ロ理樹ちゃんプールへ行く ~5話~(リトルバスターズ)作者:m
紹介メッセージ:
世の中には不思議が溢れている。この話もそんな不思議の一つだ。いやなに、別に信じる必要はない。ただ、朝起きたら理気が小さくなっていただけだ。女の子になって…な。
「「「「「「「 うわぁぁぁ~~~~~ 」」」」」」」
目の前に太陽に照らされたプールが広がる。
塩素のにおい。
響く子どもたちの声。
眩しい太陽っ!
夏、って感じだっ!
「おりょ、意外と人少ないね」
「まあ、ここは元より小さな街だからな。来客数も自然と限られてしまうのだろう」
「人が少ない分、思う存分泳げそうなのですーっ!」
「クーちゃん、りんちゃん、早く泳ご~」
「こまりちゃん、走るとあぶな――」
――ずべっ
「うわーんっ、こけたぁ~っ」
うーみゅ…。
走るとあぶないぞっ、と言おうとしたけど間に合わなかった……。
「――こまりちゃん、だいじょぶ?」
転んだ小毬ちゃんに、スクール水着姿の理樹が駆け寄った。
「あぅぅ…痛いけどだいじょ~ぶ~」
「こういうときはね」
小毬ちゃんの足に手を当てる。
「いたいのいたいの飛んでけーっ! どう? なおった?」
ぱ~っ、と天使みたいな笑顔の理樹が小毬ちゃんを見つめている。
「すごーいっ、痛いのがどこかに飛んでっちゃったよ~」
その笑顔に、笑顔で応える小毬ちゃん。
「ありがとね、理樹ちゃん」
「うん! あ、手かしてっ」
小さいながらも小毬ちゃんの手を取って起こそうと、理樹は頑張っている。
「……あのような優しいところは、変わりありませんね」
「うん、どんなに変わっても理樹は理樹だ」
とてもほのぼのとした光景だ。
「棗先輩たちはどこかしら? 先に来てると思うけど」
「あ、井ノ原さんと宮沢さんでしたら、あちらで水かけ遊びをしていらっしゃいますよ」
「水かけ遊びって、あの海で女の子たちがよくやるアレか?」
「あー、それならよくテレビで見ますネ。キャッキャッ、追いついてごらんなさいーいやーんってヤツ」
「……あのお二人も意外と微笑ましい遊びをするので――」
止まったみおの目線の先を見ると…。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーっ!!」
「ふぬぅおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーっ!!」
「ハァァァァァッ!! モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフッサセサセサセサセマッサッサァァァァァァァァァッ!!!」
「ヌォォォォォォ!! フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンッ無駄無駄無駄無駄消えろォォォォォォォォォォォッ!!!」
――シュババババババババババババババババ、ズガガガガガガガガガガガガ、ドドドドドドドォォォッ!!
――ドゥヮンッ!!
――――――――――ドゥヮンッッ!!
ドゥヮンッ!!
――――ドゥヮンッ!!
――――――――――――――――――――ドゥヮンッッ!!
「かぁぁぁ~めぇぇぇ~はぁぁぁ~めぇぇぇ…………――」
「かぁぁぁ~めぇぇぇ~はぁぁぁ~めぇぇぇ…………――」
「「 ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!! 」」
――スバグシャドゥババババァァァァザバァーーーーン…………――――――――
ありえないレベルの水かけ遊びが繰り広げられていたっ!!
確かにこれはテレビで見たときがあるっ!
「わふーっ!? ここまで水しぶきが飛んできたのですっ」
「……波のないプールなのに、波が押し寄せてきたぞ」
来ヶ谷もさすがに引いている。
「うわぁぁぁん、ママぁ~~ぁ~~……ぁ……――」
「よしおちゃんが高波にさらわれてしまったわぁぁぁっ!?」
お子様連れには大迷惑な連中だ!
「――待ちくたびれたぜ」
真人、謙吾とは他人のフリをしてプールサイドに行くと、恭介が準備運動をしていた。
「みんな水着似合ってるじゃないか」
……恭介が言うと、なんでこんなに胡散臭いんだ?
「うわー、なんか定型句てき~っ」
「……全く気持ちがこもっていませんね」
「恭介さんは乙女心というものをわかっていませんっ! ぷんぷんなのですっ」
「これでもマジで言ったつもりなんだが」
「はぁ……もう少し気の聞いた言葉をかけてあげられないのかしら」
うむ。みんなが言う通りだ。
恭介は乙女心をわかってない。
「さて、そろそろ理樹君が……よし、来たな」
「――きょうすけ~っ」
来ヶ谷が見ている先には、スクール水着と浮き輪セットの理樹の姿が。
「――……んがっ!?」
って、恭介の反応があからさまにあたしたちと違うだろっ!?
「理樹君、恭介氏のためにも…軽く一回転してみてくれ」
「うん、わかった」
――とてとてとてとて。
浮き輪を持ちながら、ちょこちょこと回る。
「そこで笑顔だ」
「うんっ」
にぱ~~~♪
お日様がとってもよく似合う屈託のない笑顔だっ!
兄貴を見ると…。
「……ぐっ」
「……ぐぐぐっ」
「……ぐぐぐぐブフーッ!?」
ちょっと耐えたけどやっぱり無理だった!!
