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花ざかりの理樹たちへ その56 ~学校・午後編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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「――具体的な説明に移るぞ」

「まず、杉並女史を含め2~3人のチームを4つ作る」

「そして、杉並女史のチームに他の3つのチームが勝負を挑む」

「勝負方法については、挑むチーム側が決める」

「杉並女史チームが他の全チームを倒せたのならば…そのときは我々が、キミのしたいことの全面バックアップをしよう」

「そのころには、恐らくキミが願うことを実行できるだけの勇気も身についていることだろうと思う」

「え、いいの…?」

なぜか僕をチラチラと見る杉並さん。

「ああ、もちろんだ」

「ただ成功するかどうかは…キミ次第だがな」

つまり杉並さんは、他のチームを全て倒せば念願の目標にかなり近づく、ということだ。

けど…杉並さんの念願ってなんだろう?

「理樹君もいいか?」

突然来ヶ谷さんが僕に話題を振ってきた。

「え、う、うん」

なんで僕に話を振るかはわからないけど、問題もなさそうなので頷く。

「――そうだな…杉並女史はひとチームに勝つごとに何かを獲得できることにするか」

ますます来ヶ谷さんが恭介化してる気がする。

「ふむ……」

口に手を当てて考え込む。

「まずは一回戦目勝利で理樹君のメールアドレスゲットでどうだ?」

それを聞いた途端、パーーーッと杉並さんの顔が明るくなった。

「い、いいの、ホントにっ?」

「なんで僕の…」



「なにーっ!?」「そいつは理樹が許してもオレが許さねぇぇぇーーーっ!!」



後ろから真人の馬鹿でかい声が上がった!!

もう一つ誰かの声が上がった気もしたけど、真人の声でかき消された。

「なんだ真人少年、嫌なのか?」

「当たり前だろっ! そんなことしたら、そんなことしたら…」

「理樹の携帯の履歴がオレ一色じゃなくなちまうだろっ!!」

「えぇーっ!?」

いきなり変なことを言い出す真人。

真人からのメールが多いと思ったら、そんなこと思ってたの!?

……履歴は真人よりも、鈴や恭介のほうが多いことは内緒にしておいたほうが良さそうだ。

「あ、あの……」

杉並さんがチラチラと真人を見る。

「んだよ?」

「まさか、井ノ原くんは…あの…その…ホ、ホ……も…」

真人を見ないように、けれど見てしまう…そんな杉並さん。

う…何が言いたいのか見当がついてしまった…。

「え? 今のはいつものちょっとした冗――」

真人が何かを言おうとしたんだけど。

「ホ……………」

「……なっ、何でもない……っ」

そのまま杉並さんは目を逸らし、ほっぺたをカーーーッと真っ赤にした!

「って、ちょっと待ったぁぁぁぁーーーっ!?」

「そこで赤くなられたら『はい、冗談でした』って出来ねぇじゃねぇかっ!」

真人は白目で両手をワキワキとさせている!

「よかった…冗談だったんだ」

僕もホッと胸を撫で下ろす。

「あ、あ、当ったり前だろっ」

「冗談だったんだ…私てっきり井ノ原くんが…」



「いや、彼はホモの類だ」

……………………………………。



来ヶ谷さんの言葉で、一瞬空気が凍りついた。

「って、ハッキリ言うんじゃねええええええええぇぇぇーーーっ!!」

「や、やっぱり…!」

「やっぱりとか言うなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

杉並さんの一言に真人が頭を抱えて悶絶しているっ!

「よ、よく聞け杉並…オレは理樹のことを好きだが、それは親友として――」

「大丈夫…! 私…口堅い方だから…っ」

杉並さんは胸の前で小さく手を握り「がんばりますっ」というポーズを取る。

「…そうじゃなくてな…オレは理樹のことは好きだが、それは…」

「そういう世界がある、って勝沢さんが教えてくれたっけ…」

「理樹は親友で…」

「…!? マッチョに多いって言ってた…!」

「うおおおおおぉぉぉーーーっ!! ちょっとは人の話を聞けぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇーーーっ!!」

真人が頭を抱えてのけ反った!

「ひゃっ!? え? え? ごっ、ご、ごめんなさいっごめんなさいっ!」

杉並さんは目を白黒させながらも一生懸命謝っている!

「いや、謝られても困るけどよ、オレは別にそっちの趣味じゃないという話でだな……」

「(こくこくこく……!)」

「理樹のことは好きだがそれは親友として――」

「わっ…わ…私井ノ原くんのこと内緒にするよ…? だから、そんな、そんなに怒んないで…っ」

杉並さんはもう涙目だっ!!

