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ビューティフル・ドリーマー(沙耶アナザーストーリー) 最終話 (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 ※沙耶を知らない方でも楽しめる構成とするため、沙耶の設定を拝借したオリジナルストーリーなっております。

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前回ビューティフル・ドリーマーリスト

「――お祭りって、ほんっっと最高ねっ!」

 左手にぬいぐるみ満載の袋、右手にチョコバナナを持って出店の通りを歩く。

「喜んでもらえて何より」

 そういう恭介くんの手にはドライヤーやらグラスセットやら初代ファミコンなど、出店ならでは景品がぶら下がっている。

「やっぱオレの美しい背筋は誰にも負けねぇな」

 真人くんの右手にはダンベル。4つも。左手にはスイカと冷やすための氷が入った袋だ。

「お祭り男爵の称号を取り戻せたのは嬉しいが…さすがに家電は重いな…」

 謙吾くんの両腕には電子レンジとIH炊飯ジャー。



 あれから輪投げや背筋力測定(賞品はダンベル)、ストラックアウト、SASUKE、寿司早食い大会など、出ている出店のことごとくをリトルバスターズが制覇していったのだ。



「最後の方のお店はもう大騒ぎだったよね…」

「馬鹿たちのせいだな、全部」

「ま、そりゃこれだけ暴れまわればね」

 後半に回る店にはすでにあたしたちの噂が広まっていたらしい。

 『うわ、うわぁぁぁーーーっ!? お祭りテロリストが来ちまったぞーーーっ!』

 とか

 『わ、わ、わかった…や、焼きソバのチケットをやる…イチゴ飴のチケットもつける!! それに綿菓子もだ! だからウチの金魚は取らないでくれ!』

 とか大変だった。



「宣言通り、全部の出店を回ったな」

 満足そうに恭介くん。

「もう…日が落ちちゃうわね」

 そうなれば……。

突然、恭介くんに頭をワシャワシャと撫でられた。

「なに、今日という日は長いさ。まだまだたっぷり遊べるぜっ」

 無邪気な少年のような顔が眩しく見える。

「そうだよ、沙耶さん」

 笑顔の理樹くん。

「そうね、そうよね」

 みんなの笑顔につられて笑顔がこぼれる。

「まずは帰ったら、やっぱスイカじゃね?」

「スイカだとぅ!? うわぁぁぁ、興奮するっ!!」

 謙吾くんはスイカで興奮するらしい。

「スイカで興奮するなんてきしょすぎじゃーーーっ!!」

――ゲスンッ!!

「ふのおおぉおぉおーーーっ!?」





 夕焼けの下。



「沙耶さん、どうしたの? すごい笑顔だね」

「ううん、なんでもないわ」



 友達との楽しいひと時を味わいながら帰路へとつく。













「綺麗な夜空ね」

「ああ、ここでしかこんな夜空は拝めないな」



――満天の星空の下。

 縁側にみんなで腰を下ろした。



「みんなー、スイカ切ってきたよ」

 理樹くんが浴衣姿で、スイカの入ったお盆を持ってきた。

「お、来た来た」

「均等に切ってきたつもりだけど、どこを食べたいとかある?」

「オレは全部なっ!」

 真人くんが一番に手を伸ばした。

「サラッとふざけたこと言うなっ! あたしも楽しみにしてるんだぞっ」

 ズベシッ!!

「ぎゃふっ!?」

 鈴ちゃんがチョップで真人くんの手を叩き落した。

「相変わらずみんなスイカが好きねぇ」

「当たり前だろ」

 スイカを受け取る恭介くんの目はキラキラと輝きすら放っている。

「夏=スイカ、スイカを食わずして夏は語れないと言っても過言じゃないほどだぜ!」

「恭介の言う通りだ――理樹、塩はあるか?」

「もちろんだよ、はい、謙吾」

「へぇ…フルーツに塩なんてかけるの? おいしいの、それ?」

「ああ、美味いぞ」

 ちびちびと、微調整をしながら塩をかけていく謙吾くん。

「謙吾っち早くしろよぉ、オレもう腹ペコなんだよぉ」

「この微調整がまた……」

「んなのいいからよ、次オレなっ」

「うおっ、手を伸ばすなっ」



――ザラララララッ!