「やべぇよ…生スク水はハンパねぇ…1センチもハンパねぇ……」
ガクリと崩れ落ちる恭介。
「うわわーっ、きょうすけっ!? 鼻血出てるよっ!?」
「い、いや、なんともない……理樹、悪いが……ちょっと俺から離れてくれ」
「ダメだよっ!」
「ほら、ちょっと横になって」
優しく手を添えて、恭介をゆっくりと倒す。
――ぽにっ
そして恭介の頭が理樹のおヒザに。
「……んがっ!?」
「コンクリートに寝たらいたいよね」
「だからボクのおヒザを枕にしてっ」
恭介を上から覗き込んでいる。
「ちょ、理……それマズいって、ちょ、マジ、これっ、やめてくれっ!」
――ジタバタッジタバタッ!
恭介は焦ってんだか嬉しいんだかよくわからん顔で悶えているっ!
「きょうすけ、動いちゃめっ」
――ぎゅ~っ
ヒザに恭介の頭を押し付けたっ!
「んブフーーーーッ!?」
「うわっ!? ま、また鼻血ーっ!?」
「ブハッ……ハァハァ……理樹、た、頼む、起き上がらせてくれ……でないと……」
恭介はもう息も絶え絶えだっ!
「そんなに動くから鼻血でるの、動いちゃめっだよっ」
――ぎゅぎゅぎゅ~っ
理樹のおヒザに恭介のほっぺがムニムニと押し付けられる!!
「どぅはぁっ!?」
――ジタンバタンッ!! ジタンバタンジタンッ!! ブハーーーッ!
「はっ、は、放してくれぇぇぇーーーっ!」
「きょうすけ、暴れちゃめーっ」
おヒザに何度も何度も押し付けれれるっ!
――ぎゅ~っ、ぎゅ~っ、ぎゅ~っ
――ブフーッ、ブフーッ、ブフーッ!!
押し付けられるたびに、まるでポンプみたいにリズミカルに鼻血を噴射しているっ!!
「……新手の拷問だな」
「だんだん顔面蒼白になってきてるけど…放っておいていいのかしら、これ」
「ふえぇ…あんなにジタバタしてたのに…もうピクピクとしか動かないね」
「鼻血がとまるまえに息の根がとまってしまいそうです……」
「けど、恭介くんの顔見てくださいよ」
「……人生の極楽を一度に味わってしまったかのようです」
「あ。きょうすけ、ようやく静かになったね」
失神することで、ようやく恭介は解放された……。
「――ちょっとおまえたちに見せたいものがあるんだ」
さっきあんなに血を出したのに、本当に元気な馬鹿兄貴だ。もう復活している。
ちなみに他の馬鹿二人も水かけをやめてこっちに来た。
「何を見せてくれるのかしら?」
「リトルバスターズ初プールを祝して、これから俺たち男性陣がシンクロを披露しようと思う」
「ゆにくろ?」
「鈴、それクロしか合ってないだろ……まあ、水中パフォーマンスってところだ」
「うえぇ、男たちだけ?」
気持ち悪そうな顔をしている葉留佳。
「昔、そういう映画あったろ?」
きっとその映画に影響されたに違いないな。
「その映画に影響された」
って、言い切ったぞっ。こいつ!
「この日のために練習を積み重ねてきたんだ、まあ、見てくれよっ」
「さすが井ノ原さんですっ!」
「そんなにいっぱい練習してたの~?」
小毬ちゃんの質問に、真人が勝ち誇ったような顔になる。
「5分だ」
「……わたしたちの着替えを待っていた時間ですね」
「まったく期待できそうにないな」
「いいから騙されたと思って見ろよ。絶対楽しいぜ、なっ、理樹っ」
恭介が理樹を見つめた。
「うんっ、きょうすけ、楽しみにしてるよっ! がんばってっ! わくわく、わくわく」
――きらきらきら~っ
スクール水着の理樹が期待いっぱいの瞳で恭介を見つめている。
「……」
「……ブッ」
「棗先輩、ハンカチです」
「……悪いな」
鼻血ダラダラの馬鹿兄貴。
「おまえ、もうロリでいいだろ?」
「うるせぇ、断じて俺はロリじゃねぇっ!!」
意固地になっている兄を見て、なんか無性に悲しくなってきた…。
「――おまえら、準備はいいか!」
「いつでもいいぜ」
「任せておけ」
プールの中頃に横一列に並ぶ、真人、恭介、謙吾。
「いくぞっ!」
「犬神家~」
――ジャボン。
「犬神家~~」
――ジャボン。
「犬神家~~~」
――ジャボン。
山芋みたいにすね毛モジャモジャしたガニ股の足が、水面からニョッキリと、計6本生えていた。
「……」
「……」
「……」
「……シュールだな」
「……シュールですネ」
つぶやく来ヶ谷と葉留佳。
「……どうやら影響された映画が違っていたようです」
みおも呆れてしまっている。
「う、うああああああん、よ、夜、夢に出そうーっ!」
「わ、わふー……てりぶるとらぶるホラーなのです~…」
小毬ちゃんとクドに至っては泣いてしまった!
「わぁ! ボクもやるーっ、いぬがみけっ」
「だ、ダメっ、今のあなたがやったら大変なことになるからっ」
走り出す理樹の手を、二木が必死に掴んでいる。
「うわぁぁぁん、ママ~ッ!!」
「よしおちゃん、見るんじゃありませんっ!」
お子様連れにも大迷惑な連中だ!