「理樹ちゃ~ん」
「リキー、こっちなのですーっ」
ここはいつも野球の練習をしているグラウンドだ。
「ほれほれ~、おさげしっぽだぞーっ」
女性陣は、ロリぷに理樹の気を惹こうといろんなことをしているんだが――。
「……ふるふるふるふる……」
恥かしがり屋の理樹は、俺の袖をしっかりと掴み背後に隠れている。
「ハァハァ、早く養子縁組の手続きに移らねばな」
「……これはもう犯罪です……っ」
目をギラッギラと輝かせた来ヶ谷と、頬を染めモジモジしている西園。
こいつらのせいで余計に理樹が怖がってる気もしないでもないが。
「……」
鈴はというと、俺たちから離れたマウンドでこっちを見ているだけだ。
「――なかなか理樹ちゃんが寄ってきてくれませんネ」
「こうなったら仕方ない……」
「ふぇ? はるちゃん、何するの?」
「ふっふっふ、向こうが寄ってきてくれないのなら……」
「こっちから攻めるのみーっ」
言うのと同時に、三枝が理樹を掴まえようと手を伸ばしてきた!
「やーっ!?」
それにびっくりして走って逃げ出す理樹!
「お、おい、理――」
――ずべっ!
見事に引っくり返りやがった…。
「……うぐぐぅ……」
「ったく」
助け起こそうと近寄ろうとすると。
「――だいじょぶか?」
さっきまで遠くで見ていた鈴が理樹の元に駆け寄っていた。
「ん」
鈴が手を差し出た。
「……」
その手をじっと見ていた理樹だが…。
きゅっ。
鈴の手を掴んで、ようやく起き上がった。
「けがしてないか?」
「……うん……だいじょぶ」
「……」
「……」
「あぶないから走っちゃめっ、だ」
こくっ
「よし」
理樹が頷くと鈴は嬉しそうに笑い、理樹の頭を撫でた。
ぱーーーっ!
おっ、理樹の表情が一気に明るくなったな。
「…ねーねー」
表情が明るくなった理樹が、鈴の前で両手を広げて見上げている。
「ん、なんだ?」
「だっこして?」
可愛く首を傾ける理樹。
「……な…な、なにぃーーーっ!?」
鈴が俺に困ったような目を向けてきた。
「いいじゃないか、だっこしてやれよ」
「う…」
「……」
鈴の足元には上目遣いでだっこを待っている理樹。
「……わ、わかった」
「わーいっ」
ぽふ~んっ
「うわっ!?」
鈴が恐る恐る屈んで手を伸ばすと、理樹が元気よく飛び込んだ!
鈴はどうやらどうしていいのかわからないんだろうな。
顔を真っ赤にして慌てふためいている。
「うわわわわっ、こ、こいつあったかいぞっ!?」
「そりゃあ人間だからな」
「こっ、こいつ、ふかふかしてるぞっ!?」
「そりゃあ人間だからな」
「鈴~鈴~」
「こっ、こらっ、くっついてくるなっ」
「んな~んな~」
ふに~っ
鈴のほっぺに理樹のほっぺがくっつく。
「こいつ、ほっぺまでぷにぷにだぞっ」
「ああ、見た感じぷにぷにそうだな」
「あ、あ、あたしはこれからどうすればいいんだっ!?」
「理樹も懐いちまってるし、そのままでいいと思うが」
「なにぃ…」
鈴は照れているのか、理樹から一生懸命目をそらしている。が。
「りん、り~ん♪」
「ふみゃーっ! や、やめろっ、ほっぺすりすりってするなーっ」
「こまりちゃんも見てないでたすけてくれっ」
「鈴ちゃん、とっても幸せそうに見えるよ~」
「幸せそうなのです~」
「うぅぅ…こまった」
理樹を抱きながら、助けを求め周りを見回したときだった。
――ちゅっ
「ふみっ……――!??!?!?!?!」
理樹が鈴のホッペにちゅーをしていた!!
鈴はと言うと
「――――――――――」
今にも倒れちまうんじゃないかと心配するほど、顔を真っ赤にして固まっちまった!