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花ざかりの理樹たちへ その63 ~学校・午前中編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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(「その53」「その54」と併せてお楽しみください)





――カラカラカラカラ……



理科室のドアを開けた。

「杉並さ~ん」

この時間には誰も居ないはずの理科室。

そこに杉並さんはいた。

杉並さんは黒板の方を向き、何かを呟いている。

それはまるでデジャヴのような光景。

「あの、杉並さん?」

「直枝くん」

振り向く杉並さん。

「あ…」

「直枝くん、どうしたの?」

さっきまでは、まるで前回の焼き直しのような光景だった。

けれど。

「よかった…来てくれたんだね」

前と決定的に違う点。

それは……杉並さんが笑顔だということだ。

「もしかして、杉並さんがしたかったことって」

コクリと頷く杉並さん。

「――さっきは言いたいことをね、ぜんぜん言えなかった」

「話をするだけで恥かしくて」

「顔を見るだけで死んじゃいそうだった」

「けど」

杉並さんが僕の顔を見つめる。

「…ね?」

少し照れながらの、優しい微笑み。

「今ならきっと言葉にできる…そう思って」

「だから……」

杉並さんが自分の胸にキュッと手を当てる。

「さっきの続きを――」

「言わせてください」

真剣な眼差しが僕に向けられた。

「もちろんOKだよ」

「よかった…」

ホッと胸を撫で下ろす杉並さん。

「えっと……すーーーっ、はーーーーっ……」

「じゃあ…言うね」

「うん」

「行くよ?」

「う、うん」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「やっ……」

「やっ…っぱり緊張するね」

胸に手を当てて大きく息を吐き出している。

「そ、そうだね」

ぼ、僕まで緊張してきたっ。

「じゃあもう一度……すーーーっ、はーーーーっ……」

「今度こそ本当に…い、言うよ?」

「う、うん」

「……」

「……」

「……」

「……」

「直枝くんっ!」

「はイッ!」

ついつい声が引っくり返る。

「直枝くん、わっ私……」

「わ、私と…っっ」

ドア付近から『がんばってーっ』と聞えてくる。



「私とっっ!」

頬が桜色に染まっていく。



「お友達になってくださいっっ!!」



………………。

……。

「……へ?」



――静寂が辺りを支配した。



プルプルとしている杉並さん。

両腕をすぼめて…全身に力を入れている。

全身全霊で言葉を発したようだ。



「直枝くんっ、私とお友達になってくださいっっ!!」

杉並さんがもう一度、はっきりと言った。

「あ、えーっと…」

ドアの向こうからも『え、えぇぇぇぇーっ!?』『ふ、ふぅ~~…………』と聞えてきた。

「あの、杉並さん――」

「私――」

潤んだ瞳が僕に向けられた。

「みんなが……リトルバスターズのみんながすごく羨ましかった」

「毎日がとても楽しそうで、ひと時ひと時がまるで宝石のように輝いていて」

「いつでもどこでもみんなが笑顔に包まれていて、幸せに包まれていて」

「そんなみんなを――私はいつも遠くから見てた」

「見てるだけで明るくなる人たち…私も…私も混ざってみたかった」

「けど――」

杉並さんの顔に影が差す。

「そんなみんなは……私には眩しすぎた」

目線を落とす。

「みんなの輝きは、暗い私を萎縮させるのに十分だったんだ…」

「…どうやれば友達になれるか、わかんなかった…」

「私みたいなのなんかと友達になってくるれるはずがないって思った」

「私、人見知りだし、緊張しいだし、地味だし話下手だし……」

「けど、なんでだろうね」

杉並さんの優しい目が僕を見つめる。

「みんなの中心で一番輝いてる直枝くんを見ると、元気が出たの」

「私だって頑張れば…そんな気が湧いてきたんだ」

「それでその…直枝くんに手紙を出したんだけど」

「やっぱり、いざ直枝くんを目の前にしたら緊張しちゃって…」

「声まで震えちゃって…」

「こんな私なんて絶対相手にしてもらえないって……」

「人と話すだけで、こんなになっちゃう私なんかと誰も友達になんかなってくれないって思って……」

「杉並さん……」

そうだ、杉並さんはあの時…走って帰ってしまいそうになったんだ。

「けどね」

しっかりとした目が僕に向けられた。

「今なら…言えるって思った」

「みんなに鍛えられた今なら、きっと私にも友達にしてもらえる資格があるんじゃないかなって」

「だから…ね」

「直枝くん、リトルバスターズのみんな――」

「よかったら私とお友達になってくださいっ」

杉並さんがペコリと頭を下げた。

「…………」

「杉並さん、それはちょっと違うと思うよ」

僕は、はっきりと言った。

「え…っ…?」

杉並さんの瞳が収縮する。

「あっちを見てみて」

ドアを指差す。

「え?」

杉並さんが目を向けると……。

『ほわっ!?』『うわっ、目が合ったっ!』『待て葉留佳君、どさくさ紛れにどこを触って…』『うおっ!? おまえら押すなっ』『……あ』



――ドンガラガッシャーンッ!



