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花ざかりの理樹たちへ その89 ~買い物編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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「へぇ…まるで学校の保健室ね」

「身体測定を思い出します~」

「理樹ちゃん止まるなーっ! 後が支えてるんだからほらほらほら、レッツらゴーっ」

「葉留佳さんっ、押さないでよっ」



――店員さんたちが作ってくれた特設試着室に入ると10畳くらいのスペースが広がっていた。

ここにいるメンバー全員が入るのには十分な広さだ。

わざわざ商品が置かれている平台まで移動してくれてまで作ってくれたみたいだ…。

作りはというと佳奈多さんたちの言うとおり、まるで身体測定の時の保健室のようだった。

違いと言ったら壁に全身が映る大きな鏡が掛かっているくらいかな。

わざわざハンガーと脱衣籠まで備え付けてある。

ここまでしてもらうと……さすがに逃げれない。

男なのにランジェリーショップに入って、あまつさえ女性用の下着をつけるなんて…。

はあぁ…。

けど、逃げられないし…ここはもう覚悟を決めて下着をつけるしか……。

下着を…………。

…………あ。

自分の胸に手を当てる。

……そういえばもう朝からブラジャーは着けてたんだっけ、僕……。

「はあぁ……男なのに」

言いながら、服の上からブラの位置を軽く正す。

「よし、と」

「……」

「……って、うわぁあぁあぁあぁ!?」

もはや手慣れてしまっていた自分がいたっ!

「なんだ理樹君、自分のオッパイを触りながら喜ぶなんてどんなサービスだ」

「ち、違うからーっ!!」



そうしている間にも、みんなが下着を持って試着室へ入ってくる。

「このブラジャーなんて理樹ちゃんに似合うんじゃないかと思って持ってきたよ~」

「さすが小毬さん、センス抜群なのです~」

「……わたしはいささか過激なものを見繕ってきました。きっと直枝さんなら着こなせます」

「ほう、西園女史が持っているボンテージ姿の理樹君も見たいが、小毬君が用意した清楚系も捨てがたい」

「あの…私、選んでたらどれも直枝くんに似合いそうに見えちゃって……3つも持ってきちゃった……」

「うわぁ~、杉並さん選んできたの、どれもすんごい可愛いよ~」

「そうね、特にこのオレンジのブラなんて直枝には映えるんじゃないかしら?」

「え、ほんと?」



きゃっきゃっ、わいわい、がやがやがやがや~っ



僕の気持ちとは裏腹に女性陣はブラジャーのハンガーを手にし、水を得た魚のようにテンションが急上昇中だ。

まずい、まずいまずい、大ピンチ……。

頭の中で、思いっきりサイレンが唸りを上げていた……。





「――じゃあ理樹ちゃん、ちょっと私の横に立ってね」

「う、うん」

小毬さんと二人でみんなの前に立つ。

「え~、こっほんっ」

マイクを持っているようなポーズをする。

小指が立ってるあたりが小毬さんらしい。



「みなさん、長らくお待ちしました~! 今からみんなで可愛らしい理樹ちゃんを~…」

「こまりんの話なんてどうでもいいから早くやれーっ」

「ほわっ!? せっかく一生懸命考えたのに~っ」

早速リーダーシップのリの字も発揮できていない。

「うう…よぅし」

気合を入れなおして、す~っと息を吸い込む小毬さん。



「みんな~っ、理樹ちゃんに似合う下着を選んだか~っ」



「「「「「おーーーーーっ!!」」」」」

隣のテナントまで響くほどの声と共にみんながブラジャーの掛かっているハンガーを突き上げる!



「理樹ちゃんに下着を着せたいか~っ」



「「「「「おーーーーーっ!!」」」」」

まるで往年のクイズ番組のようなノリだ!

