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花ざかりの理樹たちへ その94 ~買い物編~ (リトルバスターズ)
作者:m (http://milk0824.sakura.ne.jp/doukana)

紹介メッセージ:
 恭介の思いつきで始まった王様ゲームにより、理樹は……。各編はほぼ独立していますので、途中からでもお楽しみ頂けます。

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 気になって佳奈多さんのゲーム台の方へと移った。

 そういえば、このゲームは対戦機能がないから向こうの台とは別の問題が出題されているはずだ。

 そこでは佳奈多さんは画面を見つめてプルプルと硬直していた。

「佳奈多さん?」

 その画面には。



 『第一問! 4択問題!!』



 『電撃文庫から刊行されている鎌池和馬著のライトノベル「とある魔術の禁書目録」。

  さて、タイトルの「禁書目録」はなんと読む?

  

  1.シダックス

  2.インデックス

  3.イナックス

  4.マツコ・デラックス

  』

 どうやら制限時間も難易度によって変わるようだ。こちらはまだ1分程ある。



「普通に『きんしょもくろく』じゃないの? あっちみたいな問題ならすぐに解けるのに」

 悔しそうに歯がみしている佳奈多さん。こういった方面にはやっぱり弱いみたいだ。

「……先程も聞きましたが、わたしが助け舟を出しましょうか?」

「西園さんは後半の戦力として手伝ってもらうわ」

「今はまだ早すぎ」

 どうやら西園さんは答えを知っているみたいだけど、佳奈多さんは戦略として手伝ってもらわないようにしているようだ。

「4択なんだからテキトーにポチーッとすれば当たりますヨ! ねーねーお姉ちゃんお姉ちゃん、私に押させてー」

「嫌。それにそれだと75%の確率でハズレじゃない」

「はるちん自慢の女の直感ならイナックス! これ聞いたことあるもんっ! これに違いないっ! だから押したいーっ」

「それ絶対トイレで聞いたわね」

「なぜわかったーっ!?」

 横から「それでもお姉ちゃんを手伝うんだーっ」とパタパタと手を出す葉留佳さんを抑えながら、佳奈多さんがこめかみに指を当てる。

「こういった似たような選択肢が並ぶ場合、一番共通点が多い選択肢が正解が定石なんだけど」

 理論的に攻め始めていた!

 佳奈多さんらしいと言ったららしいけどっ!

「ならば『ックス』がつくということだな」

「は? 全部についてたら正解が搾れないことくらいわからない?」

「ぬおっ!?」

 謙吾の意見は佳奈多さんの氷点下の眼差しと共に一瞬で却下。容赦ない。

「文頭が『イ』で共通なのが2番と3番ね…」

 僕も画面とにらめっこをしている佳奈多さんの横から顔を挟む。

「1番、2番、4番はどれも濁音がついてるよね」

「いっ……いいところに気付くじゃなぃ」

 なんで顔を赤くしてそっぽ向くのだろう?

「そこから導くなら2番ね。…2番でいい?」

 そんな何かを期待するような目で僕の方をチラチラと見られても困るっ!

 どうやら自信がないようで、なかなか2番をタッチできない。

「はっ!?」

 そのときクドが何かに気付いたのか、ピョコンと飛び上がった。

「佳奈多さん! 私は思い出してしまいましたっ!」

「どうしたの、クドリャフカ?」

「たしか選択問題では、一つだけあからさまに違うような選択肢があった場合それが答えであることが多いと聞いたことがあります!」

「ほう……ババ抜きでジョーカーをわざと抜きやすいように差し出す心理トリックと同じ、ということか」

 そういうこともあり得るなと謙吾が納得している。

「はい、そうすれば『これはババか…いや!そんな単純なトリックを使ってくるはずが…だがしかし!』と心理的な葛藤を生むのですっ!」

「なるほどね、一理ある…か」

 残り20秒のアナウンス。

「――なら答えはマツコ・デラックスね」

 2番へと向けられていたペンが4番へと移された。

 ペンでタッチしようとしたときだ。

「待ってください」

 今まで静かに傍観していた西園さんが、佳奈多さんのペンにペチッとデコピン。

「……まさか…ぷっ…その選択をするとは思ってもいませんでした……ぷぷっ」

 口元に手を当てて堪えてはいるけど、明らかに半笑いだっ!

