ロ理樹ちゃんプールへ行く ~8話~(リトルバスターズ)作者:m
紹介メッセージ:
世の中には不思議が溢れている。この話もそんな不思議の一つだ。いやなに、別に信じる必要はない。ただ、朝起きたら理気が小さくなっていただけだ。女の子になって…な。
「……恭介さん、何をしているのですか?」
――恭介が地面に膝を着いて、何かに何かを書いている。
「おいおい、見るなよ。楽しみなのはわかるが、今見ちまったら楽しみが半減しちまうぜ?」
最後に筆を力強く払う恭介。
「――よし、完成だ」
今まで書いてた何かをクルクルと丸めて巻物に。
「――さて、諸君」
「ここからは趣向を凝らしたゲームをしたいと思う。理樹、ちょっとそっち持って」
さっきの巻物の端を理樹に渡す。
「うんっ」
それをだーって、走って広げた。
「第一回リトルバスターズ対抗プールボールでりっきりきにしてやんよ!大会~」
「はい、拍手~」
――ぱち、ぱち
……まばらに拍手が上がった。
「ヒィィィャッホーーーウッ!」
飛び上がるほどテンションが高い剣道馬鹿が約一名。
「ボクもひゃっほーいっ」
って、スクール水着の理樹まで体をいっぱいに伸ばして飛び上がってるっ!
「みんなも謙吾と理樹のテンションを見習うように」
「……恭介よぉ」
「なんだ真人?」
「今のわざわざ丸める必要なくね?」
「否、ある」
「ないのに言い切ったな、コイツ」
「ううん、恭介さんが言うんだから、きっとすんごい秘められた秘密があるんだよ」
「これは奥が深いのです~」
「こまりちゃんとクドがそう言うなら意味があるんだな」
うん、きっと今のは恭介なりの意味があったんだ。
「うおおぉぉぉーーーっ!? あたかもオレが恥かしい質問をしてしまったかのようじゃねぇかっ!!」
「――はい、恭介さん!」
小毬ちゃんが頭を抱えてる真人をスルーしつつ、勢いよく手を上げる。
「なんだね小毬くん」
「タイトル読んでも、どんなことをするのか全くわかりませんっ」
うん、小毬ちゃんの言う通りだ。
あたしも全くわからん。
「もちろん、それを今から説明しようとしていたところさ」
コホンと一つ咳払い。
「これからみんなでプールボールをしようと思う」
「ふえ? プールボール?」
「ああ、そうだ。もしかしたら小学生の時にやった奴もいるかもな」
「プールボールとは、プールの中でやる――言うなればバスケットやサッカーに似た球技だ」
「まずチームを二つ作る。そして各チームから一人ずつキーパーを選ぶ」
「プールに入って、プールの端と端にそれぞれのキーパーを配置したら試合開始だ」
「試合のルールはいたってシンプル」
「ボールを自分のチームのキーパーのところまで運び、キーパーにパスすれば得点だ」
「キーパーはいわばゴールだ。所定の場所から動いちゃダメだからな」
「説明は以上だ」
ふむ、と頷く来ヶ谷。
「つまりバスケットのように、ボールをゴール役のところまで運びシュート…もといパスをすればよいのだな?」
「ああ、そうだ」
なるほど…。
とにかくボールを取って、自分のチームのゴールに運べばいいだけか。
それは単純だな。
「だがな、恭介」
「なんだ?」
「俺たちはボールを持ってきてないぞ」
うむ、謙吾の言う通りだ。
たしか誰もボールを持ってない(前に持ってたボールは恭介が遊んで破ってしまったらしい)ので今日は持ってきてない。
「ふん…俺を見くびるな…」
ニヤリ、と不気味な笑い方をする恭介。
「ボールは必要ない」
――ぽむ。
恭介が手を置いた先には……。
「……直枝さんですね」
「……直枝ね」
「ほぇ?」
きょとんとしている理樹がいた。
「なにぃ…おまえまさか…」
「ご明察。――ボールの代わりに、浮き輪を付けた理樹でプレイする。浮き輪でプカプカ浮かんでいる理樹を、より多く自分のチームのキーパーに渡したチームが勝ちだ」
「「「「「「「「ええええぇぇぇぇぇーーーっ!?」」」」」」」」
いつもワケわからんことを言い出すが、今日は一段とワケわからんっ!
「追加ルールは、キーパーは3秒以上理樹をキープすること。キープ出来なかったらノーゴールな」
「それと、見てくれ」
恭介に言われるまま浮き輪をつけた理樹を見る。
「扱うのは、この愛くるしい理樹だからな。キャッチや運ぶ際は優しく、ソフトタッチだ」
「あと理樹を泣かせないこと」
「ボールなんかよりずっと萌え…燃えるだろ?」
恭介がバッと手を前にかざす。
「みんな、存分に楽しもうじゃないかっ」
兄貴が言ってることはハチャメチャだが…これは負けられない戦いだなっ。
周りのみんなも…。
「理樹ちゃんと一緒に泳げばいいだよね。私、がんばるよーっ」
「この勝負、リキのハートを奪うのはこの私なのですっ」
小毬ちゃんもクドもやる気まんまんだっ。
「こりゃ面白いねっ! よぉーし燃えてきましたヨっ」
うわっ、葉留佳のあの顔は何か企んでいる顔だっ。
「……わたしは泳ぐのが得意ではありませんが、直枝さんを抱っこ出来るのなら……ぽ」
相変わらず、ぽっとしているみお。
「おい謙吾、どっちがより多く理樹と触れ合えるか勝負しようぜっ」
「その勝負、乗った!!」
「フフフフフ……おねーさん、俄然(がぜん)やる気がムラムラと湧き出てきたよ……フフフフフ」
「ついに俺の実力が白日の下に晒される日が来ちまったな…」
こいつらは下心丸出しだっ!
あの目は。けだものの目に違いないっ
理樹はと言うと。
「わぁ~、とっても楽しそうだねっ! ボクがんばるよっ」
にぱ~っ♪
あ、相変わらず、か……かわいいぞっ。
「あ、けどね」
いきなりモジモジし始めた。
口元に手を当てて、ホッペが赤くなっている。
「けどね……あの……えと、えと……」
カァァァァァーっと顔がまっかっかになる理樹。
「……」
「へ、へんなところとか……触っちゃダメだよ……?」
――ドブハァァァーーーーッ!! バタッ、バタン、こてんっ
「ほわわわっ!? きょ、恭介さんっ!?」
「うわぁぁっ、とびっきりの笑顔で鼻血出しててきしょいっ!!」
「わふーっ!? こちらでは西園さんが…西園さんが痙攣してますっ!?」
「ひゃあああああーっ!? おねえちゃんも姉御も、死なないでーーーーっ!!」
「い、い、井ノ原さんがしぼんでいますーーーっ!!!」
「うわああああーん、謙吾君が大往生したーーーっ!」
……ゲーム開始前からえらいことになっていた……。