 真人くんの手がビンに当たり、謙吾くんのスイカに大量の塩が降り注いだ。

「……」

「……」

「やんのか、こらああぁぁーーーーっ!」

「えぇ!? 真人が先にキレた!?」

「俺のスイカを汚した罪…貴様の体で払ってもらうぞ!!」

「馬鹿ばっかだな」

「付き合ってられないわね…あたしも塩をかけてみようかしら?」

 味見程度にちょっとだけ……。

「オラ謙吾! 庭で勝負を着けようぜ!!」

「望むところだっ!!」

 真人くんが立ち上がるとき、あたしの肘に真人くんの体が当たった。



――ドババッ!



 あたしのスイカが一瞬で塩漬けになっていた。

「……」

「……」

「やってやろうじゃないのーーーっ!!! 食べ物の恨みの恐ろしさを骨の髄まで味あわせてやるわっ!!」

「うわっ、さやまでキレたぞっ!?」

「やれるもんならやってみろってんだ!!」

「ってか、真人くんのスイカだけ白くなくて見栄えが悪いのよっ! オラオラオラオラーッ!!」

「うおおおおおぉおぉおぉおぉおぉおぉーーーっ!? オレのスイカまで巻き添えにしてんじゃねぇぇぇーーーっ!!」

「貴様のスイカだけ無事でいられると思っているからだ、ばーか」

「んだと謙吾てめぇっ!! 二人まとめてブッ倒す!!」



「3人ともやめてよーっ! 恭介っ、恭介っ、早くとめようよっ」

「いい、やらせておけ」

「ええーっ」

「おまえら、勝負をしてもいいが食べ物は粗末にするなよ」



「わかったわよ、じゃあ勝負で負けた奴があの3つのスイカを食べるでどう?」

「いいだろう!!」

「やってやろうじゃねぇかっ!!」



「やばい…馬鹿ばっかだ…」

「いいじゃないか、鈴」

「大切なことなんだぜ? こういうことの積み重ねで……友情は深まっていく」

「……うみゅ……そーいうもんなのか」

「……ああ、そういうもんだ」



「そうだな――さや、楽しそうだ」



 あたしたちがバトルを繰り広げる中、鈴ちゃんの声ばかりが星空に響いた。









 夜が更けてゆく。

「……」

「……」

 時間が経つにつれ、星空を見上げるみんなの口数は少なくなった。

 縁側に座り、あたしは真ん中。



 あたしは――友達に囲まれていた。



 自分の手を夜空にかざす。

「あ……」

 その手を透かし、星空が見えていた。

 終わりが…見えていた。



 そっか……。

 楽しい時間ももうすぐ終わり、か。



「そろそろだな……」

 恭介くんが立ち上がった。

「俺たちで送り火を焚いて……沙耶を見送ってやろう」

「沙耶もいいか?」

 あたしは無言で頷いた。

「おまえらも…いいな?」

「……そうだね。見送ってあげないと」

 小さく微笑む理樹くん。

「送り火は庭先で火を焚いて、しめやかに行なうそうだ」

「けどな……」

 恭介くんが無邪気な少年みたいに白い歯を見せた。

「悪いが、俺たちの送り火はちっとばかり盛大だぜ?」

 恭介くんがそう言うのと同時だった。





 閃光と共に七色の火花が庭中から吹き上げ、辺りを虹色に染めあげた!





 眩いばかりの炎を背に、恭介くんが巻物を広げる!

「これより『第一回リトルバスターズだよ大花火大会・イン・送り火』を行なう!!」

「はい、拍手ーっ!」



――パチパチパチパチパチーッ!

 みんなから大きな拍手が起こった!



