シチュ:パパはもちろん恭介w
俺の皿にトースターから出したパンを並べ、ベーコンエッグを盛り付ける。
理樹の器にはあいつの好きなトッピンチョコを注ぎ、隣に牛乳を置いた。
「――完成、と」
「ありゃ?」
いつもならこの時間になると理樹が食卓についてるのに、今日はいない。
さっき顔を洗いに来たから寝坊はしてないとは思うんだが。
「おーい、理樹ーっ! ひとりでお着替えできたかーっ」
理樹の部屋に向かって呼びかけた。
…………。
……。
返事がない。
「理樹ー、ごはんだぞー」
…………。
「おまえの好きなトッピンチョコだぞー」
…………。
どうしたんだ?
俺は、理樹がいる俺たちの寝室に行くことにした。
――ガチャ
「理樹ー」
「…………」
理樹は、幼稚園の制服に着替えていたが…なぜかクッションをギュッと抱きしめてベッドの上にちょこんと座っていた。
「理樹、ごはんだぞ」
「ふるふるふるふるーっ」
俯きながら首をブンブンと振った。
「おなかすいてないのか?」
「ふるふるふるふるーっ」
「早くごはん食べないと、幼稚園に遅刻しちゃうぞ」
「……」
そういうと理樹は顔を上げたが…その目はウルウルとしていた。
「どうした?」
「ぼく……ぼく……」
クッションを掴む手に力が入っている。
「ぼく……よーちえんにいきたくない」
「な、なんでだよ、また?」
「だってね…だってね…みんなおはなししたことのない子ばっかりなんだもん」
「そりゃ最初は誰だってそうさ」
「そこからみんなとお話して友達になっていくんだぞ」
「けど……けど……」
「……は、はずかしいの……」
今にも泣き出しちまいそうだ…。
どうすりゃいいんだ…。
「…あー…恥かしがってばかりいると、そこのクマさんにも笑われちまうぞ」
「くまさんじゃないもん。りらっくまちゃんだもん」
「りらっくまちゃんと理樹は仲良しか?」
「うんっ」
「理樹だって、りらっくまちゃんとずっと友達だったわけじゃないだろ?」
「うん…デパートではじめて会ったの」
「その時は恥かしかったか?」
「ううん」
「今じゃいっつも一緒に遊んで、仲良しになったよな」
「うんっ!」
「なら、幼稚園のみんなとも友達になれるな」
「うんっ」
理樹が満面の笑顔で大きく頷いた。
「よしっ、さすが理樹だな」
「うんーっ」
「今日の朝ご飯は、お前の大好きなトッピンチョコだぞ」
「わーいやったーっ」
「ふぅ、俺もハラペコだぜ。早くメシにしような」
「ぼくもおなかぺこぺこー」
理樹は元気に部屋から飛び出していった。