「も、もしや私の考えは間違っていたのでしょうかっ!?」

「……わかっている者から見ると必笑ものの大大大間違いです…ふっ」

「がががががーーーんっ!? 吹かれた挙句に鼻で笑われてしまいましたっ!?」

 ……西園さんってやっぱり黒いみたいだ……。

 残り10秒のアナウンス。

「……二木さん、答えをお教えしてもいいでしょうか?」

「…………はぁ」

 溜息をつく佳奈多さん。

「もしもの場合に西園さんは温存しておきたかったんだけど…仕方ないわね」

「答えは?」

「……2番です」

 残り5秒のアナウンス。

 佳奈多さんは迷うことなくその通りに画面をタッチした。



 『正解っ!!』



「はぁ~……」

 佳奈多さんの肩からどっと力が抜けた。

「わふーっ、佳奈多さん、申し訳ありません…」

「私もわからなかったんだからお互い様よ」

「けど、この手の問題が続いたらお手上げね」

 佳奈多さんが演劇くさくお手上げポーズをしたときだった。



 『第2問! 4択問題!!』

 『なにげない会話の語尾全てに「それと便座カバー」をつけることで、オタクであることを隠しつつ鍵っ子か否かを見分ける手法が大ブレイク(よりちょっと小さい)ですが、

  その言葉の原点は何?』



  1.KANON

  2.CANON

  3.CLANALI

  4.春原

  』



「またアニメ系の問題!?」

 佳奈多さんの顔が一気に引きつった!

「ありゃりゃ、こりゃまたお姉ちゃん不幸だね。んで鍵っ子ってなに?」

「それはあれですよ三枝さん、江戸っ子の類ですっ」

「おーおーミニ子物知りーっ」

「てやんでぇ、なのです~っ」

 クドは江戸っ子らしく鼻の下を親指で擦り、粋(いき)に腕まくりなんかしちゃっている。

「……わたしでしたら小躍りしたい状況ですが、もうアドバイスしてしまいましたので何もお教えすることはできません……ぷぷっ」

「わふーっ!? またしても西園さんに半笑いされましたっ!?」

 この問題もどうやら2人とも戦力外みたいだ…。

「――あ、そういや言い忘れてた」

 鈴側にいた恭介が、こちらに声を投げかけた。

「このゲームは古い機械だ。時間帯によってジャンルが偏るから心しておけよ」

「それって…これ系が続くってこと…?」

 ポロリと佳奈多さんの手からペンが落ちた。

 うあぁ…クイズは鈴が不利だと思っていたけど、これだと佳奈多さんの方が不利なのかも。

 そう思いつつ鈴を見る。



 『第2問! 4択問題!!』

 『高校生100万人アンケート「歴史の教科書でラクガキしやすい偉人」。2位と倍以上の差をつけ堂々第1位に輝いたのは…

  案の定フランシスコ・ザビエルですが、彼が創設に加わったのは何ですか?



  1.リーブ21

  2.イエズス会

  3.かっぱ寿司

  4.毛生え薬研究会

  』



 口を正三角形にしてプルプルと震えていた。

 ……これは、いい勝負なのかもしれないなあ。









――『『正解っ!!』』――

「「はぁぁ~~~…………」」

 両方の台からファンファーレが鳴り、同時に鈴と佳奈多さんが盛大な溜息と共に肩を落とした。

 第2問も二人とも正解だ。



 ちなみに鈴のほうは「毛関係じゃねぇかとオレは睨んでいる」という真人と「うん、帽子がないと…寒そうだもんね」と杉並さんが話し合っているうちに普通に小毬さんが答えていた。

