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花ざかりの理樹たちへ その71 ~放課後編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。





場内はまだ興奮冷めやらぬような状態だ…。



「理樹ちゃん、とっても可愛かったよ~……ネコミミはどうかな?」

「一家に一台欲しいな……それいいな、こまりちゃん」

「僕を家電みたい言わないでよ…」

「……まだ顔が赤いですよ」

「そう思うならさ……」

「このリボンなんて直枝に似合うんじゃないかしら」

「それは中々のはいせんすな選択なのですーっ」

「自分で着けてあげたらどうだ、佳奈多君」

「絶対嫌よ」

「じゃあ、私が直枝くんにつけてあげる…ね?」

「僕の髪で遊ぶのやめてよ…」

「「「「「「 きゃーっ、かっわいいーっ 」」」」」」

「話聞こうよ…」



今、僕の頭は女性陣の格好の遊び場になってしまっている…。

さっきのコスプレを見て…僕に色々したくなってしまったようだ。

朝から何回も思ってるけど。

女の子って本当にこういうことが好きだよね……はぁ。

「どうだ理樹君、ウヒョヒョ女の子たちに攻められてドMな僕は今最高にハイってヤツです、と思い始めた頃ではないか?」

「そんなこと1ミリたりとも思いもしないからっ!!」

うぅ…。

次は辞退させてもらいたいよ…。



「――理樹がいい感じに盛り上げてくれたところで、次のモデルを選ぶぞ」

次のジャンケンだ。

周りを見回すと「早く次の女の子のコスプレを見せろ」や「お姫様みたいな服が着たいな~」や「ふっ…正直なところ俺は巫女服が着たい」や「ならオレは裸エプロンだっ!」などと気合十分なようだ。

一部、絶対に見たくないものが含まれている気がするけど。

…あれ?

こんなときにいつもうるさいはずの葉留佳さんが妙に静かだ。

葉留佳さんを見ると…。

「…………」

なにやら口元が小さく動いている。

何かを呟いてるみたいだけど……グー、かな?

…………。

このゲームのルールは、誰か一人が違う手ならその人がモデルだ。

…葉留佳さん、もしかしたらモデルになりたくない誰か(なんとなく見当つくけど)と組んでいるのかもしれない。

……なら、僕もグーを出せば少なくとも『一人だけ違う手』という状況にならないはず。

「準備はいいな?」

「最初はグーッ!!」

「じゃーん、けーんっ」

「「「「「「「「 ぽんっ 」」」」」」」」

全員が一斉に手を出す!



「ほう…」

「……みなさん、見事にグーですね」

僕も手を見回すけど、綺麗にグーが続いている。

が、一箇所で目が留まった。



チョキ。



一人だけチョキがいた。

手の先に目を移すと……。

「――……は?」

キョトンとした佳奈多さんだ!

「……」

自分のチョキの手を呆然と見つめていたが。

「……ちょ、ちょっと葉留佳っ!!」

葉留佳さんに食って掛かった!

「どしたの、おねえちゃん?」

「どしたの、じゃないでしょう!?」

「チョキ出そうって耳打ちしておいたじゃないっ!!」

って、自ら談合していたことをバラしたっ!

