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ロ理樹ちゃんプールへ行く ~9話~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 世の中には不思議が溢れている。この話もそんな不思議の一つだ。いやなに、別に信じる必要はない。ただ、朝起きたら理気が小さくなっていただけだ。女の子になって…な。

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――チーム分けが完了した。

あたしのチームは、来ヶ谷、真人、みお、クド、あたしだ。キーパーはクド。

対するチームは、恭介、謙吾、小毬ちゃん、葉留佳だ。キーパーは恭介。

ちなみに二木はプールサイドで審判だ。





「――よし、プールに入って準備だ」

キーパー役の恭介とクドが、プールの端と端に移動した。

「ボクはだいじょぶだよ~」

浮き輪でプカプカ浮いた理樹が、プールの真ん中に移動する。

理樹を挟んで、あたしチームと小毬ちゃんがいるチームが向かい合う。

二つのチームと理樹との間には、それぞれ10mくらい距離がある。



「――みんな所定の位置についたみたいね」

審判の二木がみんなの様子を見渡している。

「準備はいいかしら?」

みんな「ばっちこいこーい」とか「しゃーっ! 来いやーっ!」と返事を返す。

「では……試合開始っ!!」

ピィーッと笛の音が響いた。

同時に、みんなが一斉に浮き輪でチャプチャプしている理樹に向かって泳ぎだす。



「理樹ーっ」

あたしが一番最初に理樹のところに着きそうだっ!

「ふのおおおおおーっ!! させるかーっ!」

「うみゃっ!?」

謙吾がすごい勢いで理樹に迫ってきた!

「ぬおおおぉぉぉーーーっ!!」

今のままじゃ、謙吾に取られるっ!

と、思ったのも束の間。

「うわわーっ!? り、りんーっ」

理樹の方からあたしの方に泳いできたっ!

「け、謙吾が、こ、こわいよーっ」

「こわかったな、よしよし。もうあたしがいるから安心だぞ」

逃げてきた理樹をしっかりキャッチ。

「……なあ、恭介」

「なんだ謙吾?」

「ボール役の理樹が俺から逃げるんだが……いいのか?」

「そりゃ理樹にだって好き嫌いはあるだろ。もちろんアリだ」

「のぉぅっ!?」

そうか…理樹をキャッチするだけじゃなくて理樹のハートもキャッチしなきゃならないんだ。

……。

今、あたしうまいこと言ったなっ。

「いくぞっ」

理樹の浮き輪の後ろに手を掛け、理樹を押すように泳ぐ。

「フッフッフ、そうはさせませんヨ」

「ここは通しませんっ」

葉留佳と小毬ちゃんが行く手を阻(はば)んだっ!

「むむ…」

さすがに二人のマークは振り切れそうにないな…。

「――鈴っ! こっちだっ」

「真人っ」

後ろから真人が猛スピードで泳いできたっ!

「よし理樹、真人のところまでいけっ」

「わかったっ」

理樹を真人の方に押し出す。

「――よっしゃっ!」

やった、パス成功だっ。

「このままゴールのクー公のとこまで一直線だぜっ」

「……」

「ん? どうしたんだよ?」

浮き輪を押して泳ぎだした真人の腕をジッと見つめている理樹。

「真人の腕って、むきむきだね」

「んなっ!?」

――ぺちぺち。

…真人の二の腕を嬉しそうに叩く。

「きんにくっ、きんにくっ」

――さわさわ。

その瞬間。

「んなぁあぁあぁあぁあぁぁーーーっ!?」

真人が絶叫とともに水に沈んだっ!!

「うわっ!? おまえなにやってんだーっ!」

理樹の方に向かうが時すでに遅しだ。

「はい、理樹ちゃん。つかまえたよ」

「あ、こまりちゃーん」

「私と一緒に行きましょ~」

「いきましょ~」

小毬ちゃんに理樹を取られてしまった…。

「ワタクシめは、こまりんの護衛を務めやしょう!」

「くるがやっ! みおっ! こまりちゃんをとめてくれっ」

相手ゴール(恭介)の近くにいる来ヶ谷とみおに呼びかけたが…。

「ああ、可愛い……」

「……これは和みます」

きゃっきゃっと泳ぐ小毬ちゃんと理樹に萌えていたっ!

