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花ざかりの理樹たちへ その67 ~放課後編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。





「あー、いや……その……」

「?」

言い淀(よど)む僕に大ききな瞳を向け、不思議そうに見つめる佳奈多さん。

「……?」

「うっ…」

そ、そんな信頼しきっている目を向けられてもっ!

僕の返事を待っているその目は、疑うことを知らない子どものように……琥珀色にどこまでも透き通っている。

「……ぅう……」

ど、ど、どうしようっ。

僕は困り果てて、来ヶ谷さんを目を向けた。

「うむ…」

気持ちを悟ってか、来ヶ谷さんがコクリと頷いた。

「佳奈多君」

「何?」

「実はな」



「――理樹君はキミの目の前にいる」

「……え……?」



い、言っちゃったーっ!

恐々(こわごわ)と佳奈多さんの顔を見ると…。

「……」

キョトンとした顔でこちらを見ている!

うわわわっ、ど、どうしようっ!?

け、けど、もう来ヶ谷さんが言っちゃったし…。

――ゴクリ。

僕は……意を決した。



「……もしかして……」

目が点になっている。

「……うん、実は僕……」

「――それ、のことじゃないでしょうね?」

佳奈多さんが訝(いぶか)しげな表情で僕の方を指差す。

その指は僕を飛び越えて、さらに後ろを指している。

「え?」

佳奈多さんの目線と指の先を辿ると…。



「へっ――そうです。私が、直枝理樹です」



「え、ええぇぇぇーっ!?」

そこには真人がマッシブ的なポーズを決めて立っていた!

しかも裏声っ!

「――いつもは僕、華奢なんだけど今日は湿気で膨らんじゃったよっ(裏声)」

「――そうだっ今日は真人の分まで宿題をやった後に筋肉賛歌を歌わないとっ(裏声)」

え、それ僕のマネっ!?

しかもさり気なく僕に宿題を押し付けてるしっ!

「……」

「……」

佳奈多さんの絶対零度の目が痛い。

「……」

「……」

「……」

「……」

「ぼ、僕、直枝理――」

「冗談は頭と顔と体だけにしてくれないかしら?」

「それ全オレじゃねぇかぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁぁぁぁーーーっ!!」

あ。真人が崩れ落ちた。

「いやまあ」

今のは仕方ないと思う。



「――で、なんの冗談だったのかしら?」

不機嫌そうな佳奈多さん。

「冗談はさておき…」

来ヶ谷さんが僕の方に近寄ってきて、後ろに立った。

「このコが」

がしっ。

両手で僕の肩を挟む。

「――直枝理樹君だ」

来ヶ谷さんの顔は見えないけど、絶対イタズラな笑みを浮かべてると思う。

「………………はぁ」

「私を騙したいなら、もう少しまともな嘘をつきなさい」

佳奈多さんが大きく溜息をつく。

「――ふっふっふ…お姉ちゃん、嘘ではないのですよ、嘘では」

チッチッチ、と得意満面の葉留佳さんが僕の横に立った。

「ここにおわすプリティ理樹ちゃんこそ――じゃかじゃかじゃかじゃ~~~~んっ」

…自分の口でドラムロールを奏でている。

「正真正銘絶体絶命あの直枝理樹くんその人なのだーっ!!」

スターの登場を引き立てるかのように、立ち膝で手をキラキラと振っている。

「この私が保証しますヨ!」

ふう、と一息つく佳奈多さん。

「葉留佳の保証がついたなんて、もうどうしようもないじゃない」

「って、全く信じてもらえねぇーっ!」

しかも余計に悪化してるし。

佳奈多さんが腕組をして、呆れた目線を二人に向けた。

「何の冗談かはわからないけど、あなたたちの下らない冗談に付き合わされているその女子が可哀想ね」

「――そもそも直枝理樹は男子でしょう? 騙されようがないわ」

「今、来ヶ谷さんの前にいるその女子は…」



――じぃぃぃ~っ



佳奈多さんは僕を上から下まで見つめると、

「はぁぁぁ…」

なぜか深い溜息ひとつ。

「溜息もつきたくなるわ、同じ女性として」

「理想の女性を絵に描いたとしか思えないくらい」

「いーやいやいやいや……」

そ、そんなことを言われてもめちゃくちゃ困るっ!

なんせ僕は理想の女性以前に……男だからーっ!

「謙遜の必要は全くないわ」

佳奈多さんは僕の困り顔を謙遜と受け取ったらしい。

「容姿端麗、温柔敦厚…ね」

――えっと『温柔敦厚』は…穏やかで優しく親切で心遣いのこまやかなこと、だっけ。

「まったく…ここまで犯罪的な魅力だと、何の気兼ねなく褒められるわね」

犯罪的って!

