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花ざかりの理樹たちへ その55 ~学校・午後編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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「……ど、どうして、こんな大事(おおごと)になっちゃったのかな……」

「たぶん…ぶつかった相手が悪かったんだと思う…」



――ここは放課後の僕たちの教室。

いつもは放課後ともなれば静けさに包まれているのだが…今日は違った。



「くらえクド公ーっ! 地獄のラウンドブランコ・EXーーーっ!!」

「わ、わふーーっ! EXとか付けたらかっこいいのですーっ!」

「…………」

「うえええ、酔う早さもEX…」

「あの…大丈夫ですか?」

クドを振り回したのはいいけど、気持ち悪くなって介抱されている葉留佳さん。

「ぶら~っしっんぐー、ぶら~っしっんぐー」

「りんちゃんの髪、さらさら~」

「ほめられると…はずかしい」

イスにちょこんと腰掛けてる鈴の髪の毛をとかしている小毬さん。

「なにぃぃぃーーーっ!?」

「……驚きすぎです」

「『Thunder』って『ツンデレ』って読むんじゃねぇのかよっ!?」

「……はい、それは『サンダー』と読みます。雷、という意味です」

「あぶねぇ、危うく今日の英語の宿題に『ゴルフをしていたら突然ツンデレが現れたので、慌ててズボンのベルトを外した』と書いちまうところだったぜ…」

「……捕まりますよ?」

わけのわからない掛け合いをしている真人と西園さん。

「理樹君、タイが曲がっているぞ」

「タイ?」

「胸のリボンのことだ」

「どれ、おねーさんが直してやろう」

「ふむ…ついでに髪も綺麗に結い直しておくか」

「あ。ありがとう」



教室には僕たちしかいないのに…いや僕たちしかいないからか、とても騒がしかった!

さっき来ヶ谷さんが何かやってると思ったら、みんなを呼び出してたんだ。





「――真人少年、恭介氏と謙吾少年はどうした?」

来ヶ谷さんが僕の髪を結いながら、教室を見回している。

「あいつらなら、この後の準備がどうとかでどっかに行ったぜ」

う…恭介のことだからまた何か変なことを準備してそう。

「仕方あるまい。二人抜きで始めるとするか…ほら理樹君、完成だ」

「ありがとう」

「…………」

結い直してもらった頭の髪を指でほわほわといじる。

「うん」

「「「……………………」」」

来ヶ谷さんと西園さんと真人が僕の様子をじっと見ている。

「え? みんなどうしたの?」

なんか目つきが怪しい気がするけど。

「――いやなに」

「嬉しそうに髪をいじるキミに萌えていただけだ」

「ぶっ!?」

ついつい吹き出してしまった!

「いやいやいや!! 別に僕は嬉しそうになんか――」

「……ついに目覚めた直枝さん、萌えます」

西園さんまで「ぽ」という顔でそんなことを言い出すしっ!

「そ、そんなんじゃなくて僕はただ……」

「ただ、なんだ? おねーさんに続きを言ってみてくれ」

………………。

……ただ、「髪、キレイに結えてるかな?」なんて思ってしまったんだ!!

「…………うっ」

だんだん女の子に感化されてきてしまっていたようだ!!

「う、うあああああーっ!!」

「……困惑顔の直枝さんも萌えます……ぽ」

「萌えないでよぉーーーっ!」

「このまま女としての人生を歩んでみてはどうだろう?」

「どうだろう、じゃないからぁぁぁーーーっ!!」

「安心しろ、理樹っ!」

「ま、真人っ」

「オレはおまえが男だとか女だとか…そんな小さなことは気にしねぇ!!」

「気にしてよっ!!」

「気になったんだが…なんで男同士は付き合っちゃいけないんだ? おかしくね?」

「そこは疑問に思っちゃダメだからーーーっ!!」

あぁあぁ…僕はもう正しい道に戻れないかもしれない…。



「あの、私はどうしたら…?」

「「「「あ…」」」」」

そして、杉並さんはすっかり忘れられていた……。





「みんな、こちらに注目してほしい」

来ヶ谷さんの一言に、みんなの視線が来ヶ谷さんに集中する。

「まずは紹介したいのだが――」

来ヶ谷さんが杉並さんの方に目をやる。

「うわぁ!?」

――ガタタタッ!

