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花ざかりの理樹たちへ その27 ~学校・午前中編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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『最後はりんちゃんだねー』

さすが小毬さん、切り替えが早い。

『鈴さん、がんばってくださいっ』

『……』

ちりん、と音が聞えた。

昔の鈴だったらすぐに断っただろう。

様々なミッション、そして友情を通して鈴はとても成長したと思う。

『おう、鈴! おまえで最後だ…よろしく頼むぜ』

今までのは果たして練習になっていたのだろうか……。

『来い』

『…………』

『ここに筋肉ミュージカルのチケットがちょうど2枚あるんだが……』

『オレと一緒に観に――』

『やじゃ』

即答っ!?

『…………』

『一緒に出かけてくれるだけで…』

『断る』

『…………』

『じゃあよ、一緒にジュースだけでも……』

『絶対やじゃ』

『って練習になんねえじゃねぇかぁぁぁぁぁっ!!』

『ふられる練習だ』

『そんなネガティブな練習したくねぇよっ!』

『なんかこうよ…誘うときのアドバイスとかはねえのかよ?』

『そうだな……』

『泣くな』

『フラれること前提かよぉぉぉーーーっ!』

『りんちゃん、ちょっと可哀想だよ~』

『う……』

『どうしたらいいかわからない』

どうやら鈴は、どう練習に付き合ったらいいかわからないみたいだ。

『う~ん…あ、そうだ』

『りんちゃん、ちょっとこっち来てー』

『ん』

『はい、これ』

『――がさごそごそ』

『こまりちゃん、いいのか?』

――鈴の声が無線機の近くから聞える。



「どうやら鈴に無線機を渡したようだな」

「も~しもしもしもしーっ! 鈴ちゃーん、聞えますかーっ?」

『はるか、うっさい!』

「うぅ…聞えてるみたいです」

いつものことだけど、葉留佳さんと鈴はテンションは合わないよなあ。



『おう、鈴。別にやらなきゃやらないでいいぞ』

――真人が鈴のところに寄ってきたみたいだ。

真人はなんだかんだ言っても、ちゃんと鈴のことを気にかけているようだ。

『ど、どうすればいい?』

「もちろん真人に恋のアドバイスだ」

「鈴君、真人少年に何か適当なことを吹き込むんだ」

『わかった』

「いやいやいや……適当なことを吹き込まれたら、相手する僕が困るよっ」

『真人、恋のアドバイスをしてやる』

『なにっ!? マジかっ!?』

ああーっ! もう鈴が発車しちゃってるし!

『…………』

『なんだよ、焦(じ)らすなよっ、どんなことでもいいから教えろって』

『……ど、どうすればいい?』



「…だ、そうだ」

恭介が鈴の言葉を受ける。

「みんな、何か良さ気な恋のアドバイスはないか?」

「ふむ……」

「華麗に宙を舞いながらチケットを手渡し、なんてどうだ?」

「どうだ、の意味がわかんないよ……」

「うむ…インパクトだけはあるぞ」

来ヶ谷さんはインパクトだけでアドバイスを決めていた!

「ここははるちんに任せろーっ」

「デートのお誘いは情熱がものを言う……そう、情熱的にフラメンコだーんすっ!」

「オ~レィッ!」

葉留佳さんは薔薇に見立てたシャーペンをくわえて、手をパンパン鳴らしながらダンスを始めた!

「……デートの際は、頬を染めながらチケットを手渡して、うつむき加減に目を逸らすのがセオリーです」

西園さんは、もしかしたらすごい計算高いのかもしれない。

「……井ノ原さんが、恥じらいつつも瞳を輝かせながらデートに誘ってくる様子を想像してみてください」

…………。

う、うわあぁっ。

真人が「キャッ」と頬を染めながら僕ににじり寄ってくるところを想像してしまった!!

「……身の毛もよだちます」

西園さん、自分で言っておいて顔面蒼白だよ……。



「ふむ…こういうのが得意そうなのはやはり……」

みんなの目が恭介に向けられる。

「ん、俺か?」

「そうだな…ただチケットを渡すだけじゃ芸がないだろうな」

「なんせ勝負どころだからな。相手に自分を強烈に印象付けなきゃならない」

「ウヒョー! さすがハンサムでクールでナイスガイッ!」

「……恋の狩人・恭介……これからはこう呼ばせていただきます」

やっぱり恭介はこういうことに手馴れているのだろう。

「して、その方法は?」

みんな興味津々だ。

「――屁だな」

「デートに誘う時に屁をこいてみろ」

恭介が突如、まったく訳のわからないことを言い出した!

