いいね!

お気に入り

文字サイズ

戻る
花ざかりの理樹たちへ その54 ~学校・午後編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

閲覧数:2,932
いいね:0
お気に入り:0

前回花ざかりの理樹たちへリスト次回



「――女装?」

「うん」

僕は、今朝恭介が王様ゲームを始めたこと、僕が敗者となって女装させられたことを簡単に説明した。

「そうだったんだ…」

「さっきから女装していることを忘れて大変な目にあってるけどね……」

「……直枝くん」

「なに?」

「あ、あの、そ、その……」

また目をそらしてモジモジとしている。

「か……か、か……」

「か?」

「可愛い…よ」

そこでカーッと赤くなる杉並さん。

「……あはは……ありがと」

なんとも嬉しくない褒め言葉だった!

「…………」

「…おっきい…」

「だから、胸もパッドだからっ!」

本当にわかってるのか心配になってきた…。





「ところで――僕に用って?」

「え……?」

「あ、そ、それは……」

またオドオドとしたけど――

「……私だって頑張れば……」

うつむき加減の杉並さんから、そんなつぶやきが聞えた気がする。

ゴクリと生唾を飲み込んだ後。

杉並さんが意を決したように顔を上げた。

真剣な眼差しが僕に向けられる。



「私……」

「いつも直枝くんたちを遠くから見てました…」

「みんな、とても楽しそうで…」

「直枝くんはそんなみんなの中心で、いつもとっても輝いてて…」

「それで…わ、私…」

「そ、それで……」

口元に軽く握った手を当てて、オドオドとし始めた。

「だ、だから…………」

「………………」

朱に染まった顔を下に向ける。

「………………」

「や……っ」

「やっぱり…無理っ」

「……え?」

「やっぱり無理……っ」

どうしたんだろう?

「ご、ごめんなさいっ! 今日のことは……今日のことは…忘れてくださいっ!」



――ダッ!



突然、そんなことをまくし立てて言うと、杉並さんは一目散にドアに向かって駆け出した!

「あ、ちょっと、杉並さんっ」

僕の制止も聞かず、そのままドアを開けて飛び出そうとしたが…。



――ドッスン!



「キャッ!?」

「おっと」

杉並さんが誰かとぶつかって、抱きかかえられていた。

「いくら人気のない場所でも、突然飛び出すのは怪我の元となるぞ」

「く……来ヶ谷さん!?」

来ヶ谷さんが杉並さんをしっかりとキャッチしていた。

「は、放してくださいっ!!」

来ヶ谷さんを振り切ろうともがく杉並さん。

「放してもいいが……」

「いいのか? このまま行ってしまっても」

「――!?」

動きが止まった。

「――悪いが、先ほどから話が聞こえてしまってな」

「!!」

杉並さんの顔が一気に赤くなる。

「ちょっといいか」

来ヶ谷さんが杉並さんの耳元に口を近づける。

「え、い、嫌っ! や、やめてください来ヶ谷さん!!」

「おかしなことはしない」

問答無用の来ヶ谷さん。

「け、けどっ」

「……ボソボソ……ボソボソ……」

来ヶ谷さんが何かをつぶやいている。

「あの! ちょっと――……え?」

あ、杉並さんが急に大人しくなった。

「……ボソボソ……理樹君に……ボソボソ……上手く……手を貸す……」

いったい何を話してるんだろう?

来ヶ谷さんが顔を上げる。

「――どうだ? キミには悪くない話だと思うが」

「は、はい…けど、本当にいいんですか…?」

「ああ、もちろんだ」

「え、じゃあ――」

表情がパッと明るくなる杉並さん。

「だが」

そこで言葉を切った。

「もちろんそれ相応のリスクを負ってもらうが」

「リ、リスク……?」

すぐに困惑の表情になった。

「虎穴にいらずんば虎児を得ず、と言うだろう?」

「なあ、理樹君」

「え?」



――まるで獲物を見つけたオオカミのような来ヶ谷さんの目が、杉並さんと、そして僕を捕らえていた。





前回花ざかりの理樹たちへリスト次回

コメント
まだコメントはありません
HTML版(見られない場合のバックアップです)