そ、それは私がおヒザの上専用ということですかっ!?」
たしかにクドとかはいつもこういう感じだけどっ!
「なんだ理樹、いつからそんなにエロティックになったんだ?」
「まあ、俺との一件から言わせてもらえば少しばかりフルーティーなだけだけどな」
……地味に張り合ってきている恭介は少しかわいい。
「……かしゃり」
西園さんに写真を撮られた!
「……美少女と美少女の戯れ……絵になります」
うわ、頬を赤らめながらそんなことを言われてもっ!
「いやいやいや……、色々ダメだから!」
「なんだ理樹君、私のことが嫌いなのか?」
「そうじゃなくて――」
「なら、いいじゃないか」
――ぴとっ
「ひゃっ!?」
――来ヶ谷さんが、僕の肩にアゴをのせ、頬を僕の頬にくっつけてきた!
……さらに胸も背中に当たっている……。
「どうした、理樹君? ほっぺたが熱いぞ」
来ヶ谷さんの顔は見えないけど、絶対イタズラな顔をしてると思う。
「うぅ……もうどうだっていいです」
「はっはっは、ようやく観念したか」
「ああ、可愛い……」
来ヶ谷さんは頬っぺたをスリスリとしてくる!
女装してからずっとだけど……。
早くこの女の子同士のスキンシップに慣れないと、身が持ちそうにない……。
――慣れたら慣れたでとてもマズい気もするけど。
「姉御のエロっ! 理樹ちゃんもエロ魔人っ! 二人合わせてこのエロエロ大使ーっ!」
いや、もう全然意味がわからない。
「ん?」
「……う」
鈴のほうを見ると頬を赤らめて、こっちを見ている。
「どうした鈴君、うらやましいのか?」
――ぶんぶんぶんぶんっ
「鈴は今じゃすっかり、来ヶ谷にくっつかれるのを気に入ってるからな」
恭介が鈴の頭をポムッと叩く。
「ちっ、ちがうっ!」
「なんだ、嫌なのか」
来ヶ谷さんがガッカリしたように言うと……。
――たたたたっ
鈴は少し離れて。
「……い、いやじゃない……」
鈴は顔を赤くして照れている。
…………。
わ、鈴かわいい……。
「ほう…理樹君も私の気持ちがわかってきたようだな」
ニヤニヤと来ヶ谷さんがこっちを見ている。
うわっ! 思考回路が徐々に女の子化してきてるよ、僕……。
「ほれクド公、わたパチ」
「わ、わふーっ!?」
「ふぁっ、ふぁちふぁちひまふーっ!?」
「理樹君、たけのこの里を食べるか?」
「あ、僕きのこの山がいいな」
「何っ? さっきから我がままだぞ、キミは」
「りんちゃん、このガムをくわえてね、穴からふーって息を吹くととってもおもしろいよー」
「……ん」
「ピヒューっ♪ ピョョーっ♪」
「す、すごいなこのガム。ハイテクだっ」
「……やっぱり酢だこさんは王道です」
「森永エンゼルパイをポテチではさみ…完成! これがリトルグルメだ!」
――休み時間の教室は、今やお菓子パーティの会場となっていた。
僕はというと、結局来ヶ谷さんに抱きかかえられたままだ。
今はさらに葉留佳さんがマネをして、クドをヒザに乗せてジャレて(いじめて)いる。
みんなで楽しくお菓子を食べていたら……。
「――来ヶ谷、そろそろ理樹を離してやってはくれないか?」
「ほう…突然どうした恭介氏」
さっきまで、謎のお菓子開発をしていた恭介が不意にそんなことを言い出した。
「恭介…別に僕は――」
「うむ、理樹君はすでにおねーさんのものだぞ」
……我ながら、人間の環境適応能力ってスゴイと思う……。
「何か…足りないとは思わないか?」
…………?
なんだろう?
そういえば、静かな気がする……。
「――あ!!」
「ご明察」
僕はそちらに目をやる。
そこには……
「……うっ……り……き……」
真っ白に燃え尽きた剣道少年がクッタリと座り込んでいた!!
「謙吾が……ショックのあまり真っ白になっちまってるのさ」
謙吾の顔からは精気がすっかり抜けている!
彼の目はどこか違う世界を見つめているようだ。
どこか、いつもより縮んでしまった気さえする……。
「謙吾、これ食べて元気だせ」
――ずぼっ
鈴が謙吾の口にうまい棒を突っ込んだ!
「わ、口動かさないね……」
謙吾は口にうまい棒を差したままグッタリしている。
「もう一本いってみよう」
――ずぼっ
鈴がさらにもう一本うまい棒を謙吾の口に押し込んだ。
――スハーッ…スハーッ
「…………」
謙吾はうつろな表情で、うまい棒を2本、口から生やしている……。
「うわ、さすがにコレはキモイですネ……」
「……この穴にフランは入るでしょうか?」
――ずぼっ、ずぼっ
西園さんが、2本のうまい棒の穴にフランを刺した。
「…………」
「……やりすぎました」
――しゅこー…ぱー……しゅこー…ぱー……
謙吾が呼吸をするたびに…うまい棒からフランが飛び出したり引っ込んだりしているっ!!
「うわっこわっ! こいつ、こわっ!」
「ふえええぇっ!? 謙吾君がきもいーーーっ!」
「わ、わふーっ!! てりぶる・ほらーなのですーーーっ!!」
「……怪奇生物現る現る」
「……前のクールだった謙吾はどこに行っちまったんだ……」
全員ドン引きだった!