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花ざかりの理樹たちへ その86 ~買い物編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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「みおちゃんっ」

「……はい、ここに」

「はるちゃんっ」

「はいよっ」

「杉並さんっ」

「え? え? なに? どうしたの?」

「よぅし、これでメンバーはそろったね~」



――ランジェリーショップには小毬さんの呼びかけで、女子がほぼ全員が揃うことになった。

 さっき、小毬さん、クド、佳奈多さん、来ヶ谷さんでジャンケンをして小毬さんがまとめ役になったのだ。

 正直、嫌な予感しかしない。

 ちなみに鈴は『いまはムリだ。ごめん』だそうだ。

 小毬さんの呼びかけで鈴が来ないのはかなり珍しい。

 ……。

 そういえばさっきアクセサリーの前で一生懸命悩んでたしなあ…。



「んで、こまりん、いったいぜんたい何するの?」

「はるちゃん、よくぞ訊いてくれましたっ」

 えっへんと胸を張る小毬さん。

「……いえ、想像はつきますので早速はじめましょうか」

「ががーんっ!? み、みおちゃん説明させて~っ」


 うーん。

 やっぱり小毬さんにはリーダー役は荷が重いんだろうなぁ。



「では、こっほんっ」

「――おまえら、よくぞ集まってくれた~」

 …どうやら恭介のマネをしているようだ。

「……」

「……」

「ふぇえ? みんなどうしたの――じゃなくて、おまえたちどうしたんだ?」

 ……。

 みんな、反応に困っている。

 全然似ていない…なんて言ったらきっと怒ると思う。

「小毬さんクリソツなのですっ! あたかも恭介さんの生き写しなのですーっ!」

「えへへ~、ありがと、クーちゃん」

 本気でそう思ってる人が約一名いた…。

「でわっ!」

 小毬さんが胸元から折りたたまれた布切れを出した。

「理樹ちゃん、ちょっとそっちもってて」

「うん」



 ぴろん。



 小さな布切れが、これまたこじんまりと開く。



「ではこれより『第一回、理樹ちゃんの好みの下着を見つけよう!』大会を開催したいと思いま――思う!」

 ちなみにこれは、さっき小毬さんが店の人に頼んで布切れをもらって、それにサインペンを走らせていたものだ。



「あの…」

「はい、杉並さん――じゃなくて、なんだ杉並さん」

 ぴっ、と杉並さんを指差す。

「私、ちょっと目が悪くて…それに何が書いてるか…見えない」

「ほわっ」

「一番おっきいのもらったんだけど、ちょっと小さかったね……あ、かなちゃん、これ杉並さんまで回して」

「後でも見えるように大きく字を書く。あまりにも基本がなってないわね」

「リーダーとしては落第点」

「う、うわ~ん、まだ2分しかリーダーしてないのに~っ」



「……この様子を見ていると、いかに恭介氏が用意周到かわかるな」

「来ヶ谷さん…そんなところ感心しなくていいから」





「じゃあ、説明するよ~――じゃなくて、説明するから、よ~っく耳をかっぽして聞けーっ」

「……それを言うなら『かっぽじって』です」

「ほわっ!? よ、よ~く耳をかっぽじって聞くのだーっ」

 もうキャラがよくわからない。

「んとね、今回の目的は、理樹ちゃんの好みの下着を見つけることなので――見つけることなのだっ」

「それにね」

「理樹ちゃんの好みがわかればね、その…」

 突然小毬さんのホッペが桜色に染まる。

「自分の下着選ぶときの楽しみも増えるかな~、って思ったり思わなかったりするようなしないような…そんなカンジなのですっ」

「へぇ…こまりんも結構いろいろ考えてるんだね~」

「そこまでも視野に入れたミッションだったとはな。おねーさんも感服だ」

「えへへ~」

「え、えええーっ!?」

 周りのみんなも何かを思い出すような顔をしていたり、ちらりと自分の胸元に手を当てたりしてるしっ!


「け、けど、ちょっと待って小毬さん」

「どうしたの理樹ちゃん――じゃなくて、どうしたんだ理樹……………ちゃん」

 まずい!

 このままではまずい!!

 僕の、男としての何か色々なものがまずいっ!

 なんとか逃げないとっ!