「ありがと~~~っ」

みんなが自分に反応してくれたのが嬉しかったのか、小毬さんがにははと笑う。

「みんな自分の選んだ下着を理樹ちゃんに来てもらいたいよね?」

「そんなの当たり前ですヨっ」

「けどね、みんな分の下着を着けてたら理樹ちゃんもクタクタになっちゃうよね?」

「たしかに色々と疲れるかな」

恐らく一着だけで精神疲労がピークになると思う。

「なのでっ……えーっと」

ゴソゴソ。

「こんなのを作ってみましたっ」

「小毬さん、その紙はなんでしょうか?」

横から小毬さんが持っている紙を覗くと、下には人数分の名前が並んでいて、同じだけ縦線が描かれていた。

「あみだくじね」

「かなちゃん、せいかーい」

「このあみだくじから理樹ちゃんに一本選んでもらって、当たった人が選んだ下着を理樹ちゃんが着ることとしますっ」

「誰が選ばれても文句なしだよ~」

「理樹ちゃんもそれでいい?」

コクリ。

ここまできたら、後は野となれ山となれだ。

……けど、来ヶ谷さんと西園さんのセレクトは避けたいな…(今も彼女らの手にある下着なのかすらわからないものが見え隠れしている)

「まあ恭介氏たちとの待ち合わせの時間もあるし、打倒な方法だな」

「けれど自分のが選ばれなかったらやはり寂しいのです…」

「……誰のが選ばれても眼福になることには違いありません」

「うむ、西園女史の言う通りだ」

そんな羊を見る狼のような目線を僕に向けないで欲しいよ…。



「じゃあね、みんなにこれを回すから線と線の間に3本の横線を引いてくださーい」

名前が隠されたあみだくじに、みんなが楽しそうに横線を加えていく。

「最後は理樹ちゃん」

「うん」

僕も他の線を気にしながら3本の横線を引く。

「ふぅ」

「よぅし、みんな引き終わりましたね~」

「じゃあ理樹ちゃん、何番目の線がいい?」

「う、うーん…」



みんなが僕の言葉に集中しているのを感じる。

出来るなら、なるべく真っ当なのがいいんだけど。

チラリとみんなが持っている下着に目を走らせる。

小毬さんや佳奈多さんが持っているのがスポーツブラタイプ。

葉留佳さんやクド、杉並さんが持っているのが普通のカップブラタイプ。

ほくそ笑んでいる西園さんの手には紐やらフリルやらが付いた過激なランジェリー。これは間違いなくハズレだ。

あれ、来ヶ谷さんは何も持ってない…………あ、いや何か持っている!

あれは……二枚貝!?

うん。

西園さんと来ヶ谷さん以外を選びたい。



「…3番でお願い」

さっき横目で覗いた記憶を頼りに、目で線を追いながら安全そうな線を選ぶ。

「3番だね、りょーかいっ」

小毬さんがあみだくじの紙を床に置き、線を辿り始める。

「ずんちゃずんちゃずんちゃ……」

鼻歌に合わせリズミカルに小毬さんのオシリも左右に振れている。

「なんかエロいな」

「エロくないから…」

来ヶ谷さんの頭の中ってそんなことばかりなのか心配だ。



「ずんちゃ、ずんちゃ――……」

「はいっ、結果が出ましたっ!」

小毬さんの声と同時に、更衣室内が色めき立つ。

「理樹ちゃんが着る下着は……」



――ゴクリ。

どっちにしろ誰かが選んだ下着を着なきゃならないんだけど、それでも誰が選ばれるのか緊張する!



「その栄えある栄冠に選ばれたのは~……」

小毬さんが口で「どるどるどるどる~」とドラムロールを奏でながら、僕らを囲むかのように並んでいるみんなの前を歩き出した。

そして一人の前で止まり、その手を掲げた!



「みおちゃんですっ」

「……わたしを選んでくださるとは……ぽ」

――パチパチパチ~!

みんなから拍手と口笛が沸き起こる!



…………。

……。

「え、ええええええええええええぇぇぇーーーっ!!」

よりにもよって、西園さんっ!?