「エー。ナンのコトやらサッパリワーカリマセーン」

とても胡散臭い外人風になっている葉留佳さん。

「だから一緒にチョキ――」

「あ…ああっ!?」

今さらしまったという顔になって僕たちを見回している。

……。

佳奈多さんって、隙が無さそうに見えるけど結構ドジ踏むんだよね…。

「…ま、その辺はバレなきゃオーケーだ」

「いいのかよっ!?」

「ああ」

「ゲームのルールの裏をかくのもまた一興…」

「そうだろ、理樹?」

「いや、僕に確認取られても困るけど」

「なんであれ、一人だけ違う手ならモデルになる、それがルールだ」

「く…っ」

下唇を噛む佳奈多さん。

「……わ、わかりました! やります! やればいいんでしょう!!」

プンスカと怒った佳奈多さんが、肩を怒らせたまま更衣室へと消えていった…。

「着替えの手伝いだが…」

「はいはいはーいっ!」

恭介が言い終わる前に元気に葉留佳さんが挙手。

「おねえちゃんで着せ替え遊びしたい…じゃなくて着替えの手伝いは私がするーっ」

「じゃあ三枝と西園、また頼んだぞ」

「あ、みおちんは今回は見る側に回ってもらっていい?」

「やはは、おねえちゃん恥かしがり屋だから、私一人で着替えさせるー」

「……わかりました」

葉留佳さんも更衣室へと飛び込んでいった。



――バタム。



「……実はな」

更衣室の扉が閉じられてすぐ、恭介が口を開いた。

「三枝が作戦練ってるみたいだったからな、俺も乗ってみたくなってグーを出しちまった」

「……ごめん、実は僕もだよ」

僕はやりたくなかっただけだけど。

「私もだ。こうでもしなければガードの固い佳奈多君のコスプレ姿なんて見る機会が無さそうだからな」

「あうぅ…じつは私もはるちゃんの口見てグーだしたんだよ~…」

「お洋服は着たいけど……理樹ちゃんの次はちょっと」

「私もリキの次は荷が重過ぎますので…その三枝さんの口元を見てグーにしました…」

「ごめん、あたしもやりたくなかったからはるかに合わせた…」



どうやら佳奈多さんは裏をついたつもりで、葉留佳さんの作戦にまんまと乗せられてしまったようだ。



「へ? オレは筋肉の赴くままに拳を突き出した」

「奇遇だな真人、俺もだ」

「え? え? どうしたの、みんな……??」

3人ほど例外がいたけど。





『わ、おねえちゃんスポーツブラ!?』

『な、なによ、別にいいじゃない』

……中からは生々しい会話が聞えてくる。

「――あの二木がコスプレか…想像もつかんな」

「普段は絶対にしなさそうだもんね~」

小毬さんはいいとして、あの謙吾まで佳奈多さんのコスプレが気になっているようだ。

「……宮沢さんも気になりますか」

「そうだな、気にならないと言ったら嘘になる」

へえ…。

結構意外かもしれない。

「ほう、キミも女子に興味があるのだな」

「てっきりガチホモの類かと思ったが」

うわっ!? 来ヶ谷さんはいつも一言多いっ!!

謙吾はただ、性格上女の子を遠ざけてしまっているだけなんだと思うけど。

「なんだとぅ…!?」

これにはさすがの謙吾もそれにはカチンと来たようだっ!

「来ヶ谷…おまえは俺をどういう目で見ているのだ?」

「こういう目だが」

「…ならハッキリと言わせてもらおう」

「ふむ」

大きく息を吸う謙吾。



「俺は理樹にしか興味はないっ!!」



「ええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇーーーっ!?!?」

アホなことを完璧に言い切ったっ!!

「こいつ馬鹿だっ!!」

「なるほど…否定したかったのは前者のほうだったか…」

「少年の心はまこと度し難い…」

鈴も、話題を振った来ヶ谷さんまで呆れ果てているっ!

僕の肩にガシッと手を置く謙吾。

「俺にはおまえしか見えていないから安心しろ!」

「いやいやいや…それ余計安心できないし、お願いだから女の子を見てあげてよ…」

真剣な眼差しで異様に男らしい謙吾。

…そこがまたイヤだ…。

「おい謙吾…オレの方が理樹が好きだっ」

「って、真人まで対抗心燃やさなくていいからっ」

いつものように二人がにらみ合いを始めた!

「生憎だが、俺の愛はこれくらいはあるぞ!」

謙吾は両手を目いっぱい広げている!

「んだとてめぇ…ならオレは」

思いっきりジャンプして上に手を伸ばす真人!

「これくらいだっ」

「なんだと…」

めちゃくちゃ子どもっぽい争いが巻き起こっている!

「理樹ちゃんは、とっても幸せ者さんだね」

「ごめん小毬さん…とっても不幸だよ」

親友二人から愛を語られるなんて不幸以外の何者でもないと思う。

「待て待て待て、おまえら」

ようやく恭介が二人の間に割って入った!

これでやっとわけのわからない争いも…。

「俺はここから」

壁の端にタッチした後、ダーッと向こう端まで走りさらに壁にタッチする恭介。

「これくらい理樹が好きだぁぁぁーーーっ!!」

「えええぇぇぇーっ!?」

恭介も対抗したくなっただけだったーっ!!



「いいかげん……」

「きしょいんじゃおまえらーっ!!」



――どすっ! げすっ! ばきぃ!