理科室のドアが外れて、みんなが転がり込んできた。

「えっ!? み、みんな、どうしたのっ!」

目を丸くする杉並さん。

「いやなに」

ポンポンとスカートを叩(はた)きながら来ヶ谷さんが起き上がる。

「――友人の様子が心配で見ていただけだ」

いつもの澄ました表情で杉並さんを見つめている。

「ゆう…じん?」

「杉並さん」

目をパチパチしている杉並さんが僕の方に向き直る。

「…もう杉並さんの願いは叶ってるんだよ、とっくにね」

「え…?」

みんなの笑顔が杉並さんを迎える。

「お友達ってね、たぶん『なる』じゃなくて『なってる』なんじゃないかな」

人差し指をピンと立てる小毬さん。

「よくわからんが、友達ってお願いしてなってもらうものじゃない」

鈴もうんうんと頷いている。

「わざわざ友達作んのに資格がいるなら、オレなんて今ごろひとり寂しく山ごもり確定だぜ」

真人も腕組みをしてこっちを見つめている。

「腕立て伏せであんなに燃えたのは、熱い友情のなせる技なのですーっ」

わふーと飛び上がるクド。

「……口説き対決の際、わたしとあんなに熱い契りを交わしたではないですか」

ぽ、と頬を染める西園さん。

「いやー、ことわざで言う『同じ釜のパフェを食った仲』ってやつですヨ、私たち」

今さら何言ってるの、といった顔の葉留佳さん。

「じゃあ、私……じゃあ……」

杉並さんが驚きと嬉しさの入り混じった表情でみんなを見渡す。

そんな杉並さんに、微笑みかける。



「――杉並さんは、もう僕たちの友達だよ」



最高の笑顔を杉並さんに向ける。

「……私……」

「……みんなと友達になれたんだ……」

「私、みんなと…友達になってたんだ……」

みんなもコクリと頷く。

杉並さんが自分の胸に手を添える。



「みんな…」

「――ありがとう」



――ぶわっ!



杉並さんの瞳が一気に潤んだ。

「ど、どうしたの杉並さんっ!?」

「だ、だって…っ…だって……っ」

ポロポロと涙が零れる。

「うれ……うれしか…ったんだ…もんっ……う、うああああああんっ」

「わわっ!?」

「あ…ありが……うわわあああああああーんっ」

床にぺたんと座り込んで泣き出してしまった!

「ほわわーっ!? ハンカチーっ」

「大丈夫かっ、杉並さんっ」

「うぐっ…えぐっ……よかったのです……えぐえぐっ」

「……ぐすっ」

「わわわーっ、ワンコとみおちんがもらい泣きしてるーっ!?」

「うむ、こんな事もあろうかとハンカチを多めに用意しておいた」

「杉並女史、西園女史、クドリャフカ君。ハンカチだ」

「う、うわわわわああああんんーっ!」

「……ぐすっぐすっ」

「えぐえぐっ……鼻がずるずるなのです……ぶぶ~っ!」

すっかり大騒ぎになってしまっていた!





「女泣かせなこったな、理樹さんよ」

真人が僕の隣に来た。

「――よかったね」

輪から外れ、騒ぎになっているみんなを見る。

「だな。結果にビビって逃げ帰って泣いてんのと…今の泣いてんのとじゃ全然違うな」

「友達ってのはいつの間にかなってるもんだけどよ、その一番の切っ掛けを作ったのは…やっぱりあいつ自身なんだろうな」

「やってみなけりゃ状況は変わんねぇ」

「やってみなけりゃ全てはわかんねぇ」

「思うばかりじゃ想いは届かねぇ」

「……真人もたまにはいいこと言うね」

「受け売りだけどな」

二人でみんなの様子を見ている。

「――……理樹」

「うん?」

「オ、オレの手紙…なんだけどよ…」

「よ、読んでくれたか?」

「え? 捨てておいたけど」

「……」

「……」

「……」

「……」

「理樹様あああぁあぁーっ!!」

「うわわーっ!? 泣きつかないでよっ!」







最初に振り絞った小さな心。

――逃げずに得たものは、勇気と…友達。







■「杉並さん編」あとがき

みなさん、こんにちは! mと申します。
いつも「花ざかりの理樹たちへ」を読んで下さり、本当にありがとうございます!
連載開始が昨年8月。ですから、かれこれ9ヶ月になるのですね。
こんなにも長期間の連載を続けていられるのも、ひとえに応援して下さるみなさまのおかげです!!

今回で「杉並さん編」は終了です。
最後の告白(?)のシーンを読んだときに「はぁ、今さら何を言ってるんだか…」と思って頂けたのなら今回のSSは成功です(笑)
杉並さん編では、来ヶ谷さんが切り出したゲームを通していつの間にか違和感なくリトバスメンバーに馴染んでいる……を書けたらいいな、と思って書き綴っています。
後もう一つ。
育成計画を通して最初の「私なんか…」という後ろ向きの気持ちが、「私だって…」という前向きの気持ちへと変化していたりします。
自分に自信が持てなくて、「自分なんか…」と思って逃げてしまうこと…誰にだってあるんじゃないかな、と思います。
私もそのようなことがよくあります。
ですのでSSでは、是非杉並さんにその後ろ向きな気持ちに打ち勝ってもらいたい…そんな気持ちを込めて書かせて頂きました。

杉並さん編は長期に渡り連載しましたが、楽しんでいただけたのなら幸いです!


さて、次回からは「放課後・おでかけ編」へと入っていきます!

迫り来る恭介の魔の手……
裏で恐ろしい計画が進められているにも気付かず
理樹ちゃんは誘われるがままに…!

「放課後・おでかけ編 ~絶対可憐×絶対領域×絶対ピンチ!~」

をお送りいたします(笑)

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