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花ざかりの理樹たちへ その60 ~学校・午後編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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――二度目の作戦タイム。

「つまり、理樹の相手はくるがやで決定なのか?」

「うん、西園さんも杉並さんもどこかに行っちゃったからね」

西園さんがどこかへ行ってしまった以上、僕の相手は来ヶ谷さんということになる。

「理樹ちゃんなら姉御なんてラクショーっスよ、ラクショー」

「はるちゃん、いい作戦あるの?」

「良くぞ聞いてくれたっ、こまりん!」

「まずは床に理樹ちゃんと姉御が隣り合って座ります」

「そこで理樹ちゃんがクタ~っと、姉御に寄りかかるっ!」

「姉御『どうした、理樹君?』、理樹ちゃん『ううん…ちょっと、ね…』」

「そして吐息混じりに理樹ちゃんが姉御の首に腕をまわすっ!」

「見つめあう二人、潤んだ瞳! 『理樹君…人が見ている』『いいよ…』もう二人の顔は数センチの距離だーっ!」

「そこで理樹ちゃんが一言っ!」

「『僕を……たべて……』」



「「「「「………………………………」」」」」



「そんな『いただきます』みたいな目で僕を見ないでよぉーーーっ!!」

「なお、当社では理樹ちゃんの貞操の一切の責任を負い兼ねます」

「負ってよっ」

そんなことをしたら本気で危機に陥りそうだっ。

「私いいこと思いついたよ~」

ニッコリとする小毬さん。

「まずは理樹ちゃんがゆいちゃんののおヒザの上にちょこんと座ります」

「そして――」

「『ゆいちゃんラブラブ♪ ゆいちゃんラブラブ♪』って幸せそうに歌うのー」

なんとも小毬さんらしい作戦だ。

「では、理樹ちゃんどうぞ」

「え?」

小毬さんが期待の篭った目で僕を見つめ、ヒザをぽんぽんと叩いている。

「私のヒザで練習してみよー」

「いやいやいやいやっ!?」

「理樹っ…………あ、あたしのヒザも使え」

鈴まで乗れと言わんばかりに恥かしそうに脚を差し出してくるしっ!!

「どっちもダメだからーっ!」

「ふええぇぇぇーっ」 「なにーっ!?」

まったく、二人とも何考えてるのさっ!

「――はいなのですっ」

今度はクドが元気よく手を上げる。

「じゃあ、クド」

「ここはあえて、すたんだーどに攻めてみてはいかがでしょうか?」

「スタンダード?」

「はい、来ヶ谷さんの手を優しく握るのですっ」

「そうしたら来ヶ谷さんの瞳をジッと見て『僕と一緒に~~でもいかがですか』とお誘いするのですーっ」

「ちなみに『~~』には来ヶ谷さんの好きな食べ物を入れましょうっ!」

クドがえっへんと胸を張る。

「おっ、クド公にしては良いカンジだねー」

クドの頭を撫でる葉留佳さん。

「えへへなのですー」

「うん、それくらいが一番いいかもね」

これなら僕でも言えそうだ。

「後は、来ヶ谷さんの好きな食べ物だね」

来ヶ谷さんの好きな食べ物と言ったら……。

「「「「「「キムチ」」」」」」

……満場一致だった……。







「――ふむ、ここでいいか」

「うん」

さっき腕立て伏せで使ったシーツの上に、来ヶ谷さんがペタリと腰を下ろす。

僕もその隣…手を広げれば来ヶ谷さんに触れれる程度の位置に座った。

「理樹君がどのように攻めてくれるのか楽しみだ」

はっはっは、と豪快に笑う来ヶ谷さんだが…僕はそれどころではなかった。

「…………」

来ヶ谷さんの手は横の方に置かれている。

まずはその手を握るわけなんだけど…。



――どっきどっき。



意識しちゃうと、めちゃくちゃ恥かしいっ!

もう、来ヶ谷さんの顔を見るのも恥かしいっ!

け、けど。

顔を逸らしながらも、そろり、そろりと床を伝いながら僕の手を来ヶ谷さんの手に近づける。

「……」

うっ…。

意識すればするほど触りにくいっ!!

