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花ざかりの理樹たちへ その29 ~学校・午後編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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――午前中が終了し、昼休みとなった。



「みんなでお昼なんて、初めてだねー」

とても嬉しそうな小毬さん。

「そういやそうだったな」

意外そうな恭介。

「いつもはあたしときょーすけ、あと謙吾に真人だからな」

そういえば昼は、学食組みとお弁当組みで分かれていた。

「ふむ、各自好き好きの場所で過ごしているからな」

「……お弁当を持込でも良かったのでしょうか?」

「学食はみんなで楽しく食事をするところだ。問題なかろう」

「ああ、そうだな。大所帯で昼食もいいものだぞ」

来ヶ谷さんと西園さん、謙吾も楽しそうだ。

「全員分の席、確保かんりょーしましたぜっ」

「任務ご苦労なのですっ、三枝さん」

「ってなんでミニ子がエラそうにしてるんだーっ」

「わ、わふーっ!?」

葉留佳さんは、席を確保して戻って来るなりクドを振り回してるし。

「……そんな喧騒の中、オレの心はもう秋空だぜ……」

「元気をだせ真人」

元気がない真人の肩を叩く謙吾。

屋上で来ヶ谷さんに断罪されたときに、チケットが風でどこかに飛ばされてしまったのだ。

「悪かったと思ってるから、私がこうして君に昼食をおごってやることにしたんだろ」

これは来ヶ谷さんにしては珍しいことだ。

「じゃ、ありえないぐらい注文してやるぜ…」

「真人…そんなに来ヶ谷さんを攻めないでやってよ」

「チケットなんてなくても、いつだって二人で出かけれるじゃない。でしょ?」

「り、理樹……」

「ああ…可愛いなあ、君って子は」

――ガシッ

「く、苦しいから……」

真人と来ヶ谷さんに抱きつかれ、僕はサンドイッチ状態になっていた。





食券を購入しカウンターに並ぶ。

今日の僕の昼ご飯はハンバーグ定食だ。

「はいよ」

手際よく食事が出される。

…あれ? ハンバーグじゃない?

「あ、おばちゃん…僕、そばなんて頼んでないよ」

僕のお盆にはそばが置かれていた。

「あちらのお客さんからだよ」

おばちゃんが指差したほうを見る。

そこには、こちらを見つめて不敵に笑っている3年生がいた。

「お、おまえは……!」

「恭介、知ってるの?」

「ああ…俺と同じクラスの佐藤だ。またの名を…ニヒル佐藤!」

「フッ、未だその名で呼ばれてるたぁな」

ニヒル佐藤さんは前髪をかき上げて、ニヒルな笑顔を見せている。

「え、けど……」

僕はそんな大食漢じゃない。

定食にそばまでは、さすがに食べれない。

「学食に咲き誇る一輪の華…そんな可憐な華に色を添えたい、そう思っちまっただけさ…あばよ」

バーボンなら様になるんだろうけど、そばって……。

ニヒル佐藤さんは向こう側で「ママ、いつもの頼む」「あたしゃアンタなんかを産んだ覚えはないよ!」とやっている。

「くれるってのなら、貰っといていいんじゃないか?」

「う、うん…全部は食べれないから、真人にもあげるね」

「やりぃ!」

そんなやり取りをしていると、またお盆に様々な食べ物が乗せられる。

「ええぇーっ!?」

「あちらのお客さんからだよ」

「おまえらは……イケメン工藤とスマイル渡辺、それにセクシャル松代まで!」

ビッビッビッと名前を呼ばれた順に親指を立てる三人組。

「こんな美少女を前にして、何もしないとは男が廃る!!」

「これは言わば、男としての礼儀……だろ、みんな!!」

「「あたぼーよ!!」」

すでにお盆が埋まってしまい、真人に持ってもらっている……。

この学校って……こんなのばっかりだよなあ。

「男としての礼儀か…ならば、やらない訳にもいくまい」

「って、謙吾まで感化されないでよっ!」

「理樹がいつも来てくれれば、あたしたちは食券買わなくてもよさそうだな」

「えええええーっ!?」

鈴が悪だくみをしていた!