「あなたは女性として十二分に魅力的」

「そのことに堂々と胸を張っていいと思うわ」

開き直ったのか、僕に笑顔を向けて誉めてくれる佳奈多さんだけど…。

僕…一応…男…。

ここまでハッキリと太鼓判を押されると……なんか、もう自信がなくなってきちゃったよ…。

「直枝理樹に関しては――そうね…」

考え込むような仕草を見せる。

「男性ホルモンをどこかに忘れて来たんじゃないかと思えるくらい、女子にしか見えないときがある」

「そこだけは認めるわ」

「そこだけは認めないでよっ!」

思わずビシリとツッコむ!

「…へぇ、なるほどね」

僕の顔を覗き込む。

「ふぅん」

「確かに、ツッコミは直枝理樹の切れのあるそれと瓜二…つ…………――」

「――――……」

僕の顔を見つめたまま、急に停止した。

「……え……?」

「…そ、そんなことない…」

「……………………」

「………まさか………」

佳奈多さんの大きな瞳が収縮していく。

「け、けど、そう言われてよくよく見ると……」

「……うそ……そんなことあり得ない……」

どうやら佳奈多さんが気付き始めたようだ。

なるべくなら隠し通したかったけど…。



僕は観念して、口を開いた。

「騙すつもりはなかったんだけど……」

「僕――直枝理樹…だよ」



「………――――――」

佳奈多さんの顔はまるで宇宙人と遭遇しちゃったような顔だ!

「…………………………」

「え、えっと」

「…………………………」

「ごめん」

「…………………………」

「もっと早く言えばよかったんだけど…」

「――ぱーくぱく――ぱくぱく――」

何かを話そうと口をパクパクとしているが、全く言葉になってない!

「あはははははお姉ちゃん鳥みたいーっ!」

「二木さんの気持ち分かるよー。私も最初は声も出なかったよー」

ニコニコと小毬さん。

「どうですか佳奈多さんっ! リキは学校に舞い降りたえんじぇ~るなのですーっ」

わふーっと飛び上がるクド。

「しょーじき、可愛すぎて困る」

自慢しだす鈴。

「……わからなかったのも無理はありません」

「……まさかここまで見事に変身してしまうとは、わたしたちも予想外でした」

「お姉ちゃんも恥かしいくらいにベタ褒めでしたネ、さっき」

「はっはっは、佳奈多君の言葉を借りるならば、『理樹君は理想の女性像』だからな」

ニヤニヤが止められない、といった顔をしている3人。

佳奈多さんはというと…。

「――――……」

目が点だ…。

「――……ちょ、ちょ、ちょ……っ……」

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ちなさいっっっっ!!」



――ビシーーーッ!!



佳奈多さんが音がしそうなほどの勢いで僕を指差してきた!

「あ、あっ、あなた――直枝理樹っ!!」

「な、なに?」

「ほ、ほっ、ホントのホントのホントに直枝理樹なの!?」

「う、うん」

「……………え、え、」



「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーッ!?!?」



大気を揺らすんじゃないかと思うほどの大絶叫!!

佳奈多さんがこんなにも驚くのを見るのは、後にも先にも今日だけかもしれない!

「エェェェェェ――――――…………」

「――――――コホッコホッ! ………………ハァ、ハァ、ハァ……」

息も絶え絶えといった感じだ!

「だ、大丈夫…?」

「コレ…」

「コレが…」

「コレで……」

「おとこぉーーーーーーーーーーーっ!?」

「あ、あははは……まあ……」

「うむ、生物学上は男に分類されるはずだ。恐らくな」

もう泣いてもいいかなぁ、僕。

「う…うそっ!」

まだ信用できないといった佳奈多さんの顔。

「……信じられないというその気持ち、わかります」

西園さんも僕を見て、コクコクと頷いてるしーっ!

「けど…けどっ」



――ズビシーッ!



佳奈多さんが僕の胸を指差す!

「さっき、この子の胸を結構触ったけど、あの感触は間違いようがなく本物のそれだったわっ!」

「って、そんなこと力説しないでよーっ!」

「はっはっは、なんせ理樹君が入れているのは、この私が選びに選び抜いた玄人志向の極上パッドだからな」

「触り心地は本物の胸となんら変わらんよ」

来ヶ谷さんは得意満面だ!

「う、うそ…この胸が…パッド…?」

「わわっ!」

佳奈多さんの視線に思わず胸を両手で覆う!

