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士郎と家政婦は見た【プリズマイリヤ百合SS】(プリズマ☆イリヤ)
作者:m

紹介メッセージ:
 プリズマ☆イリヤのクロxイリヤ百合SSです。 魔力供給を家の人が見ちゃった話です。

※シチュ:イリヤの分身であるクロ。彼女はイリヤの魔力供給を受けないと存在ができないわけで、魔力がなくなると供給をお願いしなければならないのだった。



――夜ご飯時の普通の一軒家。

2階の子ども部屋には二人のごく普通の女の子。

机で一生懸命宿題をやっている銀髪の女の子の名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

傍らのベッドでゴロゴロしながら雑誌を読んでいるイリヤと瓜二つ、だけど色黒の女の子の名前はクロエ・フォン・アインツベルン。

ごく普通の二人は、ごく普通に小学校に通い、ごく普通に生活をしていました。

ただひとつ違っていたのは……イリヤは魔女でクロはその分身だったのです!



***



――場所は変わって一階。

台所には美味しそうな晩御飯が並んでいた。

今日の料理当番はセラ。イリヤのお母さんがいない間の教育係、簡単に言うとメイドといったポジションだ。

そのセラが作ったハンバーグが湯気をあげていた。

「士郎さん、ご飯をテーブルに並べてもらっていいですか? 終わりましたらイリヤさんとクロさんを呼んでくださいます?」

「はーい」

イリヤの義兄である士郎は、たまには中華が食べたいと思いつつもハンバーグの皿をお盆に乗せていたのであった。



***



――場所は戻って子ども部屋。

「ねぇ、クロ」

イリヤが算数の宿題から顔を離し、ベッドでゴロゴロしている黒いヤツに目を向けた。

「んー……」

気だるそうにベッドから顔を上げたクロ。

「宿題いっぱい出たけどやらなくていいの?」

「だって今イリヤがやってるじゃん」

「写させないからねっ!」

「いいじゃん、ちょっとくらい」

「ダメ、絶対だめっ」

「どうしても?」

「どうしてもっ!」

「……」

「……」

「……」

「ダメだからねっ」

「ケチ」

「ケチで結構っ」

「あ、そ」

膨れたクロがベッドから起き上がった。

「こっちにだって手はあるし」

クロがかざした手に魔力が凝集してゆく!

「トレース・オンっ!」

「えっ!? ちょっ、ちょっとーっ!」

何もない空間に『5年1組 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』と書かれた算数のノートが徐々に形作られてきた!

だが。



――ぷしゅ~……。



「あ」

途中まで出来ていたフェイクのノートが消え去った。

「……まさかクロ……」

「……ごめんイリヤ」

あちゃーと頬を掻くクロ。

「今ので魔力切れそう」

「……」

「……」

「……」

「……」

「あーもうっ! なんでこんなことで魔力使うのっ!!」

「ノート見せてくれないからでしょっ」

「だからって魔法を使うことないじゃん!」

「だってっ……」

クロが徐々に力なくうなだれていく。

「……ごめん。反省してる。……魔力、お願い」

クロは魔力がなければその存在を維持することができない。

なくなってしまったら最後、消えてしまう。

「……はぁ。もう、仕方ないな」

イリヤが椅子から立ち上がり、ベッドにしょんぼりと腰をおろしているクロの横に腰掛けた。

「魔力供給ってさ、もっと軽いちょっとしたのじゃダメなの?」

「逆に聞くけど、イリヤはご飯は一口だけにしろって言われて生きていける?」

「ム、ムリかな……」

「そういうこと」

「それにしたってキスって。ううう……いつもこんなことしてるなんてバレたらお嫁に行けなくなっちゃうよ……。もっと他にないの?」

ポッ、とクロの頬が桜色に色づいた

「……完全にお嫁にいけなくなるかもよ?」

「………………き、聞かないでおく」

クロの小麦色の手がイリヤの白い頬に添えられた。

「……して、いい?」

「……早くしてよね……」

「せっかち……」

――ちゅっ

二人の唇が重なった。

更にイリヤの唇の隙間にクロの舌が入ってゆく。

「…んっ……」

イリヤの舌先とクロの舌先が触れる。

最初は恐る恐る。

だが徐々に互いの舌を弄ぶように、舌先を刺激するようにうごめく。

「……んっ…ぷはっ……イリヤもキスが上手になったわね。だんだんこうやって……ちゅぷっ……遊ぶようになったし」

「ぅんっ…し、仕方ないじゃない…もういい?」

「まだ足りないわ。もっと……」

「ぅん……んっ……はぁっ……」

二人の舌が互いを求め絡む。

クロの空いていた手がイリヤの胸へ添えられた。

「ぷはっ…む、胸はだめっ。てゆうか自分にも同じのついてるでしょっ」

「自分の触ってもね……まぁいいわ、もうちょっとあなたの唾液が欲しい」

「もうちょっとだけだよ…? もう……んっ…っ…今日のクロ、チョコの味だね…」

「……ごめん、さっきチョコ食べてた。ぁぅ…そんなに強く吸わないでよ……」

――ちゅぷっ……



最近定期的に行われる行為だったので、二人も慣れてきてしまっていた。

最初の頃は息を殺して行っていたが、今は水っぽい音と艶っぽい息遣いはそのまま二人の口からこぼれていた。







その頃!!