「――よし、みんなが揃ったところで…」

「理樹に乾杯だな!」

グラスを持って立ち上がる恭介。

「いやいやいや……」

「理樹以外の何に乾杯すればいいというのだ!?」

謙吾はすでにお祭り男爵と化していた!

「ああ、今日の理樹には乾杯だぜ……完敗だけにな!!」

絶対真人は、自分ではうまい事言ったと思ってる。

「わふーっ! 井ノ原さんのはいせんす・じょーく炸裂なのですっ!」

ここにもうまい事言ったと思ってる子がいた!

「おまえら、わくわくする心の準備は出来てるかっ!?」

「「「「おーーーっ!」」」」

みんな普通にわくわくしちゃっている!!

「理樹に――」

「かんぱーーーいっ!!」

「「「「かっんぱーーーいっ!!!」」」」

それぞれの席からグラス(中身は水かお茶だ)がぶつかる音が聞える。

「俺のわくわくは、こんなもんじゃ止められないぜっ!!」

恭介は全員のコップに乾杯しようと走り回っている。

「わっしょい! わっしょい!!」

謙吾は踊りだした! ハタ迷惑だ!

「乾杯だ、理樹!」

なぜか真人はカツの乗ったお皿を掲げている!

「やばい、馬鹿だらけだっ」

鈴は隣の大騒ぎに迷惑している!

「血湧き肉踊るお祭りですっ!」

わふーっ、と飛び上がるクド!

「往年のロック・フェスティバルを見ているみたいだね~」

小毬さんもはしゃいでいる!

「はっはっは、無礼講無礼講」

隣に腰掛けた来ヶ谷さんは、さり気なく僕を抱き寄せようとしてるし!

「あははははははは理樹ちゃんはっぴーばーすでーっ!」

葉留佳さんは根本的に間違っている!

「……いーやっほー…けほっけほっ」

西園さんは、はしゃごうとして咽(むせ)た!

一気に僕たちの席は別空間のような喧騒に包まれた!!



みんなの前には、各自のお弁当や学食の定食、加えて僕が貰った食べ物等が広げられている。

僕たちの席は今やパーティー会場だ。

「るるらら~♪」

「小毬さんのお弁当箱からお菓子が出てきましたっ!?」

「のんのんのん、クーちゃん」

「あんぱんは列記としたご飯なのです」

あんぱんをおいしそうに食べている小毬さん。

…小毬さんのお菓子とご飯の境界線はどこなのだろう?

「ちょっと待て…オレは大変なことに今気づいた…」

真人のことだ、どうせ大したことじゃないと思う。

「ふえ?」

「アンパンマンって正義の味方がいるだろ」

「あんぱんを貧困の子に分け与える、足長おじさん的ひーろーなのですっ」

「片仮名でアンマンパンとアンパンマンと書いてみろ…一見すると区別がつかねぇ……」

「片や正義のヒーロー、片やパンの中にあんまんが詰まった奇怪な食い物だぞ!」

やっぱり大したことなかった!

「ほわっ!? 同じに見えるっ!」

「わ、わふーっ!? こ、これは…歴史に井ノ原の名を刻むほどの偉大なる発見なのですっ!」

「ありがとよ」

デート作戦の一件以来、このメンバーは気が合っている気がする。

「――どれ、理樹。そばは伸びてしまう前に俺がいただこう」

「ありがとう謙吾」

「しかしこれは理樹が貰ったものだ…代わりと言っては何だが、これをやろう」

「それは…のりたまっ」

僕の変わりに鈴が反応した!

「安心しろ、鈴のぶんもある」

謙吾はポケットから、もう一袋のりたまを取り出した。

「謙吾はいいやつだなっ」

鈴はとても嬉しそうにご飯にのりたまをサラサラしている。

「ふんふんふ~ん♪」

そして謙吾まで鼻歌交じりに、そばにのりたまをサラサラしている!!

