※バックアップページです。本体はこちらです。
ロ理樹ちゃんプールへ行く ~7話~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 世の中には不思議が溢れている。この話もそんな不思議の一つだ。いやなに、別に信じる必要はない。ただ、朝起きたら理気が小さくなっていただけだ。女の子になって…な。

「――そろそろ休憩にしましょう」

二木の呼びかけに、「ふーっ、遊びまくったな」とか「見ろ、コブができたぞっ」とか言いながら、みんなパタパタとそっちに向かう。

……二木と葉留佳がプールの隅に敷物を広げて、その真ん中にクーラーボックスを置いた。

「ここでこんなものを広げていいのか?」

と、言いながら敷物に座る謙吾。

みんなも次々と敷物にぺたっと腰を下ろす。

「いいんじゃないデスカ? プールサイド広いし。向こうでもあっちでも家族連れが敷物広げてますヨ」

「本当は禁止なのでしょうけど、節度ある行動の範囲内でなら黙認しているんじゃないかしら」

中庭の芝生みたいに、と付け加える。

「――ふたき、それはなんだ?」

あたしは真ん中に置いてあるクーラーボックスを指差した。

「これ?」

クーラーボックスを開ける。

「みんなで食べようと思って持ってきたのよ」

二木がクーラーボックスから取り出したのは……。

「「「 スイカっ 」」」

まるまるっとしていて、おいしそうなスイカが出てきたっ!

「わふーっ、夏の風物詩ことスイカのお目見えですーっ」

「とってもおいしそうだね~」

「ええ、よく冷えてるわよ」

小毬ちゃんとクドの目は、スイカに釘付けだっ。

「……うわぁぁぁぁ……」

理樹の目なんてキラキラを通り越して、もうピカピカだっ。

「……」

小毬ちゃんたちよりももっと目を輝かせている奴がいた…。

「二木」

「なんですか、棗先輩?」

「棒はどこだ?」

「棒?」

「ああ、スイカとセットであるべき棒だ」

「ないわ、そんなの」

「……」

「……なにで叩くんだ?」

「そんなのありません」

「……叩かないのか?」

「叩かないわ」

「……どうやって食うんだ?」

「切って食べるのよ」

「……」

「さあ、食べましょうか」

「ちょっと待てぇーっ!! ここはスイカ割りだろ、流れから言って!!」

「却下っ!! さっきも言ったでしょう! 節度ある行動と!! ここでそんなことしてみなさい! すぐに追い出されてしまいます!! 少しは自制してくださいっ!!」

うわっ、二木がすごい剣幕だっ!

「わ…わりぃ」

あの恭介が、二木の剣幕に押されて謝ったぞっ!?