「――理樹君」

「……」

「理樹君」

「――え?」

「どうしたんだ、理樹君?」

そのいつも通りの来ヶ谷さんの声に、混乱した頭が落ち着きを取り戻していく。

少し落ち着き、来ヶ谷さんの方を向いた。

「顔が真っ赤だな。さすがの理樹君もおねーさんの美しさにタジタジと言ったところか」

「あ、えっと…」

「――なに、これは遊びなんだ。そう堅苦しく構えることはない」

「こういうことは気楽に楽しむことが大切だ」

いたずらっぽく笑う来ヶ谷さん。

そっか…。

ガチガチに緊張していては、遊びは楽しめないんだ。

「まあ――」

来ヶ谷さんが座る位置を僕の方にずらす。

「おねーさんは、私の手に触れようか触れまいかと頬を染めて恥じらうキミを見ているだけで十分満足だが」

ニヤリと口元を歪めているっ。

「わかってたのっ!?」

「顔を背けながら、ゆっくりと、だが確実に近づいてくる理樹君の白魚のような指……実にエロイ」

「なんでそうなっちゃうのさっ!」

「ああ…顔を真っ赤にして怒るキミもまた可愛い…」

「あーもうっ!」

本当に来ヶ谷さんは人が悪いっ!

「はっはっは、可愛いものは好きだよ、私は」

そう言いながら、無邪気な笑みを浮かべる来ヶ谷さん。

すっかり緊張も飛び去ってしまった。

もう…。

…………。

そんな、いたずらっぽくて、無邪気な来ヶ谷さんを見て思う。

「来ヶ谷さんって、みんなのことを可愛い可愛いって言うけどさ」

「ふむ、それがどうした?」

きょとんと僕を見る来ヶ谷さん。



「そんな来ヶ谷さんも――」

「――とってもかわいいよね」



「…………………………なッ!?」



「いたずらっぽくて、無邪気で、けど一生懸命で、みんなといると嬉しそうで……とってもかわいいよ」

来ヶ谷さんに微笑みかける。

「…………」

「…………」

「あれ?」

「…………」

「……来ヶ谷さん?」

その途端。



――カァァァァァァ~~~ッ!



突然来ヶ谷さんの顔が染まった!

「えええっ!? ど、どうしたの来ヶ谷さんっ!?」

「んなっ…なっ…なっ…なななななっ……」

まるで顔はゆでダコのようだ!





「なるほど、そういうことかっ!」

「姉御が何であんなに真っ赤になったかわかってしまいましたヨ」

「え、なになに、はるちゃん?」

「姉御はよくみんなから『かっこいー』とか『綺麗~』とか『ステキー』とか言われるじゃん?」

「カッコいいしキレイだもんね、ゆいちゃん」

「だからですヨ!」

「ふぇ?」

「その言葉は言われ慣れてるけど、『かわいい』なんて初めて言われたのだっ!!」

「前さ、こまりんが姉御の名前をかわいいって言ったときがあったよね?」

「うん」

「姉御それだけで恥かしがって照れまくって、それを誤魔化そうとしてましたからネ」

「ほわっ!? そういえばっ」

「名前だけでそうなるのに、ましてや姉御自身を、しかも理樹ちゃんの屈託のない笑顔で言われた日にゃ……」





「な、なななな、何を言っているのだりっ理樹君!」

来ヶ谷さんは顔をトマトのようにして慌てふためいているっ!

「え、僕はただ来ヶ谷さんを――」

「わっ、わ、ワケがわからんっ! 私をその……か……全くワケがわからんっ!」

「そ、そそそ、そんなワケがわからんことを言う理樹君なんてもう大嫌いだ! ああ、嫌いだとも!」

プイッとそっぽを向いてしまった!

「え、えええーっ!? ちょっと来ヶ谷さんっ!?」

「ふ、ふん」

う、うわっ!

来ヶ谷さんがふてくされたっ!?