「ぐあァあぁあぁあぁあぁあぁあぁぁぁーーーっ! 全く話が噛み合わねぇえぇえぇえぇえぇーーーっ!!」

「ま、真人落ち着いて!」

真人があまりのテンポ差にキレた!

――ぶちぶちぶちぶちぶちっ…!

そして髪の毛を引き千切っている…!

「うわぁ、禿げるよっ真人!」

こ、ここまで噛み合わないコンビもめずらしいかもしれないっ!!

「ど、どど、ど、どうしたの!? 大丈夫、井ノ原くんっ!?」

杉並さんはよくわかってない上に、真人を見て混乱している!

初めて見る人には驚きの光景のようだ。

「まあ、いつもの光景だ。気にするまでもない」

悶絶している真人を余所に、来ヶ谷さんが杉並さんの肩をポンと叩く。

「え、そうなの?」

「……はい、日常の一コマです」

「まあ、真人くんですからネ」

「そうなんだ…」

真人の場合、『真人だから』でいろいろ片付けられてしまいそうな気がする…。

「杉並女史、そこのガチホモは放っておいて説明を続けるぞ」

「うん…」



――チラッ



杉並さんが、多少落ち着きを取り戻し始めた(髪の毛を抜くのを止めた)真人に目を向けた。

「や、やっぱりそうだったんだ…」

「…………」

「…………」

「ンギャアァアァアァあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁぁぁーーーっ!!!」

――ブチブチブチブチブチブチーーーッ!!

「ああーっ真人っ! ホントに禿げるよーーーっ!?」

「ほわぁーっ!? 真人君の毛がーっ!」

「わふーっ!? 髪の毛がハラハラと舞い落ちているのですーっ!」

真人と杉並さんの相性は最悪かもしれない…。





「――では、説明を再開するぞ」

ちなみに真人はというと…

「……オ、オレはホモじゃ…ね…え……よな?」

と、グッタリしている。

後半が疑問形になってるけど…そっとしておこう。

「説明が途中で切れたからな。さっきまでの話を要約しておこう」



「――チーム戦で、杉並女史チームに他のチームが勝負を挑む形だ」

「杉並女史チームが全チームに勝利出来れば、我々は全面的にキミのしたいことに協力する」

「勝負方法は杉並女史に対戦を挑むチームがそれを決める」

「杉並女史チームは、1チームを倒すごとにアイテムゲット(一回戦目は理樹のメールアドレス)となる」



「ここまではいいか?」

みんなコクコクと頷いている。

「……あの、じゃあ私が負けたら……?」

杉並さんが不安そうな顔で質問する。

「それはつまり相手チームが勝ったら、ということになるな」

来ヶ谷さんがポケットからゴソゴソと何かを取り出す。

「姉御ー、なんですかソレ?」

「水族館のチケットだ」

「杉並女史チームに勝ったチームに進呈しよう」

「好きな人とでも行ってムードたっぷりでラブラブして来るといい」

来ヶ谷さんがそう言った瞬間。



――ギランッ!



「うわわっ!?」

みんなのギラギラと輝く視線が僕に集まった気がする!!

しかも…みんなのオーラの色が変わったようにさえ感じる!

「!…………」

杉並さんもその異様なオーラを感じ取ったようだ。

「こ、これは負けられない…」

小さく小さく手に力を入れたのが見て取れる。

どうやら杉並さんも闘志を燃やし始めたようだ。





***



『真人・杉並さんと合わないNGテイク』





「そいつは理樹が許してもオレが許さねぇぇぇーーーっ!!」

後ろから真人の馬鹿でかい声が上がった!!

もう一つ誰かの声が上がった気もしたけど、真人の声でかき消された。

「なんだ真人少年、嫌なのか?」

「当たり前だろっ! そんなことしたら、そんなことしたら…」

「理樹の携帯の履歴がオレ一色じゃなくなちまうだろっ!!」

「いやいやいやいやっ!?」

真人からのメールが多いと思ったら、そんなこと思ってたの!?

ちなみに履歴は真人よりも、恭介や鈴のほうが多かったりする。

「あ、あの……」

杉並さんがチラチラと真人を見る。

「んだよ?」

「まさか、井ノ原くんは…あの…その…ホ、ホ…ホ…」

真人を見ないように、けれど見てしまう…そんな杉並さん。

「あ、いや、今のはいつものちょっとした冗――」

真人が何かを言おうとしたのだが…。

「ホ…な、何でもない……っ」

そのまま杉並さんは目を逸らし、ほっぺたをカーーーッと真っ赤っ赤にした!