もちろんみんな、「はぁーーーっ!?」といった顔をしている!

「考えてもみろよ」

「誰がデートの誘いをするときに屁をここうと思う? 普通考えないだろ」

「しかも大好きな相手の目の前でだぞ。やろうとしたところで、なかなか出来るもんじゃない」

「出来るか?」

「ええー!? そんなのぜったいムリムリ!」

葉留佳さんが全力で手をブンブンと振っている。

「だろ」

「人が真似出来ないことが出来る……それは男らしさの証明に他ならない」

「その男らしさのアピールに加え、インパクトさえも兼ね備えている」

「相手のハートに自分の事が刻み込まれるのは間違いなしさ」

「どうだ?」

「おおぅっ!? さすがはリーダー、ナイスアイディアっ!」

尊敬の眼差しが、葉留佳さんから恭介に向けている!

「くそぅ! 俺も最初から屁をこきながら理樹にアピールするべきだったっ!」

「えぇーっ!?」

謙吾は頭を抱えて、悔しがってるし!

葉留佳さんも謙吾も、恭介の屁理屈に簡単に丸め込まれちゃってるよ!

もちろん二人以外は口をポカンと開け、呆れかえっている……。

「よせやい、あんまり褒めるなって…照れちまうじゃないか」

恭介がなぜそこまで自信満々な顔をしているかが、すっごく不思議だ。

「……バカばっか」

西園さんはため息をついている……。



『それでいいのか?』

「わーわーわーっ! 鈴、絶対ダメだからねっ!?」

『なんだ、ダメなのか』

「なんだよ理樹、気に入らないのか?」

「いやもう…どこをどうツッコめばいいか分かんないほど、全然わけわかんないからっ!」



「ならば――」

「敵に塩を送るのは好かんが…俺が妙案をくれてやろう」

ネジさえ外れていなければ、メンバー内で最もモテるであろう謙吾がついに口を開いた!

「お、ついに動きやがったな、ロマンティック元大統領!」

「いけいけー我らがロマンティック元大統領ーっ」

「ふむ…ロマンティック元大統領の実力拝見としよう」

「……愛の申し子、ロマンティック元大統領ですね」

「元ってつけるなああぁぁーーーっ!」

ショックだったらしい。

「まあ、いい」

「――チケットを渡すときに、体全体の動きで『L』『O』『V』『E』を表現するんだ」

「最初は奇妙な動きをしているヤツだと思われるだろう」

「あまりに奇妙な動きで、動きをついつい目で追ってしまう」

「だが、よくよく相手の動きを見極めると…それは『LOVE』」

「そんな小粋な演出に……ロマンティックが止まらない」

謙吾がクールな笑みと共にビッと親指を立てた!

「――さすがは謙吾、完敗だぜ…」

「こいつはロマンティック大統領に再就任だな!」

「ありがとう」

ガシリと男同士の熱い握手が交わされた。

「いや…ツッコミどころ満載な気がするが」

来ヶ谷さんは引いている。

どうやらロマンティック大統領の道はまだまだ遠そうだ……。

『参考になった』

鈴の満足げな声。

「ええええぇぇぇぇーーーっ!?」

いやまあ、おならよりはマシだけどっ!



『真人、すごいアドバイスがあるからよく聞けっ!』

『お、すげぇ自信だな!』

『もう自信まんまんだ』

『へっ…ならそのアドバイス、是非ともあの子に使わせてもらうぜ』

『これで成功間違いなしだ』

『焦らすなって』

『いいか、よく聞け』

『おう!』

『………………』

『屁で情熱的に宙を舞いながらLOVEの字を描いてオ~レィッ!と言ってチケットを手わたせ』

『頬を染めながらだ』

『………………』

『………………』

『………………』

『………………』

『そんなんできっかあああああああああああああぁぁぁーーーーっ!!』

ぜ、ぜんぶ混じっちゃったーーーっ!?

