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花ざかりの理樹たちへ その102 ~夜突入編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

「「「「「じゃーんけーんっ」」」」」



「「「「「ぽん!!」」」」」



チョキ!

チョキ!

みんな見事にチョキでそろっている!

チョキ!

チョキ!



グー!!



よく見ると一人だけグーだ!

その相手を見ると。



「おお……おおお……」

謙吾がグーを出した自分の手首を握りしめていた。

「ぬおおお……!」

今の事態が信じられないといった様子で自分の手を見つめる謙吾。

「……うお……」

よろよろと後ずさり、

「……おおお……!」

天を仰いだ。

「まさか……」

もう一度自分のグーの手を見つめる。

「おぉ…………」

目を瞑りまた天を仰ぐ。

そして――

「神よッッッ!!!」

「長いんじゃボケーーーッ!!」



――ズゲシッ!



「ぐっっはぁぁーっ!」

「わふーっ! 宮沢さんが満面の笑顔を浮かべたまま宙を舞ったのですーっ」

「わわっ、鈴、何してるのさっ」

「ツッコミだ」

「けど謙吾君すんごく幸せそうだね~。ほわ、おちた」

「パワーボムを喰らったようなポーズで頭から落ちたが、謙吾少年は大丈夫なのか?」

「……おしりを天に突き上げたまま高笑いをし始めました」

「きょ、恐怖映像なのですーっ」

「ひゃっ、り、理樹君、こ、こわいっ」

杉並さんとクドが僕の袖をぎゅっとつかみ怯えている。

いやまあ、ひっくり返ったポーズで満面の笑みを浮かべてフハーッハッハと笑っている謙吾は幼馴染の僕でも正直怖いっ!



ちなみに恭介は「俺はなぜあの時グーを出そうと思わなかったんだ!? クソッ! いでよドラ○もんっ!」と地面を叩いてるし、真人は「ちょ…待ってくれ!! オレの筋肉ならチョキでグーくらい切れるんだぜ!」とじゃんけんの根底を間違っている。



「バカばっかね」

「おおーさすがお姉ちゃん。この状況を見事一言で表してますナ」

「それほどでもないわ」

「いやそれバカって言ってるだけだからさ…」

「……ルリルリですね」

相変わらず西園さんの言うことはよくわからなかった。







「よぅし理樹、俺の背に乗るんだ! 俺はいつでも準備オーケーだぞぅ」

僕の前でしゃがむ謙吾。

「あれでノーダメージなんて謙吾ってすごいよね」

「はっはっは! 鈴のおてんばさんには慣れているからな! さ、理樹、ほぅら、ほぅら!」

「いつも以上にネジが飛んでるわね、コレ」

う、うーん。佳奈多さんの言うこともズバリな気がするけど。

ひよこポーズの謙吾の背中から滲み出ているピンクと言えばいいのか不穏と言えばいいのかのオーラは、何か危険だ!

け、けど。

僕もやると言っちゃったしやるしかない。

意を決して、僕は謙吾の背に近づいた。



「じゃ、じゃあ謙吾、い、いくよ」

「おうとも!」

謙吾の肩に、そっと手をかける。

「……直枝さん、顔が赤くないですか?」

「あっ、赤くないよっ」

けど、こういうのはやっぱり少し照れる。

ちょっと顔も熱くなる。

「……」

僕は、そっと――



――すとん。

体を謙吾の背にあずけた。



「ぐおおおおおぉぉぉーーーっ!! 謙吾、頼む!! あとで交代してくれぇえぇえぇーーーっ!!」

「うわっ!? バカ兄貴がガチ泣きしてるぞっ!?」

「オレの理樹っちがぁぁぁぁーーーっ!!」

――ブチブチブチ!

「井ノ原さん、そんなに髪を抜いたら剥げてしまいますーっ!」

後ろで大騒動が起きていた。



「………………」

そんな騒動をよそに、僕を背負った謙吾がスックと無言で立ち上がった。

「謙吾、重くない?」

「…………」

「謙吾?」

「……――」

なぜか返事が返ってこない。

僕が首をかしげていると、前を歩く葉留佳さんがこちらを向いた。

「ひぃやっ!?」

「え、どうしたの?」

「謙吾くんの顔が……顔が……」

「謙吾の顔?」

葉留佳さんがビシーッと指を差した!

「めっちゃエロい顔になってるーっ!!」

「え、えええーっ!?」

「んっ!」

コンパクトをこちらに向けた。

うわ!!



謙吾の目じりはダルんと下がって、眉毛なんかも緩みきっている!

それでいて口元はにんまりと上がっている!

「は、鼻の下が10センチくらい伸びてる…っ」

杉並さんの言う通り謙吾の鼻の下それはもう伸びきっているっ!

