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花ざかりの理樹たちへ その79 ~放課後編~(リトルバスターズ)
作者:m

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。





ドキドキ、ドキドキ…。



「さあ理樹君、引くんだ」

目に妖艶な輝きが射す来ヶ谷さん。

「う、うん」

頷いたのと同時に、僕の髪を結っているリボンがフワリと揺れる。

生唾を飲み込みクジに恐る恐る手を伸ばした。



「「「「「「………………………………」」」」」」」



みんながみんなして固唾を呑んで見守っている様子が、肌にひしひしとわってくる。



来ヶ谷さんが握っている爪楊枝(つまようじ)クジには、先の赤い爪楊枝が2本入っているのだ。

赤いクジを引いた二人が、あのカップル用メロンソーダを飲むことになっている。

恭介曰く、

『この「第一回・カップルストローでゲッチュウ!らぶらぶぅ?!大作戦」が幸福の架け橋となるか、はたまた罰ゲームと化すかはおまえらの運次第だ』

『運も実力のうちって言うだろ? 引き終わった後のブーイングは聞かないからな』

だそうだ。

その言葉を聞いたとき、みんなのギラギラした目線が僕をチラリと見ていたことは……勘違いだと思いたい。

ちなみにクドと小毬さん、謙吾は既にクジを終えて「ふぅ、緊張しました…」「良かったような、良くなかったような感じだね」「真人とやることになったら舌を噛み切る覚悟だった」と、くつろぎモードだ。



「じゃあ…」

意を決して一本の爪楊枝を摘まむ。

外れますように、外れますように、外れますようにっ。

「これでっ」



――スサッ!



目を強くつぶり、一本を勢いよく引き抜いた!

「…………!」

みんなが一斉に息を呑む…!

「ん…」

ゆっくりと目を開け、爪楊枝を確認した。



――ぽと、ころころころ……。



爪楊枝を持っている手から力が抜け、テーブルの上に先が赤い爪楊枝が転がる。

「…フフフ…」

ニヤつく来ヶ谷さん。

「……一人目は」

「理樹君に決定のようだな」

「うあぁーっ!?」

ううう、いつもながらどうして僕ってこうも不運なんだろっ!?

「そんなに可愛らしくい瞳をクリクリさせて嫌がっても、これは決定だからな。よしよし」

「うわ、く、来ヶ谷さん撫でないでよ~っ! 可愛らしくなんてしてないからーっ!」

頭を撫でながらそんなこと言わないでほしいっ!

今日は特についてない気がするよ…。

「はぁぁ、じゃあ次の人……――っ!?」

振り向くと。



――ブツブツ、理樹にお兄ちゃんと呼ばれながら一緒の…ブツブツ、これはゲームなんだから当たっても仕方なく…ブツブツ、直枝さんハァハァ…。

――なにぃ!?クジ、クジのやり直しを…謙吾君ダメだよ~…わふーっ、白い髪がさらに白くなった気がしますっ!?



そこには禍々しい空気が充満していた!

な、なんかめちゃくちゃ不安だ!

「――さっさと次行くぞ」

そのオドロオドロしい雰囲気を楽しむかのように、来ヶ谷さんは再度クジをよく混ぜ合わせている。

「あ、つ、次は私ね」

次は佳奈多さんの番のようだ。

……目線が妙に落ち着いていない。

「別に直枝なんかと、そんな、こ、こ…恋人…みたいなことしたくないけど、クジくらいは仕方なく付き合ってあげる」

「第一、確率は8分の1でしょう?」

「ふん」

「8分の1なんて到底当たるはずないじゃない。そんなの当たらない」

横の方では葉留佳さんが「うわぁ…やたら喋ってますネ」と呟いている。

「確率論はいいから早く引いてくれないか?」

「わ、わかってます」

佳奈多さんがスッと来ヶ谷さんが握っているクジへと手を伸ばす。

「これ。――じゃなくて、こっち…かしら」

すぐさま別の爪楊枝を摘まむ。

「それでいいんだな?」

「あ、待って」

口元に手を当てて、真剣に考え込んでいる佳奈多さん。

「…………」

「こ、こっち?」

「いや私に訊かれても困るが」

「どうしよう…こっち…あ、けど」

その様子は。

「……完全に当たりを引きにいってますね」

西園さんの言う通りだった…。

「どうでもいいが早くしてくれないか? 手を上げているのも疲れるんだが」

「わ、わかってます!」

「では…これにします」

ようやく一本を摘まみ、それを引き抜いた!

「……っ!」

「ふむ――」

「ハズレだな」

「…………………………」

佳奈多さんの手には無印の爪楊枝が摘ままれていた。

「……」

「……」

「そんなに膨れてもクジはやり直さないぞ」

「膨れてなんかいません!」

そう言う佳奈多さんだけど、ちょっと膨れていた。





「――なあ、理樹」

「どうしたの、真人?」

「二木ってよ…」

「うん」

「鉄みたいな女で近づきたくなかったけどよ」

「……意外と親しみ持てる奴だな」

僕は佳奈多さんの方に目を向ける。



「かなちゃん、残念だったね~」

「別に。意識なんてこれっぽちもしてなかったし」

「意外とわかりやすい性格だな、二木…」

「なっ、なにが言いたいわけ、宮沢?」

「お姉ちゃんアレだね。まさにツンデレの鏡! このツンデレラっ!」

「ツン…デレ? 何それ?」

「……ツンデレとは――いえ、内緒にしておきましょう」



「――ふふっ」

「なに笑ってんだよ、理樹? 怖ぇぞ」

「嬉しくてさ」

「はあ?」

学校では見せたことがない、肩の力を抜いた佳奈多さんがみんなと談笑していた。

それがただただ嬉しかった。