謙吾は……そっとしておいてあげよう……。

「理樹…バナナとカツを交換しようぜ!」

「いや、別にバナナはいらないから貰っていってよ」

「お、ラッキー! 理樹はホントお人良しだなっ」

「それ全然褒めてないからね…」

真人はご飯とカツとバナナを同時に食べてるし。

「あのっ」

クドが袋から何かを取り出した。

「今日は、肉じゃがに挑戦してみたのですっ」

「みなさん、よろしければ摘まんでください」

「ほう…この肉じゃがは能美が作ったのか」

謙吾が箸をのばす。

「――これは、旨い」

日本食にはちょっとうるさい謙吾が唸った!

僕も一口いただいた。

「うんっ、家庭的な味で美味しいよ」

「わふーっ! あいあむべりーべりーはっぴーなのですっ!」

クドは食卓から飛び上がりそうなほどの喜び具合だ。

「――ふむ、西園女史のサンドイッチも魅力的だな」

来ヶ谷さんはクドの肉じゃがを食べながらも、西園さんのサンドイッチを物欲しそうに見ている。

「……良ければお一つどうぞ」

「すまないな。お礼にこのファイアーキムチをやろう」

「……お気持ちだけ頂いておきます」

「ふえぇ…みおちゃんのサンドイッチおいしそう」

小毬さんもキラキラとした目で、西園さんのサンドイッチを捉えている。

「……神北さんもお一ついかがですか?」

「ありがとーっ、では~こちらのクリームパンと取りかえっこですー」

「ありがとうございます」

西園さんは、小毬さんからクリームパンを受け取り、おいしそうに頬張っている。

「なぜだ!? なぜキムチは受け取らず、クリームパンは受け取るのだ!?」

来ヶ谷さんは、どこか根本的なところがズレているのだと思う。

「サンドイッチサンドイッチー! はるちんもサンドイッチを要求するっ」

たぶん葉留佳さんは…みんなを見て、食べたくなってしまったに違いない。

「ダメです」

あっさり却下。

「うぅ……みおちんがそう出るなら、こっちにも策はあるのだっ」

また葉留佳さんが悪だくみしてるっぽいし。

「理樹ちゃんのハンバーグはいただいたーっ!」



――シャクッ、シュバシッ!



葉留佳さんが僕の皿の上からハンバーグを半分も掻っさらった。

相変わらず脈絡がない。

「って、それ僕のハンバーグっ!?」

「フォッフォッフォ…恨むなら、みおちんを恨むんだなっ」

時すでに遅し。

ハンバーグは葉留佳さんの口に吸い込まれていた……。

「理樹ちゃんにはこれ、はるちん特製玉子焼きを進呈贈呈っ」

お皿の上のハンバーグ半分が玉子焼きに置き換わった。

「……」

さらに西園さんが、ちょこんとサンドイッチを乗せてくれた。

「あ、ありがとう……」

サンドイッチと玉子焼きを一口づつ食べた。

「あ…美味しい」

サンドイッチはシンプルなタマゴサンドで、マヨネーズとの混ぜ具合が絶品だ!

「……ありがとうございます」

西園さんはなんだか照れくさそうだ。

「どれ、おねーさんにも玉子焼きを一口分けてくれ」

「うん」

「……うむ、甘い玉子焼きというのも乙なものだな」

「葉留佳さん、とっても美味しいよ」

「あ、ほめられたほめられた? もっとほめてほめてーっ」

葉留佳さんは、よっぽど嬉しかったのか、子どものようにはしゃいでいる。

きっと自分で作った玉子焼きを食べさせたかったのだろう。

見ていて微笑ましい。

「ほら理樹、俺のハンバーグを半分やるよ」

恭介が僕にハンバーグを差し出してきた。

「え、いいの?」

「なんだ? そんなにハンバーグが好きなのか」

「顔に出まくってるぜ」

う…そう言われると返す言葉もない……。

「なら遠慮するなって。ほら、あーん」

恭介は僕の口元に箸を持ってきている!

