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花ざかりの理樹たちへ その77 ~放課後編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。




「――やっぱり最後はこうなっちゃうんだね……」

今僕は、更衣室のイスに座っている。

「はぁ…」

いやまあ、予想していたというか、何と言うか…。

コスプレ大会の最後を飾るのは僕…。

それが決定事項だったようだ。



「やーやー、お待たせお待たせっ」

「……お待たせしました」

着替えを手伝ってくれることになった葉留佳さんと西園さんが戻ってきた。

「やっぱりシメは、これで確定だよねっ!」

「これって?」

「……こちらです」

恐る恐る西園さんと葉留佳さんが二人で大切そうに運んできた服を見ると……。

「え、えええーっ!? そっ、それって……!?」



最初に目に飛び込んできたのはオフホワイト。

見るもの全てを魅了してしまいそうな、独特の美しい光沢を放つシルク生地だ。

腰の辺りからは繊細なビーズと流麗なドレープ(布が垂れたひだ)が印象的なドレススカートが伸びている。

ドレスはさらに透明感の溢れる薄桃色のチュールでラッピングされている。

その高貴で気高い輝きは、他の服とは一線を画していた。



「これって――」

「ウ、ウェディングドレスぅぅぅーーーっ!?」

「はい」

「いや、これまさか……ぼ、僕が、き、着る…んじゃないよね?」

「え? 理樹ちゃんしか着る人いないじゃん」



――パークパクパク。

あまりの衝撃に声がでない!

「……直枝さん、陸に打ち上げられた魚のような口をしてどうしたのですか?」

「あはははは、あまりの喜びに声も出ないようですネ」

「……」

「……」

「ウェデぇええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇーーーっ!?」

「あや~、すんごい驚きぷりだね?」

「いやいやいやいやっ、き、着れないからぁーっ!」

「……サイズならピッタリですよ?」

「そういう意味じゃなくてっ!」

ウェディングドレスなんて着たら……。

「僕もう男としてやっていけないでしょーっ」

「ダイジョーブッ!」

「もう理樹ちゃん、女の子として上手くやってるじゃん」

「ぶっ!!」

それ、まったく大丈夫じゃないっ!

「……それに」

西園さんが僕のスカートのプリーツを直し、胸のリボンを正す。

そして僕の胸をワンタッチ。

「やぅっ!?」

思わず反応してしまったっ。

「……この直枝さんを男と思えというほうが無理です」

「い…いやいやいやいやっ!」

ああああーーーもうっ!

みんなの中では女装の僕の方が普通だという認識になっちゃっているようだっ!

け、けど!

なんとかして女の子の夢を集大成した象徴・ウェディングドレスを身にまとうのは避けたいっ!

「あ、ほ、ほら!」

無理に言い訳を紡ぐ!

「さすがにそれ、僕なんかが着たらウエディングドレスに悪いというか――」

「理樹ちゃん男らしくないぞーっ」

「ってそれ、さっきと言ってることが矛盾しまくりだよーっ!」

「揚げ足取りなんて、淑女としてそれはどうなのでしょう」

「ええええええぇぇぇぇーーーっ!?」

都合のいいように性転換されてるしっっ!!

「観念、しましょうか……」

「もう後戻りできないのデスヨ…」

「うわ、うわわ、うわわ……」

西園さんと葉留佳さんが手をワキワキさせ、不敵な笑みを浮かべながら僕に近寄ってくるっ!

「「 レッツお着替えタ~イム 」」

「ひ、ひ、ひ、ひゃぁぁぁーーーーーーー………………――――――」





――更衣室内にある大鏡の前に立つ。

「……これが……」

ゴクリ、とツバを飲み込む。

「……僕……?」

「「はぁぁ……」」

横に並んでいる二人から熱い吐息が漏れた。

「み、みおちん…」

「な、なんでしょう……」

「わ、我々はとんでもないものをコーディネートしてしまったのではないでしょーかネ…?」

「まさかここまで麗しの花嫁が完成するとは思ってもみませんでした…」

「「はぁぁ……」」

鏡越しに向けられる二人の潤んだ眼差しと、熱い吐息。

「ここまで来ると嫉妬とか通り越して、拝みたくなっちゃいますナ…」

「女性のわたしたちでも溜息をついてしまうほどの美しさです……」

「「はぁぁ……」」



鏡の中には、きらびやかなウェディングドレスに身を包んだ……お嫁さんが立っていた。  (mによる妄想画)
http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana/web/ss/riki01.png

