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ミディの放浪日記~第14枠 西方幻想譚3 -水冠- (オリジナル)
作者:義歯

紹介メッセージ:
 小さな女の子が紡ぐ小さなファンタジー物語。

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第14枠 西方幻想譚3 Waterclown




フィオの家を出て3日。
俺達5人はようやく町らしきところに着いた。

「到着ー。ここがネレイドって街だよ」

水の都ネレイド。
物知り博士君のエリアスが言うことには、町の路面の下…用は地下だな。
そこに縦横無尽に水路が通っているんだとか。
フィオの家から山を降りて町までの街道周辺を見ていたが、
山の上から見たときは草原に見えた辺りはどちらかというと荒野だった。
そんな中でこれだけの水路があると言うことは、それだけ裕福だってことだろう。

「…フィオ」

普段無言のエリアスが珍しく口を開く。

「ん? なに、どしたの?」

「ここに来た目的は何だ。」

「えっ、ウソ、エリアス何か考えててくれたんじゃなかったの?」

「…俺はお前らについて来ただけだ。」

「えーっ…どうしよう、ボクもとりあえず大きい町ってここに来ただけだし…」

「…もしかして無計画?」

ずばりとイリスの一言。

「え、えーっとぉ…そ、そう!
ミディちゃんに何か手掛かりがあるか探してもらわなくちゃ!」

かなーり苦しいが正しい事を言っている。

「…でもミディはこの調子だぜ?」

「え?」

「ふぇ~……」

きょろきょろきょろきょろ。

「キュ?」

「ねぇゆぅに。あれ何だろぉね?」

「キュー…キュ?」

「ふぇ、ゆぅにも分かんないんだ…」

イリスと手を繋いで、もう片方の手に乗せた毛玉と話しながら歩くミディ。
が、正面を向いて歩く事はない。
常に周りの建物とか景色を見回して歩いている。
言い換えると首の運動だ。

「なあミディ」

「ふぇ? なぁに、カイ?」

「それの言ってること分かるのか?」

手元の毛玉を指差して俺は言った。

「うんと…なんとなく。でもでも、ねむいときはすぐ分かるよっ」

「…俺には全部同じに見えるし全部同じに聞こえるんだが」

「そぉかなぁ…ちゃんとちがうよねー、ゆぅに」

ミディが指を目の前に出してやると毛玉はそれを舐める。
食い物と勘違いしてる…という訳ではなさそうだ。

「カイもゆびかして?」

「俺の指はレンタルしてねぇんだけど…ほれ」

「ゆぅにー、カイだよ~」

「キュ?」

と、毛玉の目の前に俺の指を持っていくミディ。
なんかとてつもなくお約束な予感がするのは俺だけでしょうか。

「キュー……」

がぶ。

痛い。

「ゆぅに、がぶってしちゃダメー!」

「キュ、ギュー」

毛玉を握り飯のように手のひらに包んでしまうミディ。
おにぎりの刑と名付けよう。

「あー、いいんだいいんだ。あんま痛くなかったし」

「ふぇ…ごめんねごめんねっ」

「気にするな。それよりそいつ少し貸してくれねぇか?」

「ふぇ、ゆぅにを? いいよ、はいっ」

よし、借りた。
かなり暴れてるが気にしない。

「エリアス、少しいいか」

「何だ」

「ちっと確かめてもらいたんだけどな、…」

「…まあ構わないが」

「じゃあこれ、ほれ」

俺から毛玉を受け取ったエリアスはそれを持ってじっと眺めている。

「どうだ?」

「オスだ。」

やっぱりか。


***




「ん~~~……困っちゃったなぁ」

宿に入って片方の部屋に集まってくつろいでいる所で、
フィオがいきなり頭を抱える。

「あら…フィオ? どうしたの? 具合でも悪くなった?」

「ふぇっ、あたまいたいの…?」

「ううん、そうじゃなくって」

エリアスがぼそっと言う。

「頭が悪いんだろう」

「ふぇー…そぉなんだぁ」

「うん、そーなの。最近ほんっとにボク頭悪くって引き算もできなくって」

ダメじゃねぇか。

「…って違あぁう!」

「ふぇっ!?」

「ミディちゃんっ、ダメっ、信じちゃダメっ!」

「ふ、ふぇ? う、うん、わかった」

…話が進まないな。

「んで? 何が困ったんだよフィオ」

「うんー…今日のミディちゃんの様子見てたんだけどさ」

ここでイリスも会話に加わった。
ミディはエリアスに纏わりついて遊んでいる。

「なんか、こっち側の…あ、山脈越えてこっち側って意味ね」

「ああ」

「こっち側のこと全然知らないみたいだし、まるっきり覚えもないみたいだよね?」

「そうね」

「だから探し物するんならやっぱ東側じゃないといけない様な気がしててさ」

それは俺も同感。
生まれたのがこっち側としても、ミディ一人であの山脈を越えてこれるはずも無いだろう。

「ってーことは…また山脈越えして向こうに戻らないといけねぇのか」

「仕方ないじゃない…他に戻る道も無いでしょ?」

「えっ、あるにはあるよ?」

意味ありげなことを言うフィオ。

「…おいまさか地面掘り進んでいくとか言うんじゃねぇだろうな?」

「まっさかぁ。地下にだって何いるか分かんないのに」

…怖い事言ってくれるな。

「それで、」

イリスが話を戻した。

「あるにはある、戻る道って一体何なの?」

「船長に頼めばなんとかなるんじゃないかなーと思うんだ」

「…船長…?」

イリスの顔が引きつる。

「えーっとね」

テーブルに地図を広げるフィオ。

「ここが、今ボク達がいる所」

丁度、中心の辺りに指を置いて言う。

「そんで、戻るんだったら次の目的地はここになるよ」

陸地の北端に印をつけた。
ローラン、と書かれている。

「ローランの港。こっち側はまだ未開の土地が多いから、港はここしかないんだ」

「ここからだったらどう考えても南端の方が近いと思うんだが…」

「だーから未開なんだってば。行って、どんな凶暴なのがいても責任持てないよ」

…素直にやめておこう。

「直接は関係ないけど、西側には何があるの?」

イリスが問う。

「ここから西は、砂の結界。もう何年もずーっと砂嵐が止まってないんだ。
方角が分かんなくなって、そのまま戻ってこない人もいる」

血の気が引いた。

「でもエリアスの家って結界の向こう側にあるらしいんだよね」

一気にコケた。

「ボクは行ったこと無いんだけど」

「…エリアスってああ見えて意外と逞しいのか?」

「そだよ。ガンは片方10キロ以上の重さあるみたいだし」

それを2丁も使ってるのか…俺負けてるな。

「そーれーでぇ」

大袈裟な声を上げてフィオが仕切りなおした。

「東側に戻るんだね?」

「ああ。そうしようと思う」

「そっか。じゃあ2週間張りきって歩こうね!」

…あ?

「…ホワッツ?」

「ネレイドからローランまでは2週間かかるんだ。
あ、ちゃんと途中に町はあるから安心していいよ」

いや、安心しろと言われても。
気のせいかもしれないがだんだんと目的地までの距離が長くなっていってるような。
…気のせいじゃないな、絶対。

しかし、結局何も見つからないまま戻る事になる訳か…。
ミディの探しもの、か。
一体何を探してるって言うんだよ…?




-第14枠 了-

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