――ここからはまた別種類のコスプレのようだ。
恭介曰く「コスプレと言ったらやっぱりこっちだろ」だそうだ。
どうやら撮影会をやるらしい。
***
で、撮影開始。
佳奈多さんが登場。
これは…どこかの学校の制服かな?
胸の下まで伸びている薄青色の襟。一本赤い線が入っている。
髪にはオレンジのリボン。頭の両サイドで結っている。
髪は長いけど、恭介が言うには「第一話の設定ってことでいいだろ」らしい。
いつものクリムゾンレッドの腕章は『風紀委員』から『団長』に変わっている。
「ただの人間には興味ありません」
だそうだ。
「おねえちゃん、いつもとちっとも変わりないじゃん」
「それ聞えたら怒られると思うよ…」
***
続いて西園さんだ。
ガタリ、とパイプイスを置いて本を読み始めた。
……。
……。
……。
これで終わりらしい。
コスプレ…なんだと思うけど制服を着替えただけにしか見えない。
制服はさっき佳奈多さんが着ていた学校のものだと思う。
ただ違うのはこげ茶色のセーターを着ていることだ。
「……」
あ、顔を上げた。
「……ユニーク」
やっぱりそれで終わりらしい。
「あのアニメでは一番のお気に入りキャラだ」と漏らした謙吾の発言は聞き流しておこうと思う。
***
葉留佳さんも登場。
やっぱりさっきの二人と同じ制服。
髪型を変えていて、おでこが出されている。
「あっははははは、こりゃサイコーに気持ちいいにょろ~」
テンションは全く同じようだ。
葉留佳さん曰く、隠れファンがめがっさ多いという話だ。
***
次は…時代逆行。
小毬さんが現れた。
なんだかプルプルしてたり言ってたりする。
服装は…SF系なんだと思う。
黄色の半袖でお腹が見えていて、首元は黄緑色の生地がV字にあしらわれている。
足元は黄色のニーソックス。
そして決め台詞。
「ゆけ~、ファンケル~」
「え、化粧品飛ばすの?」
さすがの来ヶ谷さんも「恭介氏、マニアックすぎはしないか…?」と呟いていた。
***
来ヶ谷さんは、お人形さんだった。
中世を思わせるヒラヒラとしたゴシック調の服。
その上には黒のアウター。
ヘッドドレスまでしっかりと着けている。
スカートは黒い花のように数枚に分かれていた。そこには逆クロスが描かれている。
普段から綺麗な来ヶ谷さんだ。
そういう服を着ると、あたかも絵から抜け出してきたような神秘的な印象を受ける。
そして決めゼリフ。
「フハハハハハハハハ、ジャンクにしてくれるわっ!」
ちょっと違うけど、らしかった。
西園さんのマメ情報によると「……主人公より人気です」だそうだ。
***
杉並さんは自分の好きなアニメキャラの格好とか。
派手さが際立っている。
肩には大きく先が尖った黒の鎧。赤い宝石が埋め込まれており金で装飾されている。
そこから足まで届くマント。外が黒で内側が紫だ。
服は赤色で、胸元に黄色いライン、縦は白のラインが入っている。
髪はウィッグ(西園さんにカツラと言うなと言われた)で長めになっている。
耳には黄色の丸いイヤリング。
そして黒のハチマキ。
本当はこんな性格に憧れているそうだ。
何か呟いているから耳を澄ますと……。
「黄昏よりも暗きもの……」
とか詠唱している。
それ、危ないからっ!