「……なんですか、その反応は?」

ううう…。

自分の不幸を呪うしかなさそうだ…。





「――では、直枝さんにはこちらを着てもらいます」

「う、うあ…」



下着を広げて改めて唖然とした。

西園さんから受け取った下着は普通のブラジャーではなかった。

胸を隠す部分からさらに下の腰あたりまで生地が続いている。

いわゆる『ビスチェ』だ。

…ただそれだけなら、露出も少なくていいんだけど。

色は黒がベースで、白のフリルが縁を彩っている。

そして一番に目が行くのは…真ん中に生地が存在しないことだ。

体の中心部に生地は無く、交差させた紐で両方のカップを繋いでいる。ウエストもだ。

これだとおへそも丸出しだ。

加えて体のサイドも同様に紐だけで固定しなければならない。

これを一言で表すなら…そう、あぶない。



「わふー…すごい大人っぽいらんじぇりーなのですー…」

「こ、これを僕が……?」

「……もちろんです。これでしたら直枝さんの体のラインが強調されるのではないかと思います」

「こんな…こんな恥かしいの着れないからぁーっ」

こんなのを着てみんなに見せるだなんて、絶対無理だっ!

「ああ、そのビスチェなら理樹君のボディーラインを演出するには申し分ないだろうよ」

「直枝くんっ、やればきっとできるよ…っ」

「きちゃいなよ、ゆ~っ」

「ですよ、ゆ~っ」

うわっ!

みんなの目がギラギラと光を放っている!

ビスチェを着ろと轟き叫んでいるっ!

「…そうだな」

来ヶ谷さんの目が一際異彩を放つ。

「せっかくみんなで更衣室に入ったんだ」

「どうだみんな、不慣れな理樹君を手伝ってあげようではないか」

「お、さすが姉御、名案ですナっ」

「い、いーやいやいやっ! 遠慮しておくよっ、全力でっ!」

「……『ONE FOR ALL、ALL FOR ONE(一人はみんなのために、みんなは一人のために)』とは良く言ったものです」

「名言の使い方おかしいっ!」

「ええい、黙れ小娘。逃げたら殺す。大人しく着なければ殺す」

「ひ、ひやぁぁ…」

み、みんなが少しずつ距離を詰めてくるっ!

ジリジリと後ずさりをするが。



こつん。



後の壁にこれ以上の後退を遮られたっ!

「……直枝さん、覚悟を決めてください」

西園さんの手が僕の服のボタンに掛かる!

「うわっ、ちょ、ちょっとまだ心の準備がっ!」

「男なら四の五の言わず男らしく黙って着ましょう」

「それ、やってることと言ってることが矛盾してるからねっ!?」

そうしている間にも、ボタンが外され、

「リキのリボンは私が外してあげますっ」

リボンが緩められ、

「はい、理樹ちゃんばんざ~いして~。ブレザーを脱ぎましょうね~♪」

「ひゃぁあぁあぁあぁぁぁぁぁ………………――――――」

服が一枚、また一枚と脱がされていった…。





――数分後。

「あうううう……は、恥かしいよ……」



下はスカートのまま、上にはビスチェを着た僕が完成していた…。

カップの関係で、胸にパッドは入れないでそのまま着ている状態。

どうしても目が横にある鏡に向く。



ううう…体の真ん中に生地がないから、そこだけ素肌が見えちゃってる……。

体のサイドも紐で締めているから僕の体のラインがはっきりと見て取れる…。

手をどこにどう回しても、生地の間から素肌が見えちゃう……っ。

ううう……鏡に映る僕の顔も真っ赤…。

恥かしすぎて死にそうだよ…っ!



……………………。

みんなはというと、着替え終わった僕を凝視したまま固まってしまっている。

瞬きさえしていない!

こ、これ…。

は、裸より恥かしい…っ!



「……学校指定のスカートにビスチェとは……」

「……エロ過ぎだろ……」

――ブハぁぁぁぁーーーッ!!

鼻血と共に崩れ落ちる来ヶ谷さんを合図にみんなの硬直が解き放たれた!



「うわぁぁぁ~~~、理樹ちゃんすんごいキレイ~~~~っ!!」

パフェを見るときの5倍は輝いている小毬さん!

「わふーっ! わふーっ! こんな魅力的な下着まで着こなせるとはさすがリキなのですーーーっ!!」

「直枝くんホント綺麗……私も直枝くんみたいな女の子になりたい……っ」

女性からしてみれば最高の褒め言葉であろう言葉を紡ぐクドと杉並さん!

