花ざかりの理樹たちへ その106 閑話 ~夜突入編~(リトルバスターズ)作者:m
紹介メッセージ:
恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。
※トップをねらえ!を見たノリで書いてしまったというオールギャグ回となっております(汗) ごめんなさい!
※もし104話で理樹が真人たちについて男子寮に行ってしまったら……そんなifストーリーです。
「――ふむ、他のメンツは小毬君の部屋でいいな」
みんながワイワイと女子寮へ向けて歩いていく。
僕も真人と謙吾の後ろについて男子寮へ向かうことにした。
ん?
後ろで来ヶ谷さんの呼び止める声がした気がするけど……。
気のせいかな。
「待ってよ、謙吾、真人ーっ」
「理樹、遅いぞ」
「部屋に戻ったらオレの大胸筋のアンディと一緒に筋肉ビブラートしようぜ!」
「え、筋肉に名前つけてるの……?」
どうして僕は気づかなかったのだろう。
このとき僕はあんな恐ろしいことが起きるとは夢にも思っていなかったんだ……。
***
学校直属 男子寮
同 寮長室
「――副長、寮の状況は?」
「ハッ。先々週に彼女持ち2名を退寮させて以来、男子寮への女子連れ込みは発生しておりません。静かなものです」
「そうか」
寮長がテーブルにあった紅茶を上品に口に運んだ。
「今日も静かな夜を迎えられそうだな」
「ええ」
「どんなに彼女を作ったって構わんのだよ。個人の自由だからな」
紅茶を置いた寮長がため息を漏らした。
「だがしかしだ。彼女がいない者が多くを占めるこの寮内で女子と遊ぶとかいう羨ましい行為は断じて許されん。爆発すればいい、そうは思わんかね?」
「ええ、全くもってその通りです」
寮長室ではいつものように寮長と副長の話し声、オペレーターの青葉君と日向君がキーボードをたたく音が響いていた。
いつも通りだった。
いつも通りの一日が過ぎると思われていた。
その時までは。
「――ん、これは……?」
「どうしたんだね、青葉君?」
「まだ弱いですがレーダーに反応です。女生徒かと思われます」
「通りがかっただけか?」
「現在、進行方向解析中です。進行方向から予測進路を割り出します」
「ああ、頼む」
「予測進路出ました――こ、これは!?」
青葉からは血の気が引いていた。
「どうした?」
「予測進路……男子寮! あと6分20秒で正面玄関に接触しますッ! 誤差±10秒!」
「なにぃ!?」
「目標付近にいる巡視生タニグチから入電! 繋ぎます」
「――青葉よりタニグチ。目標の様子は?」
『……ザザ……レベルが……ザザザ……高すぎるん……どうすりゃいいんだよっ!!』
「え!? なに!? 聞こえないっ!! レベルが!? 高すぎる!?」
『そうだ!! 目標のレベルが高すぎて校内女子と比較ができないッ!! いいか!? レベルが高すぎて比較対象がいないッ!!』
『巡視生タニグチ及びクニキダ、接近を試みるッ!』
「いかん!! 目標の戦力もわからないうちに特攻は危険だッ!!」
「寮長、無駄です! タニグチ、目標と接触ッ!」
『……お嬢さん、僕とお茶でも……え、ごめん…なさい?……ぐああああーーーっ――プツンッ』
「巡視生タニグチ、轟沈!」
「同クニキダより入電。ワレ操舵フノウ、ワレ操舵フノウ」
「日向君、映像は出せんのかね!?」
「男子寮屋上設置の超高解像度望遠カメラ、起動させます」
日向がキーボードに手を走らせるのと同時に、寮長室に設置された50インチディスプレイが起動。さらに青葉が双眼鏡を持ち、窓に駆け寄った。
「目標を肉眼で確認ッ! こ、こいつは――」
「――映像、来ます」
青葉が驚愕の表情で寮長に向き直ったのと、日向が操作したディスプレイの映像が同時に現れた。
「目標、かなりのべっぴんさんですッ!!」
何かに気付いた日向が女生徒の後ろの人影を拡大した。
「井ノ原真人と宮沢謙吾ですッ!! 目標が井ノ原真人と宮沢謙吾を従えていますッ!!」
「なんだと!? 来ヶ谷唯湖でさえ手懐けられない狂犬だぞ!? 目標はまさか……リトルバスターズかね!?」
コンソールにデータを叩き込む日向。だが。
「データベース該当なし! リトルバスターズではありませんっ!!」
「いや、待て日向……」
青葉のPCを操作する手が凍結したかのように止まった。その顔も青ざめている。
「学校の全生徒データベースとも該当ゼロッ!! 目標、完全にUNKNOWNッ!!」
「目標、依然侵攻中! 正面突破するつもりです!! 玄関接触まであと5分10秒!
