花ざかりの理樹たちへ その11 ~学校・午前中編~(リトルバスターズ)作者:m
紹介メッセージ:
恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。
――校舎に入ると……
「理樹君、これを装着してくれ」
「これは……」
見慣れた無線機を来ヶ谷さんから手渡される。
「恭介氏から拝借した無線機だ」
「あたしが使ってたやつと同じだっ」
鈴がリトルバスターズの勧誘ミッションのときに使用した物と同じ物だ。
――僕はイヤホン型の無線機を耳に装着した。
『あ~本日は晴天なり~本日は晴天なり~』
来ヶ谷さんの声がイヤホンから響く。
わざわざ使い古された確認文句を使う辺りが来ヶ谷さんらしい。
「感度良好だよ」
「……その顔でそのセリフを言われると、なんかえろいな」
「エロくないよっ」
「うむ、今からキミにミッションを命ずる」
――改めてミッションと言われると緊張するな。
「一人でクラスまで行き、真人少年を誘惑せよ」
「……え、えええぇーーーっ!?」
今までみんなと一緒だったから大丈夫だったのに……さすがに一人となると……
――じゃなくてっ!
「ま、真人を誘惑って!」
さすがにそれは無理がある気が……。
「あの馬鹿ならイチコロだな」
鈴がうんうんと頷いている。
「あははははあのきんにくダルマなら瞬殺ッスよっ」
葉留佳さんは、いつもの真人の頭を抱える様子を真似している。
「真人君のよろこぶ顔がうかぶよ~」
のほほんとしている小毬さん。
「井ノ原さんは前々からリキのことが好きなんじゃないのですか?」
って、クドからいきなり爆弾発言。
「……井ノ原×直枝……美しくありません」
西園さんがすごく怒っている……。
「まあキミは、もはや美少女だ」
来ヶ谷さんの言葉に、みんなも嬉しそうにコクコクと同意する。
「今のキミなら容易く真人少年を虜に出来るだろう」
「そして真人少年がメロメロになったところで……正体を明かす」
「どうだ? 想像するだけで楽しいだろう?」
「さっすが姉御ーっ! 極悪人ですナーっ」
――来ヶ谷さん……まさにオニだ。
「ミッション・スタート!」
来ヶ谷さんに背を押され、みんなの下を後にする。
――恭介が女になったら、来ヶ谷さんみたいなのかもしれない。
無線機から「がんばって~」「落とせー」「わふー」と応援の声が聞こえてくる。
…………
一人で廊下を歩く。
…………
鈴もミッションのとき、こんな気持ちだったんだろうな。
――程なくして、教室に到着してしまった。
「……教室に到着」
『うむ、教室の前のドアから教室に突入しろ』
「ラジャー」
……どきどき。
……どきどき。
――ガラガラッ。
教室のドアを開けて教室に入る。
毎日毎日いる教室なのに、今日は雰囲気が変わって見える。
――ガヤガヤとしていた教室が一瞬静寂に包まれた後、喧騒を取り戻す。
「……お、お、おおおおいあのコどこのクラスのコだよっ!?」
「おかしい、おかしいおかしい!! ボクのデータブックにあの娘のデータが存在しない!?」
「ターゲットロック・告白モード・ニ・移行・シマス」
「待て田中! まだ時期尚早だ!」
「な、なにあの娘っ!! キーーッ! ちょっとぐらい可愛いからってさ! 私のほうが数倍可愛いわっ」
「あんたの顔はどこからどう見ても、11代将軍・徳川家斉にクリソツでしょ……」
「あぁ! 貴女をお見かけしたが最後、私のこの身も!心も!全ては貴女様のもの……」
「目がっっ!? 目がっっ!?」
「蒸花!? またメガネ落としちゃったのっ」
……いつも一緒にいるクラスメイト達なのに、誰も僕だと気づいていない。
――それよりも……なんというか反応がすごい。
『はっはっは、クラスの誰にも気づかれていないようだな』
『第一段階成功だ』
『真人少年は確認できるか?』
真人の席を見る。
「……真人の席に、真人と謙吾がいるよ」
……謙吾までいるとなるとミッションコンプリートは難しいだろう。
『標的を真人少年に絞っていくぞ』
『さすがに二人同時は辛かろう』
『……そもそも、謙吾少年が女性に興味があるのかが疑問だ』
さらりと酷いことを言っている。
『――謙吾はホモなのか?』
……鈴が来ヶ谷さんに質問している声が聞こえる。
『ホモだ』
って、断言してるし!
『――言われてみればあいつ、制服を着るとホモっぽいな』
――ああ謙吾、ご愁傷様……
……身に覚えのない軋轢(あつれき)が、鈴との間に生まれてしまった謙吾を哀れむ。
『理樹君、ここから会話は無しだ』
「えっ?」
『今のキミの外見なら、たとえ幼馴染と言えども、まず理樹君だと気づかないだろう』
『だが、声を出せば気づかれる可能性が高い』
『指示は出すが、返答はしなくて良い』
「が、がんばってみるよ」
『うむ、健闘を祈る』