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ミディの放浪日記~第10枠 巡り巡り -like the wind- (オリジナル)
作者:義歯

紹介メッセージ:
 小さな女の子が紡ぐ小さなファンタジー物語。

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第10枠 巡り巡り




「う~~~~~、もう。船は暫くいいわ」

リットランドから大陸に戻ってきての開口一番がコレ。
よほど船酔いに参ったらしい。

「イリス、おふねきらい?」

「嫌い…」

「ふぇっ、でもでもっ、すききらいしちゃダメなんだよぅっ」

「いいの。食べ物じゃないんだから」

そういう問題か。

「ふぇ、そっかぁ。そぉだね」

…そういう問題か。

「さっ、次はラクソールよ。行きましょう」

「はーいっ♪」


***




今、俺達はリットランドから戻ってきて、大陸の北にある港を出たところだった。
リットランドには、ミディの手掛かりとなるようなものは何も無かった。
…あったのは戦争のときに奴らに駆逐された『機械』が1機。
耐え切れなくなって早く帰ろう、と言い出したのは俺…。
…ではなく、ミディだった。

『機械』のことに触れるとミディは急に話すのを拒む。
ただ一言聞けた事は、「さみしいから」。
これ以上、この話をするのはよそうと思った。

イリスが言ったように、俺達はラクソールへ向かっている。
これはただ大陸を回るということではなく、ちゃんとした理由もある。

「こうやって漠然と回ってても、大きい所とか目立つ所しか探せないじゃない。
もう少し、探せるような場所がないか尋ねてみない?」

誰に。

「ラクソールに、私の先生がいるの。今は病を患ってるけど…。
地理にも詳しいし、色々と知ってるし、話を聞いてみるだけでも損はないと思うわ」

…という理由だ。

港からラクソールまでは街道が通っている。
「パス・トゥ・ラクソール(ラクソールへと続く道)」。
森林地帯を突っ切るという道なのに何故か通る人間は多い。
王都へ続いているわけだし、通りには宿場も多い。
…しかし宿場を使う人間は稀で、殆どが野宿をしたがる。
野生の獣もいないし、大自然の中で眠りたいというやつだろうか。

「あ」

不意に道の真ん中で止まるミディ。

「イリス、イリス! ほらほらっ、ここだよっ!」

「え? …あ、うん、ここだったわね」

「うんっ♪」

何があったのか俺にはサッパリ分からん。

「ここがどうかしたのか?」

「えへへ、ここでイリスと会ったんだよっ」

分からんはずだ。

「まあミディは分かるとして」

「ふぇ?」

「イリスは何でまたこんなとこにいたんだ?」

「私? 私はラクソールに行く途中だったの。
先生が病気だっていうのは話したわよね? そのお世話をしに」

「それ放っぽってミディを取ったわけね…」

「当然でしょ? 放っておけないもの。」

「ふーん」

それが2人の馴れ初めか。

「…今、何か変なこと考えてなかった?」

「なんでもないですよ」

テレパシストかコイツは。


***





「…ねぇ、カイ」

「あん?」

先導するイリスから離れて俺の方に来ていたミディが話し掛けてくる。

「イリスはね、わたしといっしょなのは、ほっておけないからって言ってたんだけどねっ」

「ああ、言ってたな」

「カイは、どうしてわたしといっしょにきてくれるの?」

「………。」

「おしえて?」

…か、考えた事なかった。
でもまあ…素直に原因を突き詰めてみると…。

「ミディが一緒に行こうって言ったからだな」

「ふぇ~、そっかぁ」

「ああ」

それにミディだから、こうして付き合ってるってのもあるかもしれない。

「わたしだから?」

…へ?
俺もしかして声に出して言ってたのか?

「ねぇねぇっ、わたしだからってどぉいぅことなの?」

考え事を声に出すのはよそう…てか気をつけよう。
俺は調子を戻して話した。

「そのままだよ。何だかミディは放っておけない感じがするんだよな」

「じゃあじゃあ、カイはイリスとおんなじなんだねっ」

「同じ?」

「イリスも、ほっておけないって言ってたんだもん」

「ああ…同じだな」

「えへへ」

にぱっと笑うミディ。

「イリスとおんなじうれしいなっ」

「そんな嬉しいことかねぇ?」

「うんっ! だってだってイリスは…えへ、ないしょ」

は?