「リトルバスターズめッ!! 校内AAランクプラスの美少女達を独占するに飽き足らず、外部からまで美少女を呼び寄せたなッ!!」
――ダンッ!!
寮長が机を叩き付けた!
「奴らには散々煮え湯を飲まされてきたが、これ以上美少女たちを独占させるわけにはいかん!!」
「総員第一種戦闘配置!! 口説いてもデートに誘っても構わんッ! 清い交際から始めるのだ!! この羨ましい奴らだけは何としてでも食い止めろ!!」
けたたましいサイレンと共に館内放送が鳴り響いた。
『非常事態発生! 女生徒および男子2名が寮に接近! リトルバスターズと思われる! 総員第一種戦闘配置につけ! 繰り返す、総員第一種戦闘配置!!』
「玄関より入電。帰宅部及び漫研部、ラインIDを書いたプレートを首から装備。書道部は自筆恋文を装填。いけますッ!」
「各部活、準備が終わり次第発進だ!」
『了解。玄関ゲート開きます』
『漫研部、いきまーす!』
『帰宅部出る!』
『この筆に我らが愛を乗せ――書道部、行ってきます!』
玄関が開き、各部が堰(せき)を切ったように飛び出してゆく。
「――第一波、目標接触まであと30秒。続いて第二から第五波まで足が速い順に続きます」
「帰宅部主力より入電。回線開きます」
『――ゼェー…ハァー…あと、あと少しで目標が…………見えたッ!! んな!?』
「なにがあった!? 報告しろっ!?」
『あ、あれは花の妖精か!? 荒野に咲く一輪の華か!? 可憐すぎるだろ! こんなん口説くとか無理ゲーだぁぁぁーーーっ!! ――プツンッ』
青葉が驚愕の表情で寮長へ向き帰った!
「帰宅部主力、自沈!!」
「第一波壊滅!! 続く第二波から第五波の92%壊滅!!」
「帰宅部級の女子免疫力では歯が立ちませんッ! アプローチ前に心が折れましたッ!!」
ディスプレイを見つめる寮長の目が見開かれた。
「近づけもせんとは奴は化物か!?」
「いえ! 書道部主力が目標へ到達! 後続は部活上がりのサッカー部ッ!」
『…ザザ…あの、そのあの、こ、これを受け取ってくださいっ!…ざざ…』
『え? いや…え? えっと…これは? ああと…』
『理樹、受け取ってやったらどうだ?』
『あ、ありがとね』
――にこっ♪
『ぐああああああーーーっ!? 天使だぁーーーっ…………――』
『うぉぉぉぉ!! 眩しいぃぃぃーーーーっっっ!!』
『ぐぁぁぁぁ!! 神々しいぃぃぃーーーっっっ!!』
「書道部主力、周囲20mを巻き込み轟沈!!」
「何が起こったんだね、青葉君!?」
「目標が前方に向けスマイルを放った模様! 直撃を受けた書道部主力は融解! その左翼に展開していたサッカー部もメロメロです!!」
「今の戦力では持ちません! 女っ気がない我々には刺激が強すぎますッ!!」
「なんてこったッッッ!!」
テーブルに置いてあったマグカップが音を立て転んだ。
「部活中の寮生を全て戻らせろッ!! イケメンでもいい! 寮の守りに付いている生徒は全員出撃だッ!!」
「ですが寮長、それでは学内と寮内の警備が手薄に…」