「きょーすけが裏でコソコソ何かしてると思ったらこれだったのかっ」

「仕込みに手間が掛かってるんだぜ?」

「なんつーか、恭介らしいぜ」

「フン…こういうことに関しては余念のない奴だ」

 呆れた風に言ってはいるが、みんなの顔は満面の笑顔だ。

「これが僕たちリトルバスターズ流だよ」

 笑顔を向ける理樹くん。

「……知ってるわよ、とっくにね」

 あたしからも笑みがこぼれる。

「沙耶」

 ポン、と恭介くんの手が肩に乗せられた。

「最後の最後まで、思う存分に楽しんでいってくれ」



 恭介くんと、みんなの思いやりが伝わってくる。

 とても温かい…。



「言われなくても思う存分に楽しんでやるわ!」

「他にも花火があるんでしょ、出しなさいよっ、早く出しちゃいなさいよっ」

「手持ちから打ち上げまで揃えてるぜ。好きなものを選んでくれ」

「うおっ、沙耶ばっかズリーぞ! 恭介、オレにもくれっ!」

「貴様ら、抜け駆けは許さんぞっ!!」

 地面に置かれた手持ち花火に飛びつく二人。

「うわっ、そんなに取るなーっ! あたしと理樹の分がなくなっちゃうだろーっ」

「そんなに焦らなくてもなくならないから安心しろって」



 ドサドサドサ~~~っ!

 山ほどの花火が地面に置かれた!



「ええっ!? どれだけ買ったのさ!?」

「この辺の花火を全部買い占めてきたぜっ!」

「おまえら、どこにも負けないくらい最高に楽しい送り火をするぞ!」

「「「「「「おーーーーっ!」」」」」」







「わぁ、綺麗だね」

「花火はこーゆーのが一番だな」

 理樹くんと鈴ちゃんがしゃがみこみ、手持ち花火の色彩を楽しんでいた。

「ハデなのもいいけど、普通のも楽しいわね――これが線香花火ね」

「うん、本当は締めにやるんだけどね」

「へぇ……綺麗」

 風流に花火を楽しんでいるあたしたちの後ろでは。



「くらえ謙吾っ!! ロックバスターっ!!」

 ロックマンごっこ…とか言うらしい。

 真人くんと謙吾くんの間でロケット花火が飛び交っている。



「あんなの直撃したら死ぬんじゃないの?」

「ふつー、当たったら痛いじゃすまないな」

「真人も謙吾も異常にタフなんだよ……あの二人だからこそあんなことできるんだろうね……」

 ……どうやら花火の日常光景のようだ。



「甘いっ! 今度はこちらからゆくぞ!!」

「そうは行かねぇぜっ! 砂目潰しをくらえってんだ!」

「クッ!」

 謙吾くんが身をかわしたせいで、謙吾くんの手からあさっての方向にロケット花火が射出された!

「うわっ!? こっちにきたっ」

「へ!?」

 伏せる鈴ちゃんと理樹くん!

 あたしは反応できずにそのままだ!

 二人を飛び越えたロケット花火があたしの頬をかすめ、背後で炸裂!

「沙耶さん、大丈夫……?」

「……」

「おお、すまなかった」

「当たらなくて良かったな、沙耶っち!」


 びっくりして落とした線香花火が……地面で音もなく消えた。


「うんがーーーーーっ!! ぶっ倒してやるわっ!!」 

 手元にあった花火を適当に掴んで火をつけた!

「待て沙耶! それドラゴンじゃねぇかっ! 吹き上がりっぱなしだろっ」

「問答無用ーーーっ!!」

「だああああーっ!? そんなん持って追っかけてくんなっ!!」

「沙耶さん、そんなの持って走ったら――」

「とめないでよ、理樹く…?」



 ジジジジジ……シュボッ。

 火がついた。

 ズバババババババババーーーッ!



「ふぎゃああああぁぁぁーーーっ、あつっーーーっ!!!」

 噴火した途端、自分に被害大だった!!



