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叶課長にうまるが嫉妬しているようです (干物妹!うまるちゃん)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 叶課長とタイヘイがレストランの市場調査に行くのを目撃したうまる。どうやら嫉妬しているようです。

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※シチュ。
叶課長とタイヘイがレストランの市場調査に行くのを目撃したうまる。
どうやら嫉妬しているようです。


8月某日。会社にて。
デスクワークをしているタイヘイの横に女性がぬるぅと寄ってきた。
「タ・イ・ヘ・イ」
「叶課長」
デスクに山積みになっている書類を調度良いと言わんばかりに肘を置いて、タイヘイのことをしっとりした瞳で見つめているのは叶課長だ。
タイヘイの上司であり、学生時代からの友達だったりする。
「若者向けのスイーツカフェにウチのシステムを導入してもらおうというプロジェクトが進行してるの」
「へぇ、そうなんですね」
「で。市場調査に行くの」
「へぇ」
叶課長がぬるぅとタイヘイに顔を寄せた。
「――市場調査にいくの。私。今から」
「へ、へぇ」
「――カフェに一人っていうのもねぇ」
「あ、あの、課長の髪が僕の肩にかかってるんですけど……」
「いい感じじゃない? シャンプー変えたの。――タイヘイついてきてくれないかしら?」
「いやけど、仕事が山積み……」
「そんなの横のボンバーに任せればいいじゃない」
サブマリン式で椅子に座っていたボンバーヘッド――本場に矛先が向いた。
「…………へ? え? はぁぁぁぁっっっ!?」
驚愕のあまりサブマリン姿勢のまま椅子から滑り落ちていた。
「ちょちょちょちょ、ちょっっと待てぇ!」
「決定ね。タイヘイ、10分後に一階フロア待ち合わせ。ヨロシク」
「叶課長! 市場調査って言われても――行っちゃったな……」
「行っちゃった、じゃねぇよぉぉぉ! うぉぉぉんっ」
「……すまないな……」
いい年して泣きじゃくるボンバに、タイヘイは無言で肩をたたいた。


***


「手持ちのゲームはクリアしちゃったし、今日もゲーセンに行こうっと」
やっぱり夏休みは最高だよね。
「お兄ちゃんは今頃仕事で忙しくしてそうだなー。シルフィは今日いるかな?」
外用の帽子を被り、私――うまる――は外へと足を向けた。


外は朝10時にもかかわらず灼熱だった。
「……あづい……」
は、早くゲーセンにたどり着かないと焼け死んじゃうかも……。
暑さにげんなりしながら正面の人混みを見ていると見知った後ろ姿が見えた。
あれはお兄ちゃん!
この灼熱地獄の中で外とは可哀想に。
にしし…よぅし、うまるが癒してあげよう。
いたずらしようとこっそり近づこうとした時だった。

「――もう少しよ、タイヘイ。あそこね」

………………え?
お兄ちゃんの横に……女の人?

綺麗な女の人が、お兄ちゃんの横、すぐ横、くっつきそうなほどの横を歩いていた。

「へぇ、オシャレなカフェですね」

カフェ?
女の人が指差す方向にはこの間できたばっかりのカフェがあった。
そういえば海老名ちゃんが言ってたっけ……。
『ゲームセンターあるよね? そこの近くにファミーユっていうカフェができたんだよ。恋人同士に人気の店なんだって。私も、私もひゃううううっ』

「ほらタイヘイ、行こ」
「コラ、手を取るな叶! じゃなくて課長っ」
「いいからいいから、早く」

え……?
お兄ちゃんが呼び捨て……。
……え……これ、なに……?
手までつないでる……。
うそ……まるで恋人同士……。
恋人同士……?

――夏の喧騒が消えた。
――何も聞こえなくなっていた。


喧騒が戻った時、お兄ちゃんは視界から消えていた。
私はそのまま家に足を向けた。
ゲーセンになんて行く気が起きなかった。
この心のモヤモヤ……。
いやだな、なんだろう……。
「……ゲームをやればこんなモヤモヤ消えるよねっ」

家に帰ってクリア済みのゲームをプレイしたけど、
「……うー……」
心のモヤモヤは消えなかった。
「こ、こんなときはコーラとポテイトーっ……」
コーラを飲み過ぎてお腹がタプタプだった。


***


「ただいま~。――な、なんだ!? 散らかしすぎだろ、うまるっ!」
「う~、お兄ちゃん」
「夏休みだからってダラダラしてないで片付けをだな――ん、うまる? 具合悪いのか?」
「へ!? あ、いや……えと……」
「どうした?」
「お兄ちゃんさ……」
「?」
「……な、なんでもないっ」
「夕飯作るから、テーブルの上、片付けておけよ」
「う、うん」

……恋人いるの?
その一言が聞けない。
だってもしいるって言われたら……うまる……どうすれば……。


***


「じゃ、おやすみー」
「お兄ちゃん、おやすみ…」

真っ暗な天井。
頭の中をグルグル回るのは朝の光景ばかり。
お兄ちゃんに恋人がいたらどうしよう……。
けど、お兄ちゃんにまだ恋人なんて……。
恋人なんて……。
…………。
……。
――タ・イ・ヘ・イ。一緒に暮らそ?
――うまる、ごめんな。お兄ちゃん恋人できちゃったんだ
――え、そしたらうまるは……。
――この女の人のところで暮らすことにしたから、うまるは今日から一人で暮らしてくれ。
――タイヘイ、コーラ買ってきて、私のために。
――困ったヤツだなぁ。
――お、お兄ちゃん、う、うまるにもっ
――お兄ちゃん忙しいんだ。うまるは自分で行ってきてくれ。
――タイヘイ、ポテイト。あーんして? あーん、あーん。
――雛鳥か! 仕方ないなぁ。あー……

「うにゃゃぁぁぁーっ!!」
「うわっ!? う、うまるどうしたんだよ!?」
「ハァ、ハァ…な、なんでもない」
「怖い夢でも見たのか? 早く寝ないと生活リズムが崩れるからダメだぞ……」
「う、うん」

うまる、どうしたら……。
そういえば前に見たアニメ……。
恋人のフリをして諦めさせる、って内容だっけ。
…………。
む……。
あの時は「なにそのパターン!」って思ったけど……。
…………。
……。
それいいかも!
コレしかないかもっ!!


