恭介が艦娘の金剛ちゃんを引けないようです(リトルバスターズ)作者:m
紹介メッセージ:
恭介が艦娘の金剛ちゃんを引けないようです。※この食玩は実在しませんので悪しからず
#シチュ:リトバス界では艦娘の食玩が流行り! 恭介もコンプしようとしているが金剛ちゃんを引けずに……。
――日曜日。
僕と真人、謙吾は近所のスーパーマーケットに買い物に来ていた。
「理樹、なんでそんな菓子ばっか買ってんだよ?」
「みんながよく来るからさ。ファミリーパックのお菓子を補給しておこうと思って。――カントリーマアムもいいかな」
「せんべえのパックもいいか?」
「謙吾はおせんべえ、と」
「オレはタンパク質をふんだんに含んだやつを頼むぜ!」
「タンパク質含んだお菓子ってどういうのさ」
「鶏肉…いや、カツ!!」
真人の中ではお肉はお菓子に分類されているみたいだ。
とりあえずBIGカツにしておこっと。
僕達がレジに並ぼうとした時だ。
レジエンド(レジのところにある棚)にしゃがみこんでいる見慣れた背中を見つけた。
「あれ、恭介。そんなところで何してるの?」
「理樹に真人、謙吾か」
顔を上げた恭介の両手には少し大きめな箱が握られていた。
箱には……背中にでっかい船をつけた可愛らしい女の子が描かれている。
「それは何?」
「これか?」
「うん」
「こいつは今ネットで流行っている『艦隊これくしょん』を元にした食玩だ」
「最近ずっとやってるあのパソコンの?」
「そ」
ちなみに食玩というのは、中におもちゃが入っているお菓子だ。
お菓子と言ってもガムが一枚くらい入っているだけだけど。
恭介はこの手の物が好きでよく集めていたっけ。
「あと少しでコンプなんだが、どうしてもシークレットの金剛だけ当たらなくてな」
恭介が「こいつだ」とスマホを操作して、その画像を僕に見せてくれた。
腰に手を当て、もう片方の手を前にかざしている。
気が強そうなキャラ……なのかな?
「可愛らしいキャラクターだね」
「お、理樹もこの良さがわかるか」
ニカッと少年のような笑みをこぼす恭介。
「こっちとこっち、理樹はどっちの箱がいいと思う?」
「ええと、左手のほうかな」
「ならこれを買うか」
選んで立ち上がろうとした時だ。
「――ん。きょーすけか」
「理樹君たちだ~。奇遇だね」
「ハローなのです~」
鈴、小毬さん、そしてクドだった。
「鈴たちも買い物?」
「モンペチとジュースとお菓子買いに来た」
「恭介君は何持ってるの?」
小毬さんが興味深そうに恭介の持っている食玩の箱を見ていた。
「こいつは艦娘の食玩だ。こういうやつな。かわいすぎて腰を抜かすぜ?」
「箱の裏、女の子がいっぱいだね~」
「きゅーとなのです~」
ふたりとも目をキラキラとさせて箱を見ている。
こういう人形、もといフィギュアはふたりとも好きだからなぁ。
「――決めましたっ! 私もこれ、買っちゃうよ~」
「私もこのお人形さんがほしいのですっ」
「なにぃ、みんな買うのか!? ならあたしも買うぞ」
「ああ、絶対に買って損はないぜ。俺が保証する」
あっという間に恭介が食玩仲間を3人に増やしていた!
そうしていると――
「……みなさん、こんにちは」
「君たちは自分たちが目立つ存在だということを意識したほうがいい」
西園さんと来ヶ谷さんが買い物かごを持って立っていた。
「えっと、それはもずく?」
「少年、フコイダンは体にいいぞ」
「けど4パックって」
来ヶ谷さんの好きなものはイマイチわからない。
「……ほう、艦娘の食玩ですか」
「さすが西園だな。シークレットの金剛が当たらなくてな」
「……それはまた」
西園さんがレジエンドにしゃがみこんで箱を両手にとった。
「……金剛は戦艦でしたか?」
「ああ」
「……でしたら、他のに比べて少しだけ重いかと」
何個か手に取り比べている西園さん。
「……わたしはこれに決めました」
どうやら西園さんもひとつ買うらしい。
「来ヶ谷もどうだ?」
「ここはのっておくとしよう。私も可愛い女の子は好きだからな」
ひょい、と選ぶ様子もなく手近な箱を取る来ヶ谷さん。
さらにそこへ――
「やはー」
「何の集まりかと思ったら、またあなた達ね」
葉留佳さんと佳奈多さんだ。
買い物カゴには野菜などが入っている。
「次から次に来るな…」
と、真人。
「まぁ近所のスーパーだし、何よりリトルバスターズだからね」
自然と集まっちゃうというか何というのか。
いつの間にかみんな一緒になってしまう。
それが僕達だ。
「んで、みんなして何してるの?」
「これなのです~っ」
クドと小毬さん、そして恭介がバッと食玩を突き出した。
「おお! 可愛いっ! お菓子にこんなフィギュアがついてくるのですナ。ミニ子も買うの?」
「はいっ! こんなにカワイイお人形はあまり手にはいらないのですっ」
「むむ――相談なのですがおねえちゃん……」
と葉留佳さんが佳奈多さんに目線を送ると。
「……」
佳奈多さんがジッと箱を見つめていた。
どことなく口元が緩んでいるような……?
