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ロ理樹ちゃんプールへ行く ~1話~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 世の中には不思議が溢れている。この話もそんな不思議の一つだ。いやなに、別に信じる必要はない。ただ、朝起きたら理気が小さくなっていただけだ。女の子になって…な。



「おはよー、りんちゃん」

「鈴さん、ぐっどもーにんぐなのです~」

「おはよう」

あたしが学食に着くと、他のみんなも揃っていた。

夏休みのせいか、学食にはあたしたちしかいない。

「いやー、プールですよプール! こりゃ落ち着いてられませんヨ!」

「はぁ、葉留佳……だからと言ってここで水中ゴーグルを着けるのは止めなさい」

「ああーっ!? 私の青春がむしり取られたっ!?」

暴れる葉留佳から水中ゴーグルを取る二木。

今日は二木も一緒に行くらしい。

「私は泳がないけど」

大きな麦わら帽子を被って、長シャツを着ている。

日焼けしたくないからだそうだ。

「謙吾、プールだぜっプールっ! 今日こそおまえをぶっ倒す!!」

「ふっ…いいのかそんな大口を叩いて」

「あぁ?」

「俺は、小さな頃『カッパのケンちゃん』の異名で呼ばれたほどの男だぞ?」

「なにぃぃぃぃぃぃーーーっ!? オレは今までそんな奴に勝負を挑んでいたのかぁぁぁぁぁーーーっ!?」

「あいかわらず馬鹿だな、こいつら」

「……見ていて飽きないですよ?」

言葉のわりには二人から距離を置いたみお。

まあ、馬鹿二人は放っておこう。

「――言い出しっぺの恭介氏と、理樹君がまだなんだが」

「ありゃ、珍しいデスネ。こんなときに恭介くんが遅いなんて」

「あー、あの馬鹿兄貴なら馬鹿みたいに目をキラキラさせて、いちばん最初に来てるハズだな」

「ふえぇ…まだ準備してるのかな?」

みんなでそんな噂をし始めたときだ。



「――よお、おまえら、揃ってるな」



「あ! 恭介さん、おはよ~ございます」

「ぐっどもーにんぐ、なのですっ」

「ああ、おはよう」

「きょーすけ、みんな待ちくたびれてるぞ」

「悪い悪い」

恭介がこっちに近づいてきた。

……。

……ん?

……んっ!?

「うーっす、恭介遅かっ――……って、ちょっと待ったあぁぁーーっ!」

真人が学食内に響き渡る大声を上げた。

「どうしたんだ?」

「いや、どうしたもこうしたも……はぁーっ!? はぁーーっ!? はぁーーーっ!?」

「はっはっは、真人、何を突然わけわからんポイントを入れてるんだ?」

顔を上げる謙吾。

「はぁーっ!? 恭介おまえ、それ、はぁーっ!?」

謙吾も恭介のそれをみて驚きまくっている。

「おい馬鹿共、さっきからうるさ過ぎる。シメるぞ」

来ヶ谷が二人ときょーすけの方を睨みつけた。

「……はぁぁ!? それは何だ!? はぁ、はぁ!? はぁはぁ」

来ヶ谷の驚き方はあやしいぞ。

「ふえぇ、ゆいちゃんまでどう――……ほわぁぁっ!?」

小毬ちゃんも恭介を見てびっくりしている。

「ほわっと・おん・あーすっ、なのですっ!」

なに言ってるかよくわからんが、クドもびっくりだ。

「……はっ……」

みおの顔は赤い。

「ひゃぁぁ……恭介くん、それ、何?」

「……いつも以上に意味不明ね」

葉留佳と二木は驚くを越えて呆れているな。



「恭介、生憎カウントを覚えちゃいないが、ぶっちぎりでわけわからんグランプリだぜ…」

「よくわからんが、ありがとう! で、おまえたち、どうかしたのか?」

相変わらずとぼけた顔だな、うちの馬鹿兄貴は。

「どーしたもこーしたも…おかしいだろ、それ」

あたしは「それ」を指差した。

「ん? 何のことだ?」

「わからねぇのか……なら、オレが教えてやるよ……」

真人がユラリと立ち上がった。

「おめぇのな…手からな…」



「幼女が生えてんだよっっ!!」



真人がビシーッときょーすけと手をつないでるその子を指差した!

「ゃぁっ!?」

びっくりしちゃったのか、その子が慌てて恭介の後ろに隠れた!

「………………あぅ…………」

そして、チラチラっとこちらの様子を覗き見ている。



「「「「「「「 きゃぁぁぁぁぁぁ~~~っ 」」」」」」」

女の子連中から黄色い声がもれた!

う、うみゅみゅ…。

こ、こいつは……。

かっ、可愛すぎる…っ!



