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花ざかりの理樹たちへ その21 ~学校・午前中編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。



「――まあ、仕方あるまい」

「私と…そうだな『根性試し』をして勝ったら理樹君を渡そう」

「――!!」

来ヶ谷さんからの提案に、謙吾の目が精気に満ち溢れた!

「なにぃ? その言葉に嘘はないな!?」

「ああ、約束しよう」

「理樹!! 待っていろ、今助けるからなぁぁーーー!」

謙吾が立ち直った!

「最強ばーさす最強で、最強決戦なのですっ」

「……捕らわれの美女を救うために立ち上がる勇者……どんな展開か楽しみです」



「この根性試しはチーム戦だ。私はこのまま理樹君と組ませてもらおう」

「ぼ、僕も根性試しするのっ!?」

「まあ、小毬君やクドリャフカ君と組んでもいいんだが…ここはやはり理樹君が適任だと思ってな」

た、たしかに小毬さんやクドは根性試し向きじゃない……。

「謙吾少年は…恭介氏と組んでくれ」

「フフッ、本当にいいのかい? この俺と謙吾を組まして」

恭介が自信満々に立ち上がる。

「来ヶ谷――自信過剰も良いが…相手を見極めるべきだな」

ネジが外れて以来、すっかり見ることがなくなった真剣な表情の謙吾がそこにいた。

「あ、姉御っ!? いくら謙吾くんのネジが外れてても…この二人が組んだら……」

「はっきりいって、こいつらはめちゃくちゃ強いぞ」

「なに、一人一人は強くても…組めば実力が発揮されないこともある」

――すまし顔で言う来ヶ谷さんだけど……。

「来ヶ谷さん、あの二人はチームワークだって抜群だよ?」

「まあいい。無敗と呼ばれる俺の力を見せてやろう」

「正攻法の謙吾と奇策の俺…正直無敵だぜ」

「フッ…私達に勝ってから吠えるがいいさ」

来ヶ谷さんはこの二人を相手にしても自信に満ち溢れている。

「――で、その根性試しとやらの方法を教えてもらおうか」

「ふむ、言わばチキンレースだな」

「ちきんれーす?」

小毬さんが小首を傾げている。

「ニワトリさんの格好をして走り回ることでしょうか?」

「それはおもしろそうだな」

「……チキンレースとは、手法は様々ですが…どちらがより限界まで行けるかという度胸を試すレースです」

「生憎(あいにく)だが俺たちは、いつでもギリギリを楽しんでるぜ!」

……確かに!

「なかなか威勢がいいな。だが…これを見てもまだそんなことを言っていられるか?」



――ズバッ



来ヶ谷さんがお菓子の山から一つの袋を取り出した!

こ、これはっ!?

「う、うーん? ふつうのポッキーだね」

来ヶ谷さんはポッキーの袋を持っていた。

「チーム戦、チキンレース、ポッキー……どうだ、理解できたか?」

ま、まさか……。

同じ回答に至ったであろう恭介と謙吾の顔が、見る見る青ざめていく!

「ご明察。ポッキーゲームで勝負だ」

「えええぇぇぇぇーーーっ!?」

「ぐはあぁぁぁぁーーーっ!?」

「ぬおおぉぉぉぉーーーっ!?」

さっきまで自信満々だった二人が真っ青になって頭を抱えている!

「最強コンビが最低コンビに早変わりしちまったぁー!!」

恭介が真人並みに悶絶している!

「ちょ、ちょっと待て来ヶ谷」

「うむ、ちょっと待たない。それとも何か? 男に二言があるとでも?」

「ぐっ……」

うわぁっ、来ヶ谷さんの目がギラギラと輝いている……。

「さ、さすが姉御……やることがエゲツないですネ……」

「ぽっきーげーむとは何でしょうか?」

クドはどうやらポッキーゲームを知らないようだ。

「クーちゃん、それはあれだよ」

「ポッキーを折らないようにまるまる飲み込めるか試すんだよ」

「ってそんなのやるですかー!?」

「やるですかー!?」

「いや…やらんが…」

小毬さんとクドはすごい勘違いしてるし。

「ポッキーゲームとは二人がポッキーの両端をくわえ…どこまで口を近づけることが出来るか試す根性試しだ」

「そ、それは…でんじゃらすなゲームなのですっ!」

「まあルールは至ってシンプルだ」

「二人でポッキーを両端から食べていき、余ったポッキーが短い方を勝者とする」

「もちろんチキンレースだから、口がついてしまったら即アウトだ」

それを聞いて少し安心した。

「なんだ理樹君、残念そうな顔だな?」

「してないからっ!」

「キミはもっと、ウヒョッスくちびるゲットだぜと、どこぞのコレクター少年のようにはしゃいでもいいんだぞ」

「いやいや、そんなはしゃぎかたしないから」



「では…まずは無敗のコンビからやってもらうとするか」

謙吾たちのほうへ「やれるもんならやってみろ」と言う様な来ヶ谷さんの目が向けられる。

「謙吾…ここまで言われて引いたら、男が廃るぜ」

「ああ…理樹を取り戻すためにも、致しかたあるまい」

「恭介さんに謙吾くーん、がんばれ~」

あまり事態をわかっていない小毬さんからのエールが響く。

「よし謙吾、作戦だ」

「謙吾はポッキーをくわえているだけでいい。下手に動くと恐ろしいことになりかねん」

「了解した」

「後は、俺がうまいこと攻めてやるさ」

――作戦会議をしているところに西園さんが近づき、恭介の袖をひっぱった。

「……い、今のところをもう一度お願いします」

「ん? あ、ああ……」

「俺がうまいこと攻めてやるさ」

西園さんは頬を染めている!

「も、もう一度お願いします」

「お、俺がうまいこと攻めてやるさ」

「……大満足です」

頬に手を当てながら、キャッと恭介から離れていく西園さん。

「なんだこの敗北感はあぁあぁーーーっ!?」

――ゲームが始まる前からボロボロだった!