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花ざかりの理樹たちへ その28 ~学校・午前中編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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『じゃあ、仕上げに……』

『真人君のヘアメイクをしましょー』

突然そんなことを言い出す小毬さん。

『なにぃ!? デートに誘うだけでそこまでしなきゃいけないのかっ!?』

『当たり前だよー』

『女の子は、そういうところをちぇーっくしてるんだよー』

小毬さん、真人の相手が僕だということを覚えてるのかなあ……。

『わふー…言われてみれば井ノ原さんの髪はボサボサです』

『不潔だな』

『うおおぉぉーっ!? 今まで全く気にしてなかったぁぁーっ!』

そういえば、真人はバンダナの位置は気にしても髪の毛は気にしてなかったっけ。

『では、私がやってみましょう』

『頼むぜクー公』

『ここはすたんだーどに七三分けなどいかがでしょう?』

『――しゃっしゃっ、ぴとぴと』

『…………』

『わ、わふーっ!? 筋骨隆々のおぼっちゃんが出来上がってしまいましたーっ!?』

『きしょいぞ真人』

『そんなんで行けっかぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!』



「ぷぷぷーっ!」

葉留佳さんは想像しただけで吹いちゃってるし。

……けど、ちょっと見てみたい気がする。



『ここは外ハネにしてみよう』

『それはナウでやんぐなアイディアなのですーっ』

『――きゅっきゅっ、しゅっしゅっしゅ』

『…………』

『はねすぎた』

『わ、わふー……ここにサリーちゃんのパパがいらっしゃいます……』

『よし、クドのマントもつけてみよう』

『――がさごそ』

『………………』

『サイズが小さすぎてヨダレかけにしか見えませんっ!?』

『きしょいぞ真人』

『オレで遊ぶなぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁーーーっ!』

ちなみに真人の声はちょっと涙声だ……。



『クーちゃん、りんちゃん、のんのんのん』

『なんだこまりちゃん、なにかいいアイディアがあるのか?』

『実はね、真人君に似合いそうなヘアースタイルがあるんだよ』

『じゃじゃじゃーーーんっ!』

小毬さんが何かを取り出したようだ。

『わふー…マンガ本、ですか?』

『ああ、漫画だな』

『うんっ、この前恭介さんが貸してくれたんだ』

『マンガとへあーすたいる、なんの関係があるんだ?』

『りんちゃん、よくぞ聞いてくれましたー』

すごく自信あり気な小毬さんの声。

『マンガに出てくる主人公ってとってもカッコいいよね』

『だからマンガの主人公と同じヘアースタイルにすれば、それはとってもくーるがい』

なるほど、小毬さんは真人をマンガの主人公に似せたいようだ。

『わふーっ! さすがは小毬さんなのですっ』

『こまりちゃんはやっぱり天才だなっ』

『漫画の主人公かよ……想像しただけでカッコいいぜ!』

みんな、かなりノリ気だ!



「……俗に言うコスチュームプレイ、その簡易版ですね」

「とてもいい発想だと思います」

「しかし主人公を選ぶあたりが素人、と言ったところでしょうか」

西園さんの瞳がランランと輝いている!

しかも、いつもと比べ物にならないほど饒舌(じょうぜつ)だ!

「…………」

みんなの視線を余所に、西園さんは嬉しそうに語り続けている。

「コスの出来は髪型で左右されると言って過言ではありません」

「神北さんはウィッグを持ってきているのでしょうか…」

放っておくと止まりそうにない。

「ひゃぁ……こんなにしゃべるみおちん見たの初めてかも」

「ふむ、西園女史の趣味がわかってきたな」

「恭介…おまえと気が合うんじゃないのか?」

「さすがの俺もまだそっちに手を出したことはない」

「えーっと、西園さんはやっぱり……」

「……はっ」

西園さんは恥ずかしそうにみんなを見回しているっ!

「……と、神北さんの言葉から読み取れました」

かなり苦しかった!!