頬は桜色に上気し、潤んだ瞳がベールから覗いている。

僕がベールを手で揺らすと、鏡の中の彼女もベールを揺らす。

僕が手を頬に添えると、彼女も手を頬に添える。

うわ…。

………………。

正直

可愛かった。

「って僕は何を考えてるんだぁぁぁーーーっ!!」

「なんかものすごい苦悩が見て取れるねぇ」

「……そろそろみなさんにお披露目と行きましょうか」

そうだった…みんなにお披露目するんだっけ。

うぅぅ。

着るには着たけど…。

「やっぱりめちゃくちゃ恥かしいよーっ!」

「ええぃ、往生際が悪いぞ理樹ちゃんーっ」





――ガチャ…

「「「「「「 おおおおおおおおーっ!! 」」」」」」

葉留佳さんが扉を開けた瞬間、場内が沸き立った!

嬉しそうに会場へ出て行く葉留佳さん。



『レディースア~~~ンドジェントルメ~~~~ン!!』

『ぁ長らくぅ~~~お待たせしました~っ!』

『ふのおおおおおおおおおーーーっ!! 早く理樹を出せぇぇぇーーーっ!!』

『って、また同じ反応ーっ!?』



会場は大変なことになっているようだ…。

西園さんが僕の後ろに回る。

「ロングトレーン(引き裾)はわたしが持ちますね」

葉留佳さんが盛り上げてくれているおかげで、場内は熱狂の渦の中だ。

「うわわ……やっぱり緊張するっ」

「大丈夫です、直枝さんはもっと自分の美しさに自信を持ってください」

そこに自信を持ってしまったら、本当に後戻りできない気がする。



『――では、理樹ちゃん、どーーーぞーーーっ!!』

その刹那。

「「「「「「「「 きゃぁうおおおおおおおおおおぉぉーーーーっ!! 」」」」」」」」

歓喜の声で部屋中が振動するっ!

「総員、対ショック対閃光対キュン防御っ!」

「「「「「「「「 対ショック対閃光対キュン防御っ 」」」」」」」」

よくわからない号令すら響き渡っているっ!

「……直枝さん」

「う、うん」

もう後戻りはできないっ!

場内にウェディングソングが流れ出す。

僕は一歩を踏み出した!



「「「「「「「うおお――――…………………………………………………………」」」」」」」



僕が会場に入った瞬間、さっきまでの大騒動がウソのように一気に会場から声が消えた。

幻想的なウェディングソング。

僕の足音。

場内を支配している音はその二つのみだった。

他の全ては……時が停止したかのように固まっていた。

息を吸うことすら忘れてしまっているようだ。

そんな中を一歩、また一歩と足を進める。



「あ、あの……」

足を止め、みんなの方を向くと。



「「「「「「「「――――――――――――――――――――――――――――」」」」」」」」」



全員、おかしな格好で完全停止していたっ!!

女性陣は真っ赤になったほっぺたに手を当て、髪の毛まで逆立つんじゃないかと思うような固まり方だっ!

恭介なんかは正面から波動砲を受けたかのように全てが後方に流れたまま固まっているし、謙吾は白目を剥いた金剛力士像になっているし、真人に至ってはしぼんでいるっ!!



「……直枝さん、セリフ」

西園さんの小声で我に帰った。

そうだ、指示されたセリフがあったんだ。

は、恥かしいけど…っ!

キュッと胸元で手を握る。

「ぼ…っ」

口を開くが、なかなか言葉が出てこないっ。

顔がどんどん熱を帯びてきた。

「ぼ……っ」

目を堅くつぶり、カーッとほっぺたが熱くなるのを感じながら僕は大きく口を開いた!