***


「――今日は来るかな」
朝から例のカフェの近くで張っていた。
お洋服は持っている中で一番のを着てきた。
帽子はいつものハンチングハットじゃなくて麦わら帽子。
どこからどう見てもデートの待ち合わせをしている女の子風だ。
周りの視線がなんか刺さるけど、そんなことよりお兄ちゃんだ!

待つこと15分。

「きた!」
お兄ちゃんと、またあの女の人だ。

「また同じカフェに行くんですか?」
「もう少し見てみないとアプローチ材料が少ないじゃない。タイヘイ、今日は何食べたい?」

むー…。
お兄ちゃんのこと呼び捨てにしてるし!

「なら今日はフルーツタルトでしょうか」

だんだんと距離が近づいてきた。
あと5m。
あと4m
あと3m。

「私はショートケーキにしようかしら。昨日はパフェだったし」

あと2m。
あと1m。
よし!
意を決して飛び出した。

「――タイヘイくん、おそいよっ」
お兄ちゃんの腕に両腕でしっかり抱きついた。
私の顔を見るなり目をまんまるにしていた。
「なっ、なななななな!? う、うま…」
にっしし。
女の人の方を見ると……。

「――――――…………」
ぼーぜんだった。

「………………(パクパクパク)………………」
口をパクパクしている。

「………………~~~~~~~~~」
む~~~~っと膨れ始めた!

「タイヘイくん、今日は私とデートの予定でしょう?」
「うっ、うまる!! おまっ…」
人差し指でお兄ちゃんの口を塞ぐ。
「んぐっ!?」
「遅れたことは許してあげる。カフェいこ?」
「ちょちょちょちょっとっ!!」
女の人がうまるにびしーっと指を向けてきた。
「なんですか…?」
何も知らないような雰囲気で首をかしげる。
「タイヘイはね、私と、ここのカフェにいくの!」
「…えっ?」
ぎゅぎゅっとお兄ちゃんの腕を抱きしめる腕に力を入れた。
「今日ここのカフェで一緒にお昼しよ、ってタイヘイくんと約束してたんです」
「なにそれ、い、いつよ!?」
「昨日タイヘイくんが夜ご飯を『私のために』作ってくれた時にです。良いカフェ見つけたって」
ふふーん。
作ってくれたってウソじゃないもんね。
「よっ、夜ご飯……!? つつつつつつつつつつ作ってくれた……!?」
驚愕の表情でお兄ちゃんを見つめていた!
「いやっ、叶、そっ、それはだなっ」
ここらでとっておきのダメ押しというやつ!
「タイヘイくんって料理が上手なんだ。『毎日』美味しいご飯つくってくれてありがとね」
「ンマッ、ンマッ、まいにっちっ!?!? あわ、あわわわわわ……」
「ちがっ…だから叶っ、ってなぁ……」
お兄ちゃんがわなわなと震えだした。
なんか……。
髪が逆だってきている気がするんだけど……。
「う…う…う…」
「タ、タイヘイくん……?」
「うまるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっっっっっっ!!!!!」


***


「――…………え?」
カフェの一角。
「だからな。こちらの方は叶課長。僕の上司だ。カフェには調査できていただけだ」
お兄ちゃんが向かいにいる叶さんに頭を下げた。
「叶課長、申し訳ございません!! こいつ、妹のうまるです!!」
「――………ぐすっ……ぅ?」
少し涙目でぽかーんという擬音がぴったりしそうな顔をしている叶さん。
放心状態みたいだ。
「うまる、おまえも謝れ!!」
「ご、ごめんなさい……」
「え……あ……タイヘイの妹…さん?」
「…そうです…」
「おまえな、どうしてこんなことしたんだよ」
「てっきりお兄ちゃんに彼女ができちゃったのかと思って……」
ううう、お兄ちゃんの上司だったなんて…。
恥ずかしくて隠れたいよぅっ!
「…………ふぅん、タイヘイの彼女じゃないのね」
何度もコクコクと頷くお兄ちゃん。
「妹です」
「ホント?」
「はい」
「ホントにホント?」
「ホントにホントです」
「ふぅん…。そうなの。そうなのね」

……ん?
なんかよくわかんないけど。
うまるのシックスセンスがよくないものを感じているッ!

叶さんの目がキュピーンと光った!!
「タイヘイ、ショートケーキのイチゴをあげるわ。はい、あ~~ん」
「なっ!?」
フォークにイチゴを刺してお兄ちゃんにあーんを迫っているっ!?
「叶さんは、な、なにしてるんですかっ!?」
「何ってあ~んよ。妹さんには関係ないでしょ? はい、タイヘイ、あ~~ん、あ~ん」
「ちょっ! 叶っ!」
「むぅうぅうぅ~~~~っ!! お兄ちゃんっ!!」
「な、なんだよ?」
「うまるのモンブランの栗あげるっ!! 栗だよっ! あーんっ!!」
「ちょっ、うまるまで!? やめ、やめろっ! コラ、ほっぺに押し付けるなっ! むぐぐ、か、叶は口にねじ込もうとするなっ、ふ、二人共やめろ~~~っ!!」


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