『こまりちゃん、あたしにもちょっとそのマンガ見せてくれ』

『はい~』

『――ぺら、ぺら』

『うわっ、こわっ! 真人みたいなのがいっぱい出てきてるぞっ!?』

『マジか?』

『うおっ!? 全員背後霊を背負ってんぞ!?』

『き、奇妙なのですーっ!?』

『これはやはり…ご先祖様の霊でしょうかっ?』

『ああ…だろうな。こいつらお盆に里帰りしなかったに違いねえ』

『わふーっ!? バチ当たりな連中なのですーっ!!』

『で、主人公ってのは…コイツか!?』

『やべぇ…めちゃくちゃカッコイイじゃねぇかよ……』

『真人君もこれくらいカッコよくなれるよ~』

『マジかっ!?』



「ねえ恭介、小毬さんに何のマンガ本を貸したの?」

「ああ、理樹は読んだことがないヤツだ」

「小毬は熱いハートを持っているからな」

「そんな熱いハートの小毬にぴったりなマンガだ」

きっと小毬さんにぴったり、というくらいだからメルヘンチックなマンガだと思う。

真人みたいなのがいっぱい出てくるメルヘン…っていうのも想像つかないけど。

「……私は大よそ分かりましたが、何部かまでは分かりません」

「さすが西園だな」

「……人気どころのシリーズですから、チェックしています」

「なるほどな…ちなみに小毬に貸したのは5部だ」

「……ぽ」

「5部なら主人公を選んだことに頷けます」

「レイヤー内では、シリーズ中では5部の主人公がいちばん人気ですから」

「5部? レイヤーってのはほとんど女子だろ? 6部は……」

……恭介と西園さんは無線そっちのけで、マンガ話に花が咲いてるし。



――そうこうしているうちに。

『できたよ~』

小毬さんの満足げな声が響いた。

かなりスピーディだ!

『もうそっちを見てもいいのか?』

『どきどき…』

『りんちゃんにクーちゃん、くーるな真人君を見ちゃってください~』

『どーぞー』

『――ざっ』

振り返ったであろう音がした。

『…………』

『…………』

二人とも一言も発しない。

『どっ、どうなんだよ?』

真人の言葉で堰(せき)を切ったかのように、

『『おおーーーーーーーっ!?』』

二人ともかなり驚いている!

『わふーーーっ!! 井ノ原さんがじょるのさんなのですーっ!!』
※元ネタが分からない人のために じょるのさん(m画)



『くちゃくちゃ、じょるのさんだっ!』

『まるでマンガから飛び出してきたかのようなのですっ』

『正直おどろいた』

『なにぃーーーっ!? こ、小毬、鏡をかしてくれ』

『はいっ』

『うおおおおおおぉぉぉーーーっ!? 鏡の前にじょるのさんがいる!?』

『これで真人君はモテモテ間違いなしだよー』

『小毬…ありがとよ!』

――そういえば僕の髪型をやってくれたのも小毬さんだ。

小毬さんは、一見するとこういうことが苦手そうだけど…案外得意なのかもしれない。

『真人君、真人君、決めぽーずっ』

『こ、こうか?』

『――ビシィィィィィィッ!!』

『わふーーーっ!! もはや井ノ原さんがマンガに出ても問題ないくらいなのですっ!』

『ふええぇ、カメラ持ってくればよかったよ…』

『…真人』

『どうした鈴?』

『かっこいいぞ』

『へへっ、ありがとよ!』

『早くあの子に会いに行こうぜ!!』

真人がすごい意気込んでいる!

『よーうしっ、じゃあ…「屋上」にれっつごー!』

『『『おーーーっ!!』』』

――どうやらデート作戦は屋上で行うようだ。



「よし理樹、屋上でスタンバイだ」

「うん」

「……私も井ノ原さんがどうなっているか見たいです」

趣味魂というのかなんというのか…。

やっぱり西園さんはそういうのが好きなのだろう。

「ふむ、我々も少々間を置いてから見に行くとするか」

「真人くんをおーえんしてあげなきゃデスネ」

……来ヶ谷さんも葉留佳さんも、真人をからかう気まんまんだ。

「じゃあ、行ってくるよっ」

僕は意気込み、スカートをひらりとさせ立ち上がった。

髪を結んでいるリボンがフワリとゆれる。

「…………」

「…………」

「……なあ…真人にジェラシーを感じないか?」

と、熱い視線の謙吾。

「作戦を指示しておいて何だが…俺もよく似た気分だ」

恭介まで熱い目でこっちを見てるし!