「うわわぁ……やっぱりおねえちゃん、怒るとコワイ……」

「……まあ、叩いてしまうと中身が飛び散ってしまいますから」

「それに真人少年あたりが叩いたら、食べるところがなくなってしまいそうだしな」

「……スイカ、割らないんだ……」

理樹もしょんぼりだ。

うみゅみゅ…あたしも、ちょっと残念だな…。

ちなみに真人も謙吾も「なにぃぃぃーっ!? スイカにそんな食い方があったなんて知らなかったーっ!!」「スイカを切る…その発想はなかった…」とやっている。



二木と葉留佳が切ってくれたスイカを手に取る。

「――うん、うまいな」

「おいしいね、りんっ ……はむっ」

隣に座っている理樹もおいしそうにスイカをパクついている。

「かーーーっ、うめぇーーーっ!!」

「うわっ!? しる飛んできたっ!!」

「お、わりぃ! 拭いてやるよ。っと、拭くもんねぇから手な」

「そんなベタベタした手であたしに触れるなーっ!」

――バキッ

「ぐはぁっ!」

しまった…あまりのきしょさについつい蹴ってしまった。

「やはりスイカは塩に限るな」

「謙吾少年、早く私にも貸せ」

「……わたしも塩派なので早く貸してください」

「そう焦るな。この微妙なさじ加減が重要なのだ」

ちまちまと塩をかけている謙吾。来ヶ谷がじれったそうだ。

「…くらえ」

――ツン。

来ヶ谷の指が謙吾のわき腹に直撃。

「ふぉのぉぅ!?」

――ざらざらざら~。

謙吾が悶えた瞬間、一気に塩がスイカに降り注いだっ。

……スイカが白い。

「こんなん食えるかぁーっ!!」

「責任を取って残さず食べろ」

「責任は俺にあるのかっ!?」

「……農家の人が一生懸命育てたものを粗末にするおつもりですか?」

うわ、泣きながら食べてる謙吾を見るだけで口しょっぱくなってきたぞ…。

「二木、そこに紙コップを置いてくれ。ここから種を飛ばして、それに入れる」

兄貴は兄貴でまたおかしなことをやっている。

「はあ……いいですけど」

「まあ、見てな――プププププッ」

「……すごい……全部入ったわね」

「はるちんもそれやるっ、やるっ!」

「――プププププププププーーーッ!」

「………………………………」

葉留佳が飛ばした種は、全弾みごとに二木に命中した。

「……は~る~か~」

「あひーっ!」

葉留佳のホッペをグリグリ……とても痛そうだ。

「あれ? クーちゃん、種は?」

「はい、私は種まで飲み込んでいますっ」

「えええええーっ!? だ、ダメだよクーちゃんっ」

「ダ、ダメなのですか?」

「種を食べちゃうとね、お腹の中でにょきにょきにょき~って」

「にょきにょきにょき~っですかっ!?」

「そして最後には……」

「ごくり……最後には……?」

「ぼぎゃーんっ」

「ぼぎゃーんっですかっ」

「うん、ぼぎゃーんっ」

「私、爆発しちゃうですかーーーっ!?」

ス、スイカの種にはそこまで殺傷力があるのか……あたしも気をつけなければ。

なんとなく横でおいしそうにスイカを食べている理樹を見る。

「はむっ…ぱくぱく」

こいつ、本当においしそうにスイカを食べるな。

モグモグしているその顔は、今にも幸せが溢れ出ちゃいそうなほど輝いている。

「ぱくぱく……こっくんっ……――」

「………………」

ん?

いきなり動かなくなったぞ。

「……――――」

顔がみるみる青ざめていくっ!?

ま、まさかコイツ……っ。

「……がたがた……にょきにょきにょき……ぼぎゃーん……ぶるぶるぶる……」

こいつ今、種飲んじゃったな!? 種飲んじゃったんだなっ!?

「うわわ、クーちゃんも理樹ちゃんも落ち着いてっ。種食べても爆発はしないけど、あんまり食べちゃうとお腹が痛くなるかもしれないから気をつけて、ってことだよ~」

きっと、小毬ちゃんは冗談を言ったつもりだったんだ…と思う。



「さて、食べ終わったし片付けでも……」

二木が動こうとしたとき。

「かなたおねーちゃん」

理樹が二木に寄っていった。

「…ぁぅ…ど、どうしたの?」

「ほっぺに種ついちゃってるよ」

「そ、そう」

二木が自分でホッペをこすった。

けど、違う場所をこすっていたので種はついたままだ。

「ボク、取ってあげるね。えいっ」

ぴんっ、と指で弾く。

「とれたよ」

「ありがとう」

「どーいたしましてっ。つんつん」

で、なぜか二木のホッペをプニプニ。

「……あっぅぅ……な、何をするのよっ」

「朝のおかえしっ、つんつくつん」

「………………」

「つんつん、ぷにぷにぷにに~」

「……………………」

「かなたおねーちゃんのほっぺほっぺ~、ぷにぷに~っ」

「…………………………――――」

「…………………………――――――――――――」

「おねえちゃん、どうしたの?」

葉留佳が二木の肩に手を置いた途端。

「……ぅきゅぅ~~~~~~~…………――」



――こてんっ



「うわわわわーーーっ!? かなたおねーちゃんっ!?」

「ひゃあぁぁーっ!? またおねえちゃんが卒倒したーっ!?」

「佳奈多さん佳奈多さん、しっかりしてくださいっ!」



「初期型のファミコン並みの飛びやすさだな……」

うーみゅ……恭介の言葉に何も言い返すことはできんな…。