「ちょっと来ヶ谷さん、こっち向いてよっ」

「嫌だ」

「…………」

「…………」

「ちょっとでいいから…」

「嫌だ」

来ヶ谷さんがそっぽを向いたまま僕と顔を合わせてくれないっ!

「……」

「……」

――ズリズリ。

ちょっとだけ体を来ヶ谷さんの方にずらして、間を詰める。

「…!」

――ズリズリズリ。

「……」

「……」

間を詰めたのに、また来ヶ谷さんが間を開けた。

ズリズリ。

もう一度詰める。

ズリズリズリ。

また離された…。

ズリズリズリ。

もう一度詰める。

ズリズリズリズリズリ。

やっぱり離された!

「ちょっと来ヶ谷さん、どうしちゃったのさ?」

「ど、どうもしないっ」

そう言う割には耳まで色づいている。

「ちょっとでいいから僕の方を見てよっ」

そう言うと、来ヶ谷さんがクワッと僕の方に振り返った!

「ええい、さっきからうるさいぞ!! このファッキン理」

「……樹…くん」

「…………」

「…………」

後半は顔を逸らしながらの蚊の鳴くような声だった!

「…………」

「…………」

ど、どうしようっ。

みんなの方に目を向ける。

……!?

小毬さんもクドも鈴も『がんばれ』というジェスチャーを取っている!

葉留佳さんに至っては『GO』の合図を出している!

ま、まさかさっきの打ち合わせ通りやるのっ!?

…………。

来ヶ谷さんの手は横に置いてある。

手を少し伸ばせば触れれる位置だ。

みんなの方に目を向ける。

――コクリ。

って全員頷いてるし!

しかもみんな目を皿のようにしてこちらを凝視しているっ!

来ヶ谷さんは僕とは反対側を向いて、こちらを一切見ていない。

よ、よし…!

僕はそろりそろりと来ヶ谷さんの手に僕の手を近づける。

「…………」

そして…。

――ちょんっ

一瞬指先が来ヶ谷さんの指先に触れた。

「っ!?」

来ヶ谷さんはビクリと反応し触れられた手を引っ込めた!

「~~~~っ!」

引っ込めた手は、空いている反対側の手でしっかりと握り締められている!

まさかここまでビックリされるとは思わなかった!

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「あ、いや……」

「す、すまなかった…せっかく理樹君が勇気を出して…わ、私の手を…手を触ってくれたというのに」

「ぶっ、ぶ、無礼だったな」

そういうと、そっぽを向きながら、恐る恐る手を元の位置に戻した。

…僕の手には触れずに、けど触りやすいように1センチ程の距離をおいた位置にそっと。

戻したってことは…。

またそこからやるのっ!?

「…や、やるなら……は、はやくしてくれ」

向こうを向きながらそんなことを言う来ヶ谷さん。

「…………」

「…………」

傍目にも、来ヶ谷さんが手に意識を集中しているのがわかる。

「…………」

「い、いくよ? 来ヶ谷さん」

「(こく)」

そのままの格好で、首だけ少し動かす。

僕は意を決して、手を動かす。

――ちょん。

指と指が触れ合う。

ぴくっと来ヶ谷さんの手が反応したが、さっきみたいに引っ込めはしなかった。

「手を…重ねるよ?」

「…………」

来ヶ谷さんの手の上に僕の手を置く。

緊張のせいか、来ヶ谷さんの手も僕の手も少しだけ汗ばんでいる。

来ヶ谷さんとの間が開いていたので、間を詰める。

「…………」

「…………」

「来ヶ谷さん、僕の方を向いてくれない…かな?」

「…………」

「…い、今はキミに見せられるような顔が出来そうにない…」

「そっ…それでも…いいか?」

「うん」

「…………」

来ヶ谷さんがゆっくりと僕の方を向く。

「……ど、どうにも…恥かしいな……」

いつもの姉御と呼ばれる来ヶ谷さんとは思えなかった。

僕が来ヶ谷さんを見ると、その潤んだ瞳は恥かしげに逃げる。

頬は桜色に色づいている。

まさに『可愛い』という表現がピッタリだ。

「……そんなにマジマジと見られても…こっ、困るのだが…」

困ったように視線を外す。

「ごっ、ごめん」

今までの気丈さがまるでウソのような、女の子らしい仕草。

「…………」

「…………」

来ヶ谷さんが期待と不安が入り混じった瞳で僕を見つめている。

僕も…しっかりと言わなくちゃ!