「も、もう、二人とも何考えてるのさっ!」

「頬を染めている理樹君は、さらに可愛いな……」

「だな…」

「わー…理樹ちゃんをお嫁さんにしちゃいたいくらいですよ」

「……あどけない仕草と、打てば響くようなレスポンス…もはや犯罪の領域です……ぽ」

「う、うわわわーっ!?」

妙な空気が出来上がりつつある教室から脱出して、急いで屋上へと向かった。









――いつものように窓から屋上に出る。

心地よい青空が空いっぱいに広がっている。

空気が美味しい。

さて、後は真人の到着を待つだけだ。



――程なくして。

「……うんしょっ、おいしょっ」

小毬さんが窓から入ってきた。

窓から着地すると、こちらを向いてにっこりとOKのサインを出している。

僕もOKサインを出すと、小毬さんは手で何か合図している…。

……後ろを向いてて、ってことかな?

僕はクルリと背を向けた。

「わふーっ!? ちょっと高いのですっ」

「クーちゃんだいじょうぶ? はい、手をどうぞ」

「さんくすなのですー」

スタッと、クドが入ってきた音がする。

「……」

ちりん、と音がして着地音。

「鈴さん、華麗な身のこなしなのですーっ」

「そ、それほどでもない」

ちょっと照れたような鈴の声。

「おまえいつも窓から入ってんのかよ?」

「うん、そうだよー」

「入りづれぇな」

ノソノソと真人が入ってきた音がする。

「――時は満ちたぜ!」

朝の真人からは考えられないほどの自信だ!

「今の井ノ原さんならだいじょうぶなのですっ」

「がんばれ真人」

「真人君、ふぁいとー」

「ありがとよ」

…………。

いつもの真人に戻ってくれて良かった…。



――スタスタスタ

自信に満ちた足音が聞えてくる。



真人が僕の近くまで寄ってきたようだ。

「真人君、決めぽーずっ」

「おうよ!!」



――ズビシィィィィィィッ!!



後ろで、真人が何かしている感じが伝わってくる。

「わふーっ!? どこからどう見てもじょるのさんとしか言い様がないのですっ」

「こまりちゃんのセンスのおかげだな」

「えへへーっ」

みんなの反応から察するに、小毬さんのヘアメイクでマンガ本のキャラとそっくりらしい!

そのマンガは知らないけど、かなり期待できそうだ!

「もう振り向いていいよー」

「井ノ原さんの雄姿を見てくださいっ」

「きっと驚く」

みんなすごい自信だ!



――すすっ!

期待を胸に秘め、真人のほうに振り返った!



「いようっ!!」

満面の笑顔を浮かべる真人がそこにいた!

が、しかし……。



……………………………………!!?



言葉が出てこないっ!

なぜかはわからない、なぜかはわからないけど!!

ま、ま、真人の頭の上にっ!!!



チョココロネが3つ、ちょこんと添えられているっ!!

いつも巻いている赤のバンダナをアゴの下から通して、頭の上でチョココロネ3つが固定されてるっ!?



えええええぇぇぇぇーーーっ!?

な、な、なんでっ!?



さらに、ワケがわからないことに!

そんな頭にチョココロネを巻いた真人は、自信まんまんに腕を組んで立っている。

簡単に言ってしまえば、その通りなのだが…いろいろと…かなりおかしい!!

なんと表現すればいいか……昔に流行ったマトリックスの弾丸を避ける際のポーズに近い。

真横から見たなら、横に目いっぱい広げた『S』の字になっていると思う。

一体何をしたいのかわからないけど、そんな上体を思いっきり反らせた状態で腕を組んでいる……。

はっきり言って、筋力にものを言わせて無理やり立っているようだ!!



――がたがたがたがたがた~、プルプル~

さすがに真人でもきついポーズらしく、足は生まれたての子鹿のようだ!



再度、真人の顔に目を向ける。

真人は、ポーズがつらいのか…顔を真っ赤にして、冷や汗を流しながらも……満面の笑みだ!!



