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理樹ちゃん覚醒!!の巻 (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 みんな女装理樹を初見ですw 理樹は、内面まで女の子化してしまったようです。

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チラリ。

腕時計を見ると針は10時10分を指している。

(珍しいな…)

理樹が待ち合わせ時間通りに来なかったのは今日が初めてだ。

「…恭介、もう少し落ち着いて待てないのか?」

「さっきから時計ばっか気にして、女々しい野郎だぜ」

「悪い悪い」

街の雑踏の中、男三人で突っ立っている。

――今日は俺と謙吾と真人、そして理樹とで映画を見る予定だ。

女性陣も誘ったが、内容がホラー映画と知った途端に全員キャンセル…。

結果、男のみ4人で映画という…なんとも切ないハメになってしまった。

チラリ。

時計は10時15分。

「――準備にでも手間取っているのだろう」

「んだよ、女でもあるまいしよ…」

「真人、頼むからここでヒンズースクワットはやめてくれ…」



「みんな~! 遅れてごめ~~~んっ」

ようやく雑踏の中から理樹の声が聞えた。

「理樹、映画始まっちまうぞ」

軽く手を振る……が、理樹の姿が見えない。

「――はぁはぁ…遅くなっちゃってごめんね」

「…なあ、理樹の声はするけどよ…どこにいるんだ?」

「むう…俺にもわからん」

辺りをキョロキョロと見渡す。

「――どの服来て行こうか迷っちゃったの」

「理樹っ、隠れてないで出てきてくれっ」

3人で周りを探すが、理樹は見当たらない。

「――わたし、ここっ」

「おーい、理樹ーっ」

――きゅっ、きゅっ

服の袖を引かれた。

「ん?」

可愛らしい女の子が、俺を見上げながら袖を軽く引っぱっている。

「だからね、わたし、ここよ?」

その姿は春風に乗ってやってきた妖精といった感じだ。

俺を見上げている瞳には一点の汚れもない。

俺たちの前を通り過ぎる男達の目線はみなこの娘に向いていた。

「なんだ恭介、彼女か? すげーな」

「いや、違うが…」

「だから、わたしだってばっ」

言われて見れば見覚えのある顔立ちだな…。

「だからねわたし、直枝理樹よ」

「なんだ、見覚えがあると思ったら理樹か」

理樹か。道理で見覚えがあるはず……――

「……」

「……」

「……」

「「「ハァァァァァァァーーーーッッ!?」」」

「え、ちょ…おま…理…はぁーっ!?」

腕を頭に巻きつけるという異様なポーズでビビっている真人。

「い、いや待て…しっかりと見てみろ、たしかに理樹が髪を結ってワンピースを着ているだけだ…」

謙吾がマジマジとその女の子を覗き込んでいる。

「ど、どうしちゃったのよ、みんな?」

「何があったのかはわからんが…話し方まで女の子だな…」

たしかに目の前にいる可愛い女の子(に見える)のは理樹に間違いない…。

「あはっ、おかしなみんなっ。ほらっ、早く映画いこっ」

「…理樹、ちょっといいか」

俺は言わば理樹のお兄さん的存在だ。

今まさに理樹は誤った道に進もうとしているじゃないか…。

ここは俺がビシッと言ってやらないとならない場所だよな…!

「……理樹、悪いがおまえにハッキリと言わなければならないことがある」

「なぁに、恭介おにいちゃん?」

「ずっと俺のことを『恭介おにいちゃん』と呼んでくれッ!!」

「当たり前よ、恭介おにいちゃん♪」

「ヒィィィーーーヤァァァァァーーーッフォォォォーーーッ!!」

「OK、続行だ!! おまえ達、映画だ!! 映画に行くぞ!!」

「やべぇ…馬鹿だ…」

「奇遇だな…俺もそう思ったところだ」



――映画が始まった。

「…………」

「…………」

『で、でけぇハサミだ!! 奴はこの屋敷に入った奴をそれで皆殺しにしようとしてるんだっ!!』

『――シャクン、シャクン、シャクンシャクン!!』

『――ブシャァァァァーッ!』

「ひゃ…っ」

「…………」

「筋肉的に今のはナシじゃね?」

「あの程度の攻撃もかわせないとはな、ハリウッドもたかが知れているな」

『ジェニファーーーッ!』

『アンっ!?』

『――シャクン、シャクン、シャクンシャクン!!』

『――ドブグシャァァァァーッ!』

『キャァァァァァーッ』

「きゃあああああーっ!」

――がしっ

「りっ、理樹?」

理樹が俺の腕にしっかりとしがみついてきた!

しかもその目はギッチリと閉じられている。

「理樹、目を閉じたら映画は見えないぜ?」

「…………っ! …………っ!」

すごい震えてるじゃないか…。

「きょ、恭介おにいちゃんっ、こっ、こわい」

震える体を押し付けるようにしてくっ付いてくる理樹。

「…………」

「…お、終わった…?」

「いや、まだだ」

「…………」

「きょ…恭介おにいちゃん」

「どうした?」

「…も、もう目開けてもだいじょぶ…?」

「いや、まだだ」

「うぅ……」

「…………」

「…………」

「お、終わった…?」

「まだ」

ぶるぶるぶるぶる。

「…こ…わい…っ」

こんなに震えちまって、よっぽど怖いんだな…。

「…………」

「…………」



――映画が終了した。

「……ぐすっ…ぐすっ」

ちなみに理樹はまだ腕にしがみついたままグズっている。

「だ、だって…こわかったんだもん…」

「泣くな理樹、男だろ?」

そう言った瞬間。

ドンッ!

「うわっ!?」

理樹に突き飛ばされた!

「………………」

理樹はぷくーっと膨れている。

「わたし、女の子だもんっ!」

い、言い切りやがった!?

「ひ、ひどいよっ…恭介おにいちゃんっ」

「ぐはっ!?」

どこからどう見ても最高に可愛らしい妹の理樹の言葉が胸に突き刺さる!

「恭介おにいちゃんの……恭介おにいちゃんの……」

「ばかぁーーーっ!」

「ま、待てくれ!? 理樹…っ」

スカートを翻し、理樹は走り去っていった…。

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