「来ヶ谷さん! あの…」

いざ、言おうと思うと中々言葉が出てこない!

「ぼ、僕と……」

「……」

「僕と一緒に……」

「……」

来ヶ谷さんの顔は『何でも言って』といった表情だ。

「僕と一緒に……」

緊張で声が震える。

「一緒に…その…」

「……すーっ、はーっ」

僕はいったん言葉を止め、呼吸を整えた。

「来ヶ谷さん」

名前を呼ぶと、手を置いている方の来ヶ谷さんの手が軽く握られた。

「僕と一緒に……」



「僕と一緒にキムチはいかがですかっ!!」



………………………………………………。

…………………………。

…………。

「「「「「あ……」」」」」

周りで見ていたみんなから、「あ……そういえば」的な感嘆が漏れた!

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………………………は?」

「ぼっ、僕と一緒にキムチはいかがですかっ!」

心なしか、来ヶ谷さんがいつもの表情に戻っている気がする。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「はあ…キムチとな?」

「うん、僕と一緒にキムチはどうかな、って」

「…………」

「…………」



――ぎゅぅ~~~~~~~~っ!!



「い、いひゃいっ、いひゃいっ、なな、なんふぇつねるのひゃーっ!?(いたい、いたいっ、なんでつねるのさーっ)」

「………………」

「ひゃ、ひゃめてよ、くるひゃらひゃ~んっ!(や、やめてよ、来ヶ谷さ~んっ!)」

「………………」

全くの無言でつねってくる来ヶ谷さんがめちゃくちゃ怖いっ!!

みんなも僕たちの方へ寄ってきた。

「理樹ちゃん」

小毬ちゃんが人差し指をピッと立てる。

「さすがにデートにキムチはどうかと思うよ~」

「ありえない…口説き文句にキムチを選定するそのセンス…100年の恋も冷めちゃいますヨ」

「あたしも理樹のセンスを疑ったぞ」

「今のはさすがのオレでもありえねぇ……」

「まったくリキはデートを何と心得ているのですかっ! そこに直りなさいっ!」

「え、えええええええええええええええええええええええーーーーーっ!?」

「うむ、理樹君のその可愛らしいお口がどこまで伸びるか試してみよう」

「え、ええええーーーっ!?」



――ずぼっ、ぎゅぅ~~~~~~~~っ!!



「ふひゃぁぁぁぁぁ~~~~~…………――――」

あれ、キムチってみんなで決めたんじゃなかったっけ、という不条理を抱えたまま僕は来ヶ谷さんの為すがままに攻められ続けたのだった…。





「――二回戦勝者、杉並女史・理樹君チーム」

「やったね、直枝くん」

胸元に薄い本を抱いている杉並さん。

「う、うん…」

ほっぺたをさすりながら返事を返す。

「……来ヶ谷さんも心を動かされてしまいましたか」

「まあ、震度1程度だったがな」

いや、見ていた感じもっと凄かった気がする。

「姉御のあれは震度1どころか震度7……」

――ギロッ!!

「ひぃぃぃぃぃーっ!?」

「今、来ヶ谷から殺気が出てたぞ…」

どうやら今のことはあまり話しに出さないほうが良さそうだ…。



――来ヶ谷さんがポケットから何かが書かれた紙を出した。

「杉並女史、これがプレゼントの理樹君の携帯番号――」

ブルブルブル~ッ

来ヶ谷さんが言い終わる前に携帯が震えた。

「?」

電話を取ると。

『電話ってこれだね、直枝くん』

…横には嬉しそうに電話を持った杉並さん。

「すげえ…」

どこかで見たことのあるようなやり取りだった…。





こうして杉並さんと僕は無事(?)に最終決戦へと向かうこととなった。




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