「お姉ちゃん?」
「……」
「お姉ちゃん?」
「――な、何?」
「えっとですナ、あっしめもですナ、ひとつばかり……」
「……」
一瞬葉留佳さんと、置いてある箱を見比べた佳奈多さん。
「ひ、ひとつならいいんじゃないかしら?」
「え!? いいの!? やたーっ!」
「葉留佳が買うから、不本意だけれど私もひとつだけ買おうかしら?」
……佳奈多さん、素直じゃないよね。
「んだよ、みんな買うならオレもひとつ買ってみっかな」
「え、真人も買うの?」
「ならば俺は」
謙吾の目がギラリと光り、2つの箱を両手で掴んだ!
「2つ買うぞ!」
無駄に張り合っていた!
「ぐっ……! さすがにこの値段だと張り合えねぇ……っ! 理樹っち、頼む!」
「お菓子の値段じゃないからね……。僕も気になってきたしひとつ買おうかな」
――スーパーマーケットを後にし、僕たちはすぐ横の公園の円形のベンチに腰を下ろした。
「早速ゲットしたアイテムの確認と行くか」
「「「「「お~~~」」」」」
「何がでるのか楽しみです~……ごそごそ……」
「うみゅ、少しわくわくだな」
「そうだね~」
クド、鈴、小毬さんが最初に箱を開け始めた。
「能美のは北上だな」
「いっぱいミサイルがついていて強そうなのですーっ」
「きょーすけ、あたしのは何だ?」
「あ、鈴ちゃんのと私の似てる~」
「すごいな。鈴のは雷(いかずち)、神北のは電(いなづま)だ。ちなみに姉妹設定だ」
「こまりちゃん、あたしコレ大事にするぞ」
「私もだよ~」
「……」
「……」
「……」
そこまで言って何故か考えこむように3人が止まった。
「あれ、どうしたの3人とも?」
――バッ。
3人がフィギュアをひっくり返した。
「わ、ちゃんと穿いてるね」
「白だな」
「パンツまでしっかりと作るとは驚天動地ですっ」
「なんでそういうところ見ちゃうのさっ!」
「んじゃ、次はオレな。軟弱なのは好きじゃねぇけどよ」
そのわりにはノリノリだ。
開けると……
「……」
真人が絶句していた。
「何が出たの、真人?」
……。
真人の手には謎のオジサンが握られていた。
「そいつはリンカーンだ。艦娘ならぬ艦夫だ。艦娘ブームに新しい方向性を求めたらしい。肖像画がある分リアルな造形になっているところが特徴だ」
「わふー……ひげもじゃもじゃなのです……」
「……頭に船くっつけてんだけどよ……」
「空母型だからな。設定だと頭から戦闘機が発射される」
ぶっちゃけ頭に船を載せた変なオジサンにしか見えなかった……。
「……ほう。これはおしいです」
「おおっ! 西園は比叡じゃないか」
「ふむ、お姉さんも可愛らしいのが当たったな」
「来ヶ谷のは山城だな」
――ばっ。
「……パンツ見放題ですね」
「もろパンだと風情がないとは思わないか、西園女史」
「……一理あります」
「だからなんでみんなそこを確認するのさっ!?」
「お、オレのリンカーンは穿いてるよな……!?」
「真人も気にしないであげてよ……」
「次は俺が開封するとしよう」
クールな笑みをこぼし、謙吾が箱を開け始めた。
「謙吾は2箱買いか。謙吾の引きの強さは相当だからな。こいつは金剛を引き当てるかもしれないぞ……!」
「刮目せよっっっ!!」
謙吾が2つ同時にフィギュアを取り出した!!
「…………」
謙吾が燃え尽きていた。
「リンカーンがダブったね……」
「引き強すぎだろ……色んな意味で」
合計3体の頭に船を載せたオジサンが並んでいるのはある意味壮観だ……。
「次は私、私~っ」
葉留佳さんと佳奈多さんが蓋を開け始めた。
「おおっ、なんかエロいのきたっ!」
「そいつは雪風大破エディションだ。またすごいのを引いてきたな」
色々と透けていて危ない造形だ。
「……」
佳奈多さんはというとフィギュアを見て動きを止めていた。
ちょっと目がキラキラしてる……?
「なっ! 二木のは……シークレットの島風か! 一発で当てるとは正直驚きだぜ……」
「べ、別に全然興味ないけど、えっと、捨てるのも良くないし持ち帰るわ」
……そのわりには顔が緩んでいる。
もしかして、佳奈多さんもこういう可愛い系のものが好きなのかもしれない。
――バッ
「しましまね」
「ってそこはやっぱり確認するんだ!?」
「最後は俺だな」
恭介が静かな笑みを浮かべた。
「幸運の女神よ――力を与え給え!」
みんなの注目が一点に注がれる!
「うおぉおぉおぉぉぉぉーーーっ!! いでよ、金剛ーーーっ!!」
「……」
「……金剛力士像ですね」
「……ああ、金剛力士像だな……」
さっきスマホで見せてもらった金剛とは540度くらいかけ離れた像だった……。
「きょーすけ、これが欲しかったのか」
「なぁ恭介、オレのリンカーンと交換しようぜ。よっと」
真人が恭介の手から金剛力士像を引っこ抜いて謎のオジサンを持たせても無反応だ。
「……――」
「わふー、恭介さんが震えだしましたっ!?」
「諭吉を生け贄にして艦娘を2ダース召喚っ!!」
「うわわわ、恭介おちついてよっ! それ就活資金でしょーーーっ!」