「私も朝、理樹ちゃんの胸を触らせてもらったけど…すごかった」

「小毬さんばかりズルイのですっ! リキっ、後ほど私にも是非触らせてくださいっ」

「…わ、私もちょっと触ってみたいな…」

「ちょちょ、ちょっとクドに杉並さんまで、なななな何言ってるのさっ!?」

そんなに息を荒げてお願いされても、めちゃくちゃ困るっ!

「――ふむ、仕方あるまい」

「では外出先から戻ってきたら、みんなで紅茶を傾け優雅に談笑しながら理樹君のおっぱいを揉みしだくとしよう」

「僕の胸を紅茶の付け合せのクッキーみたいに言わないでよーっ!!」

「まあ、いいじゃないデスカ。減るわけじゃないし」

「僕の自尊心が削られていくからっっ!!」

うわわ、もうみんなの目がギラッギラしてるように見えるっ!!



「――ふーきいいんちょーはなんで理樹の胸の柔らかさを知ってるんだ!?」



鈴が驚いたように佳奈多さんを見ていた。

「だからそれはさっき直枝理樹の胸を触ったとき…………」

「……………………」

「………………」

「……」

「あ」

佳奈多さんが液体窒素に入れられたように瞬間冷凍した!

勢いとはいえ、『あの時』のことを口走ってしまったのだ!      (参照:「その49」)

「「「「「……………………………………」」」」」

一瞬にして空気が収縮した!

みんなもさっきまでの騒ぎから一転して、目を点にして「え、あれ…?」という奇妙な顔で固まっている!

「…………――――ひゃ、ひゃ、ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」

頬を両手で押さえる佳奈多さん!



――ポーーーッ!!



汽笛が聞えるんじゃないかと思うほど、顔が一瞬でトマト以上に赤く染まった!

「ち、ち、ち、ちちちちちちちちちちち違うのよーっ!」

「だ、だっだからだからだから、えと、えーっと、えとえと……」

可哀想なほどパタパタと慌てふためいている!

「佳奈多さん、リキの胸をモミモミしたですかーっ!?」

「もみもみですかーっ!?」

クドと小毬さんが大きな目を真ん丸にして驚いているっ!

「そ、そそそそんなのじゃなくて!! ただ――」

「……ただ、魔が差してしまっただけですね」

「そう、魔が……のわけがないでしょうっ!」

真っ赤になって肩を怒らしている!

「はっはっは、佳奈多君もおねーさんに負けず劣らずの手の早さだな」

「ちょ、ちが、な、なななななななーっ!?」

うわっ、佳奈多さんが大ピンチだ!

みんなはここぞとばかりに佳奈多さんに攻撃しまくっているっ!!

「エロいなぁー…お姉ちゃんエロいなぁーっ」

「あれは、あれは、あ、あれは……っ」

もうオロオロだっ!

「あっ! そ、そう!!」

あ、何かを閃いたみたいだ!

チラッ

佳奈多さんの一瞬の目配せ! これはきっと合図だ!

コクリ、と僕は頷いた。

僕も上手く佳奈多さんに話を合わせて切り抜けないと!

「実は……」

「直枝理樹が私に胸を揉んで、と頼んできたよ!!」

「あ、うん、そうそう、そうだよ! 僕が佳奈多さんに胸を揉んでえええええええええええええええぇぇぇぇぇーーーっ!?」

「ちょ、ちょっちょちょちょちょと待ってっ!?」

が、時すでに遅し。

「ブハァァァァッ!」

「あ、姉御ーっ!?」

「ふえええぇぇーっ、ゆいちゃんが鼻血ぶーしたーっ!」

「こちらでは井ノ原さんが大往生しているのですーっ!?」

「ちちちちちちち違うんだよ、い、今のは――」



――ガシッ!



「はぁはぁはぁぁはぁは……み、皆まで言うな」

僕の肩をガッシリと掴んだ来ヶ谷さんの顔は…鼻にティッシュを詰め、息を荒げ、目は非常にアブナ気だっ!!

「……直枝さんは、この1日ですっかりと女性に目覚めてしまった…ご自分の豊満な胸をどうしても自慢したかったのですね」

「直枝くん、大切な友達にはそんなこと言えなかったんだよね。みんなの自分を見る目が変っちゃうのが怖かったから……私もその気持ち、わかるよ?」

「……わたしたちには恥かしくて頼めない。そこで白羽の矢が立ったのが、我々と程々に交流もあり口の堅い風紀委員長、二木佳奈多さんだった…」

「いやいやいやいや!?」

とてもとても自分達に都合のよい推理ショーを繰り広げている西園さんと杉並さんっ!!

「理樹ちゃん、水くさいぞーっ!」

「すまない……キミのその悩みに気付いてやれずに」

「いやっ、だからっ――わぷっ!?」

小毬さんの人差し指が僕の唇に当てられた!