「……大丈夫か?」

「だ……大丈夫よ、謙吾くん……」

 心配したみんながあたしを覗き込んでいた…。

「おめぇよぉ、すげぇ馬鹿だろ?」

「放っておいて……ぶつぶつぶつ……」

「こらこら」

 そんなあたしちの間に恭介くんが入ってきた。

「花火を人に向けたら危ないことくらい常識だろ」

 ……どうしてこうも恭介くんが言うと胡散臭く感じるんだろう。

「花火ってのは、こうやって使うんだ」

 恭介くんが指を鳴らした瞬間。



――ズババババババババーピュピュピュピューーーーッ!!

 数十発にも及ぶロケット花火が庭から一斉に射出され、星空に幾重もの赤い尾を引く!

 庭が明るく照らし出されるほどだ!



「うわぁ……」

「すごいな……」

 その光景のあまりの綺麗さに、理樹くんも鈴ちゃんも空を見上げたまま声を失った。

「…大迫力ね…」

「はははっ、だろ?」

「一本だと地味だが数十本集まればSF映画もビビるほどの迫力になる」

 心底楽しそうな笑顔が零れている。

「って、何本か倒れてない!?」

 しかもこっちに頭を向けてるじゃないの!?

「うみゃっ!? 火がついてるぞ!?」

「やばいっ!! みんな伏せろっ!!」



――ズババババババババーピュピュピュピューーーーッ!!

 ロケット花火が頭上をミサイルの様に飛び交う!



「うわわわぁーっ!?」

「謙吾、理樹を守れっ! 真人は沙耶だっ」

「……さ、沙耶、そのなんだ…お、お、お、覆いかぶさんぞ」

「なんでそんなドモりまくりなのよっ! 余計にイヤぁぁぁーーーっ!!」



 ピュ~~~~ッ、バンッ!!

 …………。



「……お、終わった?」

 みんなが恐る恐る頭をあげた。

「……な。人に向けるとこのように非常に危ない」

「おまえが一番あぶないんじゃーーーっ!!」



――ズゲシンッ!!