「ここで決め台詞なのですっ、井ノ原さん!」

「フッ……」

引きつった笑顔の真人が口を開き――そして!

「オレは井ノ原=真人……略して、ジョジョだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

「って、ええええええええぇぇぇぇーーーーっ!!?」

もはや何をどんな感じでどういう風にツッコめばいいのか、全くもってわからないっ!!

「こんなオレで良かったら一緒にデートをしてくださいぃぃぃーーーーっ!!」



――今

――筋肉隆々のルームメイトが、

――チョココロネを頭に巻きつけながら、

――何がしたいのか全くわからないポーズで、

――意味不明の言葉を口走り、

――そして、僕にデートを迫ってきているーーーっ!!?



何かにすがるように、僕は小毬さんたちのほうを向いた。

「井ノ原さん、完璧なのですーっ!」

わふーっ、と飛び上がるクド。

「言うことなしだよー」

満面の笑みの小毬さん。

「……」

ちりん、と満足げに頷く鈴。

って、これで良いんだっ!?



「ど、どうなんだ…?」

不安そうに真人がこちらを伺ってくる。

どど、どうしよう……。

小毬さんたちからも、「OKしてあげて」的な目線が投げかけられている……。

う……。

そんな目で見られてもっ。

とりあえず、真人のがんばりはヒシヒシと伝わってくる。

格好はツッコミどころ満載だけど…小毬さんやクド、鈴が真人のためにやってあげたことだ。



「…………」

「お…オッケーだよっ」

僕は意を決して、真人の誘いにOKした。

「うぉ……!?」

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!」



――がしっ!

「ひゃぁっ!?」

「最高にうれしいぜっ!」

真人が抱きついてきた!

「真人君よかったね~」

「お二人が素敵なカップルに見えますっ」

「真人は馬鹿ながらにがんばった」

「ありがとよ」

……みんなからのお祝いの言葉に、真人はすごくうれしそうだ。



――ぎゅうーっ

「ま、真人…くるしいからっ…」

あまりの締め付けに、僕は真人の胸をぽこぽこと叩きながら応戦した。

「わっ、わりぃわりぃ」

顔を赤くして離れる真人。

「少しばかりカッコつけすぎちまったようだな…」

「いきなり下の名前で呼ばれちまうなんて…オレも罪作りな男だぜ……」

……すでに真人は有頂天に達していた。



「――どうだ理樹君、調子のほうは……」

「くるがや!」

真人とのやりとりが終わってすぐ、来ヶ谷さんが窓から入ってきた。

「…………」

そしてこちらを見て、固まった。

「理樹ちゃんを筋肉だるまから守れーっ」

「……」

葉留佳さんも屋上に来るなり、固まった。

「……井ノ原さんがどれほどジョルノさんっぽいのか期待――」

「…………」

西園さんはセリフの途中で、固まった。

「真人、理樹に変なこと……」

「…………」

謙吾さえも入ってくるなり、固まった。

「愛しのガールとはうまくいったのかい?」

恭介も窓から飛び出してくるなり――

「……」

「はぁー!? なんだよ、おまえ、それ、はぁー!?」

真人の頭を指差し、さっそく2わけわからんポイントを投票した!

「はぁー!? うわぁぁぁあ、訳がわからんぞ、はぁー!?」

続いて謙吾の「うわぁぁぁあ」含め、計5わけわからんポイント獲得だ。

「はわわわわ!? ついに筋肉が真人くんの脳みそにまで到達したーっ!?」

よくわからないの代名詞であろう葉留佳さんですら、目を白黒させている!

「ふむ……飢えた子ども達に、食材で構成された頭を分け与えることを生きがいとしているヒーローのマネ…か?」

来ヶ谷さんですら、かなり引いている!

「……それでしたら納得がいきます。恐らくクラブの愛さん(24)とユウキさん(21)だけが友達ですね」

西園さんの考えは、やっぱりよくわからなかった!