***
続いて僕。
はぁ…。
恭介に着せられた服は……魔法使いだった。
白の大きなスカート、スカートの裾はギザギザになっている。
青色のアクセントが白に映える。
髪は両方白の大きめなリボンで結われている。
「スマン、これしか用意できなかった…」
と言って渡されたのは白っぽいホウキ。
今、僕の横では一生懸命恭介が「STAND BY」とか喋っている。
「リキカルマジカル、がんばりますっ」
……何か間違った気がする。
「これでしたら、もう一人も一緒に出ていただいた方が良かったのではないでしょうか?」
「クド、けっこう詳しいね」
「はい、見ていましたからっ」
だって。
***
次は、真人とクド、鈴と謙吾の4人だ。
こっちも魔法使い…なのかな。
様々な時代が混じっているように思える。
謙吾は体にぴったりとフィットしている黒い鎧らしきものを着込み、上には真紅のコートを羽織っている。
両手には奇妙な形の白と黒の剣が握られている。刃渡りはそんなに長くはない。
鈴はツインテールになっていた。
こちらも真紅のセーターだ。胸元には白の十字の模様。
黒のスカートに黒のニーソックスを履きこなしている。
いつもと全く性格が違う格好ができて、鈴はうれしそうだ。
クドには紫色の服がよく似合っていた。
髪は分け目を変えただけ。
真人は……腰巻いっちょだった……。
***
「時間を稼ぐのはいいが、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「いやそれ、無理だろ」
「……」
「……」
「え、えと、えーっと……そ、そんな生意気な奴バラバラにして構わないのですっ」
「やっちまいなですーっ」
「ま゛ーーーっ!!」
「ってオレのセリフこれだけかよっ!?」
グダグダだった…。
続いてテイク2。
鈴はもう飽きたらしい。
変わりに無理矢理佳奈多さんが鈴と同じ役にさせられていた。
無理矢理だったんだけど、妙に似合う。
「宮沢、聞える?」
「少しでいいわ、一人でアイツの足止めをして」
「私たちはその隙に逃げる」
「いい?」
フッ、と鼻で笑う謙吾。
「懸命な判断だ」
「おまえが先に逃げてくれれば、俺も逃げられる」
「それに単独行動は……俺の得意分野だからな」
庇うかのように佳奈多さんの前に出る謙吾。
「ところで二木」
「一つ確認していいか?」
「え?」
「時間を稼ぐのはいいが――」
謙吾は佳奈多さんを横目で見て、口元を緩めた。
「別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「宮沢……」
もう謙吾の鋭い瞳は正面に向けられている。
「……」
佳奈多さんが拳を固めた。
「ええ、遠慮はいらないわ」
「では、期待に答えるとしよう」
……って!
めちゃくちゃ様になっていた!!
「すごいな」
「……まんま、ですね」
「ふえぇ…まるで夫婦みたいだね~」
「セッティングした俺もビックリだぜ…」
「うん…まさかここまで息ぴったりとは思わなかったよ……」
そして。
「フン、なのですっ」
「そんな生意気な奴バラバラにして構わないのですっ!」
「やりなさいですっ、井ノ原さんっ!!」
「ま゛ーーーっ!!」
「ってやっぱりオレのセリフこれだけかよっ!?」
いやまあ…こっちはこっちで様になっていた。
***
セリフがなかった、という真人のためにまた別のコスプレ。
真人は赤いコートを羽織っている。
(mの妄想画
)
コートの背には十字に巻きついた蛇の紋様。
マメ……とはちょっと言い難い気がするけど、本人が気に入ってるからいいと思う。
どうせなら豪腕の方をやったほうが良かったんじゃないかな。
「ちーっと暇だからレンセーしてくるぜ、レンセー」
意味がわかっているのかイマイチ不安だ。
「えーっと、図書館で本を……」
「あ、頭がっ、うわ、うわぁあああああああーーーーっ!!」
図書館を連想しただけでオーバーヒートしてしまった!
***
最後は恭介だ。
出てきた恭介は、いつもと変わりない普段着だった。
いつもと違うポイントと言ったら……黒いノートを持っていることかな。
「あーっと、シブタク、っと」
何かメモっている。
そして決めゼリフ!
「新世界の神となる!!」
完璧だった!
「わふー…なんというか返す言葉もないのです~」
「馬鹿兄貴、いつも部屋でこそこそなんかやってると思ったら、コンソメパンチ食べながらテレビを見てたのかっ」
いやまあ、恭介なら部屋に色々なギミックを仕込んでそうでこわい。