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杉並さんと防犯対策 (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 mが疑問に思ったことを杉並さんにぶつけてみました。

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#シチュ:杉並さんが防犯対策をリトルバスターズに相談しに来たようです。


「防犯対策?」
「…うん…」

放課後、いつものように校庭に集まり野球の練習(ほとんどのメンバーは敷物を敷いてお菓子パーティをしていた)をしていた僕たちの元に杉並さんがやってきた。
杉並さんは僕たちのクラスのごく普通の女の子だ。
とある出来事があってから僕たちとはたまに話すようになったんだ。
後ろ髪には大きなリボン、それ以外は普通のショートボブ、普通の制服、普通の膝丈スカート、そして普通の黒ストッキング姿だ。
…大きなリボンのせいかモモンガとか小動物に例えられることが多い気がする。

「私、ほら寮組じゃないよね? だからね、夜遅くなっちゃうと夜道を一人で歩くときにちょっと……」
不安そうにうつむく杉並さんの意見に恭介が頷いた。
「確かに最近は危ないことも多い。対策はするに越したことはないだろうな」
「そんなん高宮と勝沢に訊きゃいいだろうがよ」
「もう聞いたよぅ…」
真人の声に萎縮しながらもちょっと膨れる杉並さん。
「なんと言われたんだ?」
謙吾に促され、
「えっとね『ハ? ムツを襲う物好きなんていないって!』『襲われたら蹴り上げればいいだけじゃん』って言われちゃった…」
「あー、あの二人ならそう言いそうだね……」
「……どうしても男性に比べると女性の方が非力ですから、いざとなったときそのようなことは難しいでしょう」
「西園女史の言う通りだ。特に杉並女史のようないじめたくなる……ではなく大人しい女性は危ないだろうよ」
「……ど、どうしよう……」
「むーちゃん、だいじょ~ぶっ」
「はい、大丈夫ですっ! 我々が妙案を考えますっ」
「ありがと…わっ、そんなにくっついちゃダメ…っ きゃんっ」
いつの間にか小毬さんとクドにサンドイッチにされてるし。
「オーケー、ではこれより――」
いつの間にか前に出ていた恭介がいつものように片手を僕らに向けた。
「『第一回・むつみの倍返しだッ!作戦』を開始する!」
「はい、拍手~」
ぱらぱらと拍手が上がった。
ちなみに「倍返しだッ!」のところだけ妙に発音が強かった。
「……あのひとつよろしいでしょうか?」
「なんだ西園?」
「……そのタイトルでは既に杉並さんは大変な目に遭ってしまったかのようです」
あ、ホントだ。
さり気なく杉並さんの方を見ると、
「…む、むり…」
スマホのバイブレーションのように震えていた!
「ならこれでどうだ――第一回・むつみの闇討ち作戦」
僕に視線を投げかけられても。
「今度それだと杉並さんが襲う側に回ってるよね…」
「ま、細かいことは気にするな」
さらっと流された!
「趣旨は簡単だ。万が一の時に身を守る方法を考えよう。誰か案は?」
恭介がみんなを見渡す。
「あるぜっ!」
「はい、真人」
「それはアレだろ、要は杉並が弱そうに見えるからだろ」
嫌な予感しかしない。
「なら犯人が来た時にこの筋肉ポーズを決めてみなっ!!」

――ビシーーーッ!!
真人がボディビルダーも顔負けの腕をバイソンの角のように掲げるマッシブポーズをとっていたっ!
「――ニカッ!」
「しかも笑顔がまぶしいのですーっ!」
無駄に白い歯が光っていた!

「うわ……」
一瞬引いた杉並さん。
「え、えっと……こう?」
けど真人に見習って昔のロボットのように両腕を挙げたポーズとった!
「やるんだっ!?」
「う、う~んっ!」
どうやらかなり力も入れているみたいだ。

――ぷるぷるぷる……
体はぷるぷると震え、目なんてぎゅっとつぶっている!

