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花ざかりの理樹たちへ その66 ~学校・放課後編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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※注意:「その66」は『佳奈多編』とのつながりがあります。読まれていない方は「その49」を読んだ後に「その66」を読むことをお勧めします。



***




グラウンドから校門までの道をみんなでワイワイとおしゃべりしながら歩いている時だ。

「――横幅目一杯に広がって歩かないで下さい」

凛とした声が響いた。

この声って……。

みんなが振り返ると、そこには――



「通行の、邪魔」



風紀委員長の二木佳奈多さんが立っていた。

いつものクリムゾンレッドの腕章がなく、鞄を持っているところを見ると…どうやら帰ろうとしていたところのようだ。

「……」

僕の前に真人が立った。

もしかしたら、女装がバレたら一大事なので……真人なりに気を効かして僕を隠そうとしたのかもしれない。

……もう佳奈多さんとは色々あったけど……。

「ふえぇっ!?」

ちなみに佳奈多さんの声に一番大きく驚いたのは小毬さんだった。

「何?」

小毬さんの声に反応して、佳奈多さんが小毬さんをジッと見つめる。

「あっ! え、えっと、このセーターは、えっとそのっ、まだ寒いというか…そうだ! 私、風邪ひきさんなのですっ」

訊かれてもいないのにあたふたと言い訳を始める小毬さん。

「セーターに関しては学校指定だし、問題はないと判断しています」

「だからわっ私、セーターがないと……ふぇ?」

「問題はない、と言ったはずだけど。それとも罰則規定を適用したほうがいいのかしら?」

「ふぇっ?」

キョトンとしている小毬さんに変わって、来ヶ谷さんが小毬さんと佳奈多さんの間に入る。

「――佳奈多君も今帰りか?」

「ええ」

「あなた方が今から問題さえ起こさなければ、私は真っ直ぐに帰ることができるわ」

佳奈多さんは髪の毛に右手を当て、ふぁさ、と払った。

「ふむ…」

来ヶ谷さんが意味あり気な視線を佳奈多さんに向ける。

「先ほどのやり取りから察するに、少しは素直になったと思ったのだがな」

「いつも通りよ、これが」

…………。

うーん。

佳奈多さん、みんなの前でも…もっと素直になれればいいんだけど。

「やーやーお姉ちゃん、私たちがこれから問題を起こす予定はゼロですヨ」

「安心して帰ってくださいな」

あはは、と笑う葉留佳さん。

「そう、ならいいけど」

佳奈多さんが腕組をし、キリッとした鋭い目線をみんなに投げかける。

「風紀委ではあなた方を厳重注意の対象としています」

「素行には注意なさい」

「それだけよ」

ふん、と目をそらし脇をすり抜けようとする。

「フッフッフ…私たちは何もしないけど、これから恭介くんが何かを企て――ふぐぐぐぐぐ~~~っ」

「ちょ、ちょっと葉留佳さんっ! 何を言い出すのさーっ」

慌てて飛び出して葉留佳さんの口を塞ぐ!

あちゃあ……佳奈多さんの前に出てしまった!

佳奈多さんがぴくっと反応し、こっちを鋭い眼光で睨みつける!

「葉留佳、今あの棗恭介が何かを企ててるって言おうとした?」

「ふぐっ! ふぐぐ~っ!」

「あ、あはは……佳奈多さん、なんでもないよ」

葉留佳さんに代わって僕が答える。

佳奈多さんと目が合う。



「あっ…………………………――――――――」



佳奈多さんは僕を見るなり、持っていた鞄を胸にぎゅっと抱きしめながら固まってしまった!

今はさっきまで鋭かった眼がウソのように丸く開かれている!

「あの、佳奈多さん……?」

「―――――――――――――――――――」

息もしていないんじゃないかと思えるほど微動だにしない!

「ほう」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべる来ヶ谷さん。

「さすがは理樹君だな…かの風紀委員長までもがキミの溢れる魅力に一瞬で虜(とりこ)になってしまったか」

「ち、違うからーっっ!!」

た、たぶん。

「――――――――――――…………」

「あの~、佳奈多さん……?」

あまりに動かないので佳奈多さんの方へと足を向けた。

「――――……………………」

氷付けにされたような見事な硬直だ!

「佳奈多さん…?」

そんな佳奈多さんの顔を覗き込む。

その瞬間。



――ぽんっ



音が鳴ったんじゃないかと思うほど、一気に佳奈多さんのホッペが桜色に色づいた!

慌てて僕から距離を離す!

「なっ、ななななななななななにっ! わっ私にな、な、なにか用っ?」

真っ赤になってあたふたとしている佳奈多さん!

さっきまでの佳奈多さんからは全く想像できない姿だ!

「「「「………………」」」」

そんな佳奈多さんに、みんなもポカーンとしている!

「あっ、い、いや…」

そんなに赤くなってどぎまぎされても困るっ!

「べ、別に僕たちはこれからみんなで、えーっと…ほら…か、買い物に行くだけだからね」

咄嗟(とっさ)に嘘をつく。

「あっ………えっ…ああ! そっ、そのこと、そのことね」

も、もしかしたら佳奈多さん……ちょっと前のことを思い出していたのかもしれない。

「か、買い物ね。そ、そう、わかったわ」

「……」

葉留佳さんがジト~っとした目で佳奈多さんを見つめる。

「……」

「……ど、どうしたって言うのよ?」

「……なんかお姉ちゃん、みょ~に物分かりが良すぎない?」

「そっそんなことないわっ!!」

「あっ…い、いつも通りよ、これが」

口を尖らせてそっぽを向く佳奈多さん。

ごめん佳奈多さん…。

正直、全然いつも通りじゃないから…。



――チラッ



ツンとそっぽを向いていた佳奈多さんがチラリと僕へと視線を向ける。

あ、視線が合った。

「!」



――サササッ!