「よくわからんが、ありがとよ」

輝くような笑顔で親指を立てる真人が…ひどく不憫に思えた……。

「わふーっ、井ノ原さんよかったですねー」

「みんな、目を丸くしているぞ」

僕らの目を丸くしているのと、鈴の思っているのは意味が違うと思う。

「この髪型、私がやってあげたんだよー」

えへへへー、といった顔の小毬さん。



――ぺとっ



そこへ西園さんが近づき、頭に熱さまシートを貼った。

「……スッキリ、しますよ」

ぐっ、と親指を立てる。

「ふええ!?」

もちろん小毬さんはよくわかっていない。

「これはやっぱり、天然素材だけだったのが良くなかったんじゃないですかネ?」

「ああ…さすがの俺も、ここまで収集がつかなくなるとは思ってもみなかったぜ……」

……ツッコミの不在という特異な環境が――

頭にパンを乗せた真人を生み出してしまったようだ……。





「――さっき入ってくるとき…理樹がどうのと言ってたが……理樹はどうしたんだ?」

みんな、「あ…」と顔を見合わせる。

「ま、まさか!?」

ようやく気付いたかと思ったら――

「今の様子を、理樹に覗き見られていたのかっ!?」

やっぱり気付いていなかった!

「おおーいっ! 理樹出てきてくれぇーっ!」

「そんなに妬くなって! 安心しろって、部屋に戻ればいつだって二人きりだぜ」

……妬いてないし、二人っきりを強調されてもとても困る。

「おおおーい、理樹やーい!」

真人は僕が屋上に隠れていると思って、探し回っている。

…今デートに誘った相手が僕だと、全く気付く気配すらない!

仕方がない……。



「僕が……理樹だよ」

真人を真っ直ぐに見つめ、正体を明かした。



「…………」

真人は僕を見て、目をパチクリさせている。

「…………!」

真人がポンと僕の肩に手を置く。

「……君が理樹のフリしてオレの気を引きたい気持ちはわかるぜ! まあ、そんなに妬くなって!」

って、バラしたのに気付いてないし!?

「理樹はオレのルームメイトで、親友だ……めちゃくちゃ可愛いけどな!」

そこで頬を赤らめられてもやっぱり困るっ!!

「だから、僕が理樹なのっ!」

「その一生懸命な君の顔も、めちゃくちゃ可愛いぜ」

頭をぽんぽんと叩かれる。

く、悔しいっ!

気付いてくれないのが、何だかとても悔しいっ!

――こうなったら!

「真人ー、筋肉、筋肉~!」

僕は真人といつもやっている筋肉ダンスを繰り出した!

「あ…ん? 筋肉……筋肉……」

真人は困惑気味に、だが少しづつ踊りだす。

「やっほー♪ 真人ほらっ! 筋肉わっしょいっ♪ 筋肉わっしょいっ♪」

手も足も使い、体全体で謝筋肉ダンスを踊ってみた!

「筋肉…筋肉…おおおっ!? 筋肉わっしょい!! 筋肉わっしょい!!」

「わふーっ! 血湧き肉躍るダンスですっ」

「「うっ……」」

「姉御に恭介さんっ!?」

「いつもは馬鹿らしい光景だが……今の理樹君がやるだけで、こうも破壊力があるとは…!」

「理樹は何をやっても可愛すぎるだろ……おにーさんもやべぇよ、いろいろと!」

「……踊る直枝さんのスカートからちらちらと覗く内モモが堪りません、そう思いませんか宮沢さん」

――ブフーーーッ!!

「うわわ! 謙吾くんにティッシュティッシュ!?」

周りにまで影響が出始めた!

「はぁ~! 筋肉神様よ、真人に筋肉をーーー!」

「う、うわああああああああっ!!」

「お、おまえ……」

「本当に理樹なのかっ!?」

「うんっ、僕だよ! 理樹だよっ!」

「うおおぉぉぉーーーっ!? マジかっ!?」

真人は目を真ん丸にして、僕をじろじろと見ている。

「か、可愛いじゃねぇかよ……」

面と向かって、改めてそう言われても困るんだけど。

「……ちょっと待てよ……」

真人が何か考え出した。

「オレたちはすでに同棲中ってことなんじゃねぇのか!?」

「なんでそうなるのさっ!?」

「いや、だって一緒に生活してるだろ?」

「そうだけど!」

「同棲と言ったら…裸エプロンだよな、理樹!」

「イヤだよっ!」

全く何考えてるんだか!

