ひざうえのなれた頃に(佐々美×理樹)(リトルバスターズ)作者:m
紹介メッセージ:
みんなには内緒でこーっそりと付き合っている佐々美と理樹。細心の注意を払ってバレないようにしていたのだが……。
「んじゃ理樹、オレはちょっこら走りに行ってくるぜ」
「あ、いってらっしゃい」
真人が出て行って数分後。
――こん、こん
控えめなノックの音が響く。
「どうぞ」
がちゃり。
「入ってもいいかしら?」
佐々美さんがひょっこりと顔を覗かせた。
「うん」
「お邪魔しますわ」
慣れた足つきで部屋に入ってくる佐々美さん。
このタイミング…きっと真人が出て行くのを外で張っていたんだと思うけど。
「相変わらず片付いてない部屋ですこと。座っても……よろしくて?」
「断らなくてもいつものことでしょ」
「ふふっ」
――すとんっ。
「んん~っ」
待ってましたと言わんばかりに座わり、嬉しそうに身を震わせる。
「はあ……」
「やっぱりここが一番落ち着きますわ」
「それ、喜んでいいのか悪いのかよくわかんないから」
僕はベッドの縁に寄りかかるように座り、佐々美さんは……僕のヒザの上。
いつかの不思議な事件以来、僕のヒザの上は佐々美さんのお気に入りスポットになってしまったようだ。
「それで……で……でしたのよ。あれはあなたに見せたかったですわ♪」
いつものように、今日あったことを嬉しそうに話しながら、腰から前に回した僕の手を持ち上げたり触ったりして遊んでいる。
「……の? 聞いてますの?」
「あ、うん、聞いてたよ」
「ふーん」
「な、なに?」
「その顔、聞いてませんでしたわね?」
「うわわっ、こっ、この距離でこっち向かないでよっ」
さっきは僕に背中が向けられていたのに、今は…っ!
「何を今さら照れていらっしゃるの?」
「いや、だってっ」
佐々美さんの顔が目の前にあるっ!
いつのまにか佐々美さんの腕は僕の首に回されてるしーっ!
「その慌てた顔……可愛すぎですわーっ!」
ぎゅぎゅぎゅーーーっ!
「ひゃぁーっ」
「あーもうっ、好き好き好き好きっ!」
「さっ、ささ――」
「どうしていいかわかんないほど大大大大好きですわーーーっ」
じたばたーっじたばたーっ!
「わーわーわー、さ、佐々美さんっ、暴れないでよーーーっ」
そう、僕たちはあの時からお付き合いをしているのだ。
付き合っていることはみんなには内緒にしている。
合うときも細心の注意を払ってるし…きっとバレてはいないと思う。
***
ある日。
「――と、いうわけだ。何か案があるヤツはいるか?」
ここは佐々美さんと小毬さんの部屋。
今日は文化祭に何か出し物をしようと言うことで、リトルバスターズみんなで集まったのだ。
床には真人や謙吾、恭介にクドが座り、二つのベッドの上には他のメンバー。
佐々美さんはちゃっかり僕の隣に座っている。
…………。
……。
「だからよ、筋肉喫茶にしようぜっ」
「なにさこの筋肉馬鹿っ! ケーキ屋さんに1票っ!いや10票!」
「私もケーキ屋さんがやりたいよ~」
「……恭介さん主催による執事喫茶の案に興味があるのですが」
「おねーさんは執事喫茶よりもキミたち中心のコスプレ喫茶が見たい」
「ふみゃーっ、なんでくるがやはあたしとみおを抱いてるんだーっ!」
「……あの、暑苦しいのですが」
「はっはっは、おねーさん今、天にも昇る心地というやつだぞ」
「わたくしも……その、あの、コスプレ喫茶が見たいですわね」
「わふー…私は筋肉喫茶も面白いかと思うのです~」
「生憎だが、俺の案『ザ・リンボーダンス』は譲らんぞ」
……。
話は見事に平行線を辿っていた。
「うーん、なかなか決まらないね~」
「……埒があきません」
ため息をつく西園さん。
「うあーっ、ダメだねこりゃっ」
ぽふーん、とベッドに寝転がる葉留佳さん。
「難しいのです~っ」
クドも床の上でクタッとし始めた。
「私もお布団が呼んでます~」
小毬さんはベッドに転がって縮こまっている。
「もーこのさいなんでもいいだろ」
「……わたしもそんな気分です」
「お、重いんだが」
鈴と西園さんなんて来ヶ谷さんに寄りかかってるし。
「ふぁあ……」
大きなあくびをする佐々美さん。
「なかなか決まらないものですわね」
――すとっ。
佐々美さんも横になった。
「……え?」
が!!
佐々美さんがいつものように枕にしたのは……
僕のヒザだっ!!
い、いつものクセでついついやっちゃったんだっ!!
……………………。
部屋全体がまるで液体窒素に入れられたように凍りついた!!
みんなの「オイオイオイ、こいつら何やってるんだ!?」的な目線が突き刺さる!!
「……?」
佐々美さんは一瞬不思議そうな顔をしたが
「あっ、はっ…しまっっっっーーーーっ!?」
瞬時に気付いて飛び上がった!
「さ、さ、ささささささーーーーっ!? おっ、おおお、おまえ、ななななっ、なななんっ!?!?」
鈴の目はまん丸だ!
「いえ、こ、これはっ」
「ふかぁぁぁーーーっ!!!」
「わ、わふーーーっ、り、鈴さん落ち着いてくださいーっ」
「だ、だって今、理樹がっ理樹がひざでささささふかぁぁぁぁーーーっ!」
鈴はもはや言葉になってないっ!!
「け、けど、いま、理樹君のヒザに……ほわぁぁぁーっ!」
目が真ん丸で顔を赤くしている小毬さん!
「なっ、なんだ今のまるで日常生活の一部の動作であるかのような自然さは!?」
来ヶ谷さんですら驚いている!
「……しかもあの照れ屋で有名な直枝さんが……ごく自然に受け入れましたっ」
う…西園さんの観察力は相当だっ!
「うおおおおーーーっ、理樹オレにも膝枕してくれぇぇぇーーーっ」
って真人はなんで脱ぎだしてるの!?
「そうだそうだ! 笹瀬川がいいなら当然俺たちだっていいはずだっ」
「え、ちょっと待ってよっ!?」
「待て待て待て! ここはまずリーダーの俺じゃないのかっ!?」
「いいからさっさと放せよっ、謙吾っ」
「離してたまるかぁぁぁーっ」
「おっと、いただ――」
恭介が僕に飛びつこうとした瞬間、
「「そうはさせるかっ!!」」
目が血走った男性陣に押さえられた!
ああもう真人も謙吾も恭介も、なぜかこれを好機と捉えてしまっている!!
もちろんこの後は話し合いなんて行なわれず、僕らに厳しい尋問が待っていたのであった。