顔を赤くして急いで目線を外す佳奈多さんっ!

そ、そんなに意識されると…

僕もめちゃくちゃ恥かしいからーっ!!

自分の顔がどんどん熱くなるのがわかるっ!

「わふー……」

しかもクドが興味深そうに、佳奈多さんと僕を交互に見つめている!

「ど…どうしたの、クドリャフカ?」

「な、何、クド?」

「……」

「……」

「わふ~……」

「お二人とも、お顔がまっかっかなのですっ」

にぱーと僕たちに笑いかけるクド!



「「そ、そんなこと……っ!!」」



見事にシンクロする僕と佳奈多さんの言葉!

僕が佳奈多さんの方へと顔を向けると、佳奈多さんも同時に僕へと顔を向けた。

もちろん視線がかち合う。

「……」

「……」

「……」

「……」



カァァァァァァァァァァ~~~ッ!!



佳奈多さんの顔がより一層赤く染まった!

きっと佳奈多さんからは、僕の顔が赤く染まったのが見えたと思う!

「……」

「……」

二人して真っ赤になって俯(うつむ)く。



「ぐっ……! なんだこの雰囲気は」

来ヶ谷さんの言葉からは「こいつら絶対何かあっただろ」と言ったニュアンスが聞いて取れる!

「…………お姉ちゃんと理樹ちゃん」

すごくいぶかしげな表情をしている葉留佳さん。

「あの時本当は何かあったでしょ?」

ズバリと質問してきたっ!!



「「な、なにもなかっ――――」」



うわあああ~っ!!

またもや見事にシンクロしてしまった!!

しかも言葉を止めたところまで一緒だ!

「………………」

あの時の僕と佳奈多さんの様子が頭を過(よ)ぎる。

チラリと佳奈多さんを見ると。

「……」

佳奈多さんも僕をチラリと見た。

「……」

「……」



カァァァァァァァァァァァァァァァァ~~~ッ!!



二人でまた真っ赤になってしまった!!

佳奈多さんなんて、鞄を抱きしめたまま顔から湯気を上げている!

僕も僕で顔で茶を沸かせるんじゃないかと思うくらい顔があっつい!!

は、は、は、恥かしすぎて死んじゃうよ~っ!!



「ふえぇ~…」

「わふ~…」

「……ユニーク」

「なんでしょうネ、この空気」

「ちょっと待て、おねーさんは抜け駆けなんてことは断じて許さんぞ」

「な、なんかよくわからんが、く、くちゃくちゃ腹立つぞ」

「鈴、奇遇だな…オレもだ…」

「な、なんか…ピンク色…?」



うわわっ!?

みんながこの微妙な雰囲気に何かを感じ取ってしまっているようだ!

しかも妙な勘違いも含まれている気がするっ!

………………。

…………。

おかしな空気が場を支配している!

ど、どうすれば…。

「……あっ、あ、そうだ!!」

「ほ、ほら!! 急がないと、恭介が待ちくたびれちゃうよっ!!」

「急いで来いってメールにもあったじゃない!!」

僕は居ても立っても居られなかったので、無理矢理話題の方向を逸らした!



「「「「「………………」」」」」



「…………ふむ、そうだな。人を待たせているのは事実だ」

「ああ。恭介のこった、待ちくたびれると飽きちまうかもしれねぇ」

ふぅ、と大きく息を吐き出す来ヶ谷さんと真人。

「そ、そうだよっ! み、みんな早く行こうっ! ねっ」

僕も早く話を変えようと、急いで校門に向かって歩き出した。

「そうですネ! 恭介くん、絶対面白いこと用意してますヨ!」

その時。

「――……わっ、わっ、私もあなた方と行かせてもらいます」

「え、ええーっ!」

みんなも驚いて、声の主の方を向いた。

「ふ、風紀委として、あなたたちの暴走を黙って指を咥えて見ている訳には行きませんから」

「それに校外で問題を起こされたら、我が校の名の恥でしょう?」

「わ、私も監視と牽制を兼ねて、着いて行くわ!!」

ちなみにこのとき、まだ顔が赤い佳奈多さんは一回も僕の方を見ようとしなかった。

う…。

もし今みたいな雰囲気が続いたら、僕の精神力が続きそうにないよっ!

そんな僕の気持ちを余所に。

「うんー、いいんじゃないかな」

「みんなで遊んだほうが楽しいよ~」

今まで一番佳奈多さんに怯えていた小毬さんも、笑顔になった。

「わふーっ、佳奈多さんとおでかけなんて初めてなのですーっ」

クドもとても嬉しそうだ。

「うみゅぅ…仕方ないな」

鈴も昔に比べて大きく成長したようだ。

どうやらみんな、佳奈多さんが着いてくることに異論はないようだ。

「………………」

佳奈多さんを見ると、顔を赤くしながらツンとそっぽを向いてしまった…。

「はぁ…」

僕は大きく息を吐き出した。

……いやまあ。

これを期に、佳奈多さんがみんなにも素直になってくれれば……。

そんなことを考えていた。





「じゃあみんな、出発しようっ!!」

「「「「「「おーーーっ!!」」」」」

僕たちはこうして、恭介と謙吾が何かを企てているところへと向かった。







が。

「……ちょっといいかしら?」

「どうしたの、佳奈多さん?」

「さっき、直枝理樹の名前が出てたけど――」

冷や汗がドッと流れる。



「――直枝理樹はどこかしら?」



出発2秒で緊急停止した僕たちだった!!




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