 佳奈多さんの問題はと言うと、謙吾が正解した。

 一時期恭介がハマってたからなあ。

 ちょうどその時に勉強を教えてもらった真人の答案が全て便座カバーだったせいで、哀れんだ担任が真人に便座カバーを買ってきてくれたのを良く覚えている。



 続けて勢いよく『次の問題へ』を選ぶ鈴。

 対する佳奈多さんはと言うと、クドと葉留佳さんの顔を見比べて苦しそうな顔をしていた。

「――直枝」

「どうしたの?」

「この問題をドロップアウトしたら罰ゲーム、もとい景品は何?」

「えーっと、2問目正解だから『ネコミミとシッポをつける券』だって」

「…………」

 すごく嫌そうな顔だった。

 その気持ちはよくわかるよ…佳奈多さん。

「わかった」

 そう言うと佳奈多さんも悩みながら『次の問題へ』をタッチしたのだった。









――『『正解っ!!』』――

「「はぁぁ~~~…………」」

 両方の台から3問目正解のファンファーレが鳴る。

 煙をプスプスだしながら天を仰ぐ鈴。

 佳奈多さんは佳奈多さんで「私もアニメを見たほうがいいのかしら…?」と侵食され気味だ。

 そんな佳奈多さんだけど、鈴に目線を飛ばすと口元をほころばせた。



「はぁ…まだしてなかったの、リタイア。なかなかしぶといわね」

「なにーっ!」

 佳奈多さんの不敵な笑みに鈴が肩を怒らせた!

「そっちこそ早くリタイアしろっ」

「あなたにそんなことを言われる筋合いはないわ」

「わわわわっ、ケンカはダメだからねっ」

 慌てて二人の間に入る僕だけど。

「フン」

「ふかーっ!!」



――バチバチバチ~っ



「ほえぇーっ、二人の間に火花が散ってるように見えるよっ」

 満身創痍ながら二人の闘争心はまだまだ健在だった!

「次の問題だっ! 絶対にあたしは勝つぞっ」

「理樹、すぐに助け出してやるからなっ! 待ってろっ」

 メラメラと燃える鈴が勢いよく次の問題を選ぶ。

 どうやら佳奈多さん側のゲームを覗いていた僕は、鈴からは悪の佳奈多さんに囚われている身に見えているみたいだ…。

 はぁ、佳奈多さんもどうしてわざわざケンカを売るかなあ。



「……」

 その佳奈多さんは『次の問題へ』『ドロップアウト』と表示される画面の前で薄い笑みを浮かべると手を止め、考え事をしていた。

「どうしましたか、佳奈多さん?」

 不思議そうに覗き込むクド。

「――私は負けることが嫌い」

「今回も、べ、別に勝った後の賞品なんてどうでもいいけど勝ちにいくわ」

 なんでどもるのかなー、かなー?とツッコんだ葉留佳さん。

 が、佳奈多さんの強力デコピンによって「アウチッ」と撃沈。

「直枝、ルールの確認」

「一回でも不正解でアウト、よね?」

「うん」

「どちらかが全問正解するか、片方がドロップアウトして片方が間違ったらその人の勝ち、よね?」

「そうだね」

「どっちもドロップアウトしたらこの試合はなかったことになる、でいいかしら?」

「うん。恭介はそう言ってたよ」



 ルールは複雑だけど、結局は全問正解すれば問題なし。

 相手のミスを予想してドロップアウトしておくという戦略もとれる。

 ただしドロップアウトをしたときはその時の『景品』(と言う名の罰ゲーム)を実行しなければならない。



 『次の問題へ』『ドロップアウト』と表示されている画面の前で腕組みをしている佳奈多さん。

 その目が僕へと向けられた。

「今ドロップアウトしたら景品は何?」

「『一番年上の人を「お兄ちゃん」と呼ぶ券』……だね」

 誰かさんの強い希望がそのまま出ている気がしてならない。

「…………」

 めちゃくちゃ嫌そうだっ!