「ゴ~ルだよー」

「はい、恭介さん」

「よくやったな小毬、これで俺たちチームが先制だ」

理樹がゴールの恭介へと渡される。

嬉しそうにしている理樹の頭を撫でる恭介。

「わかったろ、このゲームは一筋縄じゃ行かないぜ?」

――ピーッ!

笛の音が響く。

「棗先輩チーム、得点! 1-0よ」





続いて、恭介からあたしたちチームに理樹が渡されてスタートだ。

「オーケー理樹。今度はオレたちに味方してくれよなっ」

「うんっ」

「真人少年、理樹君を私にあずけてくれないか? 一気に突っ切る」

来ヶ谷もどうやら本気になったようだ。

これは頼もしい。

「来ヶ谷の姉御、頼んだぜ」

「任せろ」

真人の手から離れた理樹が、チャプチャプと来ヶ谷に向かっていく。

「くるがやさ~ん」

両手を広げて、ボクをつかまえて~と言ってるかのようだ。



――ちゃぷちゃぷちゃぷ~っ



「…むぅ」

「くるがやさんっ」

理樹が楽しそうに来ヶ谷の胸に飛び込んだ。

首に手を回してぎゅ~ってしてる。

「……」

「どうしたの?」

「……こ、こ、これは……」

「?」

「お、お、おもちか……」

「くるがや、どーした?」

理樹を抱いたままワナワナしているぞ。

「……」

「うむ」

突然キリッとした表情になった。



「ゆくぞ」

――シュババババババババババババーッ!!



来ヶ谷がくちゃくちゃな速度で泳ぎだしたっ!

「うわーっ! くるがやさんはやいーっ」

もちろん理樹も一緒だっ!!

「さすが来ヶ谷だぜ…ありゃ誰にも止められそうにねぇな」

「まずいな…」

恭介から呟きがもれる。

「来ヶ谷をとめろっ! あいつ本気だ!」

焦った声がプールに響くっ!

「小毬、三枝!」

「任せてよーっ」

「姉御と言えどもここは通しませんよっ」

小毬ちゃんと葉留佳が来ヶ谷の前に立ちはだかった!

「悪いが、こちらはダブルディフェンスだ」

「動きづらい水中で二人にマークされたら、いくら来ヶ谷でも理樹を守りきれない」

むむむ…。

向こうは恭介が司令塔だけ合って、統制が取れているぞ…!

けど…。

「甘いっ!!」



――ドバンッッ!!



「ほわぁっ!?」



来ヶ谷が……。



「わ、私たちを……」



「飛び越えたーーーっ!?」



来ヶ谷がイルカみたいに水面から飛び上がったっ!!

体にひねりを加えながら、アーチを描いて小毬ちゃんたちの上を飛び越えるっ!!

「うわぁぁぁぁ~~~……――」

もちろん理樹を抱いたままだっ!!

「なっ、なんつー運動神経してんだよ……っ!?」

「あ、あれが人間ワザ…!?」

真人も二木もあんぐりと口を開けているっ!



――ジャボンッ! ギャォォォッ!



着水と同時に、人魚を思わせるような神速で突き抜けて行く来ヶ谷!

「な……!?」

唖然としていた恭介だが、すぐに。

「畜生ッッ!! とめろ謙吾ォォォォォォォォォォッ!!」

「承知ッ!!」

ゴール際で張っていた謙吾が来ヶ谷の前に躍り出る!

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!」



「一人でこの私に向かってくるとは、なかなか見上げた根性だ」

「だが」

一瞬来ヶ谷の速度が緩まる。

「――ここでGAME OVERだ」

来ヶ谷が何かを呟いた瞬間。



――ジュバンァッッ!!



水しぶきが謙吾の視界を覆った!

同時に太陽に照らされた浮き輪の影が謙吾と重なる。



「同じ手が二度と通用するか、来ヶ谷ァァ!!」

「ぬああああああぁぁぁぁぁーっ!!」

上に目いっぱい手を伸ばす!



――スチャ…ッ



「浮き輪をキャッチしたぞ!!」

「違う!! そいつは――」

「な……っ!?」

謙吾の喜びの表情が一変して驚愕の表情へと変わった!

「理樹がいない…だとォォ!?」

「そいつはフェイクだァァッッ!!」

「ヤツは――」

水中で黒い影が揺らめく。

「下だァァーーーーーーーッ!!」



――ギュオンッ、ギュオンッギュオンッ!