「ぎゃはーっ!?」

 鈴ちゃんのドロップキックが恭介くんに炸裂していた。

「うみゅ、ロケット花火はくちゃくちゃ危険なのがわかった。普通の花火をやろう」

「あはは…そうだね――はい、謙吾も手持ち花火」

「むぅ……いた仕方あるまい」

「ん、真人はこれでいいだろ」

「鈴、サンキュ……って蛇花火じゃねぇかぁぁぁーーーっ!! どうやって楽しめってんだよっ」

「その辺でムニムニしてるのを見てろ」

「いい歳して『うわぁ、ムニムニして楽しいやっ』なんてやってられっかぁぁぁーーーっ!!」

「ほらほら、沙耶さんも手持ち花火」

「…ありがと、理樹くん」



 目の前にはいつもの騒々しい…だけど、ずっとずっと心から望んでいた光景が広がっていた。



 あたしにも、かけがえのない友達ができたんだ。

 みんなあたしの――最高の友達。





 いつか感じた胸の寒さは、疾(と)うの昔に消え去り。

 いつしか胸は日向のような温かさが一杯に詰まっていた。





「あ…れ……」

 理樹くんからもらった花火が手からすべり落ちた。



「沙耶さん…?」

 足元からは幾つもの光の珠が浮かび、天へ向かって昇ってゆく。



 そっか…。

 もう逝かなきゃならないのね…。



「「「「「沙耶っ!?」」」」」

 みんながあたしの周りに集まってきた。



「もう少し遊んでいたかったけど、お迎えが来ちゃったみたい」

「沙耶さん…」

「さや……」

 理樹くんの目にも鈴ちゃんの目にも涙が溜まってしまっている。

「楽しい時間ってあっという間なのね」

 言葉を紡ぐ。



「こんなに楽しい時間なんて…ただの夢でしかないと思ってた…」

「けど、みんながあたしの夢を叶えてくれた……」

「こんなあたしと友達になってくれた……」

「こんなあたしと遊んでくれた……っ」

「それが堪らなくうれしかった……っ……うれしかったのっ」

 無理に笑おうとするが、自然と涙が頬を伝っていた。

「あなたたちみたいな友達に出会えて、素敵な思い出を作ってもらって……」

「あたしって、ホントに……ホントに幸せモノよねっ」

「もう…っ」

「もう……っ」

「これっぽちも悔いはないわっ」

 嬉しいのに、幸せなのに、笑顔なのに、止め処なく涙がこぼれ落ちる。



「沙耶……オレもおまえと友達になって遊びまくれてよ」

「その、なんだ…」

 頬をかく真人くん。

「短い間だったけどよ、すっげぇ楽しかったぜ」

「真人くん…」

 いつも通り、憎めない顔で笑っていた。



「沙耶」

 謙吾くんが右手を差し出してきた。

「……気の利いた言葉の一つでも掛けたいが、口下手なものでな」

「友情の握手を」

「謙吾くん……」

「あ…」

 握手をしようとするけど……もう、あたしの手は見えていなかった。

「大丈夫だ。たしかにおまえの握手を受け取った」

 見えても触れてもいないあたしの手に握手をする謙吾くん。

 もうないと思っていた手から温かさが伝わってくる。



「沙耶さん…」

「理樹くん……」

 理樹くんは笑おうとしているが、その目には涙が溜まっている。

「僕も、沙耶さんと友達になれてとてもよかった……」

「沙耶さんのことを忘れないよ、絶対に」

「……うん、ありがとう」

 あたしが微笑むと、理樹くんもつられて微笑んだ。



「……うぐっ…ぅ……」

 鈴ちゃんの大きな瞳からはもう涙がこぼれ落ちていた。

「いやだっ!」

「さやがいっちゃうなんて、あたしはぜったいイヤだっ!」

「鈴ちゃん……」

「あたしたち、友達になったばっかりだぞ……っ」

「たった3日しか遊んでないんだぞっ……」


「ごめんね…」


「いかなきゃだめなのか……?」


「……」


「あ、そうだっ、学校にも楽しい奴がたくさんいるんだっ」

「あたしたちは野球もやってるんだぞっ! あたしなんてエースでピッチャーだぞ…っ」

「さやが入ればぜったいどんなチームにも勝てるぞ、くちゃくちゃ楽しいに決まってるぞ……っ」


「それはちょっと魅力的かも……」


「だろっ、さや、だから、もっともっとあたしたちといっしょに遊ぼう……っ」



 あたしの手を取ろうとするが……

 その手が空しくすり抜けた。



「あ……うあっ…あああっ……」

 途端に鈴ちゃんの目から雫があふれ出す。

「鈴ちゃん…」

「そんなにあたしのこと思ってくれてありがとね」

 もう見えなくなってしまった手で鈴ちゃんの頭を撫でる。

「じゃあ…あたしはマネージャーにしてもらおうかしら?」

「うぐっ…ぅっ…マネー…ジャー?」

「そ。ちょっと遠くからだけど、そこから鈴ちゃんたちの活躍を応援させてもらうわね」

「…………ぐずっ……わかった、ぜったいぜったいだぞ……っ」

「…もちろんよ」



