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ロ理樹ちゃんプールへ行く ~最初に語られること~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 世の中には不思議が溢れている。この話もそんな不思議の一つだ。いやなに、別に信じる必要はない。ただ、朝起きたら理気が小さくなっていただけだ。女の子になって…な。

――ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ



「……ん…んぅ」



――ピッ



寝起きの固い体を伸ばして、目覚ましを止めた。

カーテンを閉めていない窓からは夏の日差しが差し込んでいる。

意識が徐々に覚醒していく。

…………。

そうだ。

今日は、俺が企画した『夏だ! 一番! プールでドキッ! イン サマーバケーション ぽろりは別だよ!』の決行日じゃないか!

「……よし」

ベッドから飛び起きると、一瞬で着替えを済ませ身なりを整えた。

今日は朝食をリトルバスターズのメンバー全員で食べた後に、そのままプールへ向かう手筈になっている。

「っと、そうだったな」

俺はもう1つのベッドの膨らみに近づいた。

「――朝だぞ」

その膨らみに声をかける。

「起きろって理樹。今日は最初からクライマックスで行こうぜっ!」



――相部屋の奴が帰省中ということもあり、昨日は俺の部屋に集合して遊んでいた。

ただ、理樹が人生ゲーム中に寝ちまってな…。

寝ている理樹を起こすのも気が引けたし、そのままこの部屋のベッドに寝せていたという訳だ。



「理樹、おはようの時間だぞ」



――ゆさゆさゆさ



「……?」

布団に包まっている理樹を揺らして、違和感を感じた。

理樹ってこんなに小さかったか?

気のせい…か。

「理樹、今日はプールだぞ。みんな待ってるから起きろって」

…………。

「起きないならこっちにも考えがある」

…………。

「布団、剥いじまうからな」

…………。

「ったく、とんだ寝ぼすけだな…」



――ガバッ



「おい、理樹、そろそろ起き――……」

布団をめくったそこには……。

そこには……。

「……んっ……んん~っ……」



小さな子どもが丸まっていたっ!!!



………………。

…………。

……。

「な、な、ンなんじゃこりゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!?」





「……ゃ…ぅ~……」

むくりっ。

俺が唖然としていると、その小さな子がベッドの上に起き上がった。

「…んん…っ……ふわ~~~~ぁっ」

ベッドに女の子座りをして、眠気まなこをこしこしと擦っている。

「…な…な…?」



その子をよく見てみる。

年の頃は9~10歳くらいだろうか?

服は…なぜか昨日理樹が着ていた物と同じ服だ。

着ているシャツはダボダボで、片方の肩は露(あらわ)になってしまっている。

ズボンに至っては、寝ている間に脱げてしまったのか…片足に引っかかっている程度だ。

顔は…うっすら見覚えがあるような…?



「…………」

一体全体誰だ、こいつは?

どこから来たんだ?

その前に理樹はどこに行った?

頭の中に疑問符を並べていると、その子の大きく綺麗な瞳が俺に向けられた。

「ん…おはよ、きょうすけ」

「あ、ああ、おはよう」



にぱ~~~っ



「ぐぁ…」

屈託のない笑顔が眩しいじゃねぇかっ!

お、落ち着け俺…。

今はそこじゃないだろっ!

「……今、俺のことを恭介って言ったか?」

――つまり向こうはこっちを知っているのか?

その子に質問をする。

「俺のことを知っているのか?」

「え? きょうすけはきょうすけだよね」

「いやまあ、そうなんだが…」

「?」

ぽやっとした顔で首を傾げるその子からは、この切り口からではこれ以上の情報は得られなさそうだ。

「……キミの名前を教えてくれないか?」

「ボクの名前?」

ポカンとした顔で訊き返してくる。

「ああ、そうだ」

「変なきょうすけ」



「ボクは――直枝理樹、でしょ」



「……………………………………は?」

「どうしたの?」

今、何て言った?

「わ…わりぃ、聞えなかった。も、もう一度言ってくれないか?」

「ボクは直枝理樹、だよ」

「……」

「……?」

パチクリしている目が、俺を不思議そうに眺めている。



言われて見ると。

確かにこの子の顔は理樹に似ている。

いや。

チラリ、と机に飾っている小さかった頃の写真に目を向ける。

似ているどころか……理樹だ。理樹の小さな頃だ。

だが、理樹の小さな頃ともどこか違う…可愛らしさとでもいうのか…俺の第六感に訴えかける『何か』がある。

……。

もしかして本当に理樹…なのか?



「――ははっ、まさかな」

俺は携帯を取り出した。

なに、簡単なことだ。

理樹がいないなら、理樹と連絡を取ればいいだけじゃないか。

理樹は、いつでも誰かと連絡を取れるように携帯は肌身離さず持ち歩いている。

それに理樹の携帯はFとか言ったか……指紋認証タイプだ。

理樹本人しか使えない。

あいつの事だ…もう学食にでも行ってるんだろう。



俺は、履歴の一番上にある理樹の番号にコールした。



~♪~♪~♪~♪



枕元から着信音が響いた。

「あ、ケータイ鳴ってるっ」

その子が、枕元においていた携帯電話に手を伸ばした。

「うわーっ、きょうすけからだっ」



――ピッ!



指をスライドさせて指紋認証を解除した。

携帯電話を両手で掴んで耳に当てる。

「もしもし、きょうすけ?」

「…………ああ、恭介だ」

「なぁに?」

「……いや、なんでもない」



――ぴっ。



「きょうすけっ、今ね、きょうすけから電話がね……あれれ?」

俺を見て、「なんで目の前にいるのに電話してるんだろ?」と首を傾げている。

「…おまえ、本当に理樹か?」

「さっきからおかしいよ? ボクは理樹でしょ」

「……」

「……」

「マ、マジか?」

「まじまじ」

「……」

「……」

「直枝理樹っ」

呼んでみた。

「はいっ」

勢い良く手を上げた。



「……」

「……んな……」

「な、なな、な、なななな…………」

「なんじゃこりゃああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁーーーっ!!」