謙吾の股下を黒い弾丸が突き抜けてゆくっ!

「ぬあっ!?」

来ヶ谷が通り抜けるのと同時に、謙吾がバランスを崩し水面へと倒れこんだ!

謙吾の手から浮き輪がこぼれ落ちる。



シュバッ!!

理樹を抱いた来ヶ谷が水面から飛び出すとともに、浮き輪が理樹へとはまる。

「――チョコパフェにハチミツとアンコをトッピングするほど甘いぞ、少年」



「ウソだろ……」

「謙吾が手も足も出ない……だ……っ!?」

もう恭介の顔からは血の気が失せている。



「うおおおおおっ、ありえねぇ! 来ヶ谷、ありえねぇぜっ!!」

「し、信じられません、あまりに…規格外ですっ」

「くちゃくちゃすごいなっ!!」

正直あたしもスゴイしか言えないぞっ!

「よっしゃ、もうノーマークだっ!! 来ヶ谷行けぇぇーっ!!」

「言われずともわかっている」

クドへと真っ直ぐに向かう来ヶ谷。

もうゴールのクドは目前だっ!

「来ヶ谷さん、理樹を私にっ! 私にパスすれば同点なので――」



――ドバンッッ!!



って、また飛んだーーーっ!?



「わ、わふーっ!?」

唖然とするクドの上を通過し…



――スタンッ。

プールサイドへと華麗に着地。



「…………………………」

もちろんみんな「えええーっ!?」って顔だっ!

「理樹君は私がお持ち帰りさせてもらう」

…………。

……。

「って、なにぃーーーっ!?」

「持って帰りたくなったんだ。そして出来れば寝食を共にしたい」

めちゃくちゃなことを言ってるぞ、あいつ!!

が、その時。

「う、う、うわゎあぁあぁ~~~んっ」

理樹が泣き出してしまった。

「なっ、むっ……ど、どうしたのだ理樹君?」

「うあああーんっ」

「そういうつもりでは……」

さっきまでの暴走がウソのように、あたふたし出す来ヶ谷。

「す、すまん理樹君」

「ぁううううっ…えぐえぐえぐ……」

「……こ、困った」

あんなに困惑している来ヶ谷も初めてだな。

葉留佳とこまりちゃんが心配そうに駆け寄る。

「姉御もヤンチャですネ」

「ほら、理樹ちゃんの涙を拭ってあげてくださいナ」

「……えぐえぐ、えぐえぐ……」

「ど、どうすればいいか…わからん」

「じゃあゆいちゃん、理樹ちゃんの頭をなでてあげて」

「……むむ……こ、こうか?」

ぎこちない手つき。

「……えぐえぐ……うぐうぐ……こわかった…………くるがやさん……っ」

来ヶ谷にヒシッと抱きつく。

「…怖い思いをさせてすまなかった、理樹くん…」

お母さんのような優しい手つきで理樹の頭を撫でる。

「…ううん、くるがやさんがね、なでてくれたからね、もうね、ダイジョブ」

理樹のその言葉を聞いた来ヶ谷の顔…優しい表情だ。

家族みたいに見えてくる。

とても微笑ましい。

「――いやまあ、普通アレは絶対泣くよな…」

「……誰だってあんな泳ぎに付き合わされたら泣きます」

まあ、真人とみおの言う通りだと思うが。

「来ヶ谷……おまえ理樹泣かしたから失格な」





「なぜこうなるんだ」

「あんなことをしたんだから当然よ」

失格になった来ヶ谷はプールサイドで二木の横に座って審判助手だ。

「それにしても……」

「子どもに悪戦苦闘する来ヶ谷さん……いいものを見せてもらったわ」

「う、うううっ、うるさいっ!」

「ふふふっ」



――今理樹は、謙吾たちの手にある。

もう理樹の機嫌は直ってる。

「――いいな理樹」

「やってみるっ」

「行くぞ!」

「うんっ」



――ダバダバダバダバーッ



「……目標、距離約10mです」

「おいでなすったか」

謙吾が理樹の浮き輪を押しながら突き進んできた!