「僕をお嫁にしなさーーーいっ!!」



僕が言い放った瞬間っ!!



「「「「「「「「「 いぃぃぃともぉぉぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーっ!!!! 」」」」」」」」」



窓が振動するほどの大喝采(だいかっさい)が沸きあがったっ!!!

「うわわわわーっ!?」

突き上げられる拳!

響き渡るシャウト!!

さっきまで固まっていた力が一気に解き放たれたんだっ!

場内はライブハウスと勘違いするほど熱気を放っているっ!!



「うわわわぁっ、り、理樹かわいすぎるぞっ!? かわいいを通りこしてくぁわいいになっちゃったぞっ!?」

「あ、あ、あたしはどうすればいいんだっ!? 結婚か!? 結婚すればいいのかっ!?」

目を回している鈴!

いまいち結婚がわかってないけど口にしたようだっ!

「どどどどどどどどどどどど、どうしようっ!? わ、わわ私理樹ちゃんにプロポーズされちゃったよーーーっ!?」

小毬さんは目をまん丸にして会場内を駆け回って挙句に

「お嫁サンバをほわぁっ!? ずべんっ」

転んだ!

「け、け、結婚だなんて、まずはお父さんに紹介して、えっと、女の子同士だけど、たぶん許してもらえると思うし…みょ、苗字はどっちのがいいのかなっ!?」

完全に錯乱してしまっている杉並さん!

「や、やはり、私がタキシードを着て理樹をお姫様だっこすればよろしいのでしょうかっ!?」

ほっぺを押さえながらあたふたするクド!

ダブダブのタキシード姿のクドが僕を一生懸命持ち上げようとしている図が浮かぶ!

「いいのかっ!? 本当に理樹を嫁にもらっていいのかっ!? うわぁあぁあぁあぁ、夢のようだっ!!」

謙吾のあの目は……マジだっ!

「謙吾少年、馬鹿も休み休み言ってもらおうか。ウェディング理樹君は私だけのものだ。他の誰にも渡す気はさらさらない」

もっとアブナイ人の目まで大マジだしっ!!!

「けっ……こん」

僕をうっとりとした瞳で見つめていた佳奈多さんだが、僕の視線に気付いた瞬間。

「ハッ…――……ピョヒョ~~♪」

そっぽを向いて口笛を吹いた!! ベタだっ!

「これは広報に載せるために撮ってるの!」

「別に私個人が見て楽しむためじゃないわ、言っておくけど」

「う、うそっ!? メモリがっ……」

四苦八苦してるしっ!

「こんな可愛らしい理樹と同棲中なんて、これからオレはどーすりゃいいんだよっ!?」

「やっぱ裸エプロンで『飯か? 風呂か? それともオレかっ!?』って理樹を出迎えなきゃならねーのかっ!?」

そんなことを考えているルームメイトと同室の僕の方こそどうすればいいのさっ!?

「ぶっちゃけ……」

「俺は理樹のこの姿を見たいがためだけにコスプレ大会を開いたんだぜ!」

恭介はぶっちゃけすぎだっ!!



………………。

…………。

「理樹ちゃ~ん、こっち向いて~。パシャ~」

「リキリキ、ブーケを胸の辺りに…そんな感じですっ。パシャ~」

「ん…かわいいという言葉以外思い浮かばないな。パシャパシャー」

「直枝、私の方を向いて、ほ、微笑みなさい」

「少々理樹君の隣に並ばせてもらっていいか? 誰かこれで私たちのツーショットを撮ってくれ」

「来ヶ谷の次、俺予約な」

「うおっ!? 恭介ずりーぞオメェ!?」



「あ…あは…あははははは……」

乾いた笑いしか漏れない。

会場内は、まんま結婚式会場になってしまっていた。

「じゃーみおちん、そろそろアレ、いっとく?」

「……そうですね」

葉留佳さんと西園さんが揃って僕に目を向ける。

「え? アレって?」

「結婚式には付き物のアレですヨ」

いったいなんだろう?