――ぷるぷるぷる……
……。
コアリクイってこんな感じで威嚇していた気がするよ……。

「ふよふよだね」
「ふよふよだな」
「ふよふよですー」
「ムツみん、キサマ可愛さアピールしてるつもりかーっ! フニフニの刑だからね、ふにふにーっ!」
「そ、そんなに…さわらないでっ、あははっ、く、くすぐったいよ…っ」
「……か、可愛い」
「……愛玩動物といったところでしょうか……ぽ」
「理樹、おまえもやってみないか?」
「謙吾はなんで僕にふるの!?」
ダメそうだった。

***

「他にアイディアは?」
「はいはーいっ!」
「はい三枝」
「これなんてどーっすかね?」
葉留佳さんが差し出した袋には、
「ビー玉?」
「そう! 後ろから誰かが近づいてきたらどりゃーっ! これをばらまいて一目散に逃げるのだーっ!」
「…けど、私、ビー玉なんてもってないよ?」
「おりょ?」
「葉留佳君は常に持ち歩いているだろうが、一般人はそうそう持ち歩いているものではないな」
来ヶ谷さんの言う通りだ。
普通の女の子は持ち歩いていないしあまり現実的ではない。
「だな。方向性を決めるか」
フムと頷く恭介。
「女性が手持ちのアイテムなどで手軽に対策できるものとする。その方が一般性もあって他のメンバーにも有効だろ」
「……それでしたら」
西園さんが自分のカバンをごそごそとあさり始めた。
「……こちらの女性雑誌にそういったことが書いてありました」
みんなで覗き込む。

『わくわくさんとストッキングでモーニングスターを作ろう!』
『1.ストッキングに小銭をいくらか入れます』
『2.ふりまわします』
『3.すごいや! もう完成!』

「わ、これなら私でもできそう」
「ストッキングならあるし、お金も持ってるだろ。だいじょーぶそうだな」
鈴がうんうんと頷いた。
「なら」
恭介がポンと杉並さんの肩をたたいていた。
「これで模擬訓練をしてみるか」
「え……?」


***

「これから来ヶ谷が歩いている杉並を後ろから襲う。杉並はそれで対応できるか試してみてくれ。おっと、マジで危ない武器だから軽く振り回すフリで頼む」
「う、うん。やってみる」
「なに私に任せれば万事問題はないさ! ハアハア」
問題しかないように見えるのは僕だけだろうか?

「スタート!」
「いってきます」
「「いってらっしゃーい」」
恭介の声とともに、杉並さんが木陰のほうに向かって歩き出した。
「……フフフ……」
その後ろをまるで影のように来ヶ谷さんがストーキングを始めた!
「さすが姉御! 足音も気配すらもしないっスヨ!」

「そこのお嬢さん……」
――ぽんっ
来ヶ谷さんが杉並さんの肩をたたいた。

「今」
ギラリと来ヶ谷さんの目が光る!
「何色のパンツを穿いているのかなぁァぁ?」
「ひぃぃっ!?」
杉並さんは本気でひきつっていたっ!
「…ぐ」
その様子を見た来ヶ谷さんもちょっとヘコんだ!
「杉並、今だ! 例の武器を作るんだ!」
「う、うんっ」
ごそごそと自分のポケットをあさり始めた。
「こ、これっ」
杉並さんのポケットから出して、なぜか来ヶ谷さんの方に突き付けたのは可愛らしいカエルのがま口だった。
「わふー、とっても可愛らしいお財布なのですー」
「うん、これこの前ね、ジャスコで買ったんだ」
杉並さんはちょっと恥ずかしそうに、えへへとはにかんだ!
「ぐはっ!?」
来ヶ谷さんは精神的ダメージを受けている!