「えと…あっ、そうだ!」

「こんなところでみんなで騒いだら店員さんに怒られちゃうでしょっ」

「あ」

 わすれてた…といった顔の小毬さん。

「なんだ、そんなことか」

 …来ヶ谷さんがニヤリと微笑みながら僕の肩に手を回してきた。

「安心しろ、それなら心配ない」

「ほら」

 そのまま、僕を店員さんの方に向けた。





「あ、こっち向いた向いたっ! あの子こっち向いたよ、きゃーーーっ! 見て見て早くぅ、きゃーーーっ!」

「――……ぽ」

「わ、わたし女なのに、女の子に興奮しちゃうなんて……きゃんっ♪」

 店員さんたちは、謎の拍手をしたり、頬を赤く染め目をそらしたり、鼻息を荒くして身悶えしたりしているっ!!





「店員はすでに理樹君のギアスの支配下にある」

「ギアスって何さ!?」

「……気にしたら負けです」

 ほくそ笑む西園さん。

「生物兵器、バイオテロと言っても過言じゃないわね、直枝の美貌」

 佳奈多さんは溜息混じりに、うんうんと頷いている。


「でしたら、安心してリキに伸び伸びと下着を選んであげられますーっ」

 クドが僕の腕に飛びつく。

「理樹ちゃん、みんなですんごいすっごい素敵なの選んであげるから期待しててね~」

 そして小毬さんも。

 二人とも、悪意ゼロの屈託のない純真な笑顔を僕に向けている。

「あ、ありがと……」

 僕はどうやら腹をくくるしかないみたいだ。





「じゃあ、まずはじめる前に…ちょっと理樹ちゃんいい?」

「あ、うん」

 小毬さんが僕の体をパタパタと叩いている。

「ふえぇ…やっぱりすごいスタイルだよ~」

 改めてシミジミ言われると、それはそれで恥かしいよね…。

「リキはご自分では、いつもどんな下着を身に付けているのですか?」

「僕は……」

「って、いやいやいやっ!」

 クドのあまりに自然な訊き方にうっかり答えそうになってしまった!

「直枝だったら、どんな下着でも似合いそうだけど」

「……いえ二木さん、意外と難しいかとと思います」

「そう?」

 西園さんの意見に眉を動かす佳奈多さん。

「……直枝さんの、このボディラインに見合う下着を選ぶとなると難しそうです」

「なるほど、それもそうね…」

「理樹君のこの身体に見劣りしない下着か…シンプルながらに難しいミッションだな」

「直枝くんの体のライン、こう――」

 杉並さんが宙で、僕の体のラインを表すかのように手を動かす。

「すっごいもんね」

「……この直枝さんの身体を引き立てる下着となると、難易度が飛躍的に跳ね上がります」

 西園さんが言葉を言い切ったあと。



「……」

「……」

「……」

「……」



――ごくりっ。



 みんなから僕のボディラインを透視しようとするかのごとくのギンギンとした目線が全身に注がれていたっ!

「そ、そんなにマジマジと見ないでよっ」

 ……。

 なぜかその様子を見守る目線。

「……理樹ちゃんもすっかり女の子らしい反応が板についてきましたネ」

「行動が全く女性のそれだな」

「え?」

 葉留佳さんと来ヶ谷さんの言葉に、自分の格好を見ると…。



 体をすぼめ、両手は胸を見せないように覆っていた!



「あ……うわっ!?」

 ぼ、僕は何をしてるんだっ!

 女装が板に着き過ぎてしまったのか、行動まで汚染されてきたっ!

「こ、これはその反射的…じゃなくて、べ、別に男でもする…と思うし…」

 慌てて胸から手を離し、手を後に回す。



――じぃ~~~~~~。



 手を後に回す……。



――じぃ~~~~~~。ごくりっ…。じぃ~~~~~っ。



「……えっ…と」

「……そ、そんなに……」

 手が自然に胸を覆う。

「そんなに……」



「み…」

「見つめないで……よ」



 カーーーッと熱くなる頬。





「堪らんだろ、これはッ!」

 ブハンッ!!

「ひゃーっ!? 姉御がまた鼻血吹いたーっ!」

「……晒(さら)され、恥かしさに打ち震える直枝さんっ……そ、その恥じらいだ顔は桜色に染まり……っ!!」

「ほわぁっ、み、みおちゃん、おち、おちついてぇ~っ!」

「~~~~~っ! ~~~~……――――――」

「わふーっ!? 佳奈多さんが完全に沈黙してしまわれたのですっ!?」

「な、なんかイケナイ気分に……なっちゃうよ…ね」

 早くもランジェリーショップの一角は惨憺(さんたん)たる状況となってしまった!



 友達にこんなに悶えられるなんて…僕、もう泣いてもいいかな…。




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