 顔をしかめつつも、佳奈多さんは勝利への道を考え始めていた。



「向こうの戦力は?」

「3問目で姉御が答えていたから、あとは恭介くんだけだね」

「そ」

 葉留佳さんの返事に、目を細め答える佳奈多さん。

「対してこちらの戦力は…さっきクドリャフカが答えてくれたから、残りは私と葉留佳の二人」

「悔しいけど私の戦力は0とカウントするとして、葉留佳は…」

「アニメならドンとこーい?」

 果てしなく疑問系だった。

「はぁ…まあ私と変わらない程度か」

「4問目を始めてるけど、向こうの様子は?」

 質問と同時に「こんなんわかるかーっ! ふかーっ!」「やべぇ、問題すら読めねぇ」なんていう声が聞こえてきた。

「4問目で棗先輩が駆り出されるのは間違いなしと思っていいわね」

「ならば4問目終了後は鈴が最終問題を一人で答えるか、それともドロップアウトするかという選択肢が残るわけか」

 佳奈多さんチームながら鈴の方をチラチラと気にしている謙吾。

「今までの実力から言って、彼女が一番レベルの高い最終問題を独力で解くことは不可能よ」

「そうなると鈴さんはどろっぷあうとをして、佳奈多さんが最後の問題を間違えるのに賭けるということですか?」

 クドの問いには答えず、佳奈多さんはこう続けた。



「なら、今ここで、私がドロップアウトをしたらどうなるかしら?」



「鈴さんが最後の問題を一人で答えるのは難しいというのでしたら、やっぱり鈴さんも4問目が終わったらどろっぷあうとでしょうか?」

「……いえ」

 西園さんが静かに首を振った。

「……万が一にもそういう事態にならないように、先程わざわざ二木さんは鈴さんを煽(あお)った…違いますか?」

 そうね、と息を吐き出す。

「今、あの子の頭は憎らしい私に勝つことでいっぱいのはずよ」

 そ、そうだったんだ。

 鈴ならあんな風に言われたら絶対にムキになる。

 ムキになった鈴がドロップアウトでゲームを無効にするような無難な選択をするはずがない。

 そんな鈴の性格を利用して、佳奈多さんは心理的に鈴が取れる選択肢を潰したんだ。

「……ドロップアウトという選択肢を消された鈴さんは、自らの意思で二木さんが勝つための道を選択する…という計画ですか」

「そうよ」

 佳奈多さんが右手で長い髪をファサ、と払う。

「だから今、私がドロップアウトをした時点で――チェックメイト」

 う、うわぁっ!

 さ、策士だ!

「さっきも言ったけど、私は勝ちに行く。方法は選ばない。虎が全力でウサギを狩るように」

「けどお姉ちゃん、今ドロップアウトしたら恭介くんのことを『お兄ちゃん♪』って呼ばなきゃダメですヨ?」

「ぐ……っ、それは罰ゲーム以外の何者でもないわね」

 恭介のほうを見て、あからさまに嫌そうな顔をする佳奈多さん。

「そんなに恭介のことをお兄ちゃんって呼ぶのがいやなの?」

「…………」

 なぜか僕の顔を見るなり、ぽわっ、と佳奈多さんのホッペタに朱が差した。

「いやー、なんて言うんですかネ? あなたのためなら、みたいな? 片方には明らかに大好きですオーラを…イタタタタタタッ!! ふゃーっ、お、おねぇひゃんっ、ほっぺひっふぁらないでっ」

「?」

 首をかしげている僕の前では、顔を赤くした策士なんだか微笑ましいんだかよくわからない佳奈多さんが葉留佳さんのホッペタを引っぱっていた。



「ふぅ…」

 そして腰を下ろした佳奈多さんが無情に口を開いた。



「――ドロップアウト」



***




ではここで私からも問題を一つ。
お暇な方は解いてみるのも一興かと思います。


10が二つ、4が二つあります。
どんな順番でも良いので、これらを全部使って、足したり、引いたり、掛けたり、割ったりして、答えを24にしてみましょう。


これが簡単!という人は以下のようなディナーはいかがでしょうか。


7が二つ、3が二つあります。
この四つの数を用いて、上と同じように24を作ってみましょう。


以前友人に出された問題ですw
文章を曲解する必要はなく、飽くまで上は10と4だけ、下は7と3だけです。
『二つ』の2や『四つ』の4は使いませんのでご注意ください。


答え
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前回花ざかりの理樹たちへリスト次回

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