「「「ゴメンナサイ…」」」

鈴の鋭い蹴りが三人の後頭部に炸裂し、3人は轟沈した…。

「西園さん、西園さん、お気を確かにっ!!」

「……1人の男性を3人の男性で奪い愛……我が生涯に一片の悔いなし……カクッ」

「西園さぁ~んっ!?」

傍らでもう1人至高の笑顔で燃え尽きていた…。



そうしているうちに

――ガチャリ。



更衣室のドアが開いた。

まず出てきたのは葉留佳さんだ。

「ではでは、二木佳奈多のとーじょーっ!!」

「みなさん拍手でお迎えくださいーっ」



――パチパチパチパチー



拍手とともに佳奈多さんが出てきた。

不貞腐れたような表情でツカツカと僕たちの前まで歩いてくる。

「フン」

いつものように腕組みをして僕らの前に立つ。

「うわぁぁ……かなちゃん似あってるよ~」

「浴衣がとてもお似合いなのです~っ」

「ああ、佳奈多君にはこのような落ち着いた衣装がよく似合うようだな」

佳奈多さんのコスチュームは、浴衣だ。

しかも普通のではなく、ミニ丈の浴衣を着ている。

袖は手まで隠れるか隠れないかという、少々長めサイズ。

ミニ丈から伸びる白肌の素足。花をあしらった可愛らしいサンダル。

組んでいる手には…律儀に水風船を持っている辺りが凝っている。

「……しかも髪をアップにしているのが高得点です」

長い髪を上で綺麗にまとめていて、佳奈多さんのスラリとしたうなじが強調されている。

だから結構時間かかってたんだ…。

「着たわ」

当の佳奈多さんはというと、着飾っているのに普段どおり愛想無し素っ気無しだ。

「フン、もういいでしょ?」

ツンとそっぽ向いている。

けど。

――ぽよん、ぽよん、ぽよん。

ツンとそっぽ向いて腕を組んでいる佳奈多さんだが…下にしているほうの手に持った水風船をさり気に弾いて遊んでいる。

――ぽよん、ぽよん、ぽよん。

たぶん…似合ってると言われたのに照れてるんだ。

そんなところがなんとも佳奈多さんらしい。

「佳奈多さん」

「何よ?」

「とても可愛いよ」

思ったことをそのまま口にした。

「…………………………は?」

唖然とした顔で僕を見る佳奈多さん。

「…え、はあっ!?」



ポーーーッ!!



汽笛が聞えるんじゃないかと思えるほどの勢いで佳奈多さんの顔が色づいた!

「なっ、ななな、なに言い出すのよ!?」

「え? ど、どうしたの?」

「はあっ!? 何!? 何なの!?」

「いや…だから…」

「訳がわからないわっ!!」

聞いちゃいない!

「そっそっそんなこと言って何のメリットがあなたにあるというのっ!?」

「何、その…その……その……かゎ……かゎぃ」



プシュ~~~~ッ!



自分で言ってて余計に真っ赤になる佳奈多さん!

「ぁぅぅ…………――――――」

「――――――――――」

「―――」

「か、かなちゃんとまっちゃったね……」

「あ、あの佳奈多さん…?」

「――――………………」

「…………プルプルプル」

「か、佳奈多さん?」

なぜか真っ赤な顔を僕に向けて、肩を怒らせ始めた!

「ど、どうしたの?」

よく分からないけど、怒っているようだ!

「僕はただ佳奈多さんがかわ――」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」



――バィンッ!



水風船をぶつけられたっ!

「うわっ! ちょっ……」

止める間もなくズカズカと更衣室に戻っていった!

――バコッ

「はうっ!?」

更衣室に入る前に足を扉にぶつけてるし…。





「佳奈多さん、いきなりどうしたんだろう?」

別に僕は変なことはしていないはずだ。

……たぶん。

「乙女心をわかってかわからないのか……理樹君も随分と罪作りだな」

妖しい目を向けてくる来ヶ谷さん。

「…?」

小首をかしげる。

「……そんな気付いていないところが余計に罪作りです」

うんうんと頷く西園さん。

「なるほどリキは魔性の女なのですね」

「なんだ? 理樹は魔性の女だったのか?」

クドと鈴までみんなに合わせてるけど…。

「とりあえず女じゃないからね…」





更衣室からは。

『はい、水』

『あ、ありがと……ゴキュゴキュ、ぷはっ!』

『おねえちゃん、脱がないの?』

『………………』

『まだ着てる』

と言う声が聞えてきていた…。