「例えるのなら、エロ本を拾い読みしたエビスさんといった顔だな」

来ヶ谷さんの例えはズバリだ!



「け、謙吾……な、なに、その顔……?」

「――……ムフフ……フムゥ!?」

「あ、謙吾くんの顔がシャキっとしましたネ」

急にアワアワし始めた!

「……こ、ここここ、これはだな……」

カッと目を見開いた!

「別に理樹の胸が背に当たってるからとか、柔肌の感触を楽しんでいるからではないんだからなッ!!」

「そんなツンデレ風に言われても困るからっ!! むしろそんなこと考えてたのっ!?」

「こいつバカだっ!!」

「ううう……もう降りちゃダメかな……」

「……恥辱に頬を染めながらも何もできない無力な直枝さん……! これはこれで堪りません……!」

なぜか西園さんも僕の横で鼻息を荒げていた……。



そんな感じで歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。

「真人少年、少しいいか?」

「なんだよ?」

「いいから耳をかせ」

「――……というわけだ」

「ま、いいけどよ。オレさっき焼肉食ったばっかだぞ」

また来ヶ谷さんが何かを企てているようだ。



「……理樹君」

そっと僕の後ろに忍び寄った来ヶ谷さん。

「?」

「……謙吾少年に呼びかけをしてもらってもいいか?」

「いいけど?」

何がしたいんだろう?

「――ね、謙吾、謙吾」

とりあえず言われた通り呼びかけてみた。

「どうしたんだ、理樹?」

前を向いたまま答える謙吾。

そこへ後ろからコソコソと真人が忍び寄ってきた。

真顔のままこっそりと謙吾の耳元へ顔を寄せる。

そして。



――フ~~~~ゥ♪

耳フーだ!



「ふのぉおぉおぉ!?」

身をよじる謙吾!

すかさず来ヶ谷さんが謙吾の肩に手をのせた!

その目がギラリと光る!

「どうだね謙吾少年、『理樹君』の耳フーの感触は?」

来ヶ谷さんが悪魔のような笑顔を浮かべていたっ!

「なにぃ!? 理樹のだとぅ!?」

「いやーいやーうらやましいですナ、理樹ちゃんに耳フーってしてもらえるなんて、この幸せ者~っ」

イタズラな顔で謙吾を小突く葉留佳さん!

「こ、これが理樹の……理樹の……吐息っ!!」

いや真人の吐息だ!

「理樹君がこんな出血大サービスをするのは今回くらいだろうよ」

「うわぁあぁあぁ! 耳が幸せになってきた!!」

いや真人の吐息だ!!

「謙吾くん謙吾くん、理樹ちゃんの熱い吐息はどーでした?」

「無論、それはもう甘くまるで焼肉……ではなく芳醇な素晴らしい香りだった……」

しかもちょっと臭いに気付いてるけど我慢してるし!

葉留佳さんなんて笑い転げている!

「謙吾少年には見えないだろうが、理樹君は今もキミの背で顔を赤くし熱い吐息をもらしているぞ」

「ふのぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉーーーっ!」

「い、いやいやいやっ!!」

「ふぇぇっ!? 謙吾君の顔が見る間にダルンダルンになっちゃってるーーーっ!?」

「ダルンダルンですーっ!!」

「ぉぉぉぉ……理樹に誓おう――俺はもう一生耳掃除はしないとッ!」

「しようよ!?」

「ふむ――」

再度来ヶ谷さんが小さく手を挙げた。

またこっそり真顔で近づいてくる真人。

そしてソロソロと手を伸ばし……。



――ぴと。



謙吾の頬に触れた!

「ぬほぉおぉおぉおぉ~~~っ!!」

歓喜に震えていたっ!!

「なななななんというご褒美なのだ、理樹っ!」



――す~りすりすりすり!



ああっ!

まるでムツゴロウさんのように真人の手に頬を擦り付け始めてるし!!

「理樹の手はゴツゴツ――い、いや愛らしいなっ!」

またやせ我慢していた!

「――……やべぇ……どれくらいやべぇかって……マジやべぇ……――」

ちなみに真人のHPはもうゼロだ!



「――あら、みなさん」



そうこうしている間に学校に到着していたようだ。

そこには部活上がりであろう笹瀬川さん達がいた。



「揃ってお出かけかしら? 宮沢様もご機嫌――…………」

笹瀬川さんが止まった。

正確にいうと、白目をむいた真人の手に、うっとりした表情で、頬ずりしている謙吾を見て止まった。

「み、みみみみみ、宮沢様……? なっ、なっ、何をなさっていますの……?」

「ん? 笹瀬川か。見てわからないのか?」

フッと笑う謙吾。

「幼馴染と楽しくじゃれ合っているだけだ」



その瞬間、笹瀬川さんが完全凍結したのだった。