「へっ、謙吾か……上等だぜ!」

真人が前へと出る。

「来いや謙吾ーっ!!」

「フッ、真人か…相手に不足はない」

謙吾が真っ直ぐに突っ込んできたっ!

「理樹を正面に押し出してくるなんて、取ってくれと言わんばかりだぜっ」

真人の手が伸びる。

「謙吾っ、今だよっ」

「よしきたっ!」



――ギュルンッ!



理樹からの合図と同時に、謙吾が理樹を中心にして円を描くようにクルリと回った!

今まではあたしたちの方に理樹がいたのに、一転してあたしたちの方に謙吾の背中が向いたっ!

「なっ!?」

真人の手が謙吾の背中に阻まれるっ!

「三枝ァァーッ!!」

「あいよっ!」

「なにーっ!?」

謙吾のすぐ後ろから葉留佳が泳いできていた!

「くそっ!」

真人が手を伸ばすが、謙吾がぴったりとマークしているっ!

「これは作戦です! 宮沢さんがオフェンスと思わせておいて、実は壁の役割…!」

「……本当のオフェンスは……」

「はるかさん~っ」

理樹がちゃぷちゃぷと葉留佳に寄る。

「キャッチまーーーっくすっ」

葉留佳が理樹を抱きとめたっ!

「しまったっ!?」

あたしも葉留佳の元に行こうとしたが…。

「りんちゃんのお相手は私だよ~」

「こ、こまりちゃんっ!?」

「りんちゃ~んっ」

「うわっ、くっつくな~っ」

こまりちゃんがあたしにぴったりくっついていて進めないっ!

「フォッフォッフォ、勝利の鐘の音が聞えますナ」

「理樹ちゃん、ゴールはあと少しですヨ」

浮き輪で浮かぶ理樹の手を引きながら、悠々と真人の横を歩いて通り過ぎていく。

「させる…かぁぁぁーーーっ!!」

「しまっ…!?」

真人が謙吾のマークを振り切ったっ!

「理樹ーっ!」

真人の手が理樹の浮き輪へと掛かる。

「わわわ~っ」



――がしっ!



「あらよっと」

「うわ、まさとーっ」

真人が理樹を後ろから抱えるように捕まえていた!

「…三枝、おまえなぁ…」

「はるちん余裕こきすぎたーっ!?」

「あはは…もうちょっと急いだほうが良かったかな」

呆れる謙吾、頭を抱える葉留佳とフォローをしている小毬ちゃん。

「よし理樹、今度はオレのエスコートなっ」

「……」

「どうしたんだよ理樹?」

「……っ!? ……っ!?」

理樹の顔がみるみるトマトみたいに真っ赤になっていくっ!

よくよく理樹と真人を見ると……。

「うわっ、おまえどこさわってんだっ!?」

「ま、真人くん、そこ、ダメだよーっ」

「へ?」



――さわさわ、さわさわ。



後ろから抱きかかえた真人の手は――

しっかりと理樹のぺたんこの胸を触っていたっ!!

「ゃ……ゃ……ゃ……ひゃぁぁぁーんっ!!」

「うぉわおわおわおわぁぁっ!?」

真人の手から逃げた理樹が、プンプンした顔で真人に向き直る。

「理樹、今のはワザとじゃなくてな…」

「ぷ~っ!」

赤くなったほっぺを膨らませている。

「真人の……」

「真人の…………っ」

「えっちっ!」



――ぴちっ



「うおおおおぉぉぉー、理樹にビンタされたぁぁぁーーーっ!?」

……真人のホッペには小っちゃいモミジの跡が。



「……恭介さん、今うらやましいとか思いませんでしたか」

「…………」

「ははっ、何を言うんだ西園は! 正直、そんなことを思いつきもしなかったさ」

ピンと親指を立てて白い葉を光らせている辺り、くちゃくちゃ怪しい。





「なんでこうなるんだよ」

「あんなことをしたんだから当然よ」

失格になった真人はプールサイドで二木と来ヶ谷の横で正座だ。

「よし、じゃあ気を取り直して続きを――」

恭介の言葉がとまった。

「どうしたんだ?」

「いや、理樹がな」

恭介が抱っこしている理樹を見ると……。

「……くぅー、くぅー……」

恭介の腕の中で可愛らしい寝息を立てていた。

「どうやら、遊び疲れちまったみたいだな」



時計を見ると、針は6時を差していた。

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