「イリスーっ♪」

「あ、ちょっ、おい…何なんだ」

俺の手を離れてイリスの腕に飛びつくミディ。
今日の格言…子供は急に止まろうともしない。

「ん、なぁにミディ?」

「えへへ~…えっとね」

…なんか笑顔の裏にどす黒いモンが見え隠れしてるように見えるのは俺だけだろうか…。

「ごしょごしょごしょ」

イリスの耳元に近づきひそひそ声で話を始めるミディ。

「え…? あ、う、え、えぇ!?」

遠めに見ても分かるほどにうろたえているイリス。

「ぼしょぼしょぼしょ…なんだって。よかったね、イリスっ♪」

「え、あ、ちょっとミディ、ねえ!」

ミディはイリスを離れて道の先へぽてぽてと走って行く。

「うさぎさん見つけたからあそんでくるー」

「ミディ、待っ…もう…何なのよ一体」

そして残されたイリスと俺。

「イリス」

「え、あっ! な、何でしょうか!?」

…。

「…何で敬語使ってんだ?」

「あ、う…その…はぅ」

赤面してうつむく。

「しかし…アレってそんな気にするほどのことか? 大したこと言ったんじゃないんだが」

「むっ」

イリスが急に俺の顔を睨みつける。
…何故か赤面したまま。

「あの程度ってそりゃあなたにとってはそうかもしれませんけど私にとっては大問題なんだからっ。
だってそんな事言われたのなんて初めてのことだったんだからっ。
小さい頃に男の子っぽいって言われてからずっと髪を伸ばし続けてたり女の子らしくしようと心掛けてたりしてるんだけど
それなのに今までそんなこと全然なくてそれは相手がいなかったから別にそうなんだけどでも」

止まらない止まらないイリスのガトリングガントーク。
…そして俺は話が読めない。

「あのなイリス。初めてって言ってたけど、
誰かと意見が同じって言われたのが初めてだったのか?」

「……………え?」

「さっきの話だよ」

「え、意見が同じって…?」

「俺は、ミディが、何で一緒について来てくれるのかって聞いてきたから
イリスと同じでミディが放っておけないからって答えただけだぞ」

「…。」

時が止まる。

「…いやーーーー!!」

そして時は動き出す。
イリスの顔がみるみる真っ赤になっていく。

「ミディにやられたーー!!」

「へ?」

「ミディ! どこ行ったの!? 出てきなさぁいっ!」

そう言ってイリスは突然駆け出す。

「カイが私のこと好きだなんて言ってぇ!」

な。

「そ…そりゃぁ私は嫌いじゃないけどっ!」

なぬ!?

「で、でもこんな事本人に言えるわけないじゃないのよぉ!!」

…思いっきり言ってますけど…。

「ミディどこ行ったのよっ、もう~~~!!」

さらにイリスは走って、道の向こうに消えていく。
そして独り残された俺…。

「…おいおい。」


***





-数分後-

「はぁー…はぁー…や、やっと見つけてきたわ…」

「ふにぇ~…」

息を切らせて戻ってきたイリス…と、その腕に抱えられているミディ。
いや、抱えられてるって言うより持って運ばれてきてるって感じか。

「…よう、おかえり」

「た、ただいま…」

「風呂にするか? 飯にするか? それとも…」

「…あなたにとどめを刺すわ。」

「…俺が悪かった。」

「ねぇねぇ、それとも…なぁに?」

運ばれたままのミディが聞いてきた。

「…大人になれば分かる」

苦し紛れ。

「ふぇー、そぉなんだぁ…」

…そして納得するし。

「…それでミディ」

「ふぇ?」

「なーんでイリスにあんなこと言ったのかな?」

「ふぇっ、だってだって」

俺が顔をでかくして問い詰めると手をわたわたさせてミディは答える。

「わたしはイリスがすきで、カイがすきで、
イリスとカイもわたしがすきで、イリスがカイすき、って言って、
カイがイリスとおんなじって言って、みんなみんなすきでうれしかったから」

「…言ってることは分かったけどよ、俺が言ったのは好きとかじゃなくて
どうしてミディについてきてるかってのがイリスと同じだって事だぞ?」

「ふぇ…」

途端に淋しそうな表情になるミディ。

「カイはイリスすきじゃないの…?」

「…っ」

だから…なんでそこでイリスまで反応する。

「…嫌いじゃねぇよ」

「えへ」

にぱ、と笑うミディ。

「イリスとおんなじ~♪」

「は…?」

「イリスも、カイはきらいじゃないんだよねっ!」

「う、うん…嫌いじゃ、ないわよ…。けど…でも…もう~~っ!」

叫ぶとイリスはすたすたと先に歩いていってしまう。

「ふぇ…びっくりした。ねぇねぇカイ、どうしてイリス先に行っちゃうの?」

…自分が原因作ったって分かってねぇな?

「さぁ…イリスに聞け」

「うんっ、イリスのほう行くね」

ぽてぽて走っていき、イリスに飛びつくミディ。
それを受け止めるイリスと手を繋いで歩く2人。
いろいろと話とかあっても、結局は手ぇ繋いで歩いてるよな、あいつら…。

「なんか…まるで」

家族だな。

と言いたいのを抑えて、心の中でだけ思う。

「でも違うんだよな…」

イリスは分かっている。
ああ見えてもミディには他人として接している。

ミディはどう思っているんだろうか。
俺のこと、イリスのこと。どう思って接しているんだろうか。

「…聞いたって分かるわけねぇか」

さて…次は王都ラクソールか…。


-第10枠 了-

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