「ビリビリ中学生が欲しがりそうな財布だな」
「え、誰それ?」
相変わらず恭介が言うことはよくわからない。

「えっと……100円、200円…300円…わ。お小遣い使いすぎちゃったかな…」
がま口を覗き込んでお金を数えはじめる杉並さん。
「ほう、何に使ったんだ?」
「31のアイスクリームだよ。けど食べすぎちゃって。今はね、ちょっとダイエット中…」
杉並さんが「どうしよ…」と言いながら照れたような笑顔でおなかをさすった!
「ぐぬぬ…がはぁっ!?」
来ヶ谷さんは精神的ダメージを受けた!

「……杉並さん、とても良い調子です。そのまま武器の制作をしてしまいましょう…」
なぜか西園さんの目が爛々と輝いている。
どうしたのだろう。
「う、うん」
杉並さんは全財産620円を握りしめ、がま口を再度ポケットにしまった。
その目はしっかりと来ヶ谷さんを見据えている。


「……まずいぞ、理樹」
そのとき僕の横の恭介がつぶやいた。
「どうしたのさ?」
「俺としたことが完全に失念していた……」
たらりと冷や汗を流している。
「この後『手持ちの』ストッキングに金を入れるんだよな?」
「よくはわからないけど、女の人って携帯してる…んだっけ」

「よいしょっ、よいしょっ…と」
杉並さんが来ヶ谷さんの前で履いていたローファーを脱いで律儀にそろえて並べた。

「俺もてっきり女子は替えのストッキングをカバンかどこかに携帯しているものと思っていた」

「ひゃっ…変な感じ」
杉並さんのストッキングに包まれた足が校庭の土を踏む。
その足は見事なまでに女の子らしい内股だ。

「今、杉並が替えのストッキングを持っているように見えるか?」
「え、それってまさか……!?」


「少し待っててね」
急ぐように杉並さんの手が自分のスカートの脇に滑り込んだ!



「な…っ、ちょ……!? 待て杉並女史!」
来ヶ谷さんからも声が漏れる!
「うおっ!?」
謙吾と真人が慌てて後ろを向いた!
「うわっ、杉並さんダメだっ!」
鈴の声も届いていない!
どうやら本人はスカートの上からということもあってそれほど気にしていないようだ!
「スカートを穿いたまま脱ぐの難しい…よね」
脱ぎにくいのかリズミカルに左右に揺れる杉並さんのお尻!
「来ヶ谷さん、あと少しだから待ってね。よいしょ、よいしょ……」
ストッキングが少しずつ下げられ、肉感のある太ももがスカートと脱いでいる途中のストッキングの隙間からニュッと覗く。
「な…なんという絶対領域…っ……ぐぐぐ」
来ヶ谷さんは必死に何かをこらえているようだ!
「えいっと…おっとっと」
そのまま片足ずつ抜いていき、健康的できれいな足が外気にさらされる。
片足で立っているせいか、来ヶ谷さんの目の前で蠱惑的に素足が揺れる。
「なんかムズムズするね」
脱いだストッキングを持ち、はにかみながら生足で校庭に立つ杉並さんだけど。

「ぐぐぐ……こ、こいつは……」
来ヶ谷さんが一歩後ずさった。
「これからさらにあの杉並女史の脱ぎたてほやほやのストッキングで攻撃されるだと……ぐはっ!」
見えない攻撃があったのか軽く後ろにのけぞる!
「ご褒美…いや、兵器と言っても過言ではないだろ……っ」

――ぶはぁぁぁーっ!

「え、ええっ、来ヶ谷さん!?」
盛大な鼻血とともに来ヶ谷さんが……舞った!
「ふえぇぇ!? ゆ、ゆいちゃ~んっ!」
「え、えっ!? どうしたの!? えと、せ、成功……?」
いまいちよくわかってない杉並さん!
「……天然とはげに恐ろしいものです……クフフ」
西園さんの目はまるで「計画通り」と言っているような雰囲気だった!


そのあと「ええい小娘! その生足を触らせろーっ!」「きゃぁぁぁ!!」と暴走する来ヶ谷さんと素足のまま本気で逃げ回る杉並さんを止めるのに苦労したのは言うまでもない。

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