『なにっ?』

『これのどこができないんだっ』

『何ひとつできねえよっ!!』



「ふむ」

何か閃いた様子の来ヶ谷さん。

「鈴君は、みんなのアイディアのいいところを集めれば、最高にいいアイディアになると考えたのだな」

「……みなさんが出してくれたアイディアを無駄にしたくなかったのでしょう」

「鈴ちゃんやさしー!」

「なるほど…鈴らしいな」

「あいつも成長したな」

いや、今の場合…みんなのアイディアそのものが良かったのか疑問だと思う。





『よおーっし』

『真人君の練習も終わったところで、さっそくどっきんラブなあの子を誘いに行きましょー』

『行きましょーっ!』

『いきましょー』

『って、いきなりかよ!?』

『うんっ、今の真人君ならだいじょーぶっ』

『今の練習で鍛え上げられた井ノ原さんなら、どこに出しても恥ずかしくありませんっ』

『今までの練習をおもいだせ』

『ちっとも練習になってなかった気がするんだが…』

『――ううん』

少し間を置いて、小毬さんが否定をした。

『それは真人君が気づいてないだけ』

優しく、諭すような声。

『……胸に手を当ててみて』

『お、おぅ』

『さっきまでは、ひとりで悩んでて……すごくもやもやしてたと思うの』

『きっと不安で、あの子に会う自信もなかったんじゃないかな?』

『…………』

『ひとりだけで悩んでるとね、ぐるぐるいろんなことを考えちゃって大変』

『けどね…今はどう?』

『…………』



――たしかにこのミッション前の真人は、一人だけで思い悩んでいた。

頭も気持ちもいっぱいいっぱいで、余裕がなかったと思う。

けど。

クド、小毬さん、鈴との練習――もとい遊びを通して、そんな終わりのない思考の堂々巡りから開放されたのではないか。



『そうだな…いつの間にかスッキリしてたぜ』

『小毬、クー公、それに鈴……ありがとよ』

『当然のことをしただけだよー』

『私たち、リトルバスターズ!』

『リトルバスターズ!なのですっ』

『あたしたちはリトルバスターズだ!』



『みんなでひとつ、だよ』

『……』

『……そうだな』




***


『もう一つの「その27」(ボケスパイラル・エディション) 』



『最後はりんちゃんだねー』

さすが小毬さん、切り替えが早い。

『鈴さん、がんばってくださいっ』

『……』

ちりん、と音が聞えた。

昔の鈴だったらすぐに断っただろう。

様々なミッション、そして友情を通して鈴はとても成長したと思う。

『おう、鈴! おまえで最後だ…よろしく頼むぜ』

今までのは果たして練習になっていたのだろうか……。

『来い』

『…………』

『ここに筋肉ミュージカルのチケットがちょうど2枚あるんだが……』

『オレと一緒に観に――』

『やじゃ』

即答っ!?

『…………』

『一緒に出かけてくれるだけで…』

『断る』

『…………』

『じゃあよ、一緒にジュースだけでも……』

『絶対やじゃ』

『って練習になんねえじゃねぇかぁぁぁぁぁっ!!』

『ふられる練習だ』

『そんなネガティブな練習したくねぇよっ!』

『なんかこうよ…誘うときのアドバイスとかはねえのかよ?』

『そうだな……』

『泣くな』

『フラれること前提かよぉぉぉーーーっ!』

『りんちゃん、ちょっと可哀想だよ~』

『う……』

『どうしたらいいかわからない』

どうやら鈴は、どう練習に付き合ったらいいかわからないみたいだ。

『う~ん…あ、そうだ』

『りんちゃん、ちょっとこっち来てー』

『ん』

『はい、これ』

『――がさごそごそ』

『こまりちゃん、いいのか?』

――鈴の声が無線機の近くから聞える。



「どうやら鈴に無線機を渡したようだな」

「も~しもしもしもしーっ! 鈴ちゃーん、聞えますかーっ?」

『はるか、うっさい!』

「うぅ…聞えてるみたいです」

いつものことだけど、葉留佳さんと鈴はテンションは合わないよなあ。



『おう、鈴。別にやらなきゃやらないでいいぞ』

――真人が鈴のところに寄ってきたみたいだ。

真人はなんだかんだ言っても、ちゃんと鈴のことを気にかけているようだ。

『ど、どうすればいい?』

「もちろん真人に恋のアドバイスだ」

「鈴君、真人少年に何か適当なことを吹き込むんだ」

『わかった』

「いやいやいや……適当なことを吹き込まれたら、相手する僕が困るよっ」

『真人、恋のアドバイスをしてやる』

『なにっ!? マジかっ!?』

ああーっ! もう鈴が発車しちゃってるし!