「きょ、恭介氏……そ、その可愛らしいお嬢ちゃんは何だ?」

「ああ、こいつか?」

恭介が後ろからその子を出そうとするが、首をぶんぶんと振って恭介の服にしがみついている。

「こいつはすげぇぞ、聞きたいか? 聞かないほうが身のためだぜ?」

「はいっ、聞きたいのですっ!」

「マジで驚くぞ、いいのか?」

「ふえぇ…そんなにすごいの?」

「ああ、腰が抜けるどころか消失するくらい驚く」

「ええい、くどいぞ恭介氏。さっさと教えろ」

「……むぅ」

なぜか言いよどむ恭介。

「……」

「こいつ、実はな……」

「「「「「 実は? 」」」」」



「理樹だ」



「……」

「……」

「朝起きたら、理樹がこうなっていた」

「……」

「……」

「……事情は良くわかりました」

「おっ、さすが二木。呑み込みが早くて助かったぜ。ヒュ~っ…勘違いされるんじゃないかと思って、言い出しずらくてな」



――ぴっ、ぴっ、ぽっ



二木が携帯を取り出して電話をかけ始めた。

プルルル…プルル、ガチャ

『事件ですか? 事故ですか?』

「事件です」

「だああああああああああぁぁぁーーーっ!! 待ってくれえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーっ!!」

恭介が慌てて二木の携帯を奪って電話を切った。

「ハァ、ハァ、ハァ……な、何も警察に電話することないだろ!?」

「棗先輩、悪いことはいいません。早めに自首してください」

「くっ! 予想はしてたが、一番タチの悪い勘違いをしちまったようだな…。おまえら…落ち着いて聞いて欲しい。こいつは……間違いなく理樹だ。確認もした」

恭介がわけのわからんことを言い張っている。

「うむ、なるほどな」

「来ヶ谷、わかってくれたか」

「今のを日本語に直すと、道端でこんなに可愛い子を拾っちまったぜハラショー、だな」

「だからなんで俺を誘拐犯と――」

「ほわぁぁあぁあぁあぁーっ!? 恭介さんっ、ついに悪事に手を染めちゃったですかーっ!? 拉致監禁ですかーっ!?」

飛び上がる小毬ちゃん!

「いや待て小――」

「それでそれで、『よいではないか、よいではないか』って手篭めにしちゃったですかーっ!?」

「わふーっ!? テゴメ…テゴメですかっ!? またテゴメですかっ!?」

「だああぁあぁあぁーっ!? 前例があったみたいに言うなぁぁぁーっ!!」

「クッ…理樹、ここはやっぱおまえだけが頼りだ。みんなに説明してやってくれっ! おまえ本人が言ってくれれば万事解決だ!」

「……っ……う…うん……」

理樹と呼ばれた子が、恭介の後ろからちらっと顔を出した。

「……あのね今日ね、朝起きたらいつもと違う部屋にいて、きょうすけが横にいて『おはよう』って言ってね、電話してた」

「ああ…その通りだな…理樹」

たらりと汗を流す恭介。

「……」

「……」

「……裏が取れましたね」

「ぎゃあああああああああぁあぁあぁあぁあぁあぁぁぁーーーっ!!」

「それだけじゃない…証言を思い出せ。今この子は、電話をしていた、と言ったぞ…!」

「脅迫電話か…!」

「するってーと、なんだ……オレたちの親友から幼女誘拐犯が誕生しちまったってことじゃねぇかぁぁぁーーーっ!?」

「おち、おち…落ち着けおまえらっ!!」

「こいつはマジで理樹なんだよ!! 信じてくれ!! おまえら、俺の目を見ろっ!!! これがウソついてる奴の目かっ!?」

恭介がうっすら涙目になった目を前に出してきた。

あ、葉留佳が恭介の方に寄っていった。

「三枝、俺の目を見てどう思った!?」

「…………うわぁ、ロリコンの目だぁ…………」

「ひぎゃぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁぁぁぁーーーっ!!」



――どさっ……。



きょーすけが「そうさどうせ俺は信用ゼロさ……だがロリなんかじゃねぇ……」と泣きながら崩れ落ちた。

崩れ落ちたお陰で、後ろに隠れていた子がよく見える。

恥かしいのかわからんが、あたふたしてるぞ。

たぶん10歳くらいだ。

白のワンピースを着ている。って、どっかで見たことある服だな。

目がくりくりキラキラだ。

……ん?

……んんっ?

なんか見たときあるな、コイツ。

見たのは、あたしが小さかったころだ。

…………。

……。

むむっ……。

謙吾の裾を引っぱった。

「……むう、おまえの言いたいことは良くわかる。真人、おまえはどう思う?」

真人も真剣な顔をしている。

「オレは馬鹿だからよくわからねぇ……けどな、一つだけ言えることがある」



「「「 あれは理樹だな 」」」



幼なじみ全員の意見が一致した。