「――みなさーーーん、ぁチュ~~~モ~~~クっ」

葉留佳さんが声を張り上げる。

「……写真を撮りたい気持ちはわかりますが、いったん中断してください」

「ほう、他にも何か催しがあるのか?」

少年のように目を輝かした謙吾が問いただしてくる。

「あーコホン」

「僭越(せんえつ)ながら、このはるちんが仕切らせてもらいますネ」

「すぅぅぅ……」

大きく息を吸う葉留佳さん。

「これより結婚式恒例『ブーケキャーーーッチMAXっ!』を行なうっ!!」

「はい、ハクシューーー!」

「「「「「「きゃーきゃーきゃーーーーーっ!」」」」」」



――パチパチパチパチパチーーー!!



湧き上がる黄色い歓声と共に割れんばかりの拍手が巻き起こった!

「ルールは簡単っ」

「理樹ちゃんが後ろ向きでブーケを投げるから、それをキャッチした人がプリンセス理樹ちゃんをお姫様だっこね」

「理樹ちゃんも、OKっ?」

「え、初耳なんだけど…」

みんなの方に顔を向けると。



――OKだよね、おーけーに決まってますっ、OKしろしなきゃ殺す、OKしとけよ、むしろOKだろ――

興奮気味の眼差しが全方位から注がれていた!



「……はい、もうどうだっていいです……」

というか、こう言わないと暴動が起きかねない。

「んじゃ、理樹ちゃんが快諾してくれたところで…はい、後ろ向いて準備してくださいナ」

「う、うん」

「よーし、私たちもがんばりますヨっ!」

「葉留佳たちもやるの?」

「……当然です」

いやまあ…。

ここまで来たらなるようになれだ。

「――みんな、準備はいい?」

「「「「「「「「「オーケーですっ!!」」」」」」」」

みんなに背を向け、ブーケを投げる準備を整える。

背中にはムンムンとした熱いオーラが伝わってくる。

「じゃぁ、いくよ」



――すぅぅ……

僕に視線が集中しているのがわかる。



「えいっ!」



――ぽ~ん!



ブーケを投げた瞬間!

「うおおおおおおおおおーーーっ、ブーケは誰にも渡さねぇぇぇぇぇーーーっ!!」

真っ先に真人が飛び出した!!

だが!

「させるかぁーーーっ!!」

「っ!?」

謙吾がすかさず真人の前に踊りだし、片手で真人を押さえ込みつつもう片手を天井ギリギリを舞っているブーケに伸ばす!

「そうはいかないぜっ!」

影から恭介が飛び出す!

そのまま床を蹴り宙に舞う!

けどブーケまでは届きそうにないっ!

「あまいっ」

――シュタッ!

謙吾の背に足をかけさらに飛び上がった!

「なにぃっ!? 俺を踏み台にした!?」

「しま…っ!」

恭介の指先をかすめただけだ!

ブーケは軌道を変え別方向に飛ぶ!

「フハハハハハ、理樹くんを抱くのはこのおねーさんだ!」

ブーケが飛ぶ方向には、すでに来ヶ谷さんが黒髪をなびかせ飛び出していた!

「ジ・エンドだ」

来ヶ谷さんが伸ばした片手でキャッチ!

いや、まだだ! まだ勝負は決していない!

影から一人が飛び上がる!

「ふみゃぁーーーーっ!! させるかーーーっ!!」

「なにっ!?」

鈴が来ヶ谷さんの手からブーケを取った!

「やった……うわっ!?」

取ることにばかり集中していて空中でバランスを崩したっ!

「おっと」

落ちてきた鈴をすかさず抱きとめる恭介!

ブーケはというと鈴の手から離れ再び宙を楽しげに踊る!

「やったー、こっちにきたよ~」

ブーケは小毬さんの伸ばした両手に向かい、吸い込まれるように落ちていく!

そして…。

両手をすり抜けた!!

――ポカッ!

「はうっ!?」

小毬さんのおでこに直撃し、再度宙に舞う。

「あっ…神北さんのおかげでこっちに……」

嬉しそうにしている杉並さん!