「どんな犠牲を払っても構わんッ!! 総力戦だッッッ!!」
――戦局は――
「ぼぼぼ僕が作った渾身のポエムを聞いてくださぁぁぁいっ!!」
「ちょっと遠慮したいかな…」
「ポエマー中田が涙目で鼻ツーンってしてるぞっ!!」
「我ら野鳥友の会!! 野鳥から学んだ荒ぶる求愛のポーズを見てくれぇーっ!!」
「うわわっ、こ、怖いからーっ!」
「君たち、どくんだ」
「見ろ…あのシルクハットにマント…!! タキシード仮面様が来て下さったぞッ!!」
「私は悪を切り裂く一輪のバラ…どうか私とランデブーをしてはくれまいか?」
「シルクハットにメガネなんて怪しすぎるでしょっ」
「タキシード仮面様が一撃で轟沈したぞーーーッ!!」
――混迷を極めた――
「さすがに数が多すぎるぜ……理樹、謙吾、アレをやんぞ!」
「うんっ!」「おう!!」
「「「うおおおおおっ!! 筋肉センセーションだぁぁぁーーーっっっ!!」」」
「筋肉いぇいいぇーーーいっ!!」
「筋肉いぇいいぇーーーいっ!! 理樹っちも見せつけてやれっ!!」
「いくよーっ! 筋肉いぇいいぇーい♪」
「ああああああの子のスカートの隙間から一瞬だけ何かがッ!!」
「重巡ヤマモト、中腰!! 歩行困難! 繰り返す、歩行困難っ!!」
「これはッ!動かずにはッ!いられないッ!! 筋肉いぇいいぇーいッッッ!!」
「今泉くんっ! 僕達もやろうよっ!! 筋肉いぇいいぇーいっ!」
「筋肉いぇいいぇーい」
「うわぁぁぁっ、自転車部まで筋肉センセーションに巻き込まれたぞっ!! もうダメだぁぁぁーーーっ!!」
…………
……
***
「理樹ちゃ~んっ」
遠くの方から小毬さんが手を振りながら走ってくるのが見えた。
「あ、小毬さん」
「ふぅ、やっと追いついたよー。ゆいちゃんがね……ほわっ、人がいっぱい倒れてるっ!?」
「えっとこれは……」
何というか……死屍累々だった。
「あ、ゆいちゃんから伝言なんだけどね、『理樹君を男子寮に近づけるな。大変なことになるぞ』だって」
「あはは……」
一足遅かったみたいだよ……。
「理樹ちゃんは将来、」
小毬さんがニッコリと微笑んだ。
「お婿さん候補いっぱいだね」
「僕は男だからぁぁぁーーーっ!!」
「だがそれがいい!」
「なんで謙吾はそこでキメ顔をするの!?」
この日起きた事件は『集団失恋事件』として人々の胸に青春の甘酸っぱさを刻みつけたのだった。
***
■あとがき
こんにちは! 作者のmと申します。
トップをねらえ!というアニメとキルラキルというアニメを見てしまったせいで、そのノリを書きたくなってしまいついつい書いてしまいました(笑)
さて、花ざかりの理樹たちへもそろそろラストです。
数回続くイベントを2つ行って終了と考えています。
ただ、私事ですが新しい会社に入社したということもあって更新速度は2週間に一度くらいになってしまうと思われます。
ですが最後まで進みたいとは考えておりますので、もしよければ温かい目で見守ってくだされば幸いです。
mより