「さてと。イリヤとクロを呼びに行くか」

一階で食事の支度を終えた士郎が階段を登っていく。

「それにしてもあの二人、仲が良くなったよな」

一人でうんうんと頷く。

「仲良きことはいいことかな、ってな。ははっ」

士郎の友が言いそうなことを口にしながらイリヤの部屋に近づいた時だった。

……イリヤの部屋の戸が少しだけ空いていた。

イリヤ、と声をかけようとしてビクリとその体が止まった。

……中からは。

――ちゅぱっ……んっ……あぅ……はぁっ……

ピンク色の息遣いがこぼれていた。

中をこっそり覗くと……

『……んっ…ぷはっ……イリヤもキスが上手になったわね。だんだんこうやって……ちゅぷっ……遊ぶようになったし』

『ぅんっ…し、仕方ないじゃない…』



…………な。

仲良くしすぎだろぉぉぉぉぉぉぉーーーーっ!?!?

いやいやいやいや、落ち着けオレ!!

こ、これはアレだ。

ラッキースケベだな。

二人で座っていたらうっかり顔と顔がぶつかってだな。



『イリヤ……もっと…ねぇ…もっと』

『うん……ぁんっ……くろ……ちゅぷっ』



んなわけあるかぁぁぁぁぁぁーーーっ!!

これガチだよ妹達がガチだよぉぉぉぉぉぉーーーっ!!

誰だよ『仲良きことは良きことかな、ははっ』とか言ってた奴はぁぁぁぁっ!!

これどうやって今後二人に接すればいいんだぁっ!?

アレか!?

ヘヘヘヘッドホンを買ってくるか!色々聞かないように!

いやいやいや気を使ってたまに外に出たほうがいいのか!?

どうするの、俺っっっ!?

頭を掻きむしりながら悶絶する士郎!

――ピタッ。

突然士郎がその動きを止めた。

というか考えることを止めた。

「ヨゥシ。ミナカッタコトニシヨウ、ウン」

そのまま無の心で階段を降り、一階へと戻った。



***



「士郎さん、二人を呼んできてくださいました? なんだか(∵)という顔になっていますが」

「……(ふるふるふる)……」

「?」



不思議に思ったセラが二階へと登っていった。

「それにしても最初は仲が悪かったイリヤさんもクロさんも仲良しになったわね」

一人でうんうんと頷く。

「仲良しっていいわよね。やっぱり私の教育の賜物かしら? ふふっ」

教育係として確かな手応えを感じながら、イリヤの部屋に近づいた時だった。

――ちゅぱっ……ちゅぷっ……あぅ……はぁっ……

ピンク色の息遣いがこぼれていた。

「…………?」

中をこっそり覗くと……

『……んっ…っ…今日のクロ、チョコの味だね…』

『……ごめん、さっきチョコ食べてた。ぁぅ…そんなに強く吸わないでよ……』



…………な。

仲良くしすぎよぉぉぉぉーーーーっ!?!?!?

こここここれはアレよアレ、ポッキーゲーム!

ちょっと行き過ぎちゃって口がちょっとだけくっついちゃってキャーってヤツね!

まぁなんてカワイイのでしょう!



『ちゅば……っ。クロ、舌絡めすぎだよ……』

『あなた、そうするといつも気持ちよさそうな声出すから』

『……む~ぅ……だって……んっんっ、ぁん……っ』



んなわけないわぁぁぁぁぁぁーーーっ!!

こいつらガチですわぁぁぁぁぁーーーっ!!

え!? なに!? 育て方!? え、間違えた!?

間違えたの私っっっ!!

もしかしてアレ、高町な○はとかいう百合っぽい魔法少女アニメDVDを買うのを阻止しなかったから!?

あれ、ガチよね!?

いえっ!!

ほ○ほむとか言うのが出てるガチ百合魔法少女の劇場版をTSUTAYAで借りてきたせいかしらぁぁぁぁっ!?

思い当たるフシが多すぎるわぁぁぁぁぁぁぁっ!!

奥様ごーーーめーーーんーーーなーーーさーーーいーーーっ!!

町内の人達にごーーーめーーーんーーーなーーーさーーーいーーーっ!!

世界中の人にごーーーめーーーんーーーなーーーさーーーいーーーっ!!

頭を掻きむしりながら悶絶するセラ!

――ピタッ。

突然セラがその動きを止めた。

というか考えることを止めた。

「私はシスター。全てを寛大な心で受け止めるのもまた仕事の内」

そのまま涅槃の心で階段を降り、一階へと戻った。



***



一階。

――……バタバタバタっ。

二人が階段から降りてくる音が聞こえた。

『あ、わたし顔洗ってくるね』

『わたしも』

バタバタバタ……――

――……バタバタバタっ



「わ、今日のご飯はハンバーグっ!? 美味しそうっ!」

「ハンバーグで騒ぐなんてイリヤも子どもね」

「クロにそんなこと言われたくなし。てかクロも目キラキラしてるじゃん」

その二人の目が、席に座っている二人――もはや椅子と一体化した置物のようになっている二人に向けられた。

「お、お兄ちゃん」

「ヤァ!ナンダイ?」

「(∵)な顔になってるけど、どうしたの?」

「ア! キョウ ハ トモダチ ノ イエ ニ トマリニ イカナイト! イェーイ」

「?」

首をかしげるイリヤ。

「セラ」

クロがセラに声を掛けた。

「今日は天気がいいわね」

「……もう夜だし、曇ってるし。なんかマリア様か菩薩様みたいな顔になってるんだけど」

「つい先程悟り?みたいなの?を開いたのです」

「ふ、ふーん…」



この後、宿題はリビングでやる謎ルールが創設されたり、お風呂の時間帯が何故かクロとイリヤで離されたり、魔法少女のDVDが全て北斗の拳と男塾に変えられていたり、士郎が家の中でもヘッドホンで音楽を聞いたり、友達の家に行くときにわざわざ何時から何時までいないか宣言するようになったのだった。