『…………』

『なんだよ、焦らすなよっ、どんなことでもいいから教えろって』

『……ど、どうすればいい?』



「…だ、そうだ」

恭介が鈴の言葉を受ける。

「みんな、何か良さ気な恋のアドバイスはないか?」

「ふむ……」

「華麗に宙を舞いながらチケットを手渡し、なんてどうだ?」

「どうだ、の意味がわかんないよ……」

「うむ…インパクトだけはあるぞ」

来ヶ谷さんはインパクトだけでアドバイスを決めていた!

「ここははるちんに任せろーっ」

「デートのお誘いは情熱がものを言う……そう、情熱的にフラメンコだーんすっ!」

「オ~レィッ!」

葉留佳さんは薔薇に見立てたシャーペンをくわえて、手をパンパン鳴らしながらダンスを始めた!

「……デートの際は、頬を染めながらチケットを手渡して、うつむき加減に目を逸らすのがセオリーです」

西園さんは、もしかしたらすごい計算高いのかもしれない。

「……井ノ原さんが、恥じらいつつも瞳を輝かせながらデートに誘ってくる様子を想像してみてください」

…………。

う、うわあぁっ。

真人が「キャッ」と頬を染めながら僕ににじり寄ってくるところを想像してしまった!!

「……身の毛もよだちます」

西園さん、自分で言っておいて顔面蒼白だよ……。



「ふむ…こういうのが得意そうなのはやはり……」

みんなの目が恭介に向けられる。

「ん、俺か?」

「そうだな…ただチケットを渡すだけじゃ芸がないだろうな」

「なんせ勝負どころだからな。相手に自分を強烈に印象付けなきゃならない」

「ウヒョー! さすがハンサムでクールでナイスガイッ!」

「……恋の狩人・恭介……これからはこう呼ばせていただきます」

やっぱり恭介はこういうことに手馴れているのだろう。

「して、その方法は?」

みんな興味津々だ。

「――屁だな」

「デートに誘う時に屁をこいてみろ」

恭介が突如、まったく訳のわからないことを言い出した!

もちろんみんな、「はぁーーーっ!?」といった顔をしている!

「考えてもみろよ」

「誰がデートの誘いをするときに屁をここうと思う? 普通考えないだろ」

「しかも大好きな相手の目の前でだぞ。やろうとしたところで、なかなか出来るもんじゃない」

「出来るか?」

「ええー!? そんなのぜったいムリムリ!」

葉留佳さんが全力で手をブンブンと振っている。

「だろ」

「人が真似出来ないことが出来る……それは男らしさの証明に他ならない」

「その男らしさのアピールに加え、インパクトさえも兼ね備えている」

「相手のハートに自分の事が刻み込まれるのは間違いなしさ」

「どうだ?」

「おおぅっ!? さすがはリーダー、ナイスアイディアっ!」

尊敬の眼差しが、葉留佳さんから恭介に向けている!

「くそぅ! 俺も最初から屁をこきながら理樹にアピールするべきだったっ!」

「えぇーっ!?」

謙吾は頭を抱えて、悔しがってるし!

葉留佳さんも謙吾も、恭介の屁理屈に簡単に丸め込まれちゃってるよ!

もちろん二人以外は口をポカンと開け、呆れかえっている……。

「よせやい、あんまり褒めるなって…照れちまうじゃないか」

恭介がなぜそこまで自信満々な顔をしているかが、すっごく不思議だ。

「……バカばっか」

西園さんはため息をついている……。



『それでいいのか?』

「わーわーわーっ! 鈴、絶対ダメだからねっ!?」

『なんだ、ダメなのか』

「なんだよ理樹、気に入らないのか?」

「いやもう…どこをどうツッコめばいいか分かんないほど、全然わけわかんないからっ!」



「ならば――」

「敵に塩を送るのは好かんが…俺が妙案をくれてやろう」

ネジさえ外れていなければ、メンバー内で最もモテるであろう謙吾がついに口を開いた!