「って、なんでそうなるの!?」

「いいから、あーんしろって」

「は、恥かしいよっ!」

「――理樹」

「ど、どうしたの?」

恭介はどこか神妙な面持ちだ。

「確かに恥かしいという気持ちはわかる」

「俺だって恥かしいさ」

「けどな、恥かしさに負けて立ち止まったんじゃ……人は成長しない」

「そうだろ?」

「確かにそうだけど…」

「全ては、自分の殻を破ることによって始まる」

「理樹…自分に打ち勝って、そして成長した姿を俺に見せてくれ」

「恭介…」

「だから理樹、あーんだ!」

「うんっ、あーん」

――ぱくっ

ハンバーグを食べさせてもらった。

……おいしい。

横のほうでは「…うっ」「ほわっ!? みおちゃん、はなぢっ!」「わ…もうティッシュ使い切ってしまいましたヨ…」と聞えてくる。

「理樹の為とあらば、俺も一肌脱ごう!」

謙吾の目がキラリと光った!

「飽くまで、理樹のためを思っての行動だからな」

念を押す辺り、邪(よこしま)なオーラが見え隠れしている。

「そら、理樹。あーーーんっ」

謙吾は満面の笑みでカツを一切れ摘まみ、あーんを要求してきた!

「え…えっと、じゃあ……」

「あーん!!」



――バクンッ!!



…………。

真人が謙吾の箸にかぶりついていた……。

「…………」

「謙吾っち、ナイスあーん!」

真人は親指を立て、ニカッとしている。

「…………」

「勝負だああああぁぁぁーーーっ!!」

あ、キレた。

「受けてたってやるぜ!」

「待て待ておまえら、食事中だ」

恭介が仲裁に入る。

「ここは食卓らしく…あーんで勝負しろ」

「どういう勝負なんだ、それは?」

「先に相手の口に料理を入れたほうが勝ち」

「やってやろうじゃねぇか」

「フッ、負ける気がしないな」

……謙吾と真人はテーブルを挟み向かい合い、箸に料理を乗せ、相手の隙を窺っている!

二人とも真剣なのだが、傍から見ているとふざけている様にしか見えない。

「こいつら馬鹿だっ」

のりたまに夢中だった鈴も呆れている。

「りんちゃん。ほっぺにご飯粒がついてますよ~」

鈴のほっぺのご飯粒を取って食べる小毬さん。

「あ、ありがとう、こまりちゃん」

「いえいえ~」

「……直枝さん、もうひとつサンドイッチはいかがですか?」

「ありがとう西園さん」

「…………では、そ、その……あ…あ…あ~ん」

西園さんは、頬を紅色させて、伏せ目がちにこちらにサンドイッチを差し出している。

西園さんもやりたかったらしい。

けど、そこまで照れられると…こっちとしてもやりづらい!

「どうした理樹君、女性に恥をかかせるつもりか?」

「うっ……あ、あ~ん」

これは、すごく照れる。

「あ…あ~ん」

そう言いながら、サンドイッチを食べさせてくれる西園さん。

食べるときに少しだけ唇が指に触れてしまった。

「……ゃっ!」

「ごっ、ごごごごごめん……」

「……い、いえ…」

西園さんの顔が真っ赤になる。

……僕も顔が熱い。

「うわーうわーみおちんに理樹ちゃん、どっちも真っ赤っ赤ですヨっ」

「リキ、私の特製ダシ巻きコンブですっ!」

「おねーさんも理樹君に何か食べさせてあげよう」

「き、気持ちだけいただいておくよ…」

これ以上続けられると、僕の精神が持ちそうにないっ!



――ズボーーーッ!!



横を見ると……。

謙吾と真人がクロスカウンター気味に、双方の口に箸を突っ込んでいた……。


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