そして春の陽気のような笑顔で、ゆっくりと首を振った。

も、も、もしかして、これ……もう何も言わなくてだいじょーぶ、ってことーっ!?

「――理樹君がそんな悩みを抱えていたなって、おねーさん大失態だよ」

「てっきり嫌がると思って自粛していたのだがな、それが仇(あだ)となってしまったのか」

く、来ヶ谷さんの目がランランと輝きを放っている!

「――みんな聞いてくれ。我々の大切な親友の悩みだ」

「佳奈多君にばかりその役割を押し付けているわけにはいかない、そうは思わないか?」

「「「「「思うーっ!!」」」」」

見事なまでの一致団結!!

「では、理樹君のために、理樹君を揉みくちゃにしてやろうではないか!」

「「「「「「おーーーーーーーーっ!!」」」」」」

みんな満開の笑顔で高らかに拳を突き上げたっ!!

しかも半数くらいは本当に僕のためだと思ってるから、余計にタチが悪いーっ!

「ちょ、ちょっとみんな落ち着いてよーっ!」

なんとか流れを止めようと割って入った!

「……そうですみなさん、待ってください。ここは公衆の面前ですよ」

「に、西園さーんっ!」

やっぱり西園さんはそういうことをわきまえている!

「……スキンシップ程度に抑えましょう」

西園さぁぁぁぁんっ!!

「も、もうっ……うぅ~っ」

僕は大元凶の佳奈多さんに恨みの目を向けた!

佳奈多さんの顔からは「まさかこんなことになるとは思わなかった。けど、こうする他なかった。これが最善の策だったのよ」と読み取れるっ!

そうしているうちにも…。



「理樹ちゃ~んっ、理樹ちゃん理樹ちゃ~んっ」

ぽふんっ、と前から小毬さんが飛び込んできた!

「理樹ちゃぁ~ん…」

「うわわわっ、小毬さん! そんな顔でホッペ擦り付けてこないでよーっ!!」

「とっかんとっかんー、なのですーっ」

さらにクドが腰の辺りをぎゅっとしてくるっ!

「理樹ちゃんの後ろはいただいたーっ――て、え? むぎゅぎゅ~」

「葉留佳君の後ろもまとめて、おねーさんがいただいた」

葉留佳さんをサンドイッチにして、来ヶ谷さんが後ろからギュギュと抱きしめてきたっ!

「あ、あたしは…手…でいい」

恥かしそうに僕の右手の人差し指だけをキュッと握ってくる鈴!

「わ、わたしも……いいかな…?」

杉並さんは僕の左腕の袖だけをクイと摘まんでいるっ!

「……では、わたしは撮影に回るとしましょう」

それはそれで嬉しそうな西園さん!

「…………」

佳奈多さんは、一歩離れて「あちゃぁ……」といった表情だ!

「じゃあ、オレは理樹の足にしがみ付くぜっ!!」

真人まで来るつもりなのっっ!?

「……通報しました」

「つーほうしたぞ」

「通報しちゃったよー」

「通報したのですっ」

「通報を受けたからには風紀委として罰するわ」

「オレだけかよぉぉぉーーーっ!? なんでオレは男なんかに生まれてきちまったんだぁぁぁーーーっ!?」

え、そこから後悔っ!?





――遠くの河原でランニングしている柔道部がこちらを見た順に血の海を築く中、僕の男としての自尊心は女子全員によって揉みくちゃにされていった…。





***



『ああ、勘違い』(ボツシーン)









「あ、あっ、あなた――直枝理樹っ!!」

「な、なに?」

「ほ、ほ、ホントのホントのホントに直枝理樹なの!?」

「う、うん」

「……………え、え、」



「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーッ!?!?」



空気を揺らすんじゃないかと思うほどの大絶叫!!

佳奈多さんがこんなにも驚くのを見るのは、後にも先にも今日だけかもしれない!

「エェェェェェ――――――…………ハァハァハァ……」

肩で息をしている佳奈多さん。

「だ、大丈夫…?」

「――直枝理樹、あなた…あなたねぇ!」

うわっ、佳奈多さんの目がコワイ!

「いや…騙すつもりじゃなくて…言い出せなかったというか…」

しどろもどろになってしまう!

「あなた……」

プルプルと怒りに肩を震わせている!

「――そうね、それなら今まで疑問に思っていたことに合点がいくわ……」

「ご、ごめん!」



――すぅぅぅぅぅ~っ!

佳奈多さんが大きく息を吸い込んだ!



「今まで男と偽って学校に通っていたのねっっっ!!」



「そっちぃーーーっ!?」