「お、ついに動きやがったな、ロマンティック元大統領!」

「いけいけー我らがロマンティック元大統領ーっ」

「ふむ…ロマンティック元大統領の実力拝見としよう」

「……愛の申し子、ロマンティック元大統領ですね」

「元ってつけるなああぁぁーーーっ!」

ショックだったらしい。

「まあ、いい」

「――チケットを渡すときに、体全体の動きで『L』『O』『V』『E』を表現するんだ」

「最初は奇妙な動きをしているヤツだと思われるだろう」

「あまりに奇妙な動きで、動きをついつい目で追ってしまう」

「だが、よくよく相手の動きを見極めると…それは『LOVE』」

「そんな小粋な演出に……ロマンティックが止まらない」

謙吾がクールな笑みと共にビッと親指を立てた!

「――さすがは謙吾、完敗だぜ…」

「こいつはロマンティック大統領に再就任だな!」

「ありがとう」

ガシリと男同士の熱い握手が交わされた。

「いや…ツッコミどころ満載な気がするが」

来ヶ谷さんは引いている。

どうやらロマンティック大統領の道はまだまだ遠そうだ……。

『参考になった』

鈴の満足げな声。

「ええええぇぇぇぇーーーっ!?」

いやまあ、おならよりはマシだけどっ!



『真人、すごいアドバイスがあるからよく聞けっ!』

『お、すげぇ自信だな!』

『もう自信まんまんだ』

『へっ…ならそのアドバイス、是非ともあの子に使わせてもらうぜ』

『これで成功間違いなしだ』

『焦(じ)らすなって』

『いいか、よく聞け』

『おう!』

『………………』

『屁で情熱的に宙を舞いながらLOVEの字を描いてオ~レィッ!と言ってチケットを手わたせ』

『頬を染めながらだ』

『………………』

『………………』

『………………』

『………………』

『できっかそんなんーーーーーーーーーーっ!!』』

ぜ、ぜんぶ混じっちゃったーーーっ!?

『なにっ?』

『これのどこができないんだっ』

『何ひとつできねえよっ!!』



「ふむ」

何か閃いた様子の来ヶ谷さん。

「鈴君は、みんなのアイディアのいいところを集めれば、最高にいいアイディアになると考えたのだな」

「……みなさんが出してくれたアイディアを無駄にしたくなかったのでしょう」

いや、今の場合…みんなのアイディアそのものが良かったのか疑問だと思う。



『ここはやはり、井ノ原さんなりにやればよいのではないでしょうか?』

『って結局ふりだしじゃねぇか!?』

『今度は、りんちゃんのおっけー、をもらえる様にがんばってみよー』

『くそっ、最後の強敵ってワケかよ……』

『貴様じゃあたしは倒せない…!』

鈴ったら悪ノリしちゃってるし……。



『じゃあ、これで最後だよー』

『井ノ原さん、がんばってくださいっ』

『おまえを破る秘策を思いついたぜ…』

『小細工はつーよーせん!』

……誘いを受ける側が始まる前から、断る気マンマンだ……。



『すたーとっ』

小毬さんの合図が発せられる。

『鈴』

『ここに筋肉ミュージカルのチケットが2枚ある』

『オレと一緒に観に行かないか?』

最初と全く一緒だよ!?

『……』

鼻で笑うような鈴。

『ことわ――』

『おっと、断るのは最後まで話を聞いてからにしな!』

『なにっ!?』

真人の「作戦通り」といったニュアンスの言葉。

『チケットだけ、なんて野暮なことは言ってないぜ』

『ま、まだ何かあるのかっ?』

『――モンペチ生タイプ(ビニール袋入り)を…デートに付き合ってくれたら買ってやろう』

『…………っ!!』

うわっ!! 真人は鈴にしか通用しない技を繰り出した!!

しかもモンペチ生タイプは高級品だ!

もはや、真人の目はこの勝負に勝つことしか見えていない!

デートに誘う趣旨すら忘れているようだ!

『しかも、今いる猫…12匹ぶんだぁぁぁぁぁーーーーっ!!』

ダメ押しのダメ押しってカンジだー!!