 もう、体のほとんどが消えかかっている。



「最後におまえにとっておきのプレゼントがある」

 静かな笑みを向ける恭介くん。

「……プレゼント?」

「ああ、そうだ」

「みんな、準備はいいか?」

 見回すと、みんなが庭で何かをセッティングしていた。

「よし、火がついた! 下がらねぇと火傷すっぞー!」

「こっちもだ!」

「僕の方もオッケーだよっ」

「ぐすっ……ちょっと待て……ぐずっ、うぅっ……うみゃ、できた」

 みんなが大急ぎであたしの横へ走ってきた。



「沙耶、これが俺たちからのプレゼントだ! 受け取れ!」



「いくよーっ!」

 理樹くんの声と共に。



 庭のあちこちから無数の光の玉が放たれた。



 次々と夜空を照らし出す光の花。



 ピンク、緑、赤、白。春夏秋冬を思わせる色合い。



「……すごい……」





 十数個にも及ぶ大輪の花が星空を可憐に彩り。

 空いっぱいに、天まで届く光の花が散りばめられた。





 綺麗だった。

 今まで見たどんなものより、綺麗だった。





「最後の最後までおまえを楽しませる、って言ったろ?」

 ニカッと笑う恭介くん。

「恭介くん……」

 謙吾くんと真人くんも無邪気に笑う。

「こういうやり方しか知らないものでな」

「オレたちらしくていいだろ」

 涙を浮かべていた理樹くんも鈴ちゃんも、今は笑顔だ。

「これが僕たちリトルバスターズ流の見送り方だよ」

「さやと一緒に入れた時間はくちゃくちゃ楽しかったぞ」

 空の輝きに照らされるみんなの顔は、笑顔だった。



「みんな……」

「素敵な時間をありがとね」

「最期の最期まで――最高に楽しかった」



 あたしの顔からも笑顔が溢れる。

 大輪の光に合わせるかのように、あたしの体も光に包まれていった。



 もう……

 お別れの時間だ。



 みんなの最後の笑顔をしっかりと胸に刻み込む。





「そろそろ時間かな……」

「それじゃ、またね。ばいばい」





 光が――拡散した。













 星空へと吸い込まれてゆく意識。



 遥か下からは、さらに幾重もの花火が放たれ華麗な花を満天に咲かてせた。

 花火の隙間からは呼びかける声が夜空に響く。



 みんな……。

 もう…本当の最後の、最後まで……。









 楽しかった日々が走馬灯のように思い出される。



 みんなで一緒に食事。

 みんなで一緒に海。

 みんなで一緒にお祭り。

 みんなの――笑顔。



 本当は、もっとみんなといたかった。

 けど…。

 これだけあるなら…もう充分だよ。





 ありがとう…。

 温かさを。



 ありがとう…。

 一緒にすごした日々を。



 ありがとう…。

 たくさんの想い出を。



 ありがとう…。

 みんながくれた全て。



 ありがとう…。

 かけがえのない、あたしの友達。













 …ありが…とう…













――みんながくれた大切な想い出を胸に抱きしめ



 永久の夢の世界へとついた――。

























 『ビューティフル・ドリーマー』













***













■特別SS『ビューティフル・ドリーマー』あとがき

特別SS『ビューティフル・ドリーマー』を読んで下さり、本当にありがとうございます。
作者のmと申します。
原作から離れ完全オリジナルアナザーストーリーとなっておりますが、楽しんで頂けたのなら嬉しい限りです。

このSSのメインテーマの一つは『夢』です。
夢。
様々な意味があります。
眠りについたあとの夢。
願いを込めた夢。
夢という言葉に共通する意味は、現実ではないことです。ですが、同時に現実と繋がる言葉です。
目が覚めれば夢は現実に戻ります。
願いが叶えば夢は現実となります。
そんな、現実と非現実の間を揺れる不思議な言葉だと思います。
この『ビューティフル・ドリーマー』は私が感じる夢のイメージを書かせていただきました。
非日常的でありながら日常的な光景を感じてくだされば幸いです。

もう一つのメインテーマは『友達』です。
リトルバスターズというゲーム自体にも通じるテーマです。
こちらのテーマに関しては、沙耶シナリオをプレイした方でしたらわかるかと思います。
沙耶をみんなと遊ばせてあげたい、そのような気持ちから恋愛要素を省き『友情』をテーマとして選ばせていただきました。

最後に。
もし良ければ最終話は『saya's song』と共に楽しんでいただければ嬉しいです(笑)

前回ビューティフル・ドリーマーリスト

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