――ポカッ

「ぁうっ!?」

って、またおでこっ!?

手を伸ばすのが遅すぎたようだ!

「……ふふふ」

「計画通り、です」

弾いたブーケの先には手を伸ばす西園さん。

あの顔は…勝ち誇った顔だ!

思いっきり手を伸ばし、そして!!

――ポカッ

脳天直撃!!

「えええええええええぇぇぇーーーっ!」

小毬さんも杉並さんも西園さんも驚くほど鈍かった!



――ぽすっ…。



「え…私?」

そのブーケはキョトンとしている女の子の手に収まった。

「え、え!? わた、わた、私が直枝をお、お、お姫様だっこ!?」

佳奈多さんだ!

だが。

「おね~~~ちゃん」

葉留佳さんがブーケを手にしたまま真っ赤になって直立している佳奈多さんの耳元に口を寄せた!

「吐息ふぅ~~」

「ゃうんっ!?」

ビクリと飛び上がる佳奈多さん!

飛び上がった勢いでまたもやブーケが手を離れ宙を舞うっ!

「はははははは最後に笑うのは、このはるちんなのだーーーっ!」

「ちょ、ちょっと葉留佳っ!!」

葉留佳さんがブーケに向かって伸び上がる!

「三枝さん、そういうことをしてはいけないのですっ!」

――つんっ!

伸び上がった葉留佳さんの横腹に容赦なくクドの指が走った!

「ちょひゃっ!? そこダメーっ」

葉留佳さん、悶絶!



そしてようやく。

「あ、私のところに来たのです~」

ブーケがゆっくりとクドの元へ降りてくる。

「私もついにお嫁さんを……」

クドの手の平にブーケが乗り……。



「へっくちっ!」



――ボト。



「「「「「「「「「「「「     あ     」」」」」」」」」」」」

床に落ちた。



「落としてしまいました…」

「落ちちゃったね」

「落ちたな」

「……さすがにブーケトスのやり直しというのは縁起があまりよろしくないかと思いますし…」

会場が微妙な空気に包まれてしまった!

え、えーっと。

どうしよう。

とりあえず口を開く。

「こ、これはこういう運命だったということで……」

「いや待て、理樹」

いつになく真剣な顔して、恭介が前に出てきた。

「――みんな、いいか?」

「ルールを思い出してほしい」

「ほえ、ルール?」

「ブーケをキャッチした人がプリンセス理樹ちゃんをお姫様だっこ?」

言いだしっぺなのに疑問系で返す葉留佳さん。

「ああ、そうだ」

「ルールは『ブーケをキャッチした人』だろ」

「うん、そうだね」

「『先に』といった順番の条件も、『何秒間保持』といった条件指定も……もちろん『一人』といった条件もない」

「つまりだ」

「これは一度でもブーケに触れた奴は理樹をお姫様だっこしていいという意味なんじゃないか!?」

めちゃくちゃ自分に都合のいい理論展開だった!

「だよな、理樹っ!」

「いやいやそれは――」

反論しようとしたけど。



「ほわっ! 言われてみると恭介さんの言うとおりだっ」

「わふーっ!? さすが恭介さんですっ! うっかり騙されるところでしたっ!」

「ふむ、確かにそういう意味合いに取れるな、おねーさんも賛成だ、いやむしろみんな賛成しろ」

「異議はないわ。直枝をお姫様だっこなんてこれっぽちも興味ないけど」

「ん。くるがやといいんちょーが言うなら間違いないんじゃないか?」

「……そうですね。説明が悪かったせいで伝わりづらかったと思いますが、わたしが言いたかったのはそういうことです」



「えええぇぇぇーーーっ!?」

はちゃめちゃな考えなのにみんなスムーズに受け入れてるしっ!

「みんなにそんなことされたら僕の身が持たないからーっ」

「よし、そうと決まったら時間が惜しい」

「じゃんけんで順番決めだっ」

「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」

って、当の僕本人抜きで話がどんどん進んでるーっ!