『なっ、なにぃぃーーーっ!?』

『猫たちはモンペチ生タイプが大好きなんだろ?』

『………………う』



――その時。

『あら、神北さん……こんなところで何をしていらっしゃるの?』

『あ、さーちゃん』

この声は笹瀬川さんだ。

僕らの行動に合わせてるんじゃないか、と思うほどよく会うなぁ……。

『実はね、今真人君がりんちゃんに――』

小毬さんが話を言い終わらないうちに。

『どうなんだ?』

『……う』

『大好きだ…』

『付き合ってやってもいい』

鈴が真人にオッケーを出した!

『おおおおおおっっっっっっしゃああああああぁぁぁぁーーーーっ!!』

そして真人の喜びの雄叫びが響き渡った!

『――あ、あらっ!?』

『やったね、真人君っ!』

『わふーっ、井ノ原さんなら出来ると信じてましたーっ』

『ありがとよ』

……とても何か大事なことを忘れている気がする。

『……ふっ』

『おーーーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほ!!!』

笹瀬川さんの高笑いがあがった!

『――!!』

『ささらさーっ!』

すごい短縮されていた!

『さ・さ・せ・が・わ・さ・さ・み、ですわっ!!』

『まあ…面白いものを拝見させてもらいましたから許してさしあげますわ』

『まさかあなたとそれが…そんな関係でしたなんて』

途中から乱入した笹瀬川さんは、間違いなく勘違いしている!

『な、なんだ、にやにやして気持ちわるいぞっ』

『今のあなたと筋肉のやり取り、見させていただきましたわよ』

『なにぃ!?』

『い、いや、べべ別にオレたちはちょっと…なぁ鈴?』

うわっ、真人は自分が恋患いで悩んでいたこと隠したいみたいだけど!

今のこの状況で、その表現はマズイって!

『う……真人とはデー……うん、ちょっとだ』

鈴は「デート」という単語を口に出すのが恥ずかしかったらしい!

『あらあら……お二人ともてっきりこのようなことには興味がないかと思ってましたわ』

『それがまさか、その二人同士で――』

『それは違いますよ、笹瀬川さん』

クドのフォローだ!

『私たちは、井ノ原さんが恋患いでたいへんだったのでお手伝いをしていたのですっ』

『井ノ原さんは、ちゃーんと女の子に興味津々ですっ』

って、フォローそこなの!?

『さっきまで、お勉強も手がつかなかったくらいなんだからー』

『ちょ、こ、このバカ! んなことバラすなよっ!!』

『は、恥ずかしいじゃねぇか…』

真人は照れまくっている!!

『こんなんだから、付き合ってやることにしたんだ』

ちなみに鈴は「デートの練習」という言葉を付け忘れている。

確かに目的も説明も何一つ間違っていない。

けど、何か肝心なところが抜けている気がする……。

『……う』

『そこまであからさまに言われても、こっちが恥ずかしくなりますわね…』

『まあ相手がこの棗鈴じゃ、筋肉もさぞかし苦労したでしょうね』

『さすが笹瀬川、わかってるじゃねぇか……』

『最初は聞く耳すら持たなかったからな』

『あれは、おまえの誘い方が悪い!』

『まあ~まあ~まあ~、いきなり痴話ゲンカですの? 仲が御良ろしいことで』

絶対いま笹瀬川さんの顔はニヤついている。

『よくない!』『よくねぇよ!』

……シンクロしてるし……。

『これは妬けちゃいますわね……ほほっ……おーーーっほっほっほ!!!』

『ささ子、頭でもうったのか?』

『さっきからきしょいぞ』

『オレが知ってるこいつは、前からこんな感じだぞ』

今さらながら、あの場にいる誰一人今の事態を把握していないんだと思う……。

『では、わたくしはこれにて失礼させていただきま……おーーーっほっほっほっほ!!!』

『敵ながら、応援だけはして差し上げますわよ……おーーーっほっほっほっほ!!!』

高笑いが少しずつ離れていく。

『さーちゃん……すごい笑いながら行っちゃった……』

『おーーーほっほっほっほっほっ、おーーー……げほっげほっ!!』

『けほっけほっ……おーーーほっほっほっほっほ!!!』

『わふー……笹瀬川さんの姿が見えなくなっても笑い声だけは聞えるのです……』

『あの馬鹿、一体何しにきたんだ?』



もしかしたら、鈴たちにとっては知らぬが仏なのかもしれない……。


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