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花ざかりの理樹たちへ その43 ~学校・午後編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。


■■■ 注意 ■■■
「その43」「その44」「その45」にはオリジナルキャラが登場しています。
そのような展開が苦手な方は「その43」「その44」を飛ばし、「その45」からご覧ください。



***




「「「「へぇぇぇ~~~……」」」」

――僕は今、佳奈多さんに連れられ(連行され)風紀委員が集まる教室に来ていた。

風紀委員の人たちが…様々な顔つきで僕を覗き込んでいる。



「こいつが例のヤツねぇ。噂以上に可愛い顔してんじゃん」

体育会系っぽいショートヘアの女の子が、腕組をしながらそんなことを言う。

「うわぁ…とってもとっても素敵なのーっ!」

クドくらいの背丈の――恭介好みな女の子が、手をブンブン振りながら喜んでいる。

「――男子トイレに侵入するくらいだから、どんな性悪が来るかと胸を高鳴らせ期待していたのに……残念でならないわ」

頬に手を当て、大きくため息を吐く……黒づくめのロングヘアの少女。

「はぁぁ…とても魅力的な方…で、ではなくてっ! そんなお顔立ちをなさっていながら殿方の……ハ、ハレンチ極まりない行動をっ」

綺麗な黒髪のおかっぱの女の子が、うっとりしたり怒ったりと、ころころ表情を変えながらトリップしている。



「うぅ……」

まるで見世物にされているようで、居心地が良いとは言えない。

「――あなたのことは今朝から風紀委員に報告が上がっていました」

佳奈多さんが腰に手を当て、厳しい表情で僕を見据えている。

「上がってきた報告を数点、この娘に聞かせてあげて」

「わかった」

「そうだなぁ…今朝8:20分、男子生徒が女子生徒に見とれてチャリでこけた、これが最初の報告だな」

「1件なら話題にも上がらねぇだろうけど、13件もあったとなれば嫌でも耳に入ってくる」

「あとねっ、あとねっ、お昼休みに女の子にご飯をおごったせいで自分がお昼ぬきになっちゃった人がいっぱいいたのっ」

「けどね、みんな口をそろえて『俺たちゃぁ…それでも幸せなんだぜ…』って最高の笑顔だったのっ」

「それと先程のことなのですが…そちらのお可愛らしい方を崇拝する会…いわゆる、ふぁんくらぶの発足を確認いたしました」

「ちょっと待ちなさい、その報告は私も受けていないわよ」

「――それは大丈夫よ、委員長」

「――名目はファンクラブだけど…要は『てめぇら、抜け駆けすんじゃねぇぞコラ』が主旨――」

「――誰もが牽制し合って、遠くから見守るのが関の山……放っておいても問題はないわ」

「……なるほどね」

ふぅ、と佳奈多さんがため息をつく。

「どう?」

「あなたがどれだけの人に迷惑を掛けているか、わかったかしら?」

冷たい目線が僕を射抜く。

僕のせいで迷惑がかかった人たちがそんなにいたなんて…。

「ごめんなさい……」

「私に謝られても困るわ」

「自分が目立つことくらい自覚しているのでしょう?」

…全然自覚してなかった気がする。

「これだけ問題を起こしておいて、さらに男子トイレに侵入するなんて…あなたのその脳構造を見てみたいわ」

相当に腹が立っているようだ。

「これまでに一般常識を学んで来なかったのかしら?」

「あ、いや……さっきのは……その……間違っちゃって」

佳奈多さんの威圧感に萎縮しながら、しどろもどろに答える。

「間違って……!?」

ワナワナと手を震わす佳奈多さん。

今にも髪の毛が逆立ちそうだ!

「どこの世界に、間違って男子トイレに入った挙句に男子の順番待ちに並ぶ女子がいるというの!?」

「わわっ! そっ、それはそのっ」

あまりの佳奈多さんの剣幕に後ずさる。

ここで『実は女装』なんてバレた日には…僕の存在は闇へと葬られる…そんな気がする!

「まぁ、まぁ、まぁ…落ち着けって委員長」

「こいつの様子を見るかぎり、愉快犯ってわけじゃなさそうだしよ」

「そうなのっ、ワザとそんな悪いことをするような人には全然見えないのーっ」

「――この娘はただの天然素材、そう極上の天然ものだわ……」

「はぁ…こんなにお可愛らしい方なのに、うっかり男子トイレに入ってしまわれる茶目っ気……」

「で、ではなくてっ…僭越(せんえつ)ながら、ハレンチ極まりない行動ですが情状酌量の余地があるのではないでしょうか」

風紀委員の人たちが、僕と佳奈多さんの間に立つ。

「何…? 風紀委員であるあなたたちも、私ではなく、この娘の味方をするというの?」

佳奈多さんが怒りの目線を風紀委員の女の子たちにぶつける。

「だから少し頭冷やせって」

「委員長の敵ってわけでも、こいつの味方ってわけでもねぇけど…こいつが初犯ってことは確かだろ?」

「…………」

その言葉を聞いて、佳奈多さんが押し黙る。

「はぁぁ……」

長いため息を吐く。

「まあ、いいでしょう」

「本来ならば職員会議ものですが、初犯ということもあるので…今回に限り不問とします」

「よ、よかったぁ」

僕はホッと胸を撫で下ろす。

周りの風紀委員の人からも「よかったなっ」や「――可愛い…それだけで罪なのね」など声を掛けられる。

「――ただし」

佳奈多さんに睨まれる。

「これからやる、空き教室の掃除を手伝ってもらうわ」

「それくらいの罪滅ぼしは当然よね。学校に迷惑を掛けたのは確かなのだから」