「ど、どうしたの、りんちゃん?」

鈴がすごい勢いでイスから立ち上がって、小毬さんの後ろに隠れた。

「………………」

小毬さんの横から少しだけ顔を覗かせている。

「……な…」

「……並盛さん」

「あ、あの…私、杉並…なんだけど」

「…うーみゅ…」

「……す…すきやきさん」

「あ、あの……私、杉並……」

「…うーみゅ…」

「りんちゃん、だいじょーぶだよ」

小毬さんが鈴に優しく声をかける。

「うう…こまった」

鈴の人見知りは前よりも良くなったとはいえ、未だ健在だ。

「ど、どうしよう…」

杉並さんもみんなの視線にオドオドとし、僕の方に身を寄せる。

「…………」

なんか鈴のこっちを見る目がコワイ気がするけど…気のせいかな。



「姉御ーっ、理樹ちゃんの隣にいるその子は?」

そっか、葉留佳さんは別のクラスだから杉並さんのことを知らないんだ。

「今から紹介しようとしていたところだ」

「――杉並女史、良ければ自己紹介してくれ」

「え、う、うん…」

「あの…杉並睦美です…。よ、よろしくお願いします」

困惑した顔の杉並さんがペコリと頭を下げる。

みんなからは「よろしくねー」とか「けっ、筋肉が足りねーぜ」とか「エロいっ、真人くんの視点がエロいっ」「エロくねぇよ!」とかやってる。

「はいっ、来ヶ谷さん、質問がありますっ」

クドが挙手をしている。

「なんだね、クドリャフカ君?」

「あの…私たちなんで集まったのか聞かされていません」

ちなみに僕も杉並さんも教えてもらっていない。

「そのほうが色々盛り上がると思ったのでな」

うわ、来ヶ谷さんがどんどん恭介に似てきた気がするよ…。

「――では、今回のミッションについて説明する」

「「「はいっ!」」」」

ミッション、という言葉が出た途端にみんなに気合いが入る。

…みんなこのミッションって言葉に弱いんだよなあ。僕もだけど。

「こちらの杉並女史なんだが」

くい、と杉並さんを自分の方に寄せる来ヶ谷さん。

「なんでも理樹君に――」

「!? あっ、だ、ダメッ!」

「こく……フグッ」

顔を真っ赤にした杉並さんが、大慌てで来ヶ谷さんの口を塞いだ!

来ヶ谷さんの口を塞ぎながら全力で首を振っている!

「理樹ちゃんにこく? こく…こく…国民投票ーっ!!」

「わふーっ! 私もリキに清き一票を入れるのですーっ」

「街中に理樹の笑顔が張り出されるのかよっ!? オギオギしてオチオチ街も歩けねぇじゃねぇか!」

「……まさか今、上手いこと言ったとか思いませんでしたか?」

「うおおおおーっ、ツッコまれると微妙に恥かしいじゃねぇかよっ!!」

「……ちなみに国民投票は選挙とは違います」

「じゃあ、こく…こく…こく…地獄蝶ーっ!!」

「……死神代行・直枝理樹、ですか」

「……極楽にいかせてあげるわ」

「いろいろ間違ってると思うよ……」

憶測が憶測を呼んでしまっていた!!



「――端的に話すことになるが、杉並女史にはどうしてやりたいことがあるらしい」

「だが、杉並女史には最後まで実行する勇気がない」

「そうだな?」

――こく、こくっ

杉並さんが頷く。

「そこでだ」

「我々リトルバスターズで、杉並女史が勇気を持てるように鍛え上げよう、というワケだ」

みんなから「おおおーっ!」と声が上がる。

「あ、あの……が、がんばります」

まだリトルバスターズのノリには着いてきてはいないものの、がんばろうとしている杉並さん。

「人助けなら任せてよー」

「私も一肌脱ぐのですっ」

「フォッフォッフォ、はるちん秘伝を伝授してあげますヨ」

「……勇気でしたら、まずは同人誌をそのまま手で持ち歩くことをオススメします」

「筋肉の筋肉による筋肉関係の悩みだったら、早くそう言えってんだよ」

なかなかみんなノリ気なようだ。

「よし、杉並女史。こっちを持っていてくれ」

「あ、うん」

どこからか取り出した巻物の端を杉並さんに持たせる。



――バシュッ!



達筆な字が空間を舞う!

「ではこれより――」

「『限界バトル叩きつけて!! 杉並睦美育成計画』を決行する!」

「「「「「「うわーーーーーっ!」」」」」」

――パチパチパチパチーーーッ!!

盛大な拍手が教室中に鳴り響く!!

誰も、途中消してある「調」とか「教」とかの字にはツッコまないんだ…。




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