「いや、だから――」

「やったー勝ったよーっ」

「じゃあ一番手、小毬!」

「ぶっ!?」

もう完全に僕の意見は聞いてもらってないっ!

「二番手は来ヶ谷、続けて鈴、そこからまだまだ繋がるぜ!」

「つながらなくていいからーっ!」

おすまし顔で小毬さんが僕の前に立ちはだかった!

「では――こほんっ」

「理樹ちゃん、準備はOK?」

「いやいや、OKもなにも――」

「一番、神北小毬っ! 理樹ちゃんを抱きますっ!」

「はい理樹ちゃん、私の腕に足をかけてくださいね~。るるらら~♪」

「ひええええぇぇぇぇ~……」

「うわっ、理樹の顔まっかっかだな」

「当たり前でしょっっ」

「二番、来ヶ谷だ」

「なに、痛くはしないさ」

「ひゃぁぁぁぁぁ~~~……」

「り、理樹君、く、首筋にき、キミの吐息がかかるんだが……」

「こ、この格好じゃ仕方ないでしょーっ」

「三番、棗鈴、出るっ!」

「いやいやいやいやっ」

「いやいやじゃないだろっ」

「ほら、あ、あたしの首に手を回せ……そっとだ。うん、そ、そんな感じだな」

「う、う、う……」

「うわわわわわわわわわ~~~~~……――――――」

「四番、棗恭介……おまえのハートは俺だけのものにしたかったんだが」

「な…っ、なに言い出すのさーーーっ!?」

「と、油断している隙に」

「うぁぁーっ!?」

「おいおい、暴れると落ちちまうぜ、じゃ・じゃ・馬・さん」

「…………う、うん……」

『――ぶはぁぁぁーっ!』

「わふーっ!? 西園さんが鼻血をアーチ状に噴出しながら倒れましたーっ!!」

「うわぁぁぁぁん、みおちゃんしっかりしてーっ」

…………。

……。



こうして、恭介が企画した大コスプレ大会は大盛況のうちに幕を閉じることとなった。

恥かしかったけど、みんなの笑顔が見れて良かった…のかな?

……。

ううう…僕はもうお婿にいけないかもしれない…。







「――で、俺たちは何番目なんだ?」

「恭介っ、早くしてくれよっ! 筋肉待たせて楽しいかっ」

「はるちんもうずうずしまくりデスヨっ」

「ん? 何言ってるんだおまえら」

「「「へっ?」」」

「謙吾と真人と三枝はブーケに触れてないだろ?」

「なしだ」



「「「な、なんだってーーーーーーーーーっ!?」」」









■あとがき(コスプレ編)

みなさん、こんにちは。作者のmです。
いつもSSを読んで下さり、本当にありがとうございます!
『花ざかりの理樹たちへ』は連載を開始してから早1年と3ヶ月程になります。
これほど長く連載を続けられるのも、みなさんが応援してくれているお陰に他なりません。
送られたWEB拍手やコメント、書き込みをいつも楽しく読ませていただいております。
みなさんからの拍手やコメントを見ると、嬉しくて「ガンガン書くぞー」とやる気が溢れるのですよ(笑)

さて、「その77」でコスプレ編は終わりとなります。
コスプレ編を非常に長く続けてしまいましたが…理由は私のコスプレ好きゆえです(汗)
本来は理樹ちゃんのメイド服、女性陣のホストクラブ、最後の理樹ちゃんのウェディングドレスだけだったのですが、全員にコスプレをさせたくなってしまいまして。
恐らくこのコスプレ編は読んでくださるみなさんよりも、書いていた私が一番楽しんでいた気がします(笑)

次回からは閑話休題を挟み、『買い物編』に入ります。
予定としては閑話休題が1話、『買い物編』が4話ほどです。
そして『買い物編』が終了した後に最後の編が始まります……が、まだラストを考えていませんのでどうなるかはわかりません。

これからも妄想に妄想を重ね、理樹ちゃんとリトルバスターズの騒ぎを書き綴っていきたいと思います。
宜しければ、温かい目で見守っていて下されば幸いです(笑)