「「うっ……」」

「あ、姉御に恭介さんっ!?」

「……理樹君、おねーさんの嫁になってくれ。そして裸エプロンだ」

「……理樹、俺と結婚しよう。そして裸エプロンだ!」

「って、二人とも何想像してんのさっ!?」

二人とも本能の赴くままに発言していた!

「なんだよ、おまえら。裸エプロンは理樹じゃなくてオレに決まってるだろ」

「な、理樹! おまえもオレの後背筋を見たいよなっ」

「同意を求めないでよっ!」

ちなみに恭介も来ヶ谷さんも真っ青になっていた!

「き、きしょい……」

小毬さんですら引いていた!



「しかし何だ、本当に女みたいだな……」

真人は僕の足先から頭のてっぺんまでまじまじと見ている。

「胸まであるじゃねぇか」

「どっ、どこ見てるのさ!」

パッドとはいえ、意識的に見られると恥ずかしい……。

も、もしかして…気持ちがすっかり女の子に感化されちゃってるのかもしれない。

「やっぱりあれか? オレみたいにパン使ってるのか? あんぱんとかメロンパンとかよ」

「ち――」

違うよ、と言おうとした瞬間。



――ふにふに、ふにふに!



…………!!

真人が、僕の胸をむんずと掴んでいるっ!?

「うおっ!? これパンじゃねぇぞ!?」



――ふにふに、ふにふに!



「何入ってんだ?」

「……………………い」

「どうした理樹?」

「いやあああああああああああああぁぁぁぁぁーーーっ!!」

僕は思わず叫んで――そして



――バグゥッ!!



「ぐはあああぁぁぁっ!!」

真人が見事に吹っ飛んだ!

「り、理樹の……幻の右だ!」

……驚き過ぎて、真人を殴ってしまった!

「今のは真人が最悪だな」

鈴がうんうんと頷いている。

「リキ、顔がまっかっかです……元気出してください」

クドに頭を撫でられた!

「あ、あんなことされたら、女の子なら誰だって叫んじゃうよね……」

ため息混じりの小毬さん。

って、今の叫びって……。

来ヶ谷さんにポンと肩を叩かれた。

「理樹君、今の叫び声は非常に良かったぞ」

来ヶ谷さんは頬を朱に染めている……。

「いやあああぁぁーー、って理樹ちゃん、せくしーでしたヨっ!」

葉留佳さんははしゃいでいる!

「……今のはまさしく、女性のそれでした……ぽ」

西園さんは僕のほうをチラチラと見ながら頬を上気させている!

「うわわわわ……」

…………。

も、もう男として社会復帰できないかも……。



「真人、大丈夫か?」

恭介と謙吾の男性群は、倒れている真人の元に駆け寄った。

「いいパンチだったぜ……」

「そんなことよりも、だ」

謙吾と恭介が真人に詰め寄る。

「な、なんだよ」

「柔らかかったのか、理樹の胸は!?」

「どうだったんだ理樹の胸の感触はっ!?」

馬鹿二人がそこにいた!

「……めちゃくちゃ柔らかく、そしてでかかった」

真人が思い出しながら、手をワキワキとしている!

う……なんか鳥肌がっ。

「くそぅ!! 一人だけおいしい思いをするとはっ!!」

「こりゃ次のミッションは『理樹のチチを揉みしだけ!』で決定だな」

「「おぅ!!」」

「なぁ! みんなも、そ…れ……で……?」

いつの間にか、恭介、謙吾、真人の3名が女性陣に囲まれていた!

「ふむ、理樹君に害を及ぼす不埒な輩を処刑しなければならない、そう思わないか?」

「さすが姉御ー! ちょうど私もそう思ったところですヨっ」

「悪は滅びろ」

「……相手の承諾なしでそのようなことをするのは、美しくありません」

「全くぷんぷんなのですっ」

「うーん、そういうことはダメだからねー」

「では女性陣の意見が一致したところで――」

「……果てろ」



「「「ひぎゃああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁーーー!!!」」」



青く澄んだ大空に、欲望に満ちた男達の絶叫が、どこまでもどこまでも響いていた……。

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