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「――どうした理樹、着替えないのか?」
「……観念して着替えてしまえば気が楽になりますよ、直枝さん」
「う、うん」
さっきから色々なことがあり、まだ僕だけ制服のままだった。
ここまで来てしまったら…もう後には引けない。
「理樹ちゃん、手伝ってあげよっか?」
「今ならこの私が直々に手とり足とり着替えさせてやるぞ。どうだ?」
「どうだって言われてもすごく困るから…」
…小毬さんは素なんだろうが、来ヶ谷さんは爛々としている。
「えーと」
みんなの着替え方を見てると…スカートを脱ぐ前にブルマを履けばいいのかな。
――もぞもぞ
ブルマに足を片方づつ通す。
「西園女史、準備はいいか?」
「……はい」
何やら不穏な会話が交わされているが…気にしていたらキリがないので着替えを続ける。
「構え!」
「はいっ!」
いつも履くことのないスカートがどうにも邪魔だ。
……このままブルマを上にあげて、と。
「今だ! 放ていッ!!」
――パシャッ!
来ヶ谷さんの声と同時にフラッシュが光った!
「――って、いったい何してるのさーーーっ!!!」
「写真だが?」
「写真ですが?」
何当たり前のことを聞いているの、という顔でこちらを見返してくる来ヶ谷さんと西園さん。
「着替えているところなんて撮っちゃダメだよっ!」
「……そこは抜かりありません」
「これを見てください」
差し出された紙を見る。
…………。
そこには『撮影許可証』と書かれている。
――来ヶ谷さんの字で。
「うむ、理樹君が忙しそうだったからな。代わりに私が許可を出しておいた」
「いやいやいやっ!! それ何かおかしいからっ!」
「……写真、大事にしますね」
「しなくていいよっ!」
「ふむ、モノより思い出…とはよく言ったものだ」
「なんでちょっといいことを言いましたって顔してるのさ!」
「……恭介さんと宮沢さんの喜ぶ顔が見たいので、焼き増ししてもいいでしょうか?」
「それ絶対ダメだよっ! いろいろと!!」
「はっはっは、理樹君のツッコミはいつ聞いても軽快だな。敬意に値するぞ」
「ちっとも嬉しくないからっっ」
僕は急いで二人に背を向けた!
まったく…油断も隙もないっ!
「もうっ」
後ろを向いて着替えを続ける。
――ごそごそ、きゅっ、きゅっ
ブルマをキュッときちんと上まであげる。
――くいっくいっ
そしてブルマの位置を調整する。
「…………」
う…すごく視線を感じるんですけど。
「……そのオシリの動きがまた、堪らなく挑発的です……」
「捲くれ上がったスカートからチラリと覗く生足が…そそるな」
後ろから西園さんと来ヶ谷さんの熱い声が聞える。
「そ、そんなところまで見ないでよーーーっ!」
僕は今、絶対に顔が真っ赤になっていると思う。
前を向いても後ろを向いても、安息の場所は存在しなかった!
ブルマを履いた後は体操服の上を着ればいいだけだけど。
どうやっても上半身は裸にならなければならない…。
…………。
もうこうなったら野となれ山となれだ!
僕はスカートを脱ぎ、ブレザー、そしてブラウスと次々に脱いでいく。
「理樹」
上半身がブラジャーだけになったところで鈴が呼びかけてきた。
「どうしたの鈴?」
僕は背を向けたまま、顔だけ振り返り返事をする。
「理樹の肌…きれいだ」
「ぶぅ!?」
まるで殺し文句のような言葉につい吹き出してしまう。
「どこでそんな言葉覚えたのさっ!」
「きょーすけがここだと思うところで使えと言っていた」
う…恭介、一体どんなことを鈴に教えてるのっ!
「スキありだよーっ」
――つつつつーーーっ!
「ひゃぁぅぅ!?」
突然小毬さんに背筋をなぞられた!