僕にはちっともこれっぽっちもうれしくないっ!

「理樹ちゃんボーーーン!! 鼻血ブーッ!!」

もはや葉留佳さんは良くわからないっ!

「あ、メールが来てるわ。返信しないと」

佳奈多さんが僕の方に向けている携帯からピロロ~ン♪とシャッター音らしき音が連続して聞えてくる!

「ぐ……キミのせいで血がたりん。この責任はどう取ってくれるというのだ?」

来ヶ谷さんは自分で鼻血を噴いておいて言うことがムチャクチャだ!



「直枝さん」

ポンと肩に西園さんの手が乗せられた。

「おふざけのつもりが存外似合っていていてビックリしました」

「おふざけでこんな格好させないでよぉーーーっ!!」

「こんなすんごい下着まで着こなせるなんて理樹ちゃんの才能だよ~」

「小毬さんまで何を言いだすのさぁーーーっ!!」

「あ、そうだ~」

突然小毬さんがはにかむ。

「理樹ちゃんに、他にも大人っぽい下着を着けてもらいましょ~」

「お、こまりん、それナイスアイディアっ」

「えへへ~」

「って、いーやいやいやいやいや、ちょっと待ってよっ!!」

「うむ、ちょっと待たない」

「こんなこともあろうかと、何着かそういったランジェリーを用意しておいた」

来ヶ谷さんの手にはすでに数着の薄手だったり面積が狭かったりする下着が!

「さすが来ヶ谷さんなのです~っ」

「……では、次はどれを着てもらいましょうか?」

「姉御姉御、このスケスケなのはどうッスか?」

「そんなのを着られたら、おねーさんは失血死するかもしれん」



やばい、やばいやばい、やばいっ!

このままだとまた過激な下着を着せらてしまうっ!

もう絶対に勘弁したいっ!



「ぼ、僕……」

「どうしたの、理樹ちゃん」

「ごめん、もう無理ーーーっ!!」



――ダッ!!



「ふえええぇぇぇぇーっ!?」

僕は一心不乱に更衣室から飛び出した!

色々なことを失念して。



「り、理樹ちゃぁぁぁーーーんっ!?」

「待てっ、待つんだ理樹君っ!!」

「リキ、行ってはダメなのですーーーっ!!」



走りながら後を振り向くと。

「理樹ちゃん、行っちゃだめーーーっ!」

「ま、ま、待ちなさい直枝ーっ!!」

みんな本気で僕を捕まえようとしているっ!!

無我夢中でテナントの出口に向かう!

そのとき。



「――ん、なんだ? 騒ぎか?」



ちょうど出口のところに恭介が立っているのが見えた!

よかったっ!

恭介にみんなを説得してもらおうっ!

「恭介ーっ!!」

「ん?」



――ばふーんっ



勢いを物ともせず、僕をしっかりと受け止める恭介。

「どうした理樹、おまえこんなとこ…………お……おま……おま……おま…………――――――」

「恭介、いきなりごめんっ!」

「ななななななななな……」

目が完全に点になっている恭介。

きっと、いきなり僕が飛び出してきて恭介も錯乱しているのだろう。

「みんなが僕にすごい下着を着せようとしてて」

「だから恭介にちょっとみんなを説得してもらいたいんだけど……」

「ななななな……なななな……」

「恭介?」

「……」

「恭介、聞いてる?」

「あ、ああ。いや、り、り、り、理樹」

恭介の胸からはドドドドドドドドドと早鐘どころかマシンガン並みの凄まじい心音が聞えてくる。

「どうしたの恭介? 様子がおかしいよ?」

「だ、大丈夫だ。大丈夫だから心配するな」

そう言いながらクルリと僕に背を向けた。

「さっさと戻ってくれ。な、なにも見てないからな、マジで」

「それで困ってて…ちょっと恭介ってば」

クルリと回った恭介をもう一度クルリと回して僕の方に向ける。

僕を凝視するなり、

「……ぐは……っ!」

またすぐに向きを変える恭介。

「なんでそっぽ向くのさ」

「今、俺がおまえを見たように見えたのは…それは幻覚だ」

「恭介ってば、どうしたの?」

後ろを向いたまま動こうとしない。

「恭介、お願いがあるんだって」

「ああ、どうした?」

それでも後ろを向きっぱなしだ。

「みんなが…ねえ、恭介ってば」

「……」

「お願いがあるんだけどっ」

こっちを向いてくれない!