「ぬぉおぉおぉぉーっ! そこで赤くなられたら『はい、冗談でした』って出来ねぇじゃねぇかっ!」

白目で両手をワキワキさせている真人!

「え…冗談? なんだ…私てっきり井ノ原くんが…」

「いや、彼はそっちの類だ」

来ヶ谷さんが冷淡に言い放つ!

「って、ハッキリ言うんじゃねぇぇぇーーーっ!!」

「や、やっぱり…!」

「やっぱりとか言うなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

杉並さんの一言に真人が頭を抱えて悶絶しているっ!

「真人君の秘密が早速バレちゃったね」

「井ノ原さんの男好きには全く困ったものですっ! ぷんぷんなのですっ!」

「ぎゃああああああああぁぁぁーーー!! それじゃあオレがただの変質者みたいじゃねぇかぁぁぁーーーっ!!」

「まあ、真人くんの理樹ちゃんを見る目はいつもギラギラしてたからね」

「なにーっ!? 理樹、早くあたしの後ろに隠れろっ!」

「あ、ちょっと鈴っ」

「だからオレはホモじゃねえええぇぇぇぇぇーーーっ!!」

「なんだあいつ、今自分でホモって言ったぞ」

「自覚はあったんじゃないですか、きっと」

すかさずツッコむ鈴と葉留佳さん。

「しまったぁぁぁぁーーーっ!?」

「う…わ…ぁ」

杉並さんがドン引きだった!

「いや、ま、待て、よ、よく聞け杉並…オレは理樹のことを親友として――」

「大丈夫…! 私…口堅い方だから…っ」

杉並さんは胸の前で小さく手を握り「がんばります」というポーズを取っている。

「うおおおおおぉぉぉーーーっ!! 人の話聞けぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇーーーっ!!」

真人が頭を抱えてのけ反ったっ!

「ひゃっ!? え? え? ごっ、ご、ごめんなさいっごめんなさいっ!」

杉並さんは目を白黒させながらも一生懸命謝っている!

「いや、謝られても困るけどよ…オレは別にそっちの趣味じゃないという話でだな……」

「(こくこくこく……!)」

「理樹のことは好きだがそれは親友として――」

「わ…わ…私井ノ原くんのこと内緒にするから、そんな、そんなに怒んないで…っ」

杉並さんが涙目だっ!!

「ぐあァあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁぁぁーーーっ! 全く話が合わねぇえぇえぇえぇえぇーーーっ!!」

――ぶちぶちぶちぶちぶちっ…!

「きゃぁっ!?」

「うわぁ、禿げるよっ真人!」

真人が髪の毛を引き千切っている…!

こ、ここまで噛み合わないコンビもめずらしいかもしれないっ!!

「ハァ…ハァ…ハァ…頼むっ! 頼むから聞いてくれ、杉並っ」

あまりのテンポのズレと苛立ちに真人は既に息も絶え絶えだ。

――こくこく…っ

頷く杉並さん。

真人はというと、話を聞いてもらおうと必死の形相だ。

「さっきから言ってるけどよッ!!」

一歩距離を縮める真人。

「…ひゃっ…」

「オレは理樹のことを親友として――ッ!!」

「……こ……こわい……よ……っ」

「………………(ぷるぷる)」

杉並さんは目をギッチリと閉じて怖いのをガマンしていたっ!!

「…………」

「ンギャアァアァアァあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁぁぁーーーっ!!!」

「っきゃぁぁぁぁぁーーーっ!?」

頭を抱えて大絶叫する真人と、その声に驚いて引っくり返る杉並さん!

「うわっ、真人がキレたっ!!」

「ヒャァ!? 杉並さんが失神してるーっ!」

「西園女史、気付け薬を持ってきてくれ」

「……はい」

――ブチブチブチブチブチブチー…ッ!!

「わ、わふーーーーっ!! 井ノ原さんが頭でブリッジをしながら髪の毛を引き千切っているのですーーーっ!?」

「ふえええええぇぇぇぇーーーっ!! エクソシストみたいだよーっ!?」

「うわっ! 真人がいつもの200倍きしょいぞっ!」

「ま、真人、お、落ち着いて! ほら、筋肉、筋肉ーっ」



――場は混乱が混乱を呼ぶ、混乱の渦の中だった!!




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