「こ、こ、小毬さんーっ! 変なところ触らないでよっ」
「へんなとこじゃないよ。理樹ちゃんに変なとこなんてないよー」
人差し指をぴっと立て、笑顔で僕の背後を捉えている小毬さん。
「背中を見ちゃうと、ついついこういうことをしたくなっちゃうよね~」
「その気持ち、よーくわかるのですっ」
いつもと同じ笑顔で立っている小毬さんまで小悪魔に見えてきたっ!
「私も小毬さんに負けてはいられませんっ」
……クドの愛らしい笑顔だって今はイタズラっ子だ!
「あ、ちょっ…クドっ――」
「おじい様直伝・必殺つんつくつーんなのですーっ!」
――つんつくつーんっ!
「ひょわわっ!?」
クドが僕のわき腹をつんつくしてきたっ!
「続けて秘伝の笑っちゃう感じの必殺技なのですっ!」
「こちょこちょこちょ~」
「ちょっと…ゃっ…あははははっ待って待っ…あははははっ」
「ここはいかがでしょうか~こちょこちょこちょ~」
「わ、クド、そこはダメ…あはははははっダメだからっあはははははっ」
「理樹ちゃんはここがいいのかな~」
「ちょ、小毬さんまで混じら…あははははっストップストッ…あははははっもうダメだよもうダメっ」
「なんだ理樹はわき腹が弱かったのか」
「ちょっと鈴、つつかないでよ…ひゃわっあはははは死んじゃうからっあはははは」
3人に前後と横から攻められて悶絶していると――
「……みなさん、そろそろ止めてください」
西園さんの鶴の一声。
その声にみんなピタリとこちょがすのを止めた。
「わふー…ごめんなさいです…羽目を外しすぎました…」
「うぅ…ごめんね、ついつい調子に乗っちゃった…」
「理樹ごめん」
「……いえ、そうではありません」
首を振る西園さん。
「……来ヶ谷さんが瀕死でしたので」
視線を西園さんの指の先に移すと、そこには。
「エ…エロい、エロすぎる……」
床にヒザをつき、溢れる鼻血を押さえている来ヶ谷さんがいた……。
「うわぁ……理樹ちゃん、かわいい~」
「みなさんを悩殺できること間違いなし、なのですっ」
ようやく僕の着替えが終わり、みんな僕の姿をまじまじと見ている。
「あ、あんまり見ないでよ…は、恥かしい…」
みんながあまりにも注目するので、恥かしさのあまりもじもじとしてしまう。
「…………」
西園さんがこっちをチラチラと見ている。
「ど、どうしたの?」
「……お持ち帰りしたくなってしまいました……ぽ」
「いやいやいや!」
冗談です、と言わないところが…本気のようだ!
「うむ、さすが理樹君だ。女の子の服は大抵着こなしてしまうな」
「それ全然うれしくないからっ!」
「理樹」
「……ぶるまが似合ってるな」
鈴まで満足気な表情だ。
「はは…ありがとう」
もう開き直るしかなかった…。
「うむ、そろそろ時間だな。集合場所の校庭で男性陣にお披露目とするか」
「よーし、行こうー」
「おひろめたいむですっ」
「あまりあの三馬鹿に理樹のぶるまを見せたくないな」
「……恭介さんが泣いて喜ぶ顔が目に浮かびます」
うーん、恭介・謙吾・真人に会うのが何だか不安になってきた……。
***
ボツシーン(巨乳になったクド)
「けど…」
「胸が苦しいよ、これ」
恭介が用意してくれた体操服の上着が少し小さめだったようだ。
今の僕の胸は、特製パッドで来ヶ谷さんほど胸に膨らみがある。
胸が体操服で圧迫されて苦しい。
「なんて贅沢な文句を言っているのですかっ! まったくご立腹なのですっ! ぷんぷんなのですっ」
クドは大そうご立腹だ!