「恭介っ」

「聞いてる」



「僕を見てよっ!」



その瞬間!



ドブッハァァァァーーーッ!!

恭介から真っ赤な噴水が上がった!!



「えええええええええぇぇぇぇーーーっ!?」

「……フ、フツーにイジメだろ、これ……」



――ドサッ…。



恭介が血とともに床に倒れこんだ!

「恭介、ど、どうしたの?」

「……ま、まて、理樹、よ、寄るなっ」

「そんなこと言ってる場合じゃないよっ! 血が凄いからっ」

慌てて助け起こした。

「ほら、拭いてあげるから僕の方を向いて」

「ま、まて、心の準備ぐぁ……ブハァァァァーーーっ!」

「ええええーっ!?」

二度目の出血!

「うわわ、恭介大丈夫!?」

「お、俺は大丈夫だから…た、頼むから放っておいてく……――」

「ダメだよ、こっち向いて」

クタッと横に向けられた恭介の顔を手で挟んで、もう一回僕の方に向ける。

「………………ブハァンッ!!!」

「ええええーーーーっ、またーっ!?」

そこへ。

「理樹ちゃぁーーーんっ!」

「リキーーーっ」

みんながこちらに駆け寄ってきた。

「みんな! それが恭介が大変なことになっちゃってて……」

「……その前にこれを」

「え?」

西園さんから何かを手渡された。

「これは……」

ブラウスに、ブレザー、そしてリボン。

「…………あ」

自分の姿に目をやる。



………………。

…………。

……。



「うわぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁーーーっ!?」



気付いたっ!!

今、自分の格好に気付いたっ!!

そ、そ、そ、そうだっ!!

ぼ、僕…

あのビスチェのままだったーーーっ!!

じゃあ、今まで……僕はこの格好で、恭介に……………………っ!!



――カァァァァァァァァ!



一気に体全体が熱を帯びるっ!!

「…………! …………!」

あまりの恥かしさに、腰が抜けてその場にへたれこんでしまったっ!

「ほら、直枝、これを掛けなさい」

佳奈多さんが僕に大きなタオルを掛ける。

「理樹君、大丈夫か?」

コクコクと頷くのがやっとだった…。





「それにしても、いきなり理樹ちゃんが走り出すからびっくりしちゃったよ~」

「はい、一時はどうなるかと思いましたっ」

「はあぁ…私たちもやりすぎだったことを認めなければならないわね…」

「理樹ちゃん、本当にごめんね…」

「僕の方こそ、いきなり走り出してごめん…」

「……恭介さん、よく直枝さんを止めてくれました」

「ふむ、恭介氏がいなかったら今ごろ通路に飛び出していたかもしれなかったからな」

「いやー、事故を最小限で済ますなんて、さすがは我らがリーダーですナ」

「ああ、いきなりのことで俺も驚いたが」

鼻血を拭きながら失血気味で青白い顔をした恭介が立ち上がる。

「最後の尻拭いはリーダーの仕事と相場が決まってるからな」

「では恭介氏に最後の尻拭いをお願いするとしよう」

「ん?」

「理樹君が今着ているランジェリーに、血がついてしまった」

下着を見ると…。

「あ、ホントだ」

お腹のフリル部分に少しだけ血がついている。

この位置だと、恭介を助け起こしたときに付いたんじゃないかな。

「……まさか」

恭介の額に一筋の汗が流れる。

「そのまさかだ。責任買取をしてくれ」

「なに、キミが鼻血を出すほど素敵な下着なんだから損はなかろう」





その後、レジで恭介の大絶叫が木霊したのは言う間でもない…。




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