「胸で体操服が浮いてしまっているな。これは…大いにアリだ」
「理樹ちゃんのおへそが見えちゃってるね」
う…胸が邪魔で体操服が下まで下がらない。
「……おへそ、触ってもいいですか?」
「だ、だ、ダメだよっ」
西園さんの言葉に、急いでおへそを隠す。
「――リキ」
そうしていると、クドがこちらを見つめていることに気付いた。
「クド、どうしたの?」
「その胸がとてもうらやましいのです」
クドが目を輝かせて寄ってくる。
「リキに一つお願いがありますっ」
「うん、何?」
「リキの胸のパッドを体育の時間だけ貸してほしいのですっ!」
「え、ええぇぇーっ!?」
「私も巨乳な気分を味わいたいのですっ!」
「い、いやまあ、僕はいいけど…」
来ヶ谷さんをチラリと見る。
「私も興味があるな。貸してあげるといい」
「わ、わ、わ……」
「わっふーーーっ!! ついに念願が叶うときがきたのですーーーっ!!」
「あいむはっぴーなのですーっ」
クドは喜びを全身で表現し、僕の周りをパタパタと駆け回りだした。
めちゃくちゃうれしそうだ…。
「よかったねー、クーちゃん」
「はいっ」
「じゃぁ――」
――ごそごそ、ごそごそ
体操服を着たまま、上手くブラジャーを外す。
……ブラジャーを外すと、今までの重さと締め付けがなくなり、体が軽くなったように感じられた。
「はい、クド」
ブラジャーとパッドをクドに手渡す。
「ありがとうなのですっ!」
「みなさん、ちょっと後ろを向いていてください」
クドに言われたとおり、みんなクドに背を向けた。
「…………」
西園さんが僕の胸をじっと見ている。
「な、なに?」
「……ぺったんこの直枝さんも需要が高いと思います」
「え、需要?」
「……ぽ」
深く突っ込まないほうが良さそうだった…。
「こ、これはっ」
「外国の女性みたいになってしまったのですっ」
「わふー、すごすぎなのですっ」
クドの嬉しそうな声が聞える。
「マズいな…真人少年でもないが、オギオギとしてきた」
何と言うか、来ヶ谷さんのオギオギは真人のそれよりマズイ気がする。
「できましたっ」
「みなさん、こちらを向いていいですよ」
期待を膨らませ、クドのほうを見る。
「いかがでしょうかっ!」
――ばい~~んっ! ばい~~んっ!
クドがグラビアっぽいポーズを取り、胸が上下にバウンドする。
「「「「………………」」」」
みんなクドを見て静まり返る。
…………。
「せくし~だいなまいとっ」
――ばい~~んっ! ばい~~んっ!
き、奇妙だ!!
小さなクドに、身長と不釣合いな物体が装着されている!
はっきり言ってバランスが悪い。
まるで胸にボールを入れてママゴトをしている子どものようだ!
「わふーっ! 胸が重いのですっ! 来ヶ谷さんの気持ちがわかったのですーっ」
当の本人はとても嬉しそうにはしゃいでいて微笑ましいのだが…。
胸だけが別の生命体のように飛び跳ねていて、非常に怖い!
みんなも同様の感想を持ったのか、ドン引きしている。
これは正直――
クドに全く似合っていないっ!
「リキどうでしょうかっ? せくしーでしょうかっ?」
いつもはやらないような、胸を強調したセクシーポーズを取る。
「あ、いや……」
イマイチ、と言おうと思ったのだが、クドの表情が暗くなる。
「も、もしや似合っていないのでしょうか……」
さっきまであんなに晴れやかな笑顔だったのに急に陰り出す。
そんな顔をされると、似合っていないなんて言えない…。
「…せ」
「せ?」
「……セクシーすぎて言葉が見つからないよ……」
クドから視線を外し、そんな思ってもいないことをついつい口にする。
「わふーーーっ! リキを悩殺してしまったのですっ罪作りな女になってしまったのですーっ」
飛び上がって喜ぶクド。
うぅ、罪悪感がっ!
「く、クーちゃん、とっても…えーっと、すごいよー」
小毬さんも明らかに気を使っている!
「……うーみゅ…」
鈴は言葉をかけれないようだ!
「やはりクドリャフカ君はひん――むぐっむぐっ」
来ヶ谷さんは西園さんに口を押さえられていた!
「……そろそろ時間ですし、校庭に行きましょう」
「早く井ノ原さんや恭介さん宮沢さんにも見せたいのですーっ」
クドは